第681回 「人前演奏の『超緊張感』と、客席との一体感による『解放感』」 [2018.2.27]
 終わってみたら、とても和やかでたくさんの気付きをもらったその夜のライブでした。
 あ、もちろん、私が出演したわけじゃなくて、ある女性ヴォーカリストのライブ。その人、単独ライブは5年以上振りだったとか。
 「めちゃくちゃ緊張しています」
 ライブの開始早々、MCでそう話されてましたが、確かに最初の方は聴いていても『ん?緊張されてる?』という感じがしました。その人はプロではなくて、ジャズピアニストにヴォーカルのレッスンを受けながら、時々ライブをされているんです。その日も、その師匠のピアニストはじめウッドベース、ドラムの、いずれもバリバリのプロミュージシャンをバックにしてのライブでした。
 「緊張しています」と言われると、私も自分の1週間前の美術館での演奏を思い出してしまいました。はい、その時は私も「めちゃくちゃ緊張してました」ので(笑)

 でも彼女、1曲歌う毎に次第に緊張がほぐれていくのが分かりました。2nd setに入る頃には以前の彼女らしい声とノリ。そして歌いながらの身振り手振りも、以前より更に磨きがかかっていて素敵でした。
 その間、客席との間の目に見えないコンタクトや拍手が会場やステージの雰囲気を盛り上げていったのは事実です。やっぱり、音楽って演奏者だけのものではなく、聴いている人やその場の空気が大切なんですね。まぁ当然分かっているつもりではありましたが改めて実感。1週間前の緊張感をまだどこかに引きずっていた気分が、少し緩んだような気がしました。

 ひと通りライブのプログラムが終わった後は、ジャムセッションタイムに突入。会場にはやはりそのピアニストに指導を受けているヴォーカリストの人が何人も来ていて、ピアニストから指名されては「えっ? 私、今日は歌うつもりでは来てないんですけど」等と言いながらも、前に出てマイクを取ります。なかにはバッグに自分用の楽譜を入れて持ってきているやる気満々の人も。

 ひと通りヴォーカルが終わった後は、エレキギターを抱えたお客さんが出てきて、ピアノトリオをバックに2曲演奏。

 で、そこまで終わったら、ピアニストの視線が私の方に。
 「ピアノ、どうですか?」
 と声を掛けられて、
 『えっ? 私、今日は弾くつもりでは来てないんですけど』とは言いませんでしたが(笑)、それじゃ、と席を立ちます。
 「ちょっと、雰囲気変わっちゃってすみません」
 と言いながら弾き始めたのは『月の沙漠』。

 なんじゃそりゃ? って感じですが。1週間前に美術館のギャラリーで弾いた日本の抒情歌の中の1曲です。
 Key=Amの単純なコード進行ですが、所々に、ほんのちょっとだけジャジー(?)なコードを混ぜながらのアレンジを入れてみました。
 例えば、Dm→Bm7♭5→E7 とか、左手で Am△7を弾きながら 右手でAm9とか。
 あるいはAmが2小節続くところで左手のベースが半音ずつ下がっていくラインクリシェとか。

 あっという間に終わりましたが、客席にいた人から「ずっとジャズの演奏を聴いていた後で日本の抒情歌が流れてきて癒されました。やっぱり日本人なんだなって」と声を掛けて頂いてちょっと嬉しい気持ちに。

 さてさて、人前演奏の「超緊張感」と客席との一体感による「解放感」。そんな空気を改めて感じさせてもらった、その夜のライブでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 先週木曜日(2月22日)、熊本地方気象台は梅の開花宣言を出したそうです。平年より22日、昨年より16日遅かったとか。
 それでも我が家の庭の梅の木はまだ固いツボミ。でも近所を歩いていると、あちこちの庭先の梅の枝には、紅梅や白梅の花が綺麗に咲いています。やっと春の気配ですね。
 今週後半からはいよいよ3月。本格的な春がやって来そうです。楽しみ〜

 
−an 弾手−

第682回 「音楽が広げてくれた寺山修司の世界」 [2018.3.6]
 寺山修司、と聞いただけで、自分の若い頃の様々な想いが浮かんできました。
 私が初めて寺山修司を知ったのは、まだ高校生の頃? 確か学習雑誌の俳句のコーナーだったっけ。北国の海と向きあいながら人生の想いを語る彼の言葉に惹かれたのを覚えています。
 やがて寺山修司の作品「誰か故郷を想はざる」「時代の射手」「書を捨てよ町へ出よう」「思想への望郷」等のエッセーや評論、戯曲、長編叙情詩「地獄篇」などに惹かれるようになり、大学を卒業して東京に出てからは彼が立ち上げた渋谷のアングラ劇場「天井桟敷」に入り浸る日々でした(笑)。
 今思うと、彼の思想はその後の私の人生にも大きな影響を与えているような気がします。いい意味で。

