第621回 「大人の趣味が拡げてくれる大きな楽しみ」 [2016.12.6]
 「最近もあちこちでピアノ弾かれてるんでしょ?」
 見知らぬ男性から親しげに声を掛けられました。

 コジャレたお店が並ぶ小さな裏通り。1階にフレンチレストランが入るお洒落なビルの3階。ピアニスト中田由美さんのスタジオmonotonyで開かれた「織原良次フレットレスベース・ソロライブ」に行った時のことです。
 こじんまりとしたスタジオのソファー席に掛けていたら、後から入ってきた男性が隣に掛けてきました。白髪混じりのあごひげが上品そうな風貌の男性。
 「最近もあちこちでピアノ弾かれてるんでしょ?」
 「え? 私をご存じなんですか?」
 「知ってますよ。よく演奏されているのをお見掛けします。an弾手さんの本も持ってますよ」
 「え〜っ、そうなんですか!? ありがとうございます!」

 私は全くお会いした記憶はないんですが、どこかのライブの店か何かですれ違っていたのかな。その後、その人の知り合いらしい別の男性が入ってきてその人の隣りに掛けました。あ、その人の顔はみたことあるなぁ〜。話したことはないけど。
 「すみません、どこかでお会いしましたっけ?」
 「あ、そうですね。何となくお顔知ってますよ。どこでしたっけ? バイーアかな?」

 そんな調子で、多分初めて言葉を交わす2人の(初老?の)男性とご一緒することになりました。

 話をしてみたら、最初のあごひげの男性、サックスを吹かれるらしい。その風貌でサックスを吹かれているところを想像したら、とてもカッコ良さそう。
 「いやぁ、教室に通い始めてもう10年になるんですけどね。なかなか難しくて〜。それに私、コードにも関心があるんですがなかなか身に付きません。コードよりすぐにメロディーにイメージが行っちゃうんですよ」
 そんな話で盛り上がりました。

 聞くところによると、サックスの教室に通っている人って、女性は30〜40代が結構いるけど男性は60歳過ぎが多いらしい。
 「定年して何か趣味でも始めようと思ってサックスを習い始める男性、多いみたいですよ。それで若い男性があまりいなくて」と。
 なるほど、『60代から始めるサックス』ね。カッコ良さそう。
 《余談ですが。この話し、帰宅して家人に話したら「あら、30〜40代の女性が多い教室って、60代の男性にとっては魅力的なんじゃない?」とコメントされました(笑)》

 リタイア後、じゃなくても人生の後半、興味があった楽器を手にし「なかなか上達しなくて〜」と言いながらもレッスンに励んだり、人前演奏にチャレンジしてみたり、あるいはそこで知り合った人達とライブに出掛けたり。素敵ですね!
 かく言う私も、中年から始めたピアノで全く新しい世界が広がってきたし、こうして夜の街で知らない人と出会ってすぐに音楽話で盛り上がることができるなんて、幸せなことです。
 音楽に限りませんが、こういう人の輪も大人の趣味が拡げてくれる大きな楽しみのひとつなのかも知れません。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 ついに12月突入ですね。先週は今回のコラムにも書きましたmonotonyでのライブも含めて5日連続で夜の街徘徊。そして昨日は早くも忘年会でした。
 夜の街徘徊も今週はあと2回程度ですが、来週になるとまた連チャンか?
 ちょっと疲れ気味ですが今年も残り少ないことだし、もうちょっと頑張りましょ(笑)。

 
−an 弾手−

第622回 「右手と左手で違うコードを弾く?」 [2016.12.13]
 唐突ですが。
 読者の方からだいぶ前に頂いたメールを見ていたら、コードについてのご質問がありました。その方へはその時に直接メールでお返事をしていましたが、このコラム上ではご紹介していなかったので、ここで改めて書いてみようかと思います。

 拙著「パパも弾きたいピアノ入門」(ドリーム・ミュージック・ファクトリー刊)に参考曲として坂本龍一「戦場のメリークリスマス」のコード奏法演奏例を載せているんですが、その中のコードについてのご質問でした。

 <戦場のメリークリスマス>の楽譜から一つ質問させてください。
 単純な質問かもしれませんが、第1小節がどうしてFになるのかな、と思ってしまいます。
メロディは、レミレラレ、とレの音が一番強調されているのに、レはFの構成音にない音ですよね。
 私の耳ではFよりDmにしたほうがきれいに聞こえていますが、an弾手さん、すみません、ここでFにする理由を教えていただければすっきりします。

 「パパも弾きたいピアノ入門」がお手元にないコラム読者の方にも何の話か分かるように、その部分の楽譜を下に載せてみます。


 はい、テーマのメロディーが始まった第1小節のところですね。確かにメロディーは「レミレラレ」なのにコードはFになっていて、左手で「ファ、ド、ファ」(コードFのルートと5度)を弾いています。
 確かに、ここをコードDmにするとレの音が構成音(と言うよりルートそのもの)で、とても素直に聴こえるのですが、この曲は作曲家・坂本龍一氏の意図としてあえて当たり前の響きではなく一種不思議な雰囲気を醸し出すように作られているのだと思います。
 コードFにすることで、ここのレの音はコードFの6度、というか、ルートから1オクターブ以上離れているので13度の音になります。いわゆるテンションコードです。
 このように、テンションコードを使うことで、当たり前でないちょっとエキゾチック(?)なムードを醸し出しているようです。こんなコードの使い方はこの曲のいたる所に出てきてこの曲の一種独特な空気感を創り出しています。

