第511回「50年の時を越えて」 [2014.9.2]
よくご自身のピアノ体験の話題などを送って下さる県外の女性の方から、先日もメッセージがありました。
『先日、夏の同窓ライブ終了。全部で6曲と、一週間前に2曲追加のなんとも慌ただしい選曲。最後の曲、天国の階段の出だしで、なぜか?が動かず、皆さんにご迷惑をおかけしました。しかしおばさんの強み、1日の落ち込みで済みました。要は練習不足と、今までの練習内容ではいけないと反省しているところへ、年末リベンジ大会の連絡が。またまた頭を抱えております』
人前演奏、楽しまれているようですね。次の忘年会に向けて、また頑張ってくださいね!

ところで、同窓会での演奏といえば。実は私ももうすぐ(9月20日)中学の同窓会でピアノ演奏するかも?です。毎年新年に居酒屋でちょっとした同窓会はしているのですが、今年は何と卒業50周年!(歳がバレバレ・笑)ということで、日頃音信のない人にも声を掛け、ホテルの宴会場で大々的にやろう、という事になったのでした。
その準備会のメンバーの中に私がちょっとピアノをいじっている事を知っている人がいて「おまえ、何か弾けよ」と言われていて。
まだ当日のプログラムや進行もはっきり決まっていないし、どんな段取りになるのか未定ですが、余興にバンド演奏が入るらしいので私の地味なピアノは開宴前のウェルカムピアノあたりがいいかなと、勝手に思っています。これから準備会のメンバーと相談です。
ウェルカムピアノといえば30分・10曲位でしょうか。まぁ、似たようなことはこれまで何回もやっているし、同窓会なので同世代の懐かしそうな曲をこれから選曲してみようかと思っています。

で、今回のコラムの本題はここからです。その同窓会に、なんと当時の音楽の先生も参加されるらしい。もしお会いできれば私にとって感動の再会になりそうです。
何故かというと……。
その先生こそ、当時は何も思っていなかったのに今になって考えると私が大人になってピアノを始める伏線を敷いて下さった方なのです。といっても当時その先生にピアノを習ったとか特別な指導をしてもらったとかいうことは全くありません。単に普通に音楽の授業を受けていただけ。
じゃ、なぜこんな大げさな言い方をするのかというと。その答えは拙著「大人のピアノ入門」(講談社+α文庫)の中にあります。
同書の本文書き出しにいきなりその話が出てきますので、ちょっと引用してみます。

『私が初めてピアノに触ったのは、今からさかのぼること50数年前、中学1年生の音楽の授業でのことでした。先生が「ドレミファソラシド」の指使いを説明した後、「誰か、やってみてください」とおっしゃいました。すると、利発そうな女の子が立ってピアノの前に座るや、パラパラッと弾いたんです。どうも、小さい頃からやっているらしくて「何よ、こんなもの」という感じ。それを見て私は、「あのくらいなら自分にもできそうかなぁ」と、大胆にも手を挙げてしまいました。それまで鍵盤に触ったこともなかったのに!です。
で、ピアノの前に座っておもむろに鍵盤を押さえたところ……「重い!」「音が出ない!」「指がフニャフニャだ!」というわけで、大変なショックを受けてしまいました。
その時の恥をかいた経験は、大人になるまでずっと私の中でくすぶり続けていて、いつしか「カッコよくピアノを弾いてみたい!」という願望に変わっていったようです』

そうなんです、そんなトラウマが、大人になった私をピアノに向かわせたのかもです。
だったら、その先生、現在の私のピアノライフのきっかけを作って下さった恩人じゃないですか。
実はその先生、当時大学を出られて間もない美人の先生で、男子生徒の間では密かに人気の先生だったりしたとか?しないとか?
えっと、記憶は定かではありません(ウソ)。

卒業以来50年の時を越えての再会、そしてその先生の前での演奏、楽しみにしております。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 あっという間の9月。全く、梅雨のような8月でした。災害に遭われた各地の皆さまには心よりお見舞い申し上げます。
自分のライブの選曲のテーマのひとつに、四季折々の情景を描いた日本の抒情歌、というのがあるのですが、そんな日本の四季の風情、これからどうなってしまうのだろうと心配にさえなってきます。
暑かった夏の終わり、ふっと頬を撫でる風に思わず秋の気配を感じて見上げる空。どこからか聞こえてくる虫の声。そんな日常の機微を忘れずにいたいなぁ、と思います。

 
−an 弾手−


第512「ピアノとともに引き継がれる想い。新しく始まるドラマ」

[2014.9.9]
 こじんまりとしたそのライブハウス。夜8時過ぎからお客さんが増えはじめ、やがてギシギシの満員。私はテーブル席の奥に詰めて座っていたので、カウンターに並んだ食べ放題のバイキング料理のお代わりを取りに行こうにも席を立ちづらく(笑)、例によってオールフリーのグラスをチョビチョビと。

やがてバンドの演奏が始まりました。バンドといっても、メンバーはこの店のマスターが弾くギター以外は全て今日のお客さん。MC&ヴォーカルの女性も、さっきまで客席のテーブルで一緒に来たグループと飲んでいた人だ。

