第171回読者の方からのご質問「この広い野原いっぱい」のコードについて [2006.9.19]
「お父さんのためのピアノ曲集」の読者の方からご質問をいただきました。
 シンプルアレンジ編の最初の曲、「この広い野原いっぱい」のコード表記についてです。携帯メールでいただいたのできちんとしたご返事が出来ず、ご本人のご了解を得てこのコーナーで取り上げる事にしました。


(ご質問)
 「コードで弾く想い出のフオークソング」の P.22一段目の3小節目、Dm7の7の音はCになると思います。でもCの音はありません。なければDmでよいのでは。
 2段目 7小節目はDm になっています。


(an弾手より)
 このようなご質問でした。このご質問にお答えするにはある程度の長さの文章が必要ですのでan弾手コラムでのお返事でもいいかお聞きしましたら次のようなメールを2回に分けていただきました。


(ご質問)
 パソコンのメールアドレス持ってないので急ぎませんのでホームページのコラムで回答いただけたら嬉しいです。お忙しいところ済みませんがよろしくお願いします。
 この前の質問の際はほんとに届くのかなと思ってたのでよう書かなかったのですがこんな本、待ってました。書いて下さってとても嬉しいです。有難うございました。
 ホームページは見ることできます。でも書き込みはできないのでよろしくお願いします。ずっと ローランドのポピュラーピアノコースで習ってたのですが事情で辞めました。こんな独習書ずっと待ってました。

大阪府 ローランドオバさん より 


(an弾手より)
 ありがとうございます。こんな本待ってました、と言われるととても嬉しいと同時に責任を感じてしまいますね。ちゃんとお役に立てるといいですね。

 では、ご質問の件です。
 いま、このページをご覧の皆様は多分、本が手元になくて、ご質問の意味がお分かりにならないでしょうから、下にその部分の楽譜を載せますね。
 おっしゃっているのは3小節目のDm7のところですね。おっしゃる通りDm7の7の音はC(ド)です。それなのにこの楽譜ではC(ド)の音はどこにも出てきません。だったらあえてDm7と書かずにDmでいいのでは?ということですね。

 お答えします。この楽譜(演奏例)は、あくまでも「演奏例=弾き方の一例」です。楽譜が最初にあって、それにコードネームを付けたのではありません。最初に用意したのはリードシート(メロディーとコードネーム)です。そのリードシートを両手で弾くとたとえばこんな弾き方も出来る、という一つの例を2段譜に書いて例示しています。ここではこの本の最初の曲という事もあり、ごく簡単な弾き方を例示するために、あえて7の音は無視した弾き方をしています。これでもちゃんと曲にはなっていると思います。慣れてきたら、ご自分で7の音を入れた弾き方を工夫してみてください。このように同じリードシートでも色々な弾き方が工夫できるのがコード奏法の面白さです。逆に言えば、コードに慣れていないうちは、7や6、augやdimなどが付いた面倒そうなコードは単純なコード(アルファベット大文字と小文字のmのありなし)だけに読み替えて弾いても、とりあえずそれらしい曲にはなる、ということです。

 ではここで、この部分のコード進行を見てみましょう。
C→Em→Dm7→G7→Cです。
 度数表記で書いてみると
T→Vm→Um7→X7→T
 で、よくある基本的なコード進行になっていることが分かります。
 もちろんDm7(Um7)は7無しでDm(Um)でも構いません。その方が普通は一般的です。ただ、あえてここに7が入ることによって、次のG7のコードにスムーズにつながる効果が出てきます。
 下図の左はDm→G7の進行、右はDm7→G7の進行です。
Dm7→G7にすることによって、ド→シという半音の進行が出来ます。この半音の進行が、とても自然で耳に心地よい効果を発揮します。本の演奏例では単純にするためにあえてこの半音進行の効果を無視した弾き方をしていますが、ここで7の効果を入れた弾き方をしたらどうなるでしょうか。例えば下の様な弾き方はどうでしょうか。
 3小節目の最後から4小節目の頭にかけてド→シという半音の進行が出来ていますよね。ここがミソです。更に、3小節目の最初の音から見ていくとメロディーの下にレ→ド→シという音の動きがありますね。このような内声部での音の順次進行も耳に心地よく響き、よく使われるアレンジテクニックです。

 ここで、ついでにこの順次進行のアレンジ(弾き方)を自分で工夫する方法を考えてみましょう。この順次進行のテクニックをただ強引に色んな曲に当てはめてみようとしてもなかなかうまくいかないかも知れません。まず7(セブンス)には上記のように次のコードへの半音進行をつくる働きがあることを理解してください。もちろんそれだけではありませんが、この半音進行を生み出す機能はかなり重要なポイントです。(5度のコード=ドミナントコードにはかならず7が付いてドミナントセブンスになっているのもこの理由によります。) これを意識して隣同士のコードの構成音の中からスムーズに半音進行が出来るような音の使い方を工夫します。7(セブンス)が付いていないコードには自分で7を付けてみてもいいです。上記の例で言えば、ド→シが隣り合って出てくるような音の使い方です。それが出来たら更にその前後の音の配列を見て順次進行が出来ないかを考えます。意識してちょっと前後の音をいじってやることで結構うまくいくものです。

 7小節目もDm7でもいいのですが、ここは3小節目とあえて変えた感じにするために7を省略してみました。それにメロディーにC(ド)の音が入っているため、あえて7を意識した弾き方をしなくてもG7に自然につながりそうです。
 どうか色々な弾き方を工夫してみてください。

 ということで、ローランドオバさん、納得して頂けましたでしょうか。
 また何かありましたら、いつでもメールくださいね。
 ありがとうございました!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

「お父さんのためのピアノ曲集」はこちら→

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ちょっと、ひと言。
 台風13号、九州直撃コースでしたが、ここ熊本市の私の周りでは、大した被害も無く過ぎて行ったようです。被害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。
 しかし、この台風の影響で恒例の藤崎八幡宮秋の例大祭最終日の神幸行列と馬追いが延期になってしまいました。これが延期というのは確か私の記憶にはありません。珍しいことです。
 熊本では、昔からこのお祭りがやってくるとそれまでの残暑が消え、朝夕めっきり涼しくなると言われています。
 いよいよ本格的な秋の訪れですね。
 
−an 弾手−


第172回「清和物産館ピアノお披露目の集いでan弾手がライブトーク!?」その1 [2006.10.2]
 山都町(旧清和村)の清和物産館の方から電話がありました。
 この春、山都町では小中学校の再編がありたくさんの廃校が出たそうです。(過疎が進んでるんだ…)
 そこで、廃校になった学校の備品を町内の公共施設で活用する事になったのだとか。清和物産館を運営する財団法人清和文楽の里協会にも打診があり、ピアノを譲ってもらう事にしたのだそうです。(正確にはもらうのではなく、預かる、ということらしいですが)
 清和物産館のレストラン・郷土料理館(ここは熊本県のアートポリス指定の建築物で、周囲360度総ガラス張りのモダンな施設!)と、清和高原天文台のロビーに1台ずつ入るらしい。