 ちょっと横道にそれますが、この手のテンションの入った響きを鍵盤上で簡単に出す方法があります。
 例えば、今回の例で言えば左手でコードFを押さえ、右手でコードDmを押さえるという方法です。すると難しい事は何も考えなくてもコードFに勝手に13度のテンションが入った響きになります。華麗なるアルペジオで駆け上がる時など、実に簡単にオシャレな大人っぽい雰囲気が出せます。
 このように左手と右手で違うコードを押さえる、という方法は他のコードでも色々と応用が利くので「この組み合わせだったらどんなテンションが入ってどんな雰囲気になるかな?」と考えて色々試してみると面白いです。
 時々、間違って右手と左手で違うコードを押さえてしまい、思いがけず不思議な響きになって「あれ、この雰囲気、何かに使えそう!」と発見することもありますよ(笑)



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an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 おとといの日曜日、自宅からほど近い飯高山に行ってみました。今年は秋がいつまでも暑かったせいか、紅葉があまり色付かないままに枯れてしまった傾向があるみたいですが、それでもちょうど今は紅葉の真っ盛り。夕陽が差し込む林の中は、木々の梢が黄色や深紅に煌めき、地面一杯にフカフカと鮮やかな絨毯が広がっていました。
 いつも行く場所でも、季節の変化やちょっとした陽の差し具合で毎回違った世界を見せてくれます。
 その時その時の空気の変化で違った世界が広がってくる……、そんなピアノが弾けたら素敵だろうなぁ、と思います。

 
−an 弾手−

第623回 「映画音楽作曲実践?」 [2016.12.20]
 『シガケイコのトキめく映画音楽講座』、先週が最終回でした。10月頭に始まって週1回、最初はまだ暑くて室内はクーラーが入っていましたが、あっという間に全10回のコースが過ぎ、すっかり寒くなりました。
 講師・志娥慶香さんの簡単なプロフィールを、このコラムのバックナンバー第613回に第1回目の講座の概要とあわせて書いていますのでご覧ください。

 映画音楽講座、というタイトルが付いていますが、音楽、作曲の専門的な話ではなく、サイレント映画(音楽は生演奏)の時代から始まり、その後サウンド版(音楽だけあり、セリフは字幕のみ)、そして音声付きの映画(しゃべる映画=トーキング・ピクチャー=トーキー)へと進化していく映画の歴史を追いながら、その時々の代表的な映画を例にとって映画と音楽の係わりを解説して頂きました。

 そして最終回は「映画音楽作曲実践」というテーマ。会場に電子ピアノがセットされ、志娥さんが実際に音楽制作に係わった映画「NOT LONG AT NIGHT」を例にとりながら、映画音楽が生まれる過程をライブ実演して頂きました。
 音楽無し(音楽以外の環境音はあり)の5分間程の場面を会場のスクリーンに映しながら、実際に志娥さんが映画音楽を創っていくステップの実演でした(実際の映画制作でも、監督からこの段階の映像を受け取って音楽を付けていくそうです)。

 この映画は、若い女性(主人公)が、様々な葛藤や不思議な運命の中で、道端にキーを付けたまま停まっていた車の運転席に一人乗り込み海に向かいます。その道の途中で様々な人や出来事、風景に出会い、最後にたどり着いた海から人生の何かを感じ取る、という?不思議なストーリー(あくまでも私の解釈ですが)。
 この映画の中から、今回の講座で映画音楽制作の実例として取り上げられたシーンは次の部分です。

 主人公の女性が海に向かう道の途中で車を停め、スマホを触り、何かを決意したような表情で目を上げる。そしてふと運転席横のボックスを開けると一冊の緑色の手帳が入っている。手帳を手に取り中を開こうとする女性。その時、車の外から聞こえてくる犬の吠え声。女性は手帳をそのままボックスの中に戻してドアを開け、犬の声がする方へ向かって歩き始める。少し進むと、鎖に繋がれた2匹の犬が彼女の方を向いて激しく吠えている。その様子をしばらくじっと見ている彼女の表情。やがて視線を上げてまた車の方へ戻って行く。車に戻ると、おもむろに左手薬指の婚約指輪を外して視線を上げる……。

  以上のシーンです。これにどんな手順で音楽を付けていくのでしょうか。

 まず、映像を観ながら、場面の展開や登場人物の仕草、表情、視線の動きなど、ドラマの展開に係わるポイントを言葉で書き出していきます。
 この例では、
 @ 停めた車の中でスマホを触り、その後視線が上がる→(彼女が何かを決意)
 A 緑の手帳を手に取る→(これ何? と観客に思わせる)
 B 犬が激しく吠える→(緊張感が高まる)
 C 犬をじっと見つめている表情→(心の変化がある)
 D 指輪を外し視線を上げる→(再び決意)