その日は、熊本市内のあるライブの店の「さよならパーティー」でした。オープンから13年、熊本の夜の街の音楽シーンを支えてきたお店の灯が、一つ消えました。
13年前といえば、私がコード奏法に出会い、ハマリだしてから数年たった頃。新しい世界に目覚めて夜の街のライブの店などを徘徊し始めた頃でしたね〜。当然、このお店の名前も聞いていて、たまに覗いてみたこともありました。足繁く通うという程ではなかったのですが、よく、知り合いのミュージシャンやヴォーカルレッスン生の人などから「この店で演奏するから」、という案内を頂いては聴きに行きました。そんな時はいつも満員で、しばらく会っていない知り合いの人とたまたま一緒になったりしながら盛り上がってました。
また数年前、知人の結婚披露宴で友人数名と演奏することになった時は、この店のライブ予定がない日にここでリハーサルをさせてもらったこともありました。
いずれも、その時の雰囲気や知り合いの人の顔が浮かんできて、とても懐かしい思い出です。

こちらのマスター、今後はこれまでこの店でやっていたギター教室を自宅で続けながら、ミュージシャンとして外でのライブ活動に専念するとか。いいですね。また色んなところで、マスターの演奏が聴けるのが楽しみです。

で、マスターと話をしていたら、意外な事実が判明!
この店のすぐ向かい側のビルに、この秋、新しくシャンソンのライブの店がオープンするらしい。しかも、オーナーは、何と私も昔からよく知っている高校の同級生の女性。若い頃は東京で放送作家として活躍していた人で、聞くと「ああ、あの番組!」とすぐ分かるような全国ネット番組の台本や、舞台・映画のシナリオなどを手掛けたりしていました。
私が熊本にUターンして企画会社を始めたのと前後して彼女も熊本に帰り、それ以来、彼女には我が社の貴重な協力スタッフとして取材や原稿執筆を手伝ってもらっていました。
さらに彼女は、ライター業と並行してシャンソン歌手としても活躍。最近は色々なところで歌手としての彼女の名前を見る機会も増えました。そして、歌手として外で歌うのに飽きたらず(?)、今度は自分でライブの店を開くらしい。すごいエネルギーですね。

さらにマスターがひと言。
「うちのこのピアノ、彼女の新しい店にタダでやることにしたよ。彼女の店で使ってもらえたらと思ってね。そこでまた、自分もライブとかやろうかと」
いい話ですね。マスターの音楽にかける想いと一緒に、このピアノも新しい店に引き継がれ、また新しいドラマを刻んでいくことになるんですね。

私も、新しい楽しみが出来ました。オープンが楽しみです。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 昨日、9月8日(旧暦の8月15日)は、いわゆる中秋の名月といわれる十五夜でしたね。ここ熊本はいいお天気で、自宅の窓からも大きな月を見る事が出来ました。このところ、ずっと雨空が続いていたので、やっと秋らしい空気を感じられたかな。ただ、よく十五夜の絵に出てくるようなススキが揺れる秋の雰囲気にはまだちょっと遠いような気もします。
さて、今宵は十六夜(いざよい)。「ためらう」「躊躇する」という意味の「いざよう」から来た言葉らしいです。
秋の夜はちょっと「いざよう」ような風情もいいかも。…って、何が言いたいのか(笑)
 
−an 弾手−


第513回「油断してた!文化人が集まる交流会で突然の…」 [2014.9.16]
 「これをもちまして総会を終了いたします。この後は3時から隣の会場で交流会を開催しますのでご移動をお願いします」
司会者がそう告げます。その日はNPO法人・くまもと文化振興会の総会でした。何故か私が総会の議長に選出されて、一応大過なく(?)お役目終了。ほっとしたところに世話役の人が近づいてきました。
「交流会でピアノ弾いてもらえますか?」
「えっ?そんな話聞いてませんけどぉ……」
「交流会で出し物がないと寂しいでしょ。何か適当にお願いしますよ」
(あちゃ〜、そんな事なら予め話聞いていればちょっとは準備して来たのに〜)

油断してました。これまでこの会では何度かピアノ演奏させてもらったことがありましたが、いつも数週間位前には打診の電話があり、それなりの準備と心づもりをして臨んでいたのですが。今回は何の話もなかったので、まさか当日に会場で突然とは思ってもいませんでした。
慌てて隣の会場を覗いてみました。正面ステージの左側にドーンとグランドピアノが鎮座しています。ホテルの会場係りの人に声を掛けます。
「すみません、急にピアノ弾くことになったみたいなので、ちょっと音出ししてみていいですか?で、生では音が弱そうだったら、ピアノマイク入れてもらっていいですか?」
会場係の人が、すぐにアーム付きのマイクを用意してくれました。とりあえずピアノの前に座って音を出してみます。まだ会場に誰もいないので生でも結構響きそうですが、これに人が入ると響きが全然変わってしまうんですよね。
会場係の人が
「本番では私が聴きながらマイクのボリューム調整しますから」
と言って下さいました。
「よろしくお願いします」

さて、次は何を弾くか、決めないと。
手帳の表紙裏に挟んでいる何枚かのメモ用紙を出してみます。ありました!何かの時の為に、とっさに自分が弾けそうな候補曲をリストアップしたメモ。最近見てなかったので今でも手帳に入っているかちょっと不安でしたが、あってよかった。
7月末にライブで20曲弾いたばかり、と言えば、その中から何曲か弾けば?とお思いの方もいらっしゃるかもですが、これがどうして、ちゃんと曲名を書き出しておかないと、宙では『えっと、弾ける曲何があったっけ?』となってしまうのです。
メモ用紙を見ながらとりあえず問題なく弾けそうな曲に丸印を付けてみます。ここでは、『とりあえず問題なく弾ける』というのが重要です。何しろ全く準備も確認も試し弾きもなく(もちろん楽譜もコード進行表もなく)、いきなりお客さんの前で本番演奏なので、最後まで問題なく止まらず間違いなく弾きと通せるか、というのが最優先です。
ダニーボーイ・シークレットラブ・ムーンリバー・五番街のマリーへ・オーバーザレインボー・竹田の子守唄・赤とんぼ、に丸を付けてみました。
ま、これ位あれば何とかカッコ付くかな?