 ただ、ピアノを運んだり調律したりするのにお金が掛かる。(確かに…)
 その予算がない!そこで協賛を募ってお金を集めよう、ということらしい。
 そこで、私のところにも電話が掛かってきた!
「協賛していただけませんか?」
「そうですか。いつも仕事でお世話になっていますし、出来る範囲でご協力させていただきます。」
 たしかに、清和物産館には日頃仕事でお世話になっているんですよね〜。
「ありがとうございます。そこでもう一つお願いがあるのですが…」
「はい、なんでしょう?」
「せっかくピアノが来るので、お披露目会をしようと思うんです。出席者は関係者のほか一般の方も含めて募集しようと思うんです。」
「いいじゃないですか。」
「で、そのメインイベントとして、an弾手さんにお話とピアノ演奏をお願いしたいのですが…。」

「えっ……?」

 思わず絶句。
「な、なにをすればいいんですか!?」
「ですから、ピアノのお話と演奏を…。時間にして1時間半位でしょうか。もっとあったがいいですか?」

「……」

 1時間半も、何をしゃべればいいの!?
 ピアノ演奏だって、ずっと弾いてても何分持たせることが出来るか!?
「他のイベントの合間でちょこっと弾くくらいだったら、なんとかなるかも知れませんが…。」
「いえ、他のイベントは特に考えてません。最初に町長の挨拶くらいです。後はan弾手さんにお願いします。」
 ひぇーっ、困った!
「少し、考えさせていただけませんか。」
「はい、それでは企画書を作ってみますので、それをご覧になってまたご検討ください。」

 数日後。
 企画書がメールで来ました。えっ、ライブトークだって!あれっ、清和高原天文台でもやるの?なになに?こっちはディナーショーだって!!
 参加者募集チラシも付いている!何だか、もうすっかりそんな段取りになってるぞ!

 で、数日後。
 このサイトのBBSにも、しっかり告知の書き込みがしてありましたぁ!

 と、いうわけで、いつの間にかそんなことになってしまいましたぁ!

 さて、何をしゃべるのか、何を弾くのか、考えなくちゃ。
 どーしよう。
 参加者の顔ぶれもよく分からないので、イメージ湧かないなぁ…。
 さて…。

 ちなみに、イベントの概要は次の通りみたいです。

●「清和物産館・清和高原天文台 ピアノお披露目の集い」

この春、山都町では小中学校の再編がありました。
誰もが弾いた!たくさんの想い出がつまったピアノをお借りできることになりました。
清和物産館のレストランや高原の天文台で、ステキな音楽を楽しみましょう!
たくさんの子どもたちが弾いたピアノは、音もやさしくやわらかいと言われます!

小学校から届いたピアノを、今後地域の皆さまや当地を訪れるお客さまに楽しんでいただきたく!
お披露目の集いを企画しました。
当日は、話題の『40歳からのピアノ入門』(講談社)著者の○○○○氏をお招きし、
演奏をまじえながら、楽しいピアノのお話をお聞かせいただきます。

♪清和物産館 ライブトーク形式
日 時 平成18年10月21日(土) 14時〜16時
入場料 大人500円 (ワンドリンクつき) 
小中学生無料
定 員 100名様

♪清和高原天文台 ディナーショー形式
日 時 平成18年10月21日(土) 18時〜22時
入場料 2500円(食事代込)
定 員 20名様

お席に限りがありますので、ご予約ください!
清和物産館 0967−82−2727
主催・財団法人清和文楽の里協会 後援・山都町教育委員会・山都町立図書館


(続く→随時更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。
10月になりました。まったく。あと3ヶ月。
豪雨の梅雨はいつだったっけ?
あの、ハンカチの甲子園はいつだったっけ? まったく。
まあ、ここで憤慨してもしょうがありません。過ぎ行く日々の中で、自分のやることをしっかり見失わずに行きたいものです。
(…今日も、いっぱい見失ったなぁ)
 
−an 弾手−


第173回「清和物産館ピアノお披露目の集いでan弾手がライブトーク!?」その2 [2006.10.31]
 前回の(その1)から、随分時間がたってしまいましたね。
 ライブトークの結果は、既にこのサイトの掲示板でも一部ご報告しましたのでご存知の方もいらっしゃるかと思います。遅くなりましたが、ここではan弾手からの公式ご報告ということでアップさせていただきます。
 なお、初めての方は前回のバックナンバー第172回から先に読んでいただくといきさつが分かりやすいと思います。

 前日の雨模様が嘘のように爽やかな秋空でした。清和物産館と清和高原天文台でのピアノお披露目会本番の朝。11:30からのリハーサルに間に合うように車を走らせます。高速のインターを出て山道に掛かると、カーブが続く道路の両側に木々の緑がいっぱいに広がります。エアコンを止めて窓を開けてみます。すがすがしい空気がスーッと流れ込んできました。気持ちイイ!

 …実はその2週間前、ピアノの下見とプログラムの打ち合わせのために会場を訪れていました。お昼時の観光客で混雑する清和物産館の食堂を抜け、片側がガラス張りの明るい通路を奥に進むと、光あふれる広々としたドーム型の空間が現れます。ここが会場となる郷土料理館です。円形のフロア、白木の丸太を大胆に組んだ柱と梁、テント地で出来た、見上げるような高い天井、そして、周囲360度、床から天井まで総ガラス張りの壁面。その向こうには視界一杯に木々の緑が風に揺れています。
 そしてそして、その緑の木立を背景に鎮座している黒いアップライトピアノ!
「これかぁ」
 最近は見かけないような角ばったデザイン。表面はあちこち塗装がはげ、キズが一杯入っています。でも、そのレトロな雰囲気がこのナチュラルな空間に不思議に溶け込んでいるのです。
 鍵盤のフタを開けると「K.KAWAI」の文字。メーカーの方の話によるとこの表示があるピアノが現役で使われているのは珍しいとか。昭和37年製だそうですから44歳になるんですね。
 さて、問題はどんな音がするか、です。
 いよいよピアノの前に掛けて鍵盤を押してみます。

ポーン!

「お、意外といい感じ!」
ポロポロポ〜ン!

「おー、よく響く!」

 低音から高音まで、響きの粒が程よく揃っていて、なかなか弾きやすいじゃないですか!
 調子に乗ってそのまま2〜3曲弾いてしまいました。
 その後、今回のピアノお披露目会の話題を取材に来られた地元紙の支局長の取材と写真撮影、テレビ広報のためのビデオ撮り、当日の音響と進行の確認。

 それが終わると今度は車で約10分の清和高原天文台へ移動。
 こちらは置いてあったピアノの位置が悪く、まず、ピアノの移動から。その後、当日の椅子の配置、音響の確認、進行の確認、そして、もちろんピアノの試し弾き。
 このピアノは外観は綺麗で新しいのですが高音部の響きが悪く、少し弾きにくい感じ。高音域を使ったキラキラ感のあるアレンジはあまり効果的でないようで、弾き方を変える必要がありそうです。