 このようにしてポイントを書き出し、次にこのポイントをベースに主人公の感情の変化を表現する音楽を創る、という実例を電子ピアノで実演して頂きました。
 例えば、
 A緑の手帳のシーン→不気味なアクセントになる音。不協和音。
 B犬の吠えるシーン→緊張感を出す音。ストリングスの重低音がズーンと聴こえてくる。
 C主人公の心の変化→ここでテーマのメロディーが聴こえ始める。

 テーマは、切なくモノ哀しい中に女性らしさが感じられるメロディーにしてみましょう、ということで映像に合わせて即興で弾いて頂きました。
 それを聴きながらノートにメモメモっ! 私には絶対音感はありませんのでキーはハッキリは分かりませんが、相対音感?で何とか階名をつかんで走り書き。手書きで五線を引いて音符にしてみました。はい、それがこれです。

  あくまでも私の耳コピーですので、実際に志娥さんが弾かれたのとは少し違うかも知れません。特に最後の2小節はもっと細かく音が動いていたような。
 でも、後日ピアノで弾いて確認してみたら、それなりの雰囲気に聴こえなくもありませんね(笑)。

 ま、それはそれとして、映画音楽制作の現場をチラッとでも覗かせて頂いて大変参考になりました。
 私は本格的な映画音楽制作に係わることはないと思いますが、このところ「物語と音楽」にはこだわっています。自分のライブでも語りを入れたり、また朗読に音楽を合わせたりもしますので、そんな時は同じような発想が使えるのかな、と思いました。



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ちょっと、ひと言。

 実はもう日にちが無いのですが、今回のコラムでご紹介した志娥慶香さんが今週末12月25日(日)に東京でソロライブをされます。年末だしクリスマスだし、皆さまお忙しいかと思いますが、もしご都合がつきそうでしたらお出かけください。残念ながら私は参加出来ませんが。
【志娥慶香クリスマス・ピアノライブ 北欧の記憶〜The Reminiscence of Finland〜】
【日時】2016年12月25日(日) open 18:30・start 19:00
【会場】綜合藝術茶房 喫茶茶会記
    住所:東京都新宿区大京町2-4
    (丸ノ内線四谷三丁目駅より徒歩3分)
    Tel.03-3351-7904 (15:00〜23:00)←ご予約はこのお店の電話まで。
【1ドリンク付料金】ご予約 \2,500- 当日 \3,000-


  以下、志娥慶香さんからのメッセージです。
 『今年3月、初めて訪れたフィンランドでかけがえのない体験をしました。美術展の関係でコンサートをするために訪れ、芸術を愛するフィンランドの方々や、シリア難民の方々や、美術、そして大自然と出会いました。フィンランドでインスパイアされた、あの寒い孤独で神聖な冬の記憶を辿りたいと思っています。オリジナル曲が中心ですが、さらにフィンランドで出会った民謡や賛美歌などを自分なりにアレンジしたものや、景色を音にしてみようかと。クリスマスの夜を皆さんと過ごせること、とても幸せです。私の東京のホームグラウンド、とても素敵で濃密で静謐な文化サロン「綜合藝術茶房 喫茶茶会記」にてお待ちしております』

 
−an 弾手−

第624回 「今年も1年間、ありがとうございました!」 [2016.12.27]
 いよいよ今年のan弾手コラムも今回が最終回となりました(ハヤッ)。
 特に今年は4月の熊本地震の衝撃が大きく、頭の中や気持ちが混乱しているうちにあっという間に夏が過ぎ秋になり冬が来て、1年が終わろうとしています。このコラムでは地震直後のご報告以外は、極力地震の話には触れないようにしてきましたが、それでも自分のピアノとの係わりに地震の影響は大きかったなぁ、と思います。一番大きかったのは、今年もまたan弾手ピアノライブ「Sweet Piano Night」の準備を始めていた春先に地震が来て、気持ちがすっかり飛んでしまったことでしょうか。

 そんな時、たくさんの読者の皆さまから頂いた地震へのお気遣いのメール、本当に力になりました。ありがとうございました。私自身は地震の大きな被害はありませんでしたが、まだまだ大きな被害に苦しんでおられる方がたくさんいらっしゃいます。また南阿蘇の崩落では、私の古くからの知り合いの方も亡くなられました。そんな方々の気持ちに寄り添いながら、私自身ももっと元気を出していかねばと思います。

 それにしても、この1年、an弾手コラムに目を通して頂いたたくさんの皆さま、そして私宛にわざわざご感想やご質問や近況のメールを送って頂いたたくさんの皆さま、本当にありがとうございました。改めて感謝申し上げます。皆さまに見て頂いているということが、私がこのコラムを続けることが出来る大きな原動力になっています。ありがたいことです。

 また今年7月にはこのan弾手コラムも連載600回を迎えることが出来、全国からたくさんの励ましメッセージを頂いたことも大きな力になりました。改めて感謝申し上げます。