交流会が始まりました。会長挨拶、来賓紹介、乾杯、と進んで会場はざわざわと歓談が広がっています。私も同じテーブルの人と話をしながら料理をつまんではみるものの、やっぱり自分の演奏の事が気になって落ち着きません。乾杯からちょっとひと呼吸を置いて、司会者の所に行きました。
「そろそろ、私のピアノ弾いてもいいですか?どうも落ち着かなくて」

司会者に軽く紹介をしてもらって、ピアノの前に座ります。
まずはKey=Cのタラタラコード進行アドリブをしばらく回すところから始めます。そしてダニーボーイ。この曲はすっかり手に馴染んでいるので、最初にこれを弾くと指慣らし(初めて触れるピアノの鍵盤タッチに慣れる意味も)と自分の気持ちを落ち着かせる効果があります。
続いて、適当にコード進行アドリブを挟みながら、シークレットラブ、ムーンリバー、五番街のマリーへ。もうちょっと弾いてもいいかな、とも思ったんですが、このあたりで終了。曲間のコード進行アドリブも入れると、14〜15分位は弾いていたでしょうか。
1曲毎に温かい拍手を下さった会場の皆さま、ありがとうございました。

ああ、それにしても、いつ、なん時、どこでピアノ演奏をすることになっても、焦らずにスッと弾けるよう、日頃の仕込みの大切さを改めて思い知らされたその日の交流会でした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 いつも車で通る通勤路。車道と歩道の境にケヤキ並木とサツキの植え込みが続いています。まだまだ暑い日差しの中で緑の列が続いているとばかり思っていたのですが。
人から言われてそのつもりで見てみたら、そのサツキの中から真っ赤な彼岸花が何本も顔を覗かせていました。こんなに咲いているのに、言われるまで気が付かなかった!
そう言えば来週はもう秋分の日なんですね。このコラムの更新も23日(火)はお休みで24日(水)になりそうです。
 
−an 弾手−


第514回「夢にも思わなかったこと。それが現実に起こっていた」 [2014.9.24]
 「あらぁ、開会前のウェルカムピアノじゃ、私聴けないわ」
中学の同窓会の準備会議で、実行委員の一人の女性がそう言い出しました。
「私、当日は受付担当だから、開会まで会場内にいないし」

卒業50周年の中学同窓会のアトラクションで、私もちょっとピアノを弾かせてもらう、という話。このコラムのバックナンバー第511回に書いた話の続きです。
私は当初、受付開始から開会までの30分、タラタラとウェルカムピアノでも弾かせてもらおうかなぁ、と思っていたのですが、開会後すぐに全員の記念写真を、という話も出てきて、なんか落ち着かないかなぁ、と自分でも思い始めていた所だったのでした。
「そうですね、じゃ、宴会が始まってから弾かせてもらうことにしましょうか」

第511回にも書きましたが、その日出席される恩師の先生の中に、当時の音楽の先生もいらっしゃるらしい。そしてその女性の先生の思い出(?)となった中学時代の音楽の授業のエピソードを、今年5月に発売された拙著「大人のピアノ入門」(講談社+α文庫)の中に書いているんです。
だったら、自分のピアノ演奏にあわせてそのエピソード紹介もしなくちゃ、とも思い始めました。

そして、同窓会当日。もうひとつのサプライズがヒラメイて〜。

一通り、自分の演奏が終わってマイクをとります。
「〜実は私は大人になってから、えっと、40歳を過ぎてから、自己流でピアノを始めました〜」
と、自分のピアノとの出会いや現在のピアノライフ、そして自分の本の紹介をした後、ちょっとしたサプライズの始まりです。
「ここに、今年5月に講談社から出ました『大人のピアノ入門』という私の本があります。実は、この中に、中学時代の音楽の授業のエピソードを書いているんです。ちょっと読んでみますね」と言いながら、本の冒頭を読み始めます。(内容は第511回とダブりますのでここでは省略しますが)
そして続けて
「ここに出てきます『中学1年生の音楽の授業〜』というのがその時の授業の事です。そして、『先生が〜』というのが、何を隠そう、今日こちらにいらっしゃる〇〇先生の事なんです。その時の音楽の授業のことは今でもはっきりと覚えています。そして、それが私がピアノと出会って憧れを持つようになった最初でした。そして、その時の思いが大人になるまでずっと続いて、今の私のピアノとの付き合いにつながっていきました。そんな意味で、〇〇先生は私のピアノライフの最初のきっかけを作って下さった恩人です。
そんな感謝の気持ちを込めまして、今ここで、この本を〇〇先生に謹呈させて頂きたいと思います。〇〇先生、受け取って頂けますでしょうか!?」
そう言って先生の席まで歩いて行き、本をお渡ししました。
(その後、横にいた別の先生から『ちゃんとサイン位入れとかないと』と指摘されて、改めて本の扉に先生のお名前と私のサインをさせて頂きました)