 ひと通り打ち合わせを終えると、再びバタバタとさっきの物産館へ移動です。
「ちょっとお茶でも」
 という館長のお言葉に甘えて中に入ると、閉店後の片付けをしていた女性スタッフの方が2人、私を見つけて
「ピアノ聴かせてください!」
 それでは、と再び最初のピアノのところへ移動。
「へぇ〜、大人になってからピアノ始められたんですか?」
 なんていうご質問に答えたりしていたら、いつの間にか時ならぬプチ・コード奏法講座になってしまいました。
 広いホールに聴衆は館長を入れて3名。
「ピアノって、弾きたい気持ちがあれば何歳からでも弾けるようになりますよ!」
 なんて、持論を披露しながら4〜5曲弾くうちに、ガラス張りの外はいつの間にかたそがれが忍び寄ってきます。
「あ〜、暮れてきましたねぇ…」
 昼間の爽やかな光とはまた違った紫色の空気が、いつしか私たち4人とレトロなピアノを包んでいました。

 …と、そんな2週間前のリハーサルのことを思い出しながら、車は抜けるような秋空の清和高原へと登って行ったのでした。

さて、本番は…。

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。
 アマゾンで注文していた本が届きました。コーチングの本2冊。
 いえ、急にコーチングの勉強を思い立ったわけではありません。先日、コーチングのプロの方とお会いして、その方の事務所の集客ツールやイメージ作りのお手伝いをすることになったもので。まずは私自身がコーチングとはどんなものか、少しは分かっていないと話しになりませんからね。その方に推薦していただいた本をさっそく注文した、というわけです。
 まだ、パラパラっとしか見ていませんが、面白そ。もしかすると、自分自身のセルフコーチング?(発想転換)にも使えるかも、なんて、ふと思ったりもしています。
 
−an 弾手−


第174回「清和物産館ピアノお披露目の集いでan弾手がライブトーク!?」その3 [2006.11.7]
 さてさて、いよいよライブトーク本番です!
 午後1時、開演1時間前。天文台でのリハーサルを終えて、昼の部の会場となる清和物産館・郷土料理館に到着しました。早速会場の最終チェックです。総ガラス張りの向こうに広がる木々の緑を背景にして、本日の主役・アップライトピアノ。ピアノにはアームスタンド付のマイクがセットされています。いかにも弾き語りが始まりそうなセッティングですが、実際は弾きながらお話をするためにお願いしておいたものです。その右に演台。更にその右にホワイトボード。そして両脇にスタンド付のスピーカー。これがなかなかどうして本格的で、ライブ会場らしい雰囲気を醸し出しています。

 しかし、だんだん不安になってきます。簡単な話の筋書きと演奏する曲目はA4、6枚ほどの紙に書いては来たものの、果たして1時間半の持ち時間の中にバランスよく納まるのかどうか。ピアノ演奏そのものはどうせ素人だと開き直ってしまえば何とかなるかなあ。しかし、話が中途半端で時間切れになったり、逆に時間が余って間が持たなかったらどうしよう…。

 そうこうしているうちに、ついにお客さんがやってきました!一番乗りは30代くらいの男性です。
「こんにちは。」
「こんにちは。どちらから来られたんですか?」
「水俣からバイクで来ました。」
「えっ、水俣から?バイクで?」
 水俣というのは熊本県の南の端のほうで、ここ清和までは相当遠いはず。
「思い切って来てみました。」
 と言いながらその男性がバッグから取り出したのは…
 なんと、an弾手の黄色い本、お父さんのためのピアノ教室!
 更に続いて取り出したのは…
 サインペン?
「ここにサインしてもらえませんか?」
 ひえっ!サインだって!!
「えー、サインって、慣れてないんで。ホントにここに書いていいんですか?せっかくの本を汚しちゃっていいんですかぁ?」
「はい、お願いします。」
 ということで、思わぬサインタイム。うーむ…。
 続いて続々とお客さんが入り始めました。年配のおじさん、中年のおばさん、小学生くらいのお子様連れのお母さん、グループの女性…。次第に席が埋まっていきます。と同時に私の不安も次第に高まっていきます。

 で、不安と緊張がいい加減に高まった頃、遂に開演時間となりました。
 司会者挨拶、主催者挨拶。何だか私をめちゃめちゃ持ち上げてくれてるけど、後が話しにくいなぁ。
 そして、とうとう、私の出番!
「えー、本日はピアノのお披露目ということで、おめでとうございます。」
(うーむ、硬い…)
「このピアノ、昭和37年製らしいですね。ほら、このK.KAWAIっていう表示があるピアノが現役で使われているって、珍しいんだそうですよ。」
(メーカーさんの受け売り…)
 何とか話題をピアノに振って、主役をピアノに譲る作戦…
「で、本日のキーワードを書きますね。」
 と言いながらホワイトボードに向かいます。

《気楽に、身近に楽しむピアノ》

「で、本日のテーマ!」
 またホワイトボード。

《ピアノは誰でも弾ける》

「ウソ、って思うでしょ。でもホントにピアノは誰でも弾けるんです!これからそれを証明します!」
「今日はピアノのお披露目会ですから、まずどなたかにこのピアノの弾き初めをしていただきましょう。え〜、そうですね、本日は町の助役さんがお見えのようですので是非、助役さんに弾き初めをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか?」
 突然振られた助役さん、顔の前で両手を振りながら「ダメ、ダメッ!」ていうしぐさ。
(そりゃそうでしょう、ホントに打ち合わせ無しだったので)
「まあ、そうおっしゃらずに。ほら、このホワイトボードに書いてありますよね、ピアノは誰でも弾ける、って。ということは、助役さんにも弾ける、ということです。」
 観念した助役さん、ピアノの前に座ります。
「助役さん、これまでピアノ弾かれたことありますか?」
「いやぁ…」
「はい、結構です。ピアノは誰でも弾ける、ですから。」
「はい、それではこの鍵盤を押してみてください。」
 助役さん、ドの音をポーンと鳴らします。
「では次に、この鍵盤を押してみてください。」
 レの音がポーンと響きます。続けてミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド〜♪
「は〜い、ありがとうございました!」
「これまでピアノ弾いたことが無かった助役さんも、ちゃんとピアノ弾けたじゃないですか!」
(いやぁ、ピアノの次は助役さんを主役にする作戦…ずるいかなぁ?)
「さて、ピアノ以外の楽器でこんなに簡単にドレミが弾ける楽器って、思いつかないですよね〜。」
「あ、そちらに文楽館の太夫の方がお見えですね。ちょっとよろしいですか。三味線お持ちですか?あっ、そこにありますね。ちょっとこちらに三味線持ってきていただけませんか?」
 ここ、清和物産館はお隣に文楽館があって文楽人形芝居の公演が行われています。そのステージでいつも演じている太夫さん。愛用の三味線を持ってご登場です。
(助役さんの次は太夫さんを主役にする作戦っ…)
「三味線ってどうやって弾くんですか?」
 突然の三味線実演。
「へぇー、私、三味線弾いたことないんですが、難しそうですねぇ。第一、どこを押さえたら何の音が出るか、目印もないし分からないじゃないですか。」
「それに比べて、ピアノって楽ですよね。ドの鍵盤を押さえたら、誰でもちゃんとドの音が出るんですから。」

 って訳で、散々人の力を借りてお話進行。
 なかなかan弾手のピアノが始まらない!
(何しろ、1時間半もあるので、最初からピアノ弾いてたらすぐにネタ切れしそうなので…)