 ……って、今回のコラム、音楽と関係ない話で始めてしまいましたが。実は先日聴きに行ったあるソプラノ歌手のリサイタルで寺山修司の世界に出会い、色んな想いが甦ってきたので。
 そのリサイタルとは、ソプラノ歌手、春日信子さんの『大中恩のせかい・ひとりぼっちがたまらなかったら』
 全曲が作曲家・大中恩氏の作品、そして第1部の21曲は全て寺山修司の詩によるものでした。
 最近はあまり寺山修司の作品にも目を通していませんでしたが、久し振りに遠い青春時代の夢や孤独感や未知なる世界への憧れの気持ちを、ちょっとだけ思い出したような気がしました。

 私が大学時代に探検部を創設し、部誌の創刊号に「果てしなき未知への飛翔」というテーマを掲げたのも、どこかにそんな気持ちがあったのかも知れません。
 そして、大学卒業後に就職した東京の某大手企業を数年で辞め、全く畑違いの小さなデザイン事務所に弟子入りし、その後熊本にUターンしてデザイン会社を興したり、ふとしたきっかけからピアノに目覚め、素人ながら教則本を出版したり、ライブを開いたり。
 まあ、これらも「果てしなき未知への飛翔」の連続か?と言ってしまえばそれまでですが、考えてみるとどこか青春時代に惹かれた寺山修司の影響があったのかも、な〜んていう気がしないでもありません。

 あ、すみません! つい自分勝手な物思いに耽ってしまいました。
 音楽(ピアノ)の話はどうなったんだ? と言われそうですが(笑)。
 今回は寺山修司の世界が大中恩の音楽とひとつになって、思いがけず自分の中に甦り、改めて音楽の力を感じたのでした。
 思うに、音楽をやるのに指の訓練とか音楽理論の勉強とかはもちろん大切でしょうが、もっと本質的な、音楽が紡ぎ出す世界を感じ、語り、自分の中に広げていくことがベースとして重要なのではないかという気がしています。
 そんな意味で今回の、音楽を媒体として目の前に広がった寺山修司の世界も、とてもいい体験になりました。

 リサイタルの第2部では、やはり大中恩の作品の中から「アマリリスに寄せて」という曲がありました。これは、93歳になる大中恩さんが今年初めに春日信子さんのために作曲し、今回のリサイタルが初演だったとか。スゴイ! 大中恩さん93歳で現役バリバリなんだ。まだまだ自分も頑張らなきゃ。

 ステージにはアマリリスの大きな生け花が飾られ、終演後には観客皆んなに深紅のアマリリスの花が1本ずつ配られました。
 頂いた時はツボミでしたが、家に帰ってから飾っていたら、ステージの春日信子さんを思わせる深紅の妖艶な花が開いてきました。

 アマリリスの花は咲いてきましたが、寺山修司の詩には目に見えない花がたくさん咲いています。

 ………
 そこに
 みえない花がさいている
 ぼくにだけしか見えない花が咲いている
 だから
 さみしくなったら
 ぼくはいつでも帰ってくる
  (寺山修司『見えない花のソネット』より、一部抜粋)



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ちょっと、ひと言。

 3月に入ってだいぶ暖かくなってきました。一昨日の日曜日、近くの坪井川遊水地を巡るウォーキング大会があり、私も参加してきました。日頃からよく立ち寄っている場所ではありますが、なかなか全周を一気に歩くことも少ないので。
 朝から真っ蒼な空と温かな陽射しに恵まれ、集まった参加者の人達と一緒に春の気配が漂う土手を歩きました。今年は寒い日が多くて春が遅い感じでしたが、その日はこの春初めて土手を黄色く彩る菜の花にも会えて、すっかり春の気分を満喫しました。

 
−an 弾手−

第683回 「ピアノの簡単な即興演奏方法とは」 [2018.3.13]
 私が普段よく見ているメルマガの記事で、「そうそう、そうだよね〜!」って反応してしまったのがあったのでご紹介します。
 「ピアノで即興演奏をする一番簡単な方法」というタイトルの記事でした。ピアノで簡単に即興演奏ができたら楽しいと思いませんか?