実はその前に私が弾いている途中には、その先生がピアノの横までやってきて話し掛けて下さいました。
「あなた、どうやって練習したんですか?スゴイですね、しかも全部暗譜で」

半世紀振りの再会、そして、そんな先生の前での演奏。
中学生だった当時は、将来自分が本当にピアノを弾くなんて、そして、パーティーの席でその先生の前で自分が演奏するなんて、夢にも思わなかった。
でも、その日、それが現実に起こっていたのでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 昨日9月23日は秋分の日。そして今日からは昼より夜が長くなっていくんですね。
そんな秋の夜長に、我が家の庭にもちょっとした遊びを、と思って、先日、ソーラーパネル付きのガーデンライトを買ってみました。昼間太陽光で充電して、暗くなると自動的に点灯するタイプ。DIY店のガーデニングコーナーに並んでいるのを見てその安さにビックリ!小さいのでは100円代、ちょっと中型のタイプでも1000円代から。
試しに2本買ってきて庭に立ててみましたが、これが、昼間しっかり陽が当たらないと充電しないみたいで。曇りの日や雨の日は無理。でも晴天の日の夜は遅くまで点灯してくれます。夜中、暗い庭を覗いてみるのが、ささやかな楽しみになりそうです(笑)。
 
−an 弾手−


第515回「強力な助っ人・コード進行メモ」 [2014.9.30]
 『そうですね。おっしゃること、とてもよく分かります。私も永く弾かない曲はだんだん記憶が薄れてきます。まあ、それはしょうがないとしても、困るのはいつも弾いているのについ指が覚えてしまってコードを意識しなくなり、ふとしたはずみに、一瞬、次のコードが分からなくなることです』

これは最近、私と同世代の男性の読者の方から頂いたご質問メールへの、私an弾手のお返事の一部です。その方からメールを頂くのは2回目。
『以前に「お父さんのためのピアノ曲集(フォークソング)」を購入した時にメールさせて頂きました』とありました。

『あれから数年が経過しておりますが、先日好きな曲が数多く載っていた「憧れの洋楽スタンダード」を購入し、また新たな気持ちにさせていただきましたのでメール致しました』とのこと。
ここ2年ほどピアノ教室でコード奏法を習われていたそうですが、最近その先生が他県へ引っ越しされてまた独学状態になったので、楽器店に行って本を見ていたら私の「お父さんのためのピアノ曲集(洋楽スタンダード)」を目にされたらしい。

『何とかもう一段上の弾き方をしたいと思っていたところ、右手でメロディとコード音を加えるサンプルや2〜3オクターブのアルベジオの弾き方が目に留まり即決しました。家に帰り「フォークソング」を久しぶりに取り出して見たらほぼ同じようなことが書かれていることが分かりました。「フォークソング」を購入した頃はコードが何とか弾ける程度の段階だったので、自分に難しいと感じた箇所は抜かしていたのでしょう。改めて見てみるとかなりのテクニックが書かれていたのだな〜と反省しております』

そんなやり取りの中で、次のようなご質問を頂きました。
『新しい曲に取り掛かると最初は楽譜を追いながら弾くのですが、練習が進むと暗譜してしまうので楽譜をあまり見ず弾く癖がついてしまいました。しかしながらこの方法ですと2〜3ヵ月もすると徐々に忘れてしまい、半年もするとかなり弾けない状態になってしまいます。
そこでピアノの先生に相談したところ、弾いている小節の頭か半分ぐらいのところで次の小節を見るようにとアドバイスを受け、実行してみると難しいですが特に左でのコードを押さえる準備ができたり、楽譜を見ながら弾くので忘れてしまうことがなくなり、効果はかなりあると実感しております。
しかしながら1曲の最初から最後までなかなか続ける事ができなく現在も格闘中で、主な原因はやはり和音を弾くために鍵盤のほうに集中してしまうからと思っています。
an弾手さんもきっとこのような時期があり、それを克服し現在に至っていらっしゃると勝手に思っていますがどうやって乗り越えたのか何かピントでも頂けたら幸いと思いメールさせて頂きました』

このご質問に対する私の返事の一部が、このコラム冒頭に書いたものです。
楽譜の先読み、という方法は私もよく聞きますし効果的だと思います。ただ私の弾き方は楽譜を見るよりコードを意識して自分で弾く音を考えて弾く、という方法なので、この「先読み」というのをあまり意識したことはありません。もちろん、どんな弾き方にせよ「先読み」は重要だと思いますが、リードシートで弾く場合、二段譜に比べて読むべき要素がシンプルなので無意識にやっているようです。それより、私がいつも意識するのはコード進行です。
冒頭に書いたように『いつも弾いているとつい指が覚えてしまってコードを意識しなくなり、ふとしたはずみに、一瞬、次のコードが分からなくなる』ことがよくあります。
コード奏法では、常に今自分が出している音のコードを意識し、次に来るコード(の流れ)を意識することが大切みたいです。

そのために私がよくやる方法は、新しい曲の練習で最初のうちはメロディーとコードが書いてある「リードシート」を見ながら練習しますが、少し慣れてきたらメロディーも書いていないコード進行だけのメモを見て弾きます。もちろん、もっと慣れてしまうと何も見ずに弾くようになるんですが、慣れ過ぎると上に書いたように、ついコードも意識しなくなってしまうので、時々はコード進行メモを見ながら改めてコード進行を意識するようにしています。コードさえ意識出来れば、特に左手は次の鍵盤の位置に自動的に動く様になり、右手と気持ちは曲の情感を表現することに集中出来そうな気がします。