 さてさて、次はコードのお話。
 ホワイトボードに簡単な五線を引いて講釈。おっと、退屈そうにしているおじさんがいる。ヤバッ。この辺のお話は簡単にしておかないと。
 で、またまた人の力借りちゃおっ!
「本日は遠路水俣からおいでいただいた方がいらっしゃいます。ちょっとピアノのところまで来ていただけますか?」
 開演前に少しお話してサインまでしてしまった男性の方。黄色い本をお持ちだったので、簡単なコード弾きはやってもらえるかな?
(この辺、全く打ち合わせ無しなのに、前に出てきていただいて助かった!)
 ってことで、突然ながらKey=Cのダイアトニックコード(手の形一緒で一つずつずらしていく弾き方)をやってもらいます。
「ほら、もうたったこれだけでたくさんの曲が弾けてしまうんですよ!」
「じつは私、これで鼻歌ピアノを弾いてるんです。」
 という訳で、やっとan弾手の演奏の出番。

 ダニー・ボーイ♪

 タラーッと、鼻歌風に弾いてみます。ここまで散々会場の人に参加していただいたのでやっと私の緊張もほぐれてきたみたいです。
 段々調子が出てきたところで、お話と演奏も次第に佳境に入っていきます。

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
やっと、日中しのぎやすくなってきました。ん?なんか変?もう11月ですよね。
だって、ついこの前まで、昼間は暑くて!
「やっと、秋めいてきました。」
って言ったら、
「秋めいて?もう立冬ですよ。」だと。
わからん、最近の季節は。
ただ、カレンダーが残り少なくなったのだけは確かなようです。
早っ……
 
−an 弾手−


第175回「清和物産館ピアノお披露目の集いでan弾手がライブトーク!?」その4 [2006.11.14]
 お客さんをダシにしながら前半を乗り切ったライブトークも、いよいよ後半に差し掛かってきました。

 先ほど弾いたダニー・ボーイを、超簡単コード奏法でだんだんピアノ曲の形にしていくステップの実演です。
@まずは右手でメロディー単音のみのダニー・ボーイ。
A続いてそのメロディーに左手でルート1本だけ加えたダニー・ボーイ。
B更に左手でルートと5度を適当にはさんだダニー・ボーイ。
C更に右手にもメロディーの下にコードの構成音を所々入れたダニー・ボーイ。
 ってところでダニー・ボーイ簡単コード奏法の出来上がりっ!
「ほら、簡単でしょ。コード奏法は大人になってからピアノを弾きたい人にはピッタリなんです。3ヶ月で1曲、人前で弾けるようになります。」

 おっ、最前列に掛けた女性3人グループの方、私の話に一つひとつうなずきながら熱心にメモを取っていただいてます!
 あ、向こうの席のかわいいお嬢さん(注:小学生位?)さっきから私のほうにニコニコしながら手を振ってくれてる!(話はほとんど聞いてないみたいだけど…)
 私もお返しにニコニコして手を振り返します!…なんか変かな(汗)

 失礼、話を戻しましょう。理屈っぽい話はこれくらいにして、この後は次第にピアノ効用実践編に入っていきます。
「素人ピアノの効用!ピアノが弾けるとどんないいことがあるでしょうね?」
 例えば、夜の街でピアノがあるお店に入った時。
「ちょっと1曲…」
 なんて言ってポロポロッと弾けたらカッコいいですよね〜。例えばこんな曲なんか…、とピアノに向います。

 ミスティー♪〜

「それから、人前でなくても、自分が弾きたい時、気分に任せて曲を奏でる楽しみってありますよね」
「私はこれを自分で勝手に鼻歌ピアノと呼んでいます。」

 浜辺の歌♪〜

 峠の我が家♪〜

「また、自分が1人で弾くだけでなく、ピアノを弾きたい、というたくさんの人達と同じ思いや体験を共有していく楽しみもありますよね。」

 夜の街のアマ、プロ、ホームページや本の読者の方との出会い、交流の楽しみ…。その実例ご紹介。

「それから、実は私の母が要介護老人でして。多少認知症も入っております。」
「その母がですね、休みの日に私が家でピアノを弾いているとニコニコしてそばにやってくるんですよ。で、母が知っていそうな昔の歌や唱歌なんかを弾くと嬉しそうに大きな声で歌うんです。難しい歌詞もしっかり覚えてます。いつもはベッドで辛そうに横になっているんですがこの時ばかりは1時間くらい平気でピアノの横に掛けてとても生き生きした表情なんですね。」
 音楽療法って私には専門的なことは分かりませんが、ボケ防止に音楽はやっぱりいいのかも知れません。
「それに、昔の唱歌って、とてもいい歌がありますよね。メロディーといい、歌詞といい、改めて聴いてみるととても味わい深いです。」
「そんな曲を少し弾いてみましょう。」

 さくら♪〜
 たなばたさま♪〜
 花かげ♪〜

「この花かげっていう曲、歌詞を読んでみると、お月さまを見上げながら、嫁いで行ったお姉さんの事を偲んでいる、とても寂しい歌なんですね〜」
 弾きながら、ピアノにセットしたスタンドマイクで曲の紹介をしていきます。

「もう一つ十五夜お月さんという曲。こちらも一人ぼっちの境遇を歌った哀切こもった歌です。」

 十五夜お月さん♪〜
 里の秋♪〜
 冬景色♪〜

「冬景色。冬の田園の朝、昼、夜の光景を歌った曲です。情景が目に浮かぶようですね〜」

冬の夜♪〜

「吹雪の夜に親子が囲炉裏を囲んで語り合っている、暖かい歌です。」

 ここまで弾いて、手元の時計で残り時間を確認します。
 あと20分。かなり押してる!一応用意していたいくつかの話題、カット!まとめのテーマへと話を進めます。

 よく「ピアノが弾けたらいいよね。弾けるようになりたいね。」って言う言葉聞きますよね。そして決まって「でも、今さら始めるのも大変だし…」
 果たしてそうでしょうか?
「弾きたい」そう思ったとき、その夢はもう半分実現しているんです。後の半分は?そう、小さな一歩を踏み出す事、そこから全てが始まります!今日、この会場に集まっていただいたのを機会に、ぜひその小さな一歩を踏み出してみてください。きっと、新しい世界が開けると思います。
 …なんて、自分の体験談を交えながら持論をご披露。

「ではここでもう少し曲を弾いてみましょう。お父さんのためのピアノ曲集の中から最初の曲と最後の曲です。」

 この広い野原いっぱい♪〜
 誰もいない海♪〜

弾き終わると、ピアノの前に掛けたまま、まとめのトークに入っていきます。

「ここ、清和高原のレストランにピアノがやってきました。そして、今日はここで皆さんとピアノの話をする事が出来ました。これを機会に、皆様もぜひピアノに親しんでみてください。」

 ここから、トークとともに循環コードを使いながらピアノを弾き始めます。ピアノの音を背景にしながら、エンディングの語りを決めよう、という構想です。ただ、これを実際に人前でやるのは初めて!うまくいくかどうか、ぶっつけ本番の試みです。