 こうして皆さまへの感謝を改めてかみしめながら、「これって、ピアノの演奏と同じだなぁ」という気がしています。ピアノって、覚え初めの頃は目の前の楽譜や鍵盤を見ながらとにかく決められた通りに弾くことに必死です。少し慣れてくると、自分が習ったこと覚えたことを自分の世界で「上手に」弾けることが嬉しくて、人前では緊張しながらも「ほら、見て!聴いて!」という気持ちで弾いてしまいます。でも、もっとその先には「私は弾く人、あなた達は聴く人」という区別ではなく、弾いている自分と聴いている人たちとが同じ気持ちになり、一緒にひとつの音楽の世界を創っていく、という瞬間があるのでは?という気がするのです。そんな世界に憧れます。
 それは自分の著書やこのコラムでも同じことですね。読者の方と自分とが同じ気持ちになり、一緒にひとつの世界を創っていけたらどんなに素晴らしいだろうと思います。

 先週末、このコラムの最初の頃からずっと読者でいてくださる女性(愛知県在住)の方から『an弾手さん、こんにちは〜。お元気ですか?』というメールを頂きました。
 『今年ももう終わりですね。毎週an弾手さんのブログを拝見させていただいてます。お仕事もバリバリの現役で、そのうえ趣味のピアノもどんどん広がりを楽しんでおられる姿をとてもまぶしい思いでみています。私もがんばらなくちゃって、とっても励まされています。…(中略)…私は来年はもっと積極的に生きていきたいって思います。来年もよろしくお願いしま〜す。』

 積極的に生きていく…素敵な言葉ですね。
 私も、もっともっと積極的に生きていきたいと思います。

 新しい年が、皆さまにとって素敵な年になりますように!
 皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください〜!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 上の本文でも書きましたが、今年も残すところあと4日、あっという間に今年も過ぎようとしていますね。
 来週の火曜日は1月3日でお正月休みの最中です。ということで、来週のan弾手コラムはお休みさせてください。次回の更新(第625回)は2週間後の1月10日(火)を予定しています。
 皆さまはどんなお正月を過ごされますでしょうか。お正月の体験とか新しい年の抱負とかありましたらどうぞお聞かせください。2週間後にまたお会いできるのを楽しみにしています。

 
−an 弾手−

第625回 「日々是好日」 [2017.1.10]
 年が明けて10日経ちましたが、今年初めてのan弾手コラムです。
 明けましておめでとうございます。
 皆さま、どんな新年を迎えられましたでしょうか。私は、いい天気と温かな気温に恵まれて穏やかなお正月を過ごすことが出来ました。

 さて、2017年の私のテーマは……?
 『日々是好日』ということで。

 それは12月31日のこと。私は、目の前に穏やかな海が広がる小さな島の海岸にいました。冬の海岸には人影もなく、真っ青な空と穏やかな波打ち際に冬とは思えない温かな午後の陽が差していました。先日までの下界(?)での年末の慌ただしさが、どこか遠い別世界の出来事だったような気がしました。
 そして、潮が引いた遠浅の浜辺は一面の緑色。顔を出した広い岩場が、びっしりと海藻に覆われています。やがて遠くの島影の向こうに沈んでいく夕陽。次第に海と空が紅く染まっていきました。

 そんな情景の中にいて、ふと昨年受講した映画音楽講座の最終回を思い出しました。コラムバックナンバー第623回「映画音楽作曲実践?」です。
 そのコラムにも書いていますが、音楽なしの映像を観ながら、そこに映像のストーリーを語る音楽を付けていく作業。まさに今目の前に広がる情景と時間の経過の中で、音楽でどんなストーリーを語るのか。
 講座で教わった手法は、映像を観ながら場面の展開や登場人物の仕草、表情、視線の動きなど、ドラマの展開に係わるポイントを拾い出し、キーワードを書き出し、そのポイントの流れに沿って音楽を付けていく、というもの。
 今、目の前に広がる非日常の情景、そしてその中に立っている自分(主人公?)の感情の動き。そのバックに流れてくるのはどんな音楽なんだろう。
 もちろん、その時そこで実際に音楽をつくった訳ではありませんが、そんな妄想を広げてくれる至福の時間でした。

 そして自宅で迎えた新年の朝。和室に入ると床の間に綺麗な朝日が差していました。赤と緑のコントラストがお正月らしい千両の生け鉢。そしてそこに掛かっている掛け軸の文字が『日々是好日』。
 『どんな雨風があろうとも、日々に起きる好悪の出来事があっても、この一日は二度とない一日であり、かけがえの無い一時であり、一日である。この一日を全身全霊で生きることができれば、まさに日々是れ好日となるのである。好日は願ってえられるものではなく、待ってかなえられるものではない。自らの生き方に日々に好日を見出しえなければならないのだ。時の時とするときは来ない、只座して待つのでなく主体的に時を作り充実したよき一日一日として生きていくところにこの語の真意がある』(安延山承福禅寺サイトより引用)。

 あの小さな島の海岸で、非日常のドラマの中に何かを感じた時間も、ある意味、自分にとっての貴重な『好日』だったのかも?

 今年一年、『主体的に時を作り充実したよき一日一日として生きて』いきたいと思います。
 皆さまにとって今年が希望の年になりますように!