 で、そこに書いてあった事が、まさに私がやっている方法、そして、このan弾手コラムや自分のコード奏法の本に書いている方法とピッタリ一緒だったので、嬉しくなってしまいました。
 そのメルマガの著者はプロの作編曲家の方で、何だかプロのお墨付きを頂いたような。

 そのポイントをメルマガから引用させて頂くと、
 ******************************************************
 超簡単ですよ!
 1)右手の最高音はメロを弾く。
 2)左手は、root→5th→rootの順番で弾く。
 3)右手の余った指でコードの足りない音を弾く。
 以上です!
 ******************************************************
 はい、以上です(笑)

 分かる人はこれだけで「はいはい、了解」と思われるでしょうが、ここで簡単に補足説明をしますと、
 2)左手は、root→5th→rootの順番で弾く。
 というのは、度数で言えば1度→5度→8度 ということです。
 例えばコードCだったら 左手小指でC(1度)、人差し指でG(5度)、親指で一オクターブ上のC(8度)を順番に弾く、ということです。もちろん、バリエーションとしては必ずしもこの「順番通り」でなくても構いません。3つの音を同時にジャーンと押さえるのではなくバラバラにバラして弾く、という位の意味です。
 更にその発展形として、そのC(8度)の更に上のE(10度=3度)を、これも親指で弾くというバリエーションもあります。
 文章だけでは分かりにくいでしょうが、これらを五線譜と鍵盤図を使って説明しているバックナンバーがありますので、よかったら参考にしてみてください。
 ↓
 第61回「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)ためのコード奏法超入門講座」(その8)左手で伴奏のパターンをつくろう
 第62回「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)ためのコード奏法超入門講座」(その9)左手のサウンドを広げよう

 さらに、上記のバックナンバーの続きで、
 3)右手の余った指でコードの足りない音を弾く。
 という部分に該当する説明をしている回もありますので、少し辿ってみてください。

 という訳で、今回はプロの作編曲家の方のメルマガを入り口にして、自分のバックナンバーの紹介をしてしまいました。
 でも、この非常にシンプルな方法をベースにするだけで、ピアノの様々な即興演奏が出来てしまうというのを改めて実感した次第でした。



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ちょっと、ひと言。

 3月も、はや中旬に差し掛かりましたね。来週後半には、日本のあちこちから桜の話題が届きそうです。ここ熊本もめっきり暖かい日が続いています。
 ところで、今週末はいよいよ「オハイエくまもと・とっておきの音楽祭」がやってきます。
 17日(土)がプレ交流会、18日(日)が音楽祭本番。県外からも含め100グループ近くの出演者が、熊本市街地の9会場で様々な演奏を繰り広げます。私も実行委員の一人として、当日は熊本城の城彩苑で会場運営・進行のお手伝いです。
 今週前半はお天気が良さそうですが、週末は下り坂みたいなのでそれだけが心配です。何しろ屋外会場なので。どうか、雨が降りませんように〜!

 
−an 弾手−

684 「音楽の花が咲いた日」 [2018.3.20]
 音楽の力を改めて実感しました。

 音楽の力で心のバリアフリーを目指す「オハイエくまもと」。
 その、年に1回の「とっておきの音楽祭」が、一昨日の3月18日(日)、熊本中心市街地の9会場で繰り広げられました。全国から約100グループの個人・団体(約650名)が出演。会場運営の実行委員や社会人・学生のボランティアを含めると、総勢1,000名規模のイベントでした。
 私は実行委員の一人として、今年は熊本城のすぐ下の「城彩苑」会場を初めて担当させて頂きました。

 朝8時前にメイン会場の花畑広場に行って自分の会場の資料や備品の仕分けチェック。その後、自分の担当会場(城彩苑)に移動して会場ボランティアの人たちの集合を待ちます。
 9時、MCや受付担当者、救護班のボランティアの人たちが来て打ち合わせ。9時20分には学生ボランティアの集合。手分けして椅子の配置や会場周りのノボリの設置、近くを通る人にガイドブックやプログラムの配布などを始めました。
 会場のマイク、スピーカー、PA等の音響機材の設営・運用は専門の業者さんに依頼です。

 実は先週は天気が悪く、金曜日も雨。当日雨が降ったら野外会場の城彩苑は完全にアウトなので心配していましたが、本番は見事な晴天に恵まれました。
 会場のすぐ脇を通る熊本城御幸坂は桜の名所です。桜を見上げながらの音楽会を楽しみにしていましたが、その日の朝はまだ固いツボミで残念でした。

 演奏開始1時間前の10時から、出演の人たちの受付開始。
 プログラムのトップは障がい者施設・明徳会の「さくらオールスターズ」さん26名。お揃いの素敵な衣装で楽しいダンスを披露してくれました。その後も、兵庫県から参加の箏奏者、千葉県から参加の障がいを持つシンガー、手話ダンスやフラダンスのグループ、セミプロの活動をされている女性シンガーソングライター、陽だまりという意味のSunny spotバンドなど、バラエティー豊かな出演者が登場。
 「精神障がい者は受け入れてもらうのが難しいですが、音楽の中では分け隔てなく、仲間たちも温かく接してくれます」
 「学歴あるのに世間では全く通用しない自閉症人間が最後に選んだのが歌でした」
 「高齢者福祉施設の慰問及びイベントを活動の軸としています」
 ……等々、出演者それぞれの思いやメッセージを音楽や踊りに込めて伝えて頂きました。

 会場の城彩苑は外国人観光客も多く、たくさんの人が足を止めてバラエティー豊かな音楽のパフォーマンスを楽しんでいました。

 プログラムも終盤に近づいた午後2時頃、ふと会場横の熊本城御幸坂を見たら……。
 ナ、ナント! 朝はまだ固いツボミばかりだった桜の枝に、ポツポツと花が咲いているじゃないですか!