 Key=Gの循環コード♪〜パラパラ弾きながら〜
「若い人は、彼女、彼氏を口説いてみてください。年配の方はぜひボケ防止に励んでください。そして何より、自分の指先からメロディーが流れ出す喜び、感動を体験してください。
(♪〜)
哀しい時、楽しい時、疲れたとき、嬉しい時、ぜひピアノと語り合ってみてください。きっと素晴らしい人生のひとこまを実感する事が出来ると思います。
 また、親しい方と一緒にピアノのある一時を過ごしてみてください。きっと今まで以上に味わい深い時間を体験できると思います。」

 ここからKey=Cの循環コードに転調♪〜
「ここ、山都町清和高原に、こうしてたくさんの子どもたちの思い出が詰まったピアノがやってきました。これから、このピアノを囲んで、たくさんの人達が音楽を楽しめるような、素晴らしい時間がいっぱい生れる事を期待しています。
(♪〜)
 そしてまた、清和文楽と、美しい星空と、おいしい食べ物と、素晴らしい自然と、暖かい人の心にあふれたここ清和高原が、いつまでも皆様の心のふるさとであり続けることを、願っています。」
(♪〜)
「では最後に、皆様とご一緒に『ふるさと』を歌って終りにしたいと思います。いかがでしょうか。」

で、そのままKey=Fに転調して、「ふるさと」のイントロに入る構想でした。(でした。)

ところがっ!
ここで全く予想もしなかったハプニングが起きたのでした!

(続く→随時更新)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 皆様にお願いです。
 読者の皆様から、私宛によくメールを頂くのですが、ひょっとして読まずに削除しているメールがないか心配しています。と言いますのも、メールアドレスをHP上で公開している関係上、毎日大量の迷惑メールが来るのです。そこで開封せずに送信者と件名のみを見て削除するのが日課になっています。ところが最近の迷惑メールは「先日はありがとうございました」とか「ご無沙汰しております」とか「ご質問です」など、関係者を装った件名のものが増えており、このような件名のメールもほとんど削除の対象になってしまいます。
 そこでお願いです。私宛のメールには件名に必ず「an弾手」という言葉を入れて頂くと助かります。そして、メールを送られてから1週間以上も私から返信が無い場合は私が誤って削除してしまった可能性がありますので、再度確認のメールを頂けると助かります。
(頂いたメールには必ず返信するようにしていますので)
 お手数をおかけしますがよろしくお願い申し上げます。
 
−an 弾手−


第176回「清和物産館ピアノお披露目の集いでan弾手がライブトーク!?」その5 [2006.11.21]
 いよいよ一時間半のライブトークも大詰めとなりました。
 循環コードでパラパラパラとアドリブフレーズを弾きながらエンディングの語りに入ります。
(♪〜)
 「〜そしてまた、清和文楽と、美しい星空と、おいしい食べ物と、素晴らしい自然と、暖かい人の心にあふれたここ清和高原が、いつまでも皆様の心のふるさとであり続けることを、願っています。」
(♪〜)
「では最後に、皆様とご一緒に『ふるさと』を歌って終りにしたいと思います。いかがでしょうか。」

 で、そのまま「ふるさと」のイントロに入る予定でした。

 ところが、です!そこで全く予想もしなかったハプニングが!

 館長がピアノの私のところにメモの紙を持ってきたのです。そこに書いてあったのは…
 『DOYO組・矢部清子さん。ふるさとを一緒に。』
 えーっ!DOYO組!?矢部清子さん!?
 DOYO組といえば日本国際童謡館出身の女性デュオ!ステージやCDで活躍中の矢部清子さんと、そがみまこさん!見ると、後ろの席にマネージャーの方と3人、掛けてこちらを見ておられるではないですか!
 いつからあそこに?
 ってことはさっきの私のエンディングの語り、聞かれちゃったかな?恥ずかしいなぁ…。
 しかし、どうしてここに?

 館長がマイクを取って事情の説明を始めました。
 「皆様、DOYO組のお二人です。さっきまで矢部(清和の隣の地区)のイベントに出演されて、これから次の会場に向われる途中、この清和物産館にお立ち寄りいただきました。せっかくですから皆さんとご一緒に『ふるさと』を歌ってくださいとお願いいたしましたところ、快く引き受けていただきました。では、前の方にどうぞ!」

 えーっ!一緒に歌ってくれるの!
 私も立ち上がって二人をお迎えします。
 「こんにちは!どうもありがとうございます!」
 綺麗なお二人が前に立たれると、あたりがパァッと明るく華やぎます。会場の皆さんも、きっと目が覚めたことでしょう。

 矢部清子さんが私に小声を掛けてこられました。
 「エーですか?」
 「えっ、エー?A?」
 とっさに答えます。
 「いえ、Fでしか練習してきてませんので…」
 「そうですか、少し音程が高いですね。それと途中で間奏は入りますか?」
 「いえ、3番まで続けていきます。」
 「わかりました。では歌が入るところで合図してくださいね。」
 「はい、イントロを弾きますので。」

 (ふっ、いま確かにAですか、って聞かれたよなぁ。なんか解せないなぁ…。私が持っている楽譜のKey=Gを1音下げてFにして練習してきたんだけど…。Aって言ったらGより高いし、会場の素人さんは絶対声出ないよなぁ…しかし、今Fって言ったらそれでも高いって言われたし…)
 しかし、そんな疑問を考えてるより、とりあえずこの場面はFで間違えないように弾くしかないっか!

 練習してきたイントロを弾き始めます。
 おー、ちゃんと入ってくれた♪(まあ、当たり前だけど)
 わー、突然、プロ歌手の伴奏やってる!リハも無しにぶっつけ本番だぁ!
 お二人の綺麗な声に合わせて会場のお客さんも歌ってくれています。うん、なかなかいい雰囲気だ!私はとにかく伴奏間違えないように!

 無事3番まで終り、エンディングも無事終りっ!
 「それではDOYO組のお二人はこのまま次の会場に向われますので。」
 館長のマイクに合わせ、一斉に拍手でお二人を会場から見送ります。

 なんだか夢のような一瞬でした。カラフルな旋風がサァーっと吹き抜けていったような。
 私もいい経験をさせていただきました。お客さんの前でDOYO組の伴奏をするなんて、もう2度とないでしょうからね。

 さて、我に返って、改めて会場からの質問タイム。たくさんの熱心なご質問、ありがとうございました!

 ふっ、終わってみればさすがに疲れた。
 しか〜し、そんなこと言ってられないのだぁ。この後すぐに天文台に移動して、もう一回、夜の部が待っているのだ!

(PS:矢部清子さんの「エーですか?」っていうご質問、あとで考えたらひょっとしてクラシックの表現でEをエーと言われたのかな?…だったら納得。)

(続く→随時更新)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 熊本県庁の銀杏並木が、やっと黄色くなってきました。
 つい2週間程前に寄った時はまだほとんど緑色だったのに。今日はすっかり黄色いトンネルと絨毯。
 …でも、例年とやっぱりちょっと違う。いまいち迫力が無いんですよね。思い切りがない。吹っ切れてない。どうせ黄色くなるんなら、もっときっぱりと黄色くなってほしいなぁ。
 なぁ〜んて、偉そうな事言ってますが。なかなか思い切りになれない自分を見ているような気がしないでもないか。
 スパッと目の覚めるような黄色いトンネル目指して、ほら、あと一息!
 