簡単な唱歌(朧月夜)の例ですが、参考までにそんなリードシートとコード進行メモの対比をリンクしてみますね(汚い手書きですみませんが)。

リードシート
コード進行メモ



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ちょっと、ひと言。
 9月もあっという間に今日で終わり。明日からは10月、いよいよ秋本番ですね。秋と言えば、食欲の秋、とか、芸術の秋、とか、色々言われますが。手帳を見るとコンサートとかライブとか演劇とか、観に行く予定も結構詰まってきたみたい。お手伝いしている「オハイエくまもと」も来年3月の音楽祭に向けていよいよ準備も本格化してきたし。自分のライブも一応11月末位に予定してるような感じなので、その準備もあるし…。
「あなた、本業は何ですか?」と良く聞かれるこの頃です。
 
−an 弾手−


第516回「久しぶりに東京・弾手の会のお知らせ」 [2014.10.7]
 久しぶりに東京「弾手の会」のお知らせです!

「弾手の会」とは、このan弾手コラム読者の男性の方の呼び掛けで始まった、大人のピアノ愛好者の集いです。その方は私のコラムに触発されてピアノを始められ、仕事帰りに東京・赤坂のライブハウスに通ううちにご自分でもそこで一般参加の日に演奏されるようになり、せっかくなら同じような大人ピアノ愛好家の方と一緒に楽しみたいと、このコラムを通して呼び掛けられたのでした。そして、集まった人のアイデアで、その会の名前をan弾手にちなんで「弾手の会」と名付けられました。男性、女性、色々な方がいらっしゃいますが、皆さんに共通しているのは大人のピアノを中心に(他に、ギター、ウクレレ、ライアー等も)音楽が好き、そんな人との交流が好き、ということでしょうか。

私もこれまで何度か上京の折、青山表参道のカワイピアノスタジオその他で弾手の会の皆さんとお会いする機会があり、皆さんとのピアノの弾きっこや食事会などに参加させて頂いて、とても楽しい思いをしました。

この度は会員同士の一斉メールを通して、会の発起人・世話役の【中島弾ディ】さんから「弾手の会」演奏会のご案内を頂きましたので、ここにご紹介しておきます。
(私は参加できませんが)

今回の演奏会、あるいは今回は無理でも今後「弾手の会」への新しい方のご参加はいつでもOKのようです。ご興味がおありの方は【中島弾ディ】さんにお問い合わせください。
●中島さんの連絡先
fnakajim@cnc.jp



「弾手の会」の皆さま、こんばんは。
ここに今回の場所・日時等をお知らせできること、本当に嬉しいです。

●場所:「シンフォニーサロン」
http://www.symphonysalon.com/
・地下鉄東西線「門前仲町」駅 徒歩5分位
・6階の部屋(ピアノ:BALDWIN)。10人位入れる広さ、テーブル、ソファ、キッチン付、冷蔵庫、お皿グラス等もあり、食べ物お酒持ち込み可。
・電源コンセントあり。

●日時:11月16日(日)
12:00〜16:00(4時間)

●参加費:部屋使用料金がトータル10,000円(2,500円/h×4時間)ですので、お一人当りはこの1万円を参加人数で割った額になります。

●その他:飲食物持込可ですので、ランチ持参して食事しながら弾いたり聴いたり休憩談話と、4時間をちょうどいい具合に、和気あいあいと自由な演奏スタイルで楽しめそうです。(私はたぶんお寿司とビール、他おつまみにします)
当日の演奏順や曲目などプログラムを作ることは出来ませんが、皆さまの好きな演奏スタイル、自由な音楽空間、ホームパーティー風の集いで4時間を楽しみましょう。
皆様の演奏をお聴き出来るのはもちろんですが、久しぶりにお会い出来るのを楽しみにしています。

●追伸:私はおかげさまでan弾手さんのコード奏法を主にレパートリーも増え、歌や弾き語りも(初心者の域に留まりますが)演奏会でも臆さずLOL挑戦したいと思います。
また、私は楽譜を5〜6曲持参しますので、どなたか初見伴奏出来ましたらお願いします。例えば「駅」「人生の扉」(竹内まりあ)など、歌いたい、弾いてみたい曲がどんどん出てきてしまってますので。
【中島弾ディ】


改めて、中島さんの連絡先はこちらです。

fnakajim@cnc.jp



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ちょっと、ひと言。
  昨日は、九州、四国、本州まで、台風18号が縦断して各地で被害が出ているようですね。心よりお見舞い申し上げます。
ここ熊本市では一昨日の夕方、小雨の中に大きな虹が現れ、やがて雨が止むと西の空は真っ赤な夕焼け。まだ強風にかき回されたような幾層もの雲が掛かってはいましたが、その雲々が紅く染まって、地上も異様なオレンジ色の世界に変わりました。やがてみるみる日が落ちて夜の闇に。
人知及ばぬ自然が見せる、一瞬の表情でした。
 
−an 弾手−


第517回「71歳の読者の方からのお便りご紹介」 [2014.10.14]
 『私71歳、先日図書館でan弾手さんの本「40歳からのピアノ入門」を見て、私と同じだ〜と面白く読ましていただきました』