 これって、もしかして音楽の力?
 いえいえ、暖かい陽気のせいだとは思いますが(笑)。でもやっぱり、いろんな人たちの思いがこもった音楽の力に、周りの桜の花々もきっと心を開いてくれたのでは。

 そんな暖かい気持ちにさせてくれた、その日のとっておきの音楽祭でした。


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ちょっと、ひと言。

 今年はいつまでも寒いと思っていたら。あっという間に全国各地で桜が開花しているみたいですね。皆さまの所はいかがでしょうか。
 熊本も、今回のコラムにも書きましたが、あちこちで桜が咲き始めました。実は私の会社のすぐ隣にも桜の木があり、先週までは全く気配も無かったのに、今週は一気に咲いてきました。会社の2階、3階の窓から目の前です。仕事の合間に眺めては楽しんでます。

 
−an 弾手−

第685回 「絶対音感と相対音感」 [2018.3.27]
 夜の街で人前ピアノを弾いたりして、「私、コード奏法で適当にアレンジして弾いているんですよ」などと話していると、「絶対音感があるんでしょ?」と言われることがあります。
 いえ、私は絶対音感はないんですけど〜。

 この「絶対音感」という言葉、よく聞きますし、世間一般では「音感」といえば「絶対音感」のこと、みたいな雰囲気もありますが、果たしてそうでしょうか。

 「絶対音感」とは、音の高さを音名で記憶できている能力。例えば440Hzの音を聞いたら、中央の「ラ」の音だと分かる、らしい(私は分からないです)。
 この能力は小さい頃から音楽をやっていないと身に付かないみたいですね。私なんか、大人になってからのピアノなので、とても無理です。
 でも、もう一つの音感、「相対音感」は大人になってからでも身に付くらしい。私は大人になってからピアノをやりながら、最近はこの「相対音感」を意識することが多くなりました。

 「相対音感」とは、ある一つの音の高さに対して、もう一つの別の音がどんな間隔(距離)になっているかが相対的に分かる感覚、とでも言えばいいでしょうか。例えばある曲を聴いた時、メロディーの音の並びの間隔が分かるとか。
 これが分かると、その曲の「ド」の音がどれかを予測し、それに対して他の音がどんな間隔で動いていくかを感じることで、曲を聴きながらメロディーを階名で辿ることが出来るようになります。そこで覚えたドの音を、後で鍵盤を鳴らして探してみると、Fだったり、Gだったりします。もしFだったら、これはKey=Fなので、Fを「ド」と読んで、覚えておいたメロディーの階名をFのスケール上で弾けば(移動ド)、ちゃんと曲が再現されます。いわゆる「耳コピー」の完成です。

 これは耳コピーだけでなく、暗譜にも強力な武器になります。ある曲を何度か練習しているとメロディーラインは感覚的に覚えてしまいますよね。そうすると、そのメロディーに対する階名も相対的に分かるので、楽譜を見なくても頭の中でメロディーを歌っていれば鍵盤を意識するだけで弾けてしまいます。暗譜の完成です。あとはこれにコード進行をちょっと意識すれば、楽譜がなくても両手で伴奏も入れながら普通に弾けます。

 色んな音楽理論の情報などを見ていると、どうも「絶対音感」より「相対音感」の方が音楽をやる上では実用的だという話があるようです。
 絶対音感があると、車のクラクションの音や掃除機の音などまで音名で聞こえてきて、それが正確な音名の周波数とずれていると不快になったり、音楽でも微妙にKeyが変わっていると気になったりするらしい(?)。
 まあ、私は絶対音感とは無縁なので、そのような感覚は分かりませんが。

 もちろん、音楽の専門家には絶対音感のある人が多いそうですが、大人になってからピアノを始めた私などは、そっちを気にするより、相対音感を磨いて耳コピーや暗譜演奏などの力をもっともっと磨いていければ、と思うところです。