−an 弾手−


第177回「清和物産館ピアノお披露目の集いでan弾手がライブトーク!?」その6 [2006.11.28]
 さて、清和でのピアノお披露目会ライブトークレポート、物産館の巻がやっと終わってこれから夜の部・清和高原天文台でのライブトークに移るところですが、ここでちょっと気分を変えて当日のご参加者からのメールをご紹介しましょう。
 実は、その3(バックナンバー174回)の中に登場されている水俣からバイクで来ていただいた男性の方です。ライブトークの翌日、早速メールを頂きました!
ご本人のご了解を頂いて、一部をご紹介させて頂きます。

前略

 昨日は、清和にて、とても楽しい思いをさせていただき有難うございました。
 帰り道は八代の花火大会の大渋滞に巻き込まれて大変でしたけど思い切って行って、ほんとに良かったです。

 an弾手様の本に出合えて嬉しかったのですが、今回お話もご演奏も拝聴することが出来て、私のこれからのピアノ人生が大きく変わりそうです。
 素晴らしいご企画をなさった大塚館長にも感謝の気持ちでいっぱいです。

 元々、自分で弾いて楽しければいいなと思いピアノを習い始めたわけですが、いつの間にか、教本通りに弾くことに一生懸命になっておりました。
 今回のライブトークに参加させていただきまして、力みなく、楽しく弾けることが一番だなぁと実感し、昨日から気持ちを入れ替えてピアノに向かっております。
 ライブでは横に行って 弾き方を見たい衝動にかられて、ひたすら我慢しておりました(笑)

 ダニー・ボーイがさらっと弾けるようになれるよう、楽しみながら頑張りますので、またご機会あれば、ぜひともご指導下さいませ。
 an弾手様がアレンジされてお弾きになった、ダニー・ボーイの楽譜等あればぜひご紹介いただけると励みになります。
 まずはお礼まで。       
草々
水俣市 くまぱぱ

→an弾手より(返信)
くまぱぱさん

 土曜日のライブトークには遠いところをはるばるやって来ていただいて本当にありがとうございました。
 びっくりし、かつ、とてもうれしかったです。
 つたない話と演奏で、失礼があったのではないかと心配しています。
 また、突然出番をお願いしたのに協力していただいてありがとうございました。
 熊本市内から来られた別の方たちも熱心にメモを取られたり質問したりしていただいて
うれしかったです。

 最初から、皆さんには私の演奏をただ聴いていただくのではなくてこんなピアノの楽しみ方もあるということを少しでも感じていただければ、と思っていましたので、自分もやってみようかな、と少しでも思っていただいた方がいらっしゃったらうれしいなあと思います。

 ダニー・ボーイの楽譜ですねぇ。
 基本的には「お父さんのためのピアノ教室」に載せているリードシートしかないんですけどね。演奏例の二段譜はまだ書いていません。
 そう言えば先日も本の読者の方からダニー・ボーイの演奏例楽譜を書いてくれというメールをいただきました。
 その方には「そのうちに書けたら。」とお返事したままになってました。

 そのうちに、ですね(笑)
 でもあの時弾いたとおりの楽譜は書くのが結構むずかしそうです。そのまま書くと、見た目は超難しそうに見えるかもしれませんね。本当はあまり難しくないんですけど。雰囲気、みたいなところはなかなか楽譜に書きにくいですよね。

 また、何かご質問、ご意見などありましたらいつでもメールしてください。お待ちしています。

an弾手

→再度、くまぱぱさんより
an弾手さま

 こんばんは。 水俣のくまぱぱです。
 さっそくのご返事に心躍る思いです。お忙しい中誠にありがとうございます!

 今日もお昼休みから、「お父さんのためのピアノ教室」を読み返しておりました。先日お話頂いた内容も書かれておられ、改めて楽しく読まさせて頂いております。読むだけで、弾く方はまだまだ追いつかないんですけどね...
 トークショーでお話頂いた内容を思い出しながら読むと、今まで理解できなかった部分も理解できて、一人嬉しくなっております。
 そういう意味でも、先日は参加させて頂きほんとに良かったと思います。

 an弾手さまのおっしゃる通り、気がむいたときに心地よく楽しく弾ければと思いピアノを始めたわけで、発表会をするわけでもプロになるわけでもないですしね(笑) 自分がピアノ始めた理由を再確認できてほんとうにお伺いして良かったです。 基礎はしっかり勉強したいと思いますが、目指すところは鼻歌ピアノです。
 その基礎がなかなか出来ずにピアノの先生にもあきれられていますけど(笑)

 昨日、ダニー・ボーイのアレンジした楽譜があればとお願いしましたけど、「富士山」と同じ展開ですよね。
 いつか自分でアレンジして弾けるよう、これからも楽しみながら練習して行きたいと思います。
今後ともよろしくご指導の程お願い致します。

水俣市 くまぱぱ 

いやぁ、ほんとにうれしいです。

「元々、自分で弾いて楽しければいいなと思いピアノを習い始めたわけですが、いつの間にか、教本通りに弾くことに一生懸命になっておりました。」
「自分がピアノを始めた理由を再確認できました。」

 という言葉に、くまぱぱさんの気持ちが集約されているように思います。
 確かに、基礎をきちんとやる事は大切ですが、大人になって楽しみで始めたピアノですもの、それと自分がどう付き合っていくのか、というのを時々思い返してみるのも必要ですよね。練習のためのピアノではなく、自分の生活の中で付き合うピアノ。
 私にとっては、コード奏法と出合って、それまでの「楽譜に弾かされている」から「自分の意思で(感情で)鍵盤を弾いている」という感覚への変化が決定的に大きなものでした。そんな気持ちをたくさんの人と共有できたら、と、いつも思っています。

 くまぱぱさん、来ていただいて本当にありがとうございました!
 これからもご一緒にピアノ楽しんでいきましょう!

 さて、コラムの次回は満天の星に抱かれた清和高原天文台でのライブトークへと話が移ります。
 引き続きお読みいただけるとうれしいです!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。
 熊本県庁の銀杏並木が、やっと黄色くなってきました。
 つい2週間程前に寄った時はまだほとんど緑色だったのに。今日はすっかり黄色いトンネルと絨毯。
 …でも、例年とやっぱりちょっと違う。いまいち迫力が無いんですよね。思い切りがない。吹っ切れてない。どうせ黄色くなるんなら、もっときっぱりと黄色くなってほしいなぁ。
 なぁ〜んて、偉そうな事言ってますが。なかなか思い切りになれない自分を見ているような気がしないでもないか。
 スパッと目の覚めるような黄色いトンネル目指して、ほら、あと一息!
 