そんな嬉しいメールが男性の読者の方から届きました。以下、その続きです。


『〜少し違うのは、私は21歳の時の事でした。ギターで古賀政夫の曲なんか弾いていましたがあまりうまく弾けずにいたところ、たまたま行ったお客さんのところでそこの息子さんがその頃流行りのフォークソングをコードでやっているのを見て、あれ〜そう言えば学校で主要三和音、長調短調なんて習ったな〜と思い出し、さっそく楽器屋に本を探しに行きました。
そのうち調律師勉強中の友人が戻ってきて「中古のピアノ買えよ」と言うのです。そいつは音楽優秀なやつで、すでにコードの事も知っていて、私もやってみたらギターよりピアノの方が簡単でした。左手でコードとベースを、右手でメロディー歌えばいいわけでして。
そして25歳の頃、当時超高級だった苗場スキー場プリンスホテルに行った時の事です。食事の後、ロビーにあったピアノを「弾いてもいいですか?」と聞いて。その友人も一緒でしたが、「下手な俺が先に」と、「モア」と「慕情(恋は素晴らしきもの)」を弾きました。続いて友人が数曲。
すると聴いていた白人のおばさんが、「エニーリクエスト?」と!「シュアー」そしたら「イエスタデー」でした。うまく弾けて大拍手、最高でした。
もっとなのは5年前、末娘が結婚式で「お父さんピアノ弾いて」と。楽団員の友人のトランペット一緒に「マイフーリシュハート」と「アメイジンググレース」を演奏しました。娘に自分の結婚式でやってと言われて、人生最高の思い出となりました!』


いやぁ、素晴らしいですね!私は40歳からのピアノ入門(コードに出会ったのは40代後半?)だったのですが、この方は20代でピアノ・コードに出会われて、数年後には苗場プリンスホテルで人前演奏!また、5年前には娘さんのご結婚式で演奏と、もう50年近くもピアノのある人生を送っておられる様で、私もまだまだこれから、と励まされました。
そして、その後のやり取りの中で、日本の学校教育についてもなるほどと思うご意見を頂きました。


『数か月前、ラジオ番組でパトリックハーランさんが「日本の学校教育はもう少し工夫出来ないか」と言われているのを聞きました。
例えば音楽ですが、和音、コード進行、短調長調を良く教えればと。英語も同じく、と言われて自分も同じ感覚でした。私思うに、英会話も音楽の主要三和音と同じく考えたらどうかと思います、例えば I go golf これ、主要三和音と同じと考える、そこに装飾和音を付けて、I go to golf と。私はホッケーをやっていてカナダ人の友達沢山いますがこれで十分です。解らない時はHow say何々 と相手に聞けばいいんです。〜そしてそれだけでも出来ると出来ないで大違い。(上手下手は別としても)楽器ができる、自転車乗れる、英語しゃべれる、水泳できる、でいいんです、水泳出来ないと足の立たない深みに入ったら死んじゃいますから。おもしろいですね。


なるほど〜。私は英語には自信ありませんが、音楽にしても英語にしても自転車にしても水泳にしても、難しい理屈を体系的に学ぶ前に、まずはナンチャッテでもいいから好きな曲が自分なりに楽しく弾ける、外国の友人と片言でも会話が出来る、とりあえず自転車に乗れる、水に入ったらとりあえず溺れないでいれる、そんな、暮らしに密着した日常の事が出来るか出来ないかが、とても大きいですよね。それで人生の味わいも変わるかも。
そんな事を改めて考えさせられたお便りでした。ありがとうございました!

(注)この方が図書館で手にされた拙著「40歳からのピアノ入門」(著者名・鮎川久雄:講談社+α新書)は、内容を一部加筆・改筆、再編集し、新刊「大人のピアノ入門」(著者名・鮎川久雄:講談社+α文庫)として今年5月に新発売となっています。



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ちょっと、ひと言。
 昨日は台風19号が日本列島を縦断し、先週に続いて各地で被害が出ているようですね。今回はちょうど連休中ということもあって、交通機関の乱れで困った方も多かったのでは。ここ熊本市では大した雨も風もなくて過ぎましたが、被害に遭われた地域の皆さまにはお見舞い申し上げます。
今日は台風一過の秋空の元、ちょっとヒンヤリした空気です。残り少なくなった今年のカレンダーを見ながら、連休明けで溜まった仕事に追われております〜。
 
−an 弾手−


第518回「an弾手ライブSweet Piano Night秋冬版、中止のお知らせ」 [2014.10.21]
 このコラムの第510回「選曲中。まだ道は遠い…」で、次のan弾手ライブの予定を11月末、と書いていましたが(ま、覚えている方も少ないでしょうが)、実はそのライブ中止のお知らせです。

今年はこれまで、3月にan弾手ピアノソロライブ【Sweet Piano Night】〜春の抒情歌と洋楽スタンダード〜、7月にはan弾手ピアノソロライブ【Sweet Piano Night】〜夏の抒情歌と懐かしい洋画テーマソング〜、を開催させて頂きました。そして11月末には今年第3回目のan弾手ピアノソロライブ【Sweet Piano Night】〜秋から冬へ。遠い記憶の旅〜、を開催する予定で、会場のライブハウス「酔ing」さんとも話が進んでいたのですが、突然の中止という事になりました。
何故かと言いますと……。
私事ながら、実は先々週、母が他界いたしました。96歳でした。ちょうど予定していましたライブの日前後が七七日(四十九日)にあたり、喪主の私が夜の街でライブなどやっている場合ではないだろうと思い、中止させて頂くことに致しました。既に予定の告知や段取りをさせて頂いていました関係者の皆さまには深くお詫び申し上げます。