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ちょっと、ひと言。

 先週のこの「ちょっと、ひと言」にも桜の話を書いてましたが。
 出勤途中の道沿いも、お昼にちょっと歩く路地裏も、どこも桜一色で2週連続桜の話題になるのをお許しください〜。
 いつもこの季節になると「えっ、こんな所にも桜の木があったの?」と思います。桜の季節以外は、そこに桜の木があることさえも気付かないので。
 週末に行った水前寺成趣園、菊池公園、竹迫城跡、こぼれる様な桜の波に癒されました。
 もちろんそこには、地域で桜を植え守り育てているたくさんの人達の想いと努力があっての事なんでしょうね。今年も、こんな夢のひと時に浸れることに感謝です。

 
−an 弾手−

第686回 「声の掛かるうちが華?」 [2018.4.3]
 「今度、うちのスタジオでライブやってくださいよ」
 いつもライブを開催されているピアノスタジオをお持ちのピアニストの方から、そう言って頂きました。
 ありがたい事です。

 先週土曜日の夜、ある人との打ち合わせが終わって駐車場に戻ろうと、ホテル日航熊本のロビーを通り掛かった時です。
 ロビー横の喫茶ラウンジの中に知っている人の顔が。熊本を中心に活躍されているピアニストの方でした。目が合ったら
 「あら、どうぞこっちに入りませんか」と声を掛けられました。
 その方、毎週土曜日にこのラウンジでピアノの演奏をされているんです。
 私は中へ入って、ピアノのすぐ横の席に掛けました。
 「お会いするの久し振りですね」などと話をしていたら、いきなり「まだお客さん誰もいないし、ちょっとピアノ弾きませんか?」と言われ、近くにいたラウンジスタッフの人に「この人、ピアニストなんですよ。ちょっと弾いてもらっていいですか?」と声を掛けられました。するとスタッフの人も「はい、どうぞ」と。

 私は「あの〜、私、ピアニストじゃないんですけど〜」と言いながらもピアノの前に行きます。さて、何を弾こうかなぁ…、と考えていたら。あれ、お客さんが入ってきた。4人組のお客さんがピアノからちょっと離れた席に掛けられました。ま、いいか。

 いつもながら、コード進行のアドリブフレーズを少し流してから「ダニー・ボーイ」。弾き終わると、思いがけずさっき入ってきたお客さんから拍手が。
 こんな場でBGMピアノに拍手されるのも場違いなんだけど〜、と思いながら、2曲目は「スター・ダスト」、3曲目は「ベニスの夏の日」。
 弾きながら、結構あちこち途中で分からなくなり、ゴマカシながらの演奏。但し「止まらない、テンポを変えない、弾き直さない」という人前ピアノの大原則だけは守れたようだったから、ま、いいか。
 3曲弾いて立とうとしたら、ピアニストさんから「もうちょっと時間があるから、あと少し弾いて」との声が。それじゃ、と、あと1曲「ひまわり」を。
 その頃にはお客さんも随分増えていました。

 席に戻ってピアニストさんに「あ〜、急に振られたのであちこち間違ってしまって〜」と言ったら、「そんなこと私もよくありますよ。でも、聴いてるお客さんはほとんど気付いてませんから」とあたたかいフォローを頂きました。

 その後、次のステージまでの時間、ピアニストさんと席で話をしていたら、
 「an弾手さん、少し前にどちらかでピアノライブされてましたよね。うちのピアノスタジオでもライブの予定組んでみませんか?」と。
 「あ〜、そうですね〜。実は前回のライブの後に次の準備もしていたんですが、そこに熊本地震が来てそんな気分じゃなくなって、未だに気持ちが乗ってないんですよ。でもそろそろ次の企画を考えたいとは思ってます」とお答えしました。

 実は、前回ライブをさせて頂いたライブハウスとは別のお店の方からも、「うちの店でもライブやってくださいよ〜」と何度も言われていました。こんな私に、そういう声を掛けて下さる方がいらっしゃるとは本当にありがたい事です。
 ま、声の掛かるうちが華?とも言いますしね〜(笑)



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 毎日、いい天気が続いています。皆さまの所はどうですか?
今の季節にこんなに天気が続くと、やっぱり桜が気になります。身の回りも桜の話題でもちきりです。
 一昨日の日曜日は熊本城三の丸公園で高校の同窓生有志の花見でした。もうかなり葉桜になっていましたが、集まった25人程の同窓生と一緒に、風に舞う花吹雪を楽しみました。
 やがて、新緑の季節がやって来ますね。

 
−an 弾手−

第687回 「新緑の中で妄想ピアノ」 [2018.4.10]
 頭の中に、綺麗なピアノのメロディーが浮かんできそうな気持ちのいい空間でした。
 ついこの前までは「桜、桜〜」と騒いでいたのに、あっという間に新緑の季節がやってきました。(あ、北の方の方すみません。熊本の話です)

 朝から天気が良かったこの前の日曜日、ある用事で熊本駅の近くへ。10:30には終わったので最近新装オープンした駅のショッピングコーナーでも覗いてみようかと車を走らせていると、駅の向こうの青空の下に新緑の山が。
 「そうだ、独鈷山も近くだった」と思い出し、そちらへハンドルを切りました。

