ついに、今年も今週で終りとなりましたね〜。月並みな言葉ながらほんとにあっという間でした。皆さまはいかがだったでしょうか。
ところで、前回のコラムは(〜最近は頼まれて弾く機会が増えたような気がしてます。今回はそんなエピソードのいくつかを。)という書き出しで始めながら、結局(マスターの「やっと入籍」を祝う会でノ)の1話だけで終わってしまいました。
だから、というわけでもないですが今回はその続きです。
●八雲会忘年会で…
行きつけの喫茶店のママが世話役をしている八雲会。その忘年会が今年は早々と11月末にホテルで開かれる事になりました。実はこの八雲会、私にとって苦い経験が…というよりすっかりご迷惑をかけてしまった因縁の会なのであります。去年の総会。事前にピアノ演奏を頼まれて準備もしっかりしていたのですが、当日になって突然の腹痛に見舞われドタキャンしてしまった!という前科。(そのいきさつはバックナンバー第145回〜147回を見てくださいね〜)
今年は事前にママからピアノの依頼も無く…。
「さすがにママも去年の一件で懲りたかな。私もすっかり信用なくしちゃったし。今年はおとなしくしておこう。」
と思いながら当日を迎えました。
開宴30分前。会場に着いてホテルの玄関を入ろうとした時、携帯が鳴りました。見るとママからです。
「はい、私です。」
「あ、an弾手さん?今どこ?」
「今着いたところですよ。あと30秒で受付に行きま〜す。」
「ピアノ弾いてくれないかなぁ。急いで司会の人と打ち合わせしてほしいんだけど。」
「ひぇっ!どういうこと?」
「だから〜」
なんて、歩きながら話しているうちに受付が見えてきます。はいはい、ママが受付の後ろに立って携帯を耳に当てているのが見えます。
「は〜い、いま目の前にいますよ!」
というわけで二人とも携帯を切って続きは対面トーク!
「司会の人があそこにいるから、急いで打ち合わせしてきて!」
で、司会者との打ち合わせ内容は…
・会場にお客さんが揃ったら部屋の照明を暗くしてピアノにスポットを当てるので、なにか1曲弾いてほしい。
・1曲終わったら司会者が私のことを紹介するので簡単に自己紹介してほしい。
・その後、続いて1〜2曲弾いてほしい。
ということでした。
まー、先日のライブの店の「やっと入籍を祝う会」でのピアノ演奏は1時間前の依頼だったけど、今度は会場に着いてからの依頼かぁ!こうも直前の依頼が続くと、こちらもなんだか感覚が麻痺してくるというか、それが当たり前みたいな気になってくるというか、人間の慣れとは怖いものです。
「もう、時間が無いですね。すぐ会場に行ってピアノさわってみます。」
会場を覗くと、大屋根を開いたグランドピアノ。さっそく掛けて弾いてみます。
すると、びっくり!
「ひえ〜っ、なんだぁこのピアノ!音が出ないっ!」
これまでいろんなところでいろんなピアノを弾いてきたけど、こんなピアノ初めてだぁ!
全然鳴らない!響かないっ!
慌ててピアノの中の弦のところを覗いてみます。別に変った様子はありません。覗きながら鍵盤を押してみます。ちゃんとハンマーは弦を叩いています。ダンパーもちゃんと上がっています。なのに!音が鳴らない!どういうこと?これじゃ演奏にならないよ〜!
あー、あと5分もしたらお客さんが会場に入ってくるぞ。このままなら早く受付に戻ってこのピアノじゃ弾けないってママに断ってこなくちゃ。
会場を見回すと向こうの方にホテルの会場係りの人が出たり入ったり、最後のチェック中です。
「どうしよう、あの人に聞いてもピアノのこと分かるかなぁ。分かる人を呼びにいったりしてたら、もう時間切れになっちゃうぞ!」
焦りながら、もう一度ピアノの中をよーく覗いてみました。
「ん?これはなんだ?」
ハンマーが弦を叩く辺り、弦の裏側にチラッと白いフェルトが見えるではありませんか。ん?ひょっとしてこれか?どうもこれが弦を押さえてるみたいだぞ。消音装置か?
ということは、このフェルトを外す装置がどこかにある?
急いでピアノの中や外、鍵盤の周りを見回しますがそれらしい物も見当たりません。アップライトピアノの場合は確かどれかのペダルで消音フェルトを操作するようになっていると聞いたことがある。3本のペダルをそれぞれ踏みながら試してみます。ダメ…。全く変りません。
はて、困った。刻々時間は過ぎていきます。焦りながら鍵盤の方からピアノの下に手を入れて探ってみると…、左端の奥のほうになにか触るものが。しゃがんで覗いて見ると小さな黒いレバーのような物が見えます。これか!レバーを押したり引いたりしてみます。そしてもう一度鍵盤を弾いてみたら…。やったぁ!音が出る!消音装置が外れたようです!
ほっとする間もなく、お客さんがパラパラ入り始めました。さっきの司会者との打ち合わせではお客さんが揃ってからまず1曲、ということでしたが、まあいいや、指慣らしを兼ねてこのまま何か弾いていよう。
この前からさんざんやってるコード進行のアドリブ弾き♪アルペジオ中心にタラタラと音を出しながらこのピアノの鍵盤の重さや音の響き具合を感じてみます。それにこうやって音を出しているうちにさっきまでの焦った気持ちを落ち着かせなくちゃ、ですね。
ちゃんとした曲を弾くまでの15分間、適当に音を出してみる、というのも本番前のリハーサルみたいで、こうして指と気持ちをほぐすにはちょうどいいかも、ですね。
…という訳で、受付での突然の依頼と消音装置の掛かったピアノ初体験。一時は焦りまくったan弾手でしたが、なんとか本番を乗り切れてやれやれの今年の八雲会忘年会なのでした。
さてさて、今年もan弾手のつたないコラム、お読みいただいてありがとうございました!そしてたくさんのメール、ありがとうございました!皆さまからのお便りを読ませていただきながら、いろんな所でいろんな方が、いろんな思いでピアノを楽しんでいらっしゃることを感じて、私もとても励みになりました。
音を楽しむピアノ。自分のペースで気ままに楽しむ鼻歌ピアノ。Andante(歩くような速度で)、暮らしの中で楽しむピアノ。そんな初心を思い出しながら、来年もピアノと付き合っていけたらいいなぁと思っています。そしてそして、たくさんの皆さまの声に励まされながら、皆さまとご一緒にピアノ楽しんでいけたら、もっとうれしいです。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
皆さま、どうぞよいお年を!
(続く→随時更新)
an弾手(andante)
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随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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