私の母の事は、私自身のピアノがらみネタでこれまで何度かこのコラムでも書かせて頂いています。例えば、2008年11月4日の第244回「これもセッション?」、2012年1月31日の第384回「母のベッドの横でキーボード」、2013年1月8日の第429回「これも人前ピアノの度胸訓練?」等です。
第429回では、こんなことを書いていました。

『あれは確か、今から2年前の、まだ肌寒い早春の出来事でした。
高齢の母が1人で歩けなくなり、老人ホームに入居することになったのです。
入居した部屋の窓から外を見ると、目の前に広〜い広場があり、その真ん中にすっかり葉を落とした一本の大きな木が立っていました。
私が母に「ほら、あの木、形がいいね〜」と言うと、母も「そうね、いい形してるね」と言っていました。
それから毎週、私は週末になるとその部屋を訪ねては母と話をしながらその木を眺めるのが楽しみになりました。
ある時思い立って、自分の家にあった小さなキーボードを持って行きました。
母のベッドの横にキーボードを置くと、ちょうど目の前の窓から広場の木が見えます。私はその木を眺めながら、母が知っていそうな曲を思いつくままに弾いてみました。すると母は曲に合わせて次々に歌ってくれました。歌っている時、母の顔は少し明るくなった様な気がしました。
やがて広場の木には新緑が芽吹き、うっそうとした緑になり、そのうち黄色くなって、また裸の枝ばかりになっていきました。
そんな風景の移り変わりがふた周り過ぎて、母はもう94歳になりました。
あと何回、この風景を一緒に見ることが出来るのだろうと思いながら、今も週末になると母の部屋へ行っては、キーボードを弾いています』

それからもう2年近くが過ぎたんですね。その時のキーボード、今はその老人ホームから持ち帰り、母の遺影がある仏壇の横にとりあえず置いています。
まだ忌中で、家の中で楽器の音など出すのは憚られるような気もするのですが、考え方を変えてみると、シンと静かにしているより、母が好きだった曲などをたまには弾いた方が、母も喜んでくれるのかな、と思ったりもします。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 昨日、東京に電話して、数カ月振りにある方とお話ししました。
ある方とは…。
東京の出版社の方。もう1年近く前から次の出版企画の打診を頂いていた方です。今年は前半に「大人のピアノ入門」(講談社+α文庫)が具体的に動いたり(5月20日発売)、今回のコラムにも書きましたように年頭から自分のソロライブを企画して「春」、「夏」、そして「秋・冬」と、その都度待ったなしの準備を進めてきたので、ついつい本の構想が後回しになっていました(やっぱり並行作業は難しい〜)。
今回、11月のライブが中止ということになってふと我に返り、このタイミングで次の本の企画を進めてみようかという気になりました。昨日は電話の向こうから「ぜひ進めてください」と懐かしいお声を聞かせて頂いて、もう気分はすっかり執筆モード(笑)。まだはっきりした形もない状況なので先は長そうですが、楽しみながら考えてみましょう。
 
−an 弾手−


第519回「運命の出会い、の、再会」 [2014.10.28]
 いやぁ、こんなことがあるんですね!びっくりしました。そして、とても嬉しかったです。
人は、どこでどう繋がって何に出会ってどう変わっていくのか。そんな出会いの不思議さを感じた出来事でした。

それは、先日、ホテルのパーティーに出席した時のこと。受付で座席表を受け取り、自分の席を確認しながら会場に入ります。私の隣の席には既に男性が掛けていて、そのまた隣の人としきりに話をしています。私は軽く会釈して自分の席に座り、だまって開会を待ちます。
やがて会が始まりました。最初は香梅アートアワードの表彰式。箏曲教授の田島涼子さんと画家・イラストレーター門田奈々さんの表彰に続いて、田島涼子さんの箏とご令息・田島永山さんの尺八による「春の海」の演奏。テレビや新聞の取材カメラがステージの前に並んでいます。
そしていよいよ、パーティーの始まり。ステージでは、今日の出席者によるピアノの弾き語りやトーンチャイムの演奏などが続いて雰囲気を盛り上げていきます。

私はやっと名刺を取り出して隣の男性にご挨拶。
「遅くなりましたが、私、こういう者で…」
「あ、こちらこそ…」
頂いた名刺を見ると、地元熊本の放送局・RKKの方らしい。ほう、テレビ制作部の部長さんか。
「私、実はですね。大人になってからピアノを始めたんですよ。それも最初は自己流で楽譜丸暗記をやってたんですがなかなか難しくてですね〜。ところがある時、コード奏法というのに出会いまして、それから世界が一変したんですよ〜」
なんて、いつものan弾手自己紹介をしていたら。
「そうですか。コードのピアノって言えば、確か『ぺいあの』っていうお店があって、以前そこの店長さんをラジオの番組で取材したことがありますよ」
「え〜〜〜〜〜っ!」それって、まさか!?

そうなんです。それって、私がこのコラムや拙著「大人のピアノ入門」(講談社+α文庫)に書いている、『コード奏法との運命の出会い』の、あの番組!?

