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熊本には縁が深くて、これまで熊本交響楽団の定期演奏会などで何度も指揮をしました。県劇に感じるのは斬新さと伝統。外観は30年前の建築とは思えないモダンな造りですが、ホールには30年の時間(とき)が醸す空気感があります。ホールとは、良い音楽を吸い込んで“成長”するもの。良い楽団が良い演奏をして、良い観客が集う。すると音の響きはどんどん良くなるのです。
県劇でのコンサートは一期一会で、どれも思い出深いのですが、特に印象に残るのは2006年の「第24回県民第九の会演奏会」です。24年間、毎年県民の方が楽しみにしている演奏会の指揮を前任者から引き継ぐ。この伝統ある演奏会にふさわしい指揮をしようと強く思いました。
当日のコンサートでは、第九のテーマである“人生哲学”を演奏者や合唱団、観客と共有して、ホール全体が人生の喜びに包まれました。鳴り止まない拍手に、まるでホール自体が感動に震えているようでした。翌年の第九の会演奏会でも指揮をさせていただき、熊本の方たちとあの感動を再び共有できたのは嬉しい思い出です。
今年の12月23日には「ガラコンサート」が行われます。これは県劇の30周年をお祝いする会。国内外で活躍するソリストを迎え、オーケストラ、吹奏楽、合唱という大編成で、パーティーのような楽しいコンサートを演出したいと思っています。また当日は「第九」も演奏。県劇が世代を越えて、文化の力で絆と希望を伝えていく場所であってほしいという願いを込めて、合唱団には子どもたちにも参加してもらいます。ぜひ多くの皆さんと一緒に、これからの未来へ向けて県劇の30年を盛大に祝いたいですね。 |
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