 独鈷山、今年新年早々のコラム第674回にもちょっとだけ触れていましたが、1月3日に行ってみた山です。山と言っても上まで車で行ける丘の様な山ですが。
 広〜い芝生広場や自然の雑木林が広がり、頂上にある熊本城の石垣の様な展望所からは、西に有明海と天草の島、東に阿蘇の山並み、そしてその手前に広がる熊本市街が一望できます。
 この日も綺麗な青空のもと、目に沁みる様な新緑が迎えてくれました。

 広々とした緑の空間や新緑が滴るような林の中を歩いていたら、「あ、これって素敵な曲が出来そう!」という思いが。
 「えっと〜、曲のタイトルは何にしようかなぁ」
 「新緑のささやき? う〜ん、ささやきじゃないなぁ。一本の木じゃなくて沢山の緑が嬉しそうに会話している風だし」
 「じゃ、新緑のざわめき? う〜ん、ざわめきじゃちょっと不穏な感じがするかなぁ」
 「じゃ、(ざ)の点を取って新緑のさわめき? さわめきって日本語あったっけ?」
 などと、タイトル妄想。

 メロディーも何となく浮かんできました。
 例えば……
 ミ ファ ソ〜 (続いて1オクターブ上のミ ファ ソ〜)
 ラ シ ド〜 (続いて1オクターブ上のラ シ ド〜)
 シ ラ ソ〜 ソ ラ ソ〜 ファ ミ レ〜
 (アリキタリカ:笑)
 同じフレーズの1オクターブ違いの繰り返しで、新緑の木々の会話をイメージしてみたのですが〜

 まぁ、そんな感じで、いつもながらの妄想ピアノを頭の中で奏でながらの新緑散策。
 自然の季節の移ろいの中で、その風景と空気と自由気ままな音楽の世界に浸れるとは、何と幸せなことでしょう。
 自分もこの自然の一部であることに感謝。頭の中で曲のフレーズをイメージ出来ることに感謝。
 これからも機会ある毎に、こうして自然と音楽のある世界を楽しんでいきたいなぁ。



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 先週までの温かい(暑い?)陽気から一転、週末は寒い雨の天気でしたが、今週に入ったらお天気も回復、いよいよ春本番の季節になってきたようです。
 我が家の庭のチューリップも綺麗に咲いて、もうそろそろ花びらが散り始めました。続いて膨らんできたのが牡丹のツボミ。ここ数日で今にも咲きそうな気配になってきました。牡丹って、ツボミの時はそうでもないのに、花が開くと辺りの空気が一気にゴージャスになるんですよね。もうすぐそんな貴婦人に会えるのが楽しみです。

 
−an 弾手−

第688回 「誕生から百年。心に沁みる琵琶湖周航の歌」 [2018.4.17]
 先日、コラム読者の方からご質問のメールがありました。
 拙著「お父さんのためのピアノ曲集・コードで弾く懐かしい日本の抒情歌」(ドレミ楽譜出版社刊)の中の「琵琶湖周航の歌」の楽譜についてです。

 『琵琶湖周航の歌を練習していて気付いたのですが……』ということで、メロディーが自分が知っている琵琶湖周航の歌と違うところがいくつかある、とのことでした。
 メールには

 6小節:最初のB♭ --> A
 7小節:DーEーG  --> CーDーF
 14小節: C  --> D
 15小節: E  --> F
 ではないか?

 とあったので、最初私はてっきりコードの事かと思ったのですが、コードにしてはおかしいと思い返信メールで確認したら、コードではなくメロディーを音名で書いて下さっていたのでした。
 なるほど、そう言われてみると疑問に思われたのも納得しました。
 そこで、この曲集の原稿を書いた時に参考にした資料で今手元にある日本の抒情歌系の本を数冊確認したら、この曲には幾つか違うメロディーの楽譜があることが改めて分かりました。
 例えば、野ばら社発行の「日本のうた」(1984年)、「愛唱名歌」(1988年)、「心のうた日本抒情歌」(1995年:いずれも初版年)に琵琶湖周航の歌の楽譜が載っていますが、その3つともそれぞれ違うメロディーの箇所がありました。また、全音楽譜出版社の「歌伴のすべて」(1997年度版)にもこの曲が載っていますが、これもまた微妙にメロディーの違う所があります。