以下、その本からの抜粋です。
『〜あの日、カーラジオのスイッチを入れなかったら、とっくにピアノはあきらめていたことでしょう。
スイッチを入れた時、番組はもう終わりのほうでした。中年の男性アナウンサーが、「いやあ、これで私も第一段階マスターですね」と興奮ぎみに話しています。
先生らしい男性が「そうです、誰でも30分あればここまで出来るようになりますよ。まったくの初心者でも、一ヵ月で一曲弾けるようになります」と自信ありげに語っています。「私のレッスンは、まず基本のコードを覚えて、それを応用していく弾き方ですから、楽譜が読めなくても自分でアレンジしながらどんどん弾けるようになりますよ」
そこで番組は終わってしまいました。
いったい、あの先生らしい男性はどこの誰だったんだ?そんなうまい、都合のいい弾き方があるのか?半信半疑ながらも、一曲を何カ月も悪戦苦闘しながら覚えて、はしから忘れて、をくりかえしていた私は、ワラをもつかむ思いですぐにその放送局に電話をしました。
「さっきの番組に出ていた人の連絡先、教えてください!」〜』

その時ラジオから声が流れていた『中年の男性アナウンサー』が、いま目の前にいるこの男性、宮脇利充さん!?
あの時、何気にカーラジオのスイッチを入れたのも偶然なら、たまたまその瞬間あの店から中継していたというのも奇遇(生中継だったらしい)、どちらかがちょっとでもズレていたら恐らく今のan弾手は存在しなかった。そして今、私がこのパーティーに出席しているのも、隣の席にあの時のアナウンサーの人が20年近い時を超えて座っているのも、何というご縁。

「宮脇さんは私のピアノの恩人です」
「こちらこそ、あの時の短い番組が、そこまで長く生き続け覚えていてもらえて嬉しいです」
これって、運命の出会い、の、再会?
ステージには、元H2Oの中沢けんじさん(現在、熊本在住)が登場し、ヒット曲「想い出がいっぱい」の弾き語りが始まりました。
不思議な想いが、自分の中にいっぱい溢れてきた、その日のパーティーでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 《東京、及び近郊の大人のピアノ・音楽愛好家の方へ》
このコラムの第516回でご紹介しましたが、東京近郊の大人のピアノ・音楽愛好家の集い「弾手の会」では、来る11月16日に交流会・演奏会を企画されています。新しい方の参加、あるいは今回は難しいけどとりあえずメンバー登録だけでも、という方もOKの様です。
詳しくは本コラムバックナンバー第516回「久しぶりに東京・弾手の会のお知らせ」をご覧ください。
 
−an 弾手−


第520「今度は75歳の読者の方からのお便りご紹介」

[2014.11.4]
 先月、第517回のコラムで71歳の男性の方からのお便りをご紹介しましたが、今回はまたまた75歳の方からのお便りです。

 
はじめまして、an弾手先生。75歳、男性です。
なぜか急にピアノを覚えたくて、しかし年齢を思うにこれを乗り越える自信もなく、まして何をやるにも中途半端。妻にもこの点でバカにされています。まさに四面楚歌。
しかし、思い立つと何らかのアクションを起こしてしまうのも悲しい現実。先日中古の電子ピアノを格安で買ってしまいました。
何か良い方法はないかとネット上を検索したところ、an弾手先生の記事に出会いました。勿論、先生の実績を多数目にして、これなら俺にも出来るかもしれない。年が年なんだから、急がずに3か月で一曲できれば、との思いと覚悟で、飛びつきました。
昨夜テキストが届き、寝る前に30ページまで練習をしました。不思議な感じです。あまり抵抗がないまま、しかも気持ちよく終えることが出来ました。
これを何度も繰り返して、コードを頭に叩き込めば何とかなりそうだと思い始めたのです。本当に不思議です。
取りあえず、勝手に弟子を決め込んで進んでいきます。きっとうまくいくと信じながら。
どうぞ、今後の御指導、御示唆よろしくお願いいたします。
北海道 十勝在住 75歳 男性 経験なし 音楽大好き 孫たちはピアノの経験者たちです。
そっと練習して、アッといわせたい。
 

いやあ、素晴らしいですね!
何が素晴らしいかと言うと。
ピアノを覚えたいと思われたその次の行動が、いきなり電子ピアノを買われたということ。普通は、まずどうしようかと考えて、とりあえず入門書でも探してみて、あるいは先生を探してみて、それから、やれそうだったら次にピアノの購入も検討してみるか、となりそうなところなのに、まずアクション!いきなりピアノの購入から!
『悲しい現実』どころか、それって成功者の行動パターンじゃないかという気がします。まず行動、一歩踏み出し、歩きながら考える、ってことでしょうか。
私も自分の体験から、『うまくいくと思うとうまくいく、失敗すると思うと本当に失敗する』というようなことを拙著「大人のピアノ入門」(講談社+α文庫)の中に書いていますが、これはある意味、人生の真実だと思います。

そして、私の本を手にしたその日の夜に30ページまで練習し、『あまり抵抗がないまま、しかも気持ちよく終えることが出来ました』とは!とても柔軟な感性をお持ちの方だと拝察いたします。

『勝手に弟子を決め込んで』頂いて光栄です。今後ご質問等ございましたら、何なりとお気軽にお寄せ下さい。ピアノ経験者のお孫さんたちがあっと驚かれるその日を、私も楽しみにしています。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 昨日の休日(文化の日)は、抜けるような秋空に誘われて、車で菊池渓谷に出かけました。阿蘇北外輪山の北西に広がる広葉樹原生林の森に刻まれた渓谷です。
紅葉の名所としても知られていますが、色付きはまだちょっと早かったみたいでした。それでも、渓谷の脇の遊歩道をたどると、日本の名水百選にも選ばれている清流や次々に現れる滝、うっそうと谷を覆う木々に癒されました。
 
−an 弾手−
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