−an 弾手−


第178回「清和物産館ピアノお披露目の集いでan弾手がライブトーク!?」その7(天文台の巻) [2006.12.5]
 さて、物産館でのライブトークが終わってホッとする間もなく、引き続き夜の部、清和高原天文台でのライブトークが控えています。当初の予定では物産館が16時に終わって天文台は18時開始になっていたのですが、都合で17時に変更になったのです。つまり、次の開演まで1時間しかない。開演30分前から受付をするとなると、お客さんが入ってくるまでに30分しか余裕がありません。物産館でのお客さんのお見送りもそこそこに、館長が運転する車に飛び乗り山の上の天文台へ向います。

 天文台の会場は望遠鏡ドームへの上り口にあるちょっとしたホール。先ほどの物産館(郷土料理館)に比べたらずっとこじんまりしたスペースで、一方の壁面に置かれたピアノを囲むように椅子を並べると、もう30脚ほどでいっぱいです。会場が狭いのでここでは演台を使わず、私もテーブルに着いてお客さんと近くで向き合いながら話をする事にします。

 やがてお客さんが入り始めました。こちらはライブトークの後に食事付ということもあり、ほとんどがロッジに宿泊予約のお客さん。グループや家族連れの方たちが次々に椅子を埋めていきます。

 さて、いよいよ夜の部の始まり始まり!簡単な挨拶の後は椅子に掛けて、お客さんと同じ目線でのトーク。話と演奏の大筋は昼の部とほぼ同じですが、会場もお客さんも全く違うので、同じ話をしても自分で何だか新鮮な感じです。すぐ目の前で話しにうなずいてくれたり、私が弾いているすぐ後ろでファミリーのお父さんと小さなお子さんが聴いていてくれたり、とてもアットホームな雰囲気で進行していきます。ただ、こんなに近くで見てられたら、私のいい加減な指使いなんか、みんなバレバレだなぁ。

 1時間半の予定もあっという間に過ぎ、最後の故郷の合唱も、今度は思わぬ飛び入りも無く(笑)終了。
 そして最後の質問タイム。
 「何かご質問はありませんか?」
 すると、熱心に聴いてくれていた1人の女性が手を挙げられました。
 「さっきのダニー・ボーイ、もう一度聴かせていただけませんか?」
 えっ… これってもしかしてアンコール!?
 もちろん結構ですよ!何度でも!
 って訳で、再びピアノに向って、ダニー・ボーイ♪
 …気が付くと、もう外はすっかり暮れていました。

 ライブトークの後は皆んなで隣のレストランへ移動。食事タイムとなりました。
 ホッ、やっとこれで長かった今日のスケジュールもお役御免か、と思いきや、そうではなかった!
 食事の途中、今回物産館と天文台にやって来たピアノが以前使われていた小学校の音楽の先生が駆けつけてくれたのです。ぜひ、ここでの演奏を聴きたいと。
 という訳で、食事の後もう一度ピアノを弾く事になりました。
 ピアノの所に移動します。と、先ほど参加されていたお客さんのグループが数名、一緒にホールの方に来られるではないですか。
 「また弾くんですか?聴かせてもらっていいですか?」
 「ええ、どうぞ!」
 またまた、食後のミニライブ♪
 「何を弾きましょう?」
 「ダニーボーイ、ミスティー、オーバー・ザ・レインボウ…♪」(館長さんのリクエスト!)
 おいしい食事も済ませ、夜もふけて、高原の天文台のホールに7〜8人。こんな所でピアノを弾かせていただいて最高の気分です。
 「an弾手さんのCDはないんですか?ここのレストランで流せばいいのに」
 って、お客さんのご質問!まあ、最高の社交辞令(?)ありがとうございます!
 「こんなイベント、あちこちでされているんですか?実はうちの施設にピアノがあるんですけど、今度うちでもやってもらえませんか?」
 うーん。ありがたいお話ですが…。今のところそのような予定は…。
 皆様の嬉しいお言葉、ありがとうございました!

 さて、ピアノの後は望遠鏡のある屋上へ。そうです、ここは天文台なんです!
 この天文台のドームは完全にオープン出来るので望遠鏡の回りには360度の夜空が広がっています。人工の灯りがほとんど無い、ここ清和高原天文台周辺。真っ暗い空に降り注ぐ星!暗闇に目が慣れてくるにつれ星の数はどんどん増えて、全天をびっしり埋めていきます。係りの人が赤いレーザービームを夜空に向けて星の説明をしてくれます。
 「ほら、ここからここに繋がっているのがカシオペアです。」
 「こちらに見えるのがスバルです。」
 あっ、あの白い帯は、もしかして天の川?
 「そうです、天の川です。これが彦星、こちらが織姫星。」
 へぇ〜、そうなんだ。こんな季節でも天の川ってちゃんと見えるんだ!
 「いま望遠鏡をアンドロメダ星雲に合わせていますよ。」
 台に上って接眼鏡を覗くと、白い渦巻きのような塊が浮かんでいました。

 何億光年という、時空を超えた世界。
 吸い込まれるような星空に包まれて、清和高原の夜はふけていきました。

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。
 高校の同窓会の案内が来ました。
 毎年年末に開かれている、学年の恒例行事ですが、もうそんな季節なんですね。びっくりです。更に更に、びっくりすることには、来年はなんと卒業40周年だそうな!(歳がバレル ^^;)
 同窓会に行くと、最初半分位は見覚えの無い顔なんですよね。(60名ほど集まるし、卒業以来始めて来た、なんていう奴もいるし)でも、しばらく過ごすうちに段々当時の面影がよみがえってくるものですよね。(最後まで誰だったかどうしても思い出せない顔もいるにはいるけど)
 さて、今年はどんな面影に出会えるか。楽しみにしときましょう。
 
−an 弾手−


第179回「読者の方の人前ピアノレポート!ご紹介がすっかり遅くなりました!」 [2006.12.13]
 日頃、読者の方から頂くメール。ご質問だったり、ご挨拶だったり、近況のご報告だったり、うれしく拝見させていただいています。ありがとうございます!だいぶ以前にもここに書いたことがありますが、1人パソコンに向ってコラムを書き続けていると、暗い宇宙に向って話をしているようで時々不安になるものです。そんな時、読者の方から頂くメールにはほんとに勇気付けられます。
 そんな中でも、私が日頃お勧めしている「人前ピアノ」の実践のご報告メールを頂くと、仲間が増えたような気がしてうれしくなってしまいます。そして、ぜひ他の読者の方にもご紹介したいなぁ、と思ってしまうのです。

 今回ご紹介させていただく「タムナスさん」はもうずいぶん以前からこのコラムの読者としてメールの交換をさせて頂いている方ですが、初めて「人前ピアノ初体験」のメールを頂きました。ところが、その後私のコラムのテーマの都合で、ご紹介が延び延びになっていました。タムナスさんには随分お待たせしてしまいました。
 ホントにごめんなさい!

an弾手さま

 随分とご無沙汰しております。タムナスです。人前ピアノを初体験しましたので、久しぶりにメールしたくなりました。

 昨年7月から、大手楽器メーカーRの音楽教室に通い始めました。そのメーカー独自のポピュラーピアノのテキスト(コード奏法)で教えてもらっているのですが、私の学びたいこととぴったりで、楽しくレッスンを続けています。その教室の「大人の発表会」に出ました。
 ボーカル、オルガン等の発表もあり、ピアノも、クラッシックやポピュラーなど様々。ログハウス風のレストランでの発表会で和やかな雰囲気でした。
 私の先生が教えている生徒さんは、皆バンドと合わせるというので、私も勧められ、ピアノトリオでの演奏を体験しました。弾くだけで精一杯なので、ドラムとベースの人が私に合わせてくださるのですが。(笑)
 とにかく止まったり弾き直したりできないというのが一番のプレッシャーでした。練習時もミスると、次が入れなくて・・・・というのが一番の恐怖!そこで、本番は・・・・案の定というか、胸はバクバク、手はふるえてミスったとたん次が・・・・入れない!どうしようとドラムの人を見ると同じリズムを刻みながら「どこからでも入って!」と言っているような目線?思い切って何小節かの空白の後弾き始めたら、ちゃんと合わせてくださいました。