 そこで改めて琵琶湖周航の歌について調べてみました。ネットの検索で出てきた情報ですが。
 ウィキベディアでは
 『この曲は1917年(大正6年)6月28日、第三高等学校(三高。現在の京都大学)ボート部の部員による恒例の琵琶湖周航の途中、部員の小口太郎による詞を「ひつじぐさ」(作曲:吉田千秋)のメロディーに乗せて初めて歌われた。その後この歌は、三高の寮歌・学生歌として伝えられた』とあります。
 もともと「ひつじぐさ」という曲のメロディーによる替え歌(?)だったようです。また、『琵琶湖周航の歌は口伝えで継承されてきたため、現在知られているメロディは原曲の「ひつじぐさ」とはかなり異なっている』ともありました。
 なるほど、『口伝えで継承されてきた』んですね。だから同じ出版社が出している数種類の本でも微妙に違ったメロディーが掲載されているんですね。
 そしてこの「ひつじぐさ」が雑誌『音楽界』8月号に発表されたのが1915年(大正4年)、そこに小口太郎が「琵琶湖周航の歌」の歌詞を載せ、歌われ出したのが1917年(大正6年)。もう100年間歌い継がれてきたのですね。

 私は大学時代ワンダーフォーゲル部に所属していて、よく山に登ってはテントで何泊もしたりキャンプファイアーをやったりしていましたが、そこでは皆で色々な歌を歌うのが習わしでした。そんな時によく歌っていた歌のひとつがこの琵琶湖周航の歌です。私も好きだった曲のひとつで、この心に沁みるメロディーを聴くと学生時代の事が懐かしく思い出されます。
 自分の本「コードで弾く懐かしい日本の抒情歌」を書いた時も、もちろん色々な資料を確認しましたが、最終的には自分が学生時代に慣れ親しみ口に馴染んだメロディーを優先して楽譜に起こしたのではと思います。

 そんなこともすっかり忘れていましたが、今回、読者の方からご質問メールを頂いて、自分の学生時代のことまで思い出させて頂きました。
 ありがとうございました!



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ちょっと、ひと言。

 昨日4月16日は熊本地震の本震からちょうど2年。あの時の恐怖は今もはっきり覚えています。そして熊本にはまだ避難所生活が続いている人たちがたくさんいます。熊本城の復旧工事も進んでいますが、元通りになるにはまだ20年以上掛かるようです。
 昨日、くまもと新創生プロジェクト主催のイベントに参加してきました。地震後の避難者支援や地域の復興に取り組んでいる一新校区自治協議会会長の方の講演「地震直後の指定避難所活動からの教訓」、そして文化の力で心の復興を目指す「平成28年熊本地震短詩の思いと祈り」の朗読会。
 改めて、熊本の創造的復興を目指す思いを新たにしました。

 
−an 弾手−

第689回 「春爛漫のウタタネ喫茶」 [2018.4.24]
 「春爛漫のウタタネ喫茶」って、先週末に行ったライブのタイトルそのまんまですが。

 うちの会社から国道3号を渡ってすぐ一本裏の道。この間徒歩3分。時々お昼のランチを食べに行く中華料理の店。敷地に入ると、国道のすぐ脇にあるとは思えない隠れ家のような異空間が広がります。
 木造の古い和風民家をそのまま利用した造り。紅い行燈が下がる廊下を過ぎると、室内の棚には中国風の焼き物や小さな人形などが並び、壁や床の間には中国山水画風の掛け軸が掛かっています。縁側の外には緑の草が生えた庭。四季折々の野草が花を咲かせます。

 そんな隠れ家のような所でライブがあるなんて思いもしませんでしたが、つい最近ライブの開催を知って行ってみました。
 iima(イーマ)という、男性ギターと女性ヴォーカルユニットの「最終回のうた」というデビューアルバム・リリースツアーらしい。あわせてflexlifeという、こちらも男性ギターと女性ヴォーカルユニット、そしてzerokichiという男性ウクレレ奏者、3組によるライブでした。

 日頃は昼しか行かない店です。というか、ここは火、木、金、土の昼だけしか営業してなくて。私がたまにランチでいく時も、お客は多くて2〜3組、私1人だけの貸切り(?)も当たり前、というひっそりした所。
 今回のライブは18:30〜でどれくらいお客さんが来るんだろう、と思ってましたが、約20名位のお客さんに囲まれた、いい雰囲気のお座敷ライブでした。

 3組いずれも全てオリジナル曲。心に語り掛けてくるような歌詞とメロディーが、日常の何気ない出来事を歌いながらも、気が付くと時空を超えて遠い宇宙の彼方まで来ているような気持にさせてくれました。

 特に、iimaのデビューアルバムのタイトルにもなっている「最終回のうた」は、最初タイトルだけ見た時は「デビューアルバム」なのに「最終回のうた」って、どういうこと? と思ったのですが、歌詞を聴いたら深いものがありました。

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 物語が終わるたび、ぼうやは泣いた
 絵本が終わり 映画が終わり 一日が終わってゆく