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 先日、ある人と話をしていて「an弾手さんの今年の抱負は何ですか?」と聞かれ、今回のコラムに書いた「日々是好日」の話しと、もう一つ、「今年はまたan弾手のライブを企画してみようかと」と答えました。その人は今、ある海外の友人と新しいビジネスを立ち上げる話をしているらしい。私とは随分スケールが違いますね(笑)
 私も自分の身の回りで出来ることから一歩ずつ挑戦していきたいと思います。皆さま、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 
−an 弾手−

第626回 「お正月を挟んで、お二人の読者の方からメールが」 [2017.1.17]
 ちょっとビックリしました。いい意味で。
 年末、そして新年早々に頂いたお二人の読者の方からのメール。で、私を含めて三人が何と同い年! これも何かのご縁?

 お一人のメールは昨年12月22日のこと。
 『はじめまして。本の後ろを見てメールさせていただきました』で始まっていました。

 東京多摩に住む68歳です。自己流ですが弾くのが好きです。はじめはいろんな曲を弾けたらいいなあと希望感じて「体験的コード奏法超入門」を2007年に書店で買い長い年月すぎました。3冊あります。いつかしっかりマスターしたい気持ちです。
 ご本読むと、あれこれ工夫くださり弾く喜びを伝えてくださろうという著者の思いやりやお気持ちを感じてきました。音楽に縁遠かった私にも、いつかいいなあという音楽を好きに弾ける希望を感じさせてくれます。
 繰り返し読み、実践したりわからなかったりしながら数年間繰り返し、歩みは遅く本は古ぼけましたが大事にしています。またコードの勉強、転回や楽典など音楽の奥深さを感じて終わりはないと今もやり続けています。ポツポツ何年もかかりやっと意味がつかめて楽しめるようなりつつあります。何度読んでも新鮮です。いま心にメロディーが日々あふれ出て新鮮です。
 (中略)
 もし良かったら東京でこのコード奏法の集まりや勉強会があったらお邪魔しないようにしますので見学を、させてもらえませんでしょうか。

 東京多摩在住の68歳の男性の方、お便りありがとうございます!
  拙著「体験的コード奏法超入門」、お父さんのためのピアノ教室(ドレミ楽譜出版社)ですね。2007年ということはもう9年経たれたんですね。『3冊あります』ということは、あと2冊は「お父さんのためのピアノ曲集」シリーズでしょうか。
 『音楽に縁遠かった私にも、いつかいいなあという音楽を好きに弾ける希望を感じさせてくれます』とのこと、同世代の方にそう思って頂けるのはとても嬉しいです。『いま心にメロディーが日々あふれ出て新鮮です』というお言葉も素敵ですね。
 『東京でこのコード奏法の集まりや勉強会があったら』とのことですので、東京の「弾手の会」をご紹介しました。お世話役の弾ディ(中島)さん、もし連絡がありましたらよろしくお願いします。

 そして年が明けた1月10日のこと。今度は福岡市在住で1948年生まれ、という男性の方からメールがありました。

 鮎川様の「楽譜が読めなくてもいきなり弾ける2週間速習ピアノ講座」という本(an弾手注:講談社刊、著者名はan弾手の本名・鮎川久雄になっています)に昨日図書館で偶然出会いました。
 私は2年前に会社を退職して、自宅に娘のグランドピアノが10年以上ほったらかしにされていたので1年前からちょっと弾いてみるかと弾きはじめました。しかし両手で弾くのは至難の業で現在弾けるのは、「結んで開いて」と「ハッピィバースディ」の2曲くらいで孫に笑われています。この2曲も弾くほどに奥が深くて自分の不完全さを感じるばかりですが……。ピアノ教室に行く気にもなれず、どうしたものかと考えていました。そんな中で鮎川様の本に出会い、もう少し頑張ってみようかなと考えています。生年も鮎川様と同じ1948年で、何かの力をいただいたような気がしています。誠にありがたくて、ついついメ−ルをしてしまいました。本当にありがとうございました。 鮎川様におかれましては今後ともますますのご活躍をお祈りしています。私もがんばりたいと思います。 それでは失礼いたします。

 こちらの方も同い年? それにしても図書館でたまたま私の本を手にされて、その翌日には早速私にメール頂けるとは。嬉しい限りです。本の著者のプロフィールを見て、そこに連絡を入れるというのはかなりハードルが高いと思いますが、その積極性が素晴らしいですね。
 2年前に退職され、ご自宅にあったグランドピアノを弾きながらお孫さんと触れ合われているなんて……素敵な毎日ですね。ピアノのコード奏法は、簡単な弾き方から高度なアレンジまで、弾き手のレベルや都合に合わせて臨機応変に楽しめる方法ですので、ぜひこれからもマイペースでピアノライフを楽しまれてください。

 全国の、お会いしたこともない方と(しかも同年齢?)年末年始早々、こうしてピアノの話題で親しく盛り上がれるのも何かのご縁?幸せなことです。ありがとうございます!
 今年も、自分の中での新たなピアノ世界への深化と、そして自分の外へのたくさんのピアノつながりの輪が広がっていったらいいなぁと思います。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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 先週末から日本列島は寒気に見舞われ、大雪で大変な所もあるみたいですね。皆さまの所はいかがでしょうか? こちら熊本は、寒さは厳しいですが青空の天気が続いています。
 うちの会社の近くに坪井川遊水地という、広〜い湿原地があります。周囲を歩くと1時間程もかかる位の広さです。昼休みや夕方時々歩いてみると、沼に鴨や白鷺がいたり、広い空から差し込む光に枯れたススキの原が揺れていたり、綺麗です。これから春が近づくにつれ、顔を覗かせてくる名も知らぬ野草や野花に会えるのも楽しみです。

 
−an 弾手−

第627回 「童謡 歌い初め大会」 [2017.1.24]
 演奏が始まりました。
 ……えっ? 浜辺の歌? これって、さっきまで私が弾いていた曲じゃん!