 ・・・とまあ、何ともお恥ずかしい初体験でしたが、いい経験をさせてもらいました。こんな超初心者の私が、ドラムやベースとだなんてと、始めは尻ごみをしていましたが、思い切ってやらせてもらってよかったです。
 一緒のテーブルの自分の娘くらいの若い人たちとピアノの話ができたのは楽しかったですし、皆さんの素敵な演奏を聴いて、ますますピアノを続けたいなと思いました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 一気に書いてしまいました。
 読んでくださってありがとうございます。
 次の本、楽しみに待っています。どうぞお体に気をつけて頑張ってくださいね。


 タムナスさん、ありがとうございました。
 ホントにご紹介が遅くなってしまってごめんなさいね!
 〜次の本、って、8月に出たお父さんのためのピアノ曲集のことですもの、ね(汗)〜

 人前初体験がピアノトリオですか!素晴らしい!
 止まれない、弾きなおせない、というのはプレッシャーですが、とにかくドラムに合わせて一気に弾いてしまうという体験は、1人で自分の世界で弾いているのとは別次元の感覚で、リアルタイムに上達するような気がします。悩んだり考えたりしている暇がないですからね。もう、この発表会から随分時間が経っていますので、その後タムナスさんもたくさんの体験をされたかもしれませんね。

 また、ステキな体験談、聞かせてください!
 ありがとうございました!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。
 今年もいよいよあと半月程になってしまいました。
 このところ仕事がさばけなくて、いっぱい抱え込んだまま。ちょっとパニクッてます。そんな中、2日間のお泊り出張が入ってしまいました!あーまた仕事が遅れる…なんて、わがまま言っちゃバチが当たりますね。これもありがたいお仕事!
 さ、気を取り直して、仕事を楽しもう、っと!
 
−an 弾手−


第180回「どうせ誰も聴いていないでしょ」 [2006.12.18]
 12月というのに、このところ夜の街もややご無沙汰気味。何だか余裕が無くて…。いけませんね。反省。
 という訳で、たまたま入った店でポロポロッとピアノを弾いて、という楽しみもしばらくご無沙汰気味なんですよね〜。
 その代わりというか、最近は頼まれて弾く機会が増えたような気がしてます。今回はそんなエピソードのいくつかを。

●マスターの「やっと入籍」を祝う会で…
 私がいつもお世話になっているライブの店のマスターとママから、突然一通の案内状が。な、なんと、入籍祝賀会のご案内。
「えっ、入籍って。もうずっとご夫婦じゃなかったの?」
 まあ、それとなく感じてはおりましたが。まあ、何と言うか、かんと言うか、今まではマスターがママのマンションに任意でご滞在なさっていた、という事らしい。それも何と10年近くも。
 なーんて、こんなお二人のプライバシーを私が勝手にサイトで公開してもいいのかな。でも、この度はホテルで大々的に「お待たせしました!やっと入籍を祝う会」をなさるので、まあ、公表された情報ということでいいのではないかと…。
 私ももちろん、直ぐに出席の返事を出しておりました。

 で、その当日。開宴の1時間ほど前になり、もうそろそろ出掛けなくちゃ、と身支度をしていると携帯が鳴りました。当のマスターからです。
「何時に来るの?」
「一応、間に合うようには行くつもりですけど。」
「ちょっと早く来れない?」
「早く、って、もうあと1時間ですよね。」
「お客さんの入場の時にピアノ弾いてほしいんだけど。」
「えっ…」
「15分前からお客さんに入場してもらうから、その間ずっとピアノ弾いといてもらいたいんよ。30分くらい前に来て司会者と打ち合わせしといて。」
 30分前って、今から急いで行っても30分前だぁ!
「何を弾けばいいんですか?」
「なんかあるでしょ。」
「コード進行でなんか音出しとけばいいですかね。」
「だめだよ。ちゃんと曲弾かなくちゃ!」
「はぁ…。ま、とにかく今から急いで行きますから。」
 という訳で、ホテルに着いたのが何とか30分前。
 早速会場を覗いてみます。司会者席でマイクのテストをしている司会者。よく店で見かける女性のお客さん。
「マスターからさっき携帯でピアノ弾いてくれって言われたんですよぉ。30分前ですよ!」
「はいはい、みんな30分前。私もです。」
 えっ、司会者も30分前に頼まれたの!?
 さすがマスター。いつも飄々と出たとこ勝負をサラッとこなすマスターの面目躍如?しかし、こっちにその出たとこ勝負を振られてもなぁ。

 さっそくピアノの前に座ります。音を出してみたら、なかなか弾きやすいピアノです。
さて、何を弾くか。
 少し前に、清和物産館と天文台でのライブトークを終わったばかりだったので、まあ、その時弾いた曲を使えば何とかなるかぁ。
 途中で何を弾くか迷わないように、曲目だけでもメモっておこう。受付でもらった紙に弾けそうな曲を書いてみます。

 やがてお客さんが入り始めました。コード進行をしばらく回してからダニーボーイ♪
 続いて、浜辺の歌、峠の我が家。1曲終わるたびにしばらくコード進行を回して時間稼ぎ!続いてミスティー。(なんだかまとまり無いけど…。)そのあと唱歌を数曲。それからオーバー・ザ・レインボー。(清和で弾いたパターンを使い回しだ!)
 あっという間の15分。最後に司会者が私と私の本をチラッと紹介してくれて、お役御免となりました。

 その後は…。なにしろ日頃ライブの店に集う人や音楽関係者ばっかり200名以上の祝賀会。大体想像は付きますよね。バリバリのプロやセミプロミュージシャンが次々に登場して延々迫力のライブ大会状態!すっかり堪能させていただきました。こんな本番が始まってからじゃ私なんか到底出番無いので、その前にチラッと私の出番を作ってくれたマスターの思いやり?いつも辛口の皮肉で私のピアノをけなしてばかりのマスターですが(未だにお世辞でもほめられた事が一度も無い!)、こんな私にも30分前の電話でちゃんと出番(前座)を用意してくれるところなんか、なかなかニクイ?
 そう言えば電話掛けてきた時の決めセリフがこれでした。

「どうせ開宴前は誰も聴いてないでしょ。」

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。
 今日のお昼は、会社から歩いて3分の小さな日本料理店に行きました。テーブル席が3つ、座敷に2テーブルのこじんまりしたお店です。
 上品な料理がとても美味しくて、時々ここに来ます。今日は刺身とひれかつがセットになった和洋膳(1,000円)を注文。小奇麗な店内には日本の唱歌や抒情歌のオーケストラバージョンがゆったりと流れていてのんびりしたお昼を過ごせるんです。
 気が付いたらあっという間の1時間。レジを済ませて引き戸を開けると、玄関横の小さな植え込みに穏やかな冬の陽があふれていました。
 
−an 弾手−

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