 春を見上げ 夏が過ぎ 翻る秋 冬を超えて
 まるで繰り返すような 朝と夜の景色
 とてもよく似ているけど 一度きり 一度きり

 最終回の後にも 物語はつづくのよ
 生きて生きて 何がおわろうと あなたを生きて

 (〜続く)
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 語り掛けてくるようなギターの音色と歌声。
 春の宵もとっぷりと暮れ、時を刻んだ古民家の薄暗い灯りに思わずウタタネしそうになりながらも、人生について色々と思いを巡らせてしまいました。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■皆さまからのメッセージをお待ちしています。
 いつも読んで頂いてありがと、ございます。皆さまのご感想をはじめ、ピアノへの思いや体験、日常のちょっとしたエピソードなど、お聞かせ頂けたら嬉しいです。どんな事でも構いません。下記のアドレスまでお気軽にメッセージをお寄せください。
 ご質問もありましたらどうぞ!

an弾手メールはこちら
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 いよいよ今週末からゴールデンウィークですね。
 次週火曜日(5月1日)は平日ではありますが、私が連休をとらせて頂きますので、このコラムはお休みとさせてください。次回のコラム更新は5月8日(火)を予定しています。
 皆さま、どうぞいい連休をお過ごしください!

 
−an 弾手−

第690回 「光と影の世界」 [2018.5.8]
 先日、熊本県立美術館で始まった展覧会「藤城清治・光と影のメルヘン展」の開会式に出席してきました。
 皆さんよくご存じのケロヨンをはじめ、様々なキャラクターが登場する影絵の世界を創り続けている藤城清治さんの展覧会。94歳になる藤城清治さんご本人も開会式に出席されてご挨拶がありました。今も作品を創り続けておられるそうです。
 その作品は私も小さい時から色々な所で目にしていましたが、今回ご本人のお話を直接お聞きし、たくさんの影絵作品を拝見して、その独特の世界観に改めて引き込まれてしまいました。

 影絵、というと何となくモノクロの世界のイメージがしますが、藤城さんの作品はカラフルでしかも動きがあり、美術館の展示でもキャラクターが動いたり、トンボが舞ったり、本物の水が流れるプールの向こうのカラフルな影絵が水に映り込んだりと、美術館の展示というイメージとはひと味違う世界でした。
 そして、その背景となっているのは、展覧会のタイトルにもなっている「光と影」。
 影絵だから光と影でしょ、と言ってしまえばそれまでですが、作品表現としての光と影の向こうに、自然や人の暮らし、文化、地球や宇宙を創っている光と影の存在を改めて感じさせてくれるようなスケール感でした。

 藤城清治さんの書かれた文章の中に、こんな言葉がありました。

 光りと影は人生そのもの。
 聖書にも「まず光あれ」とあるように、光はすべての根源であり、光の中に地球が生まれ、生命が生まれたといってもいいだろう。
 また、光によって生み出された影も神秘的で幻想的な無限の表現力をもっている。
 光と影で、自然の地球の美しさ尊さを描いているうちに、光と影は人生そのものだということに気がついた。

 この世界は「光と影」で出来ている……
 はい、これって、音楽(ピアノ)も一緒じゃないか、と思ったんです(ちょっと無理やりこじつけ感もありますが〜:笑)。

 ピアノを弾いている時、ただ単に楽譜に書いてある音符や強弱、速さなどに気をとられるより、その曲の世界に広がる「光と影」をイメージして弾いてみたらどうだろう、と。
 何が「光」で何が「影」かは各自の解釈によるでしょうが、そんな世界観を持ってその曲をイメージし、弾いてみたら曲の捉え方がまた少し変わるのではないかと。

 他にも、ひとつの考え方の例として(細かいテクニックの話になってしまいますが)、曲のコード進行の中のメジャーコードとマイナーコードを意識してみるとか。メジャーコードは「光」、マイナーコードは「影」という風に解釈すると、曲の中で光が射したり、影が落ちたり、という情景が広がるかも知れません。
 藤城清治さんが描く光と影の宇宙的なスケールの世界に、思わずピアノの演奏を重ねてイメージを広げてしまいました。

 なお、「藤城清治・光と影のメルヘン展」は、熊本県立美術館で4月27日から6月2日まで開催です。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 大型連休も終わりましたが、皆さま、どんな風に過ごされましたか。
 私は天草に行き、阿蘇に行き、菊池渓谷に行き、と緑を求めてさすらう旅(?)でした(笑)
 どこに行っても新緑が溢れるこの季節。海も山も、光と影が織りなすドラマが素敵でした。5月1日、2日の平日以外は、とてもいい天気に恵まれて良かったです。
 さて、いよいよ連休も明けたことだし、また仕事にも精を出さねば、ですね〜

 
−an 弾手−

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