 その日は、益城町文化会館ホールで開催された(株)「童謡」主催の「童謡 歌い初め大会」。NPO日本国際童謡館やDOYO組の歌手が「童謡のお年玉」として毎年1月に開かれている童謡コンサートです。
 そこに出演者として登場した、背が高くて色の黒い外国人男性歌手。スリランカ出身の「カマル」さんというらしい。2004年に熊本でのコンサートに音楽グループで初来日したのをきっかけに、日本の素晴らしさを学びたいという強い思いから熊本の九州ルーテル学院大学の心理臨床学科に留学、2011年からルーテル学院中学・高校教師をする傍ら、童謡・唱歌・ポピュラーをレパートリーとした音楽活動も展開中なんだそうです。

 あ、冒頭に書いた、さっきまで私が弾いていた曲、というのは、もちろん私がこのコンサートで弾いていた訳じゃなくて、コンサート会場に来る前、自宅で自分のピアノ日課としてちょっとピアノに触っていた、っていうだけなんですけどね。
 毎日、ちょっとでもピアノに触るのを日課にしているので、平日は仕事から帰宅して夕食の後に、休日は昼間にでもなるべく時間を見つけては弾くようにしています。と言ってもあまり長い時間は出来なくて、せいぜい30〜40分位なんですけど。特にこのところ寒くて指は冷え切ってるし、足元はスース―するし、なかなかピアノの椅子までたどり着く決断(!)が大変です。それでも毎日鍵盤に触っているのと何日も触らずにいるのとでは何となく違うような気がします。
 で、その日もコンサートに出かける前に家でピアノを弾いていました。最近弾いているのは洋楽系や童謡唱歌等あわせて14〜15曲位。時間にしてほんの40〜50分位でしょうか。そしてその日の最後に弾いていたのが「浜辺の歌」だったんです。そんなことはすっかり忘れてコンサートを見ていたのですが、外国人の男性歌手がいきなり歌い始めたのが「浜辺の歌」。一瞬ヴィジュアル的な違和感がありましたが、すぐに歌の世界に引き込まれてしまいました。純粋に「日本の唱歌」と思い込んでいたこの曲が、目の前で異国の黒い肌の男性が歌っているのを聴いてすぐに馴染んでしまったのです。実は彼の歌い方が、さっきまで自分が弾いていたピアノの「浜辺の歌」と雰囲気がとても似ていました。彼が日本の童謡唱歌の世界(あるいは日本的な風景や抒情性)に寄せる思いがとても伝わってきましたし、音楽に国境はないんだなぁ、という気持ちにもなりました。
 続いての曲が「荒城の月」。あ、これもさっき弾いてたし〜(笑)。

 すっかり異国の男性歌手の話しばかりになってしまいましたが、その日のメインはNPO日本国際童謡館専属歌手の「そがみまこ」さんと「星野ひな子」さん、そしてDOYO組の若い女性グループ、プチDOYO組の小さな女の子たち。みんなお正月らしい綺麗な着物姿で童謡唱歌の数々を元気一杯に聴かせてくれました。

 余談ですが。出演者の一人、星野ひな子さんは、もともと山梨ご出身で10年ほど前に熊本でNPO日本国際童謡館専属歌手として活躍され、今はまた山梨をベースに引き続き音楽活動をされています。彼女の熊本時代には私も色々とご縁を頂き、複数のイベントのアトラクションで彼女のピアノ伴奏をさせて頂きました。その時は何度も事前の打ち合わせやリハーサル、伴奏用のピアノアレンジを工夫するなど、本番での演奏以外にも色々と貴重な体験をさせて頂きました。懐かしい思い出です。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 先週金曜日の大寒を狙ったかのように全国的な寒波。ここ数日は熊本の平地でも雪が舞っています。昨日の夕方は高台になっている熊本空港まで人を迎えに行きましたが、途中の坂道で車がスリップしないか、ちょっと不安でした。無事往復出来て良かったです。
 全国的に厳しい冷え込みや豪雪の所も多いようですが、どうか気を付けてお過ごしください。

 
−an 弾手−

第628回 「さて、そろそろ2017年のan弾手ライブの企画でも」 [2017.1.31]
 もう1月も31日ですね。はやっ。
 3週間前、今年最初のan弾手コラム第625回の「ちょっと、ひと言」で、「今年はまたan弾手のライブを企画してみようかと」なんて書いていましたが、そう言いながら今年も残すところあと11ヵ月になったんですね(笑)。こりゃ、すぐにでも行動をおこさないと、と思って、ライブの企画に着手することに致しました〜!

 そう言えば、これまでan弾手ライブをさせてもらっているいつものライブハウスの店長さんは「またそのうちにライブをお願いしたいと思っています」と声を掛けてくださるし(貸し会場としてお店を使わせてもらうのではなく、いつもお店の企画としてan弾手ライブを開いてくれています)、別の店のオーナーさんからは「うちの店でも何か企画してくださいよ」と言われるし、夜の街でお会いする(でしかお会いしない?)音楽つながりの顔見知りさんからは「次のライブはいつですか?」と聞かれるし、先日は大学の同友会の席で先輩から「あなたのピアノ聴いたことないので、今度演奏会とかする時は必ず連絡下さいね」とご挨拶頂いたし。
 ほんと、社交辞令込みとはいえ、こんなに声を掛けて頂けるなんてありがたい事です。だからという訳でもありませんが、自分の中でもそろそろ気持ちが動き出してきました。

 私のライブでは、曲を聴いてもらうだけではなく、一つの物語の中でトークと演奏が展開していく、というのをテーマとしているので、まずはその大きな物語を構想しないといけません。
 前回のライブからだいぶ時が過ぎてしまったので、改めてこれまでの内容を振り返ってみました。
 2012年と2013年の5月には、山都町の清和物産館で「春から夏へ。季節の彩・an弾手ピアノTime」を、2014年3月にはライブハウスで「Sweet Piano Night〜春の抒情歌と洋楽スタンダード」、同じ7月には「Sweet Piano Night〜an弾手サマーライブ」を、そして2015年11月には「an弾手ピアノライブ〜秋から冬へ。遠い記憶の旅」。その間、ライブと言えるほどじゃなくても熊本県立劇場OB会の席とか異業種交流会のイベントで弾かせてもらったりとかはありましたが、去年2016年は春先の熊本地震もあって何にもやってなかったですね。

 さて、これまではどちらかというとその時期の季節のイメージが強い曲を中心に選曲し、季節をテーマとした物語で構成していたように思います。今度はどうしようかなぁ。
 これまでの演奏曲目リストを見てみたら、洋楽スタンダード系が30曲位、日本の抒情歌系が30曲位、J-POP系やオリジナル曲が15曲位でした。これに、まだ弾いたことのない曲も加えながら、去年の11月に聴きに行ったソプラノ歌手、福嶋由記さんの「日本の歌コンサート 雪月花」のような、四季を通した構成にしてみようかなぁとも思っています。

 これから曲選び、そしてストーリーの構成。楽しみながらシナリオを考えてみたいと思います。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。

 一週間ちょっと前は大寒波で熊本でも雪がチラついていたのに、先週末からはすっかり温かくなって、このまま春に?な〜んて思ってました。ところが今朝はまたすっかり冬に逆戻り。真っ白い霜が降りていて寒いです。雪の所もあると思います。どうかお気を付けください。
 先週土曜日、庭に出たら、穏やかな日差しの中に紅梅が一輪、花を開いていました。
 三寒四温。寒い中にも春の足音は確実に近づいて来ているようです。

 
−an 弾手−

第629回 「Still Myself」そのA [2017.2.7]
 ちょうど2年と4日前になりますね。
 2015年2月3日。an弾手コラム第532回に同じタイトルの記事を書いていました。その時はピアニスト中田由美さんから「新プロジェクトをスタートしますから!」との案内を頂いて行ったライブの話でした。そこでは由美さんが近日リリース予定というCDから、オリジナル曲で熊本の街の風景を描いた「雨の船場橋」、そして「Still Myself」の演奏がありました。
 あれから2年。『近日リリース予定の〜』と言われていたCDが、遂にこの度発売になりました。去年春の熊本地震の影響もあって準備が大幅に遅れていたそうです。

 先日、由美さんのピアノスタジオmonotonyで『アルバム完成記念モノトニーカフェをやってますから』と聞いて行ってきました。このスタジオmonotonyはコラム第598回「自分らしく?」とか、第621回「大人の趣味が拡げてくれる大きな楽しみ」とかでも触れていますが、小さな裏通りにあるお洒落なビルの3階で、ミニライブが開ける空間です。ライブの時はちょっとしたドリンクやお菓子も出してくれるカフェにも早変わり。その日はライブではなかったですが、CDの販売とお茶と会話のひと時でした。

 お洒落なビルの外階段を上がり、綺麗なフラワーポットが並んだテラスから室内に入ると、由美さんが笑顔で迎えてくれました。他に先客で由美さんの友人らしい4人組のお客さん。そして、いつもライブで由美さんと『ふたつの花』というDUOを組んでいる女性ヴォーカリストさんから「ドリンク何にされますか?」と聞かれ、「あ、その前にまずはCDをください」と言ってさっそく購入。その場で由美さんのサイン。その後でドリンクの注文。「あ、イントロなしでいきなりテーマに入ってすみません〜!」とは(心の中で思っただけで)言いませんでしたが〜。

 そのCD。タイトルは「Still Myself」
 1. Still Myself
 2. 150円の景色
 3. 並木坂
 4. 明日の太陽
 5. 船場橋Rain
 6. Still Myself(ending.ver)

 いずれも由美さんのオリジナルで、熊本の懐かしい風景やそこで暮らす由美さんの想いを描いた曲。曲のタイトルは熊本以外の人にはイメージが湧かないかもですが、「150円の風景」とは150円で乗れる路面電車の窓に流れていく熊本の街の風景。「並木坂」は熊本市内のアーケード商店街のはずれに続く緑いっぱいの道、なじみの店になじみの人たち、細くてゆるやかな石畳の道。「船場橋Rain」は肥後てまり唄「あんたがたどこさ」に歌われている古い町並みの船場川に掛かる船場橋の雨の風景。
 また「明日の太陽」は『見えないものと見えるもの、両極のようなそれは繋がっていていつも行ったり来たり、時々入り込む心の奥深いところに混沌とする光と影』。
 そして「Still Myself」。由美さんのコメント『大きく自分を振り返り、見つめ直すときが訪れて。たくさんの気づきをくれた周りの人の優しさに感謝の気持ちがあふれたとき「自分らしさを自分の支えにしていきたい」と生まれた曲です』と。さらに『ピアノに向かいはじめた子どものころ、そして今とちょっと先の自分をイメージして、ピアノを弾き続けていられることとこの作品を発表できることの喜びをかみしめています』とありました。

 由美さんがこれまでの半生を振り返りながら、自分を育ててくれた周りの人や熊本の街に思いを込めて、今の、そしてこれからのピアノ人生に馳せる気持ちがこのCDに込められている?(って私の勝手な想像ですが)

 キャリアの永いプロのピアニストと同列に語れるan弾手ではありませんが、自分のこれからのピアノライフにも、じっくりと噛みしめてみたい由美さんのコメントでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 2月ももう7日。今月の火曜日(an弾手の更新日)は7の倍数で分かりやすいです。あ、カレンダー見たら3月も火曜日は7の倍数だ(って、別に関係ない話ですが:笑)。
 暦の上では節分も立春も過ぎましたが、もうしばらくは繰り返し寒い日がやって来るんでしょうね。昼休みによく散歩する会社近くの坪井川遊水地も、まだまだ枯れた茶色の湿原が一面に広がっています。やがて川の土手に黄色い菜の花が咲き始めるのが楽しみです。

 
−an 弾手−

第630回 「理論や技術はその後からついてくる?」 [2017.2.14]
 朝目覚めると、窓のカーテンに外から明るい陽が当たっていました。
 前日の天気予報では夜から午前中にかけて熊本の平野部でも積雪3pと聞いていたので、『お、雪景色に朝陽か?』と、ちょっぴり期待してカーテンを開けてみたのですが。あらま、雪の気配は全く無し。
 テレビでは山陰を中心に大雪の大変な映像が流れていましたが、熊本市内は青空から明るい陽が差す先週の土曜日でした。

 軽い朝食の後、久し振りにグランドピアノの蓋を開けてみました。このところ平日の夜はもちろん、休日も電子ピアノにヘッドホンが多かったし。やはりグランドピアノの響き、いいですね。耳だけでなく、身体にも心にも響きます。
 ピアノを弾きながら、リビングから見える庭に時々パーッと明るい陽が差します。すると気持ちがパーッと明るくなります。少しすると曇って庭の景色が陰ってきます。すると何となく気持ちも暗くなります。やがてまたパーッと陽が差します。気持ちが明るくなります(実に単純な:笑)。
 そんな気分の中で、気が付いたら1時間近く弾いていました。楽譜なしで思い付くままに15〜16曲位? 練習、というより気持ちの向くままに。
 『どうせなら、もっとちゃんと自分なりに課題を決めて練習した方がいいんじゃない?』という声も聞こえてきそうですが、でもこういうのって自分にとってはとても大切な時間だという気がするのです。
 ある音楽(ジャズやセッション)指導者の方が、メルマガでこんなことを書いていました。
 『音楽は、1に感性2に理論、34が無くて5に技術! …自分に素直になり、まずはあなたの中に眠る【独自の感性】から物事をスタートしてほしい』と。
 『1に技術、2に理論それができて初めて感性、じゃない』と。
 確かに。『まずは技術の基礎訓練を重ねて、それから難しい理論を学んで、その後やっと音楽の感性の境地に行ける』って言われてもですね。

 雪の舞いそうな寒い朝。シンとした庭に差す明るい光に気持ちも明るくなりながらピアノを弾く。しばしの音楽浮遊体験。ま、聴いている人にはどんな風に聴こえていたか分かりませんが。いいじゃないですか。これぞ大人のピアノ。
 理論や技術はその後からついてくる。至福のひと時を楽しみましょう。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 昨日、今日といいお天気。風は冷たいですが、青空に白い雲が浮かんで気持ちがいいです。春の足音が遠くから聞こえてきそうです。
 そういえば、今日はバレンタインデーですね。最近はちょっと縁遠くなってしまった私ですがぁ〜(笑) 皆さまのところはいかがでしょうか。
 本命も、義理も、自前も(?)、笑って楽しくスウィートに春の前触れの一日を楽しめたらいいですね。

 
−an 弾手−
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