第611回 「3種類のプロ、3種類のアマチュア」そのA [2016.9.27]
 今週のコラムは、前回(第610回)からの続きです。前回をお読みでないと何の話か分からないと思いますので、まだの方はぜひ前回からお読み頂けたら幸いです。
 前回↓
 第610回「3種類のプロ、3種類のアマチュア」その@

 30歳を過ぎ、その東京のデザイン事務所を辞めて熊本にUターンし、自分でデザイン会社を立ち上げた私は、デザインの更なる修練はもちろんですが、それまで自分が学んだことがなかった「経営」の勉強にも取り組みました。ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、今は亡き一倉定先生の一倉セミナーです。数年に渡る福岡、東京でのセミナー、そして沖縄での2週間の合宿セミナー等々(この勉強にどれだけ時間と費用を掛けたことか:笑)。そこで叩き込まれたお客様第一主義の「社長学」は、会社の経営だけでなく上に書いた第3の考えにも通じるものがあり「プロのデザイン」に関して強い信念になっていきました。

 仕事の打ち合わせでは、可能な限り先方の社長か幹部社員の方とのヒアリングの機会を作ります。その時の具体的個別の発注内容以外に、事案にもよりますが、例えば先方の業務内容、商品、社内体制、お客様、競合、外部ネットワーク、あるいは今後のビジョンなど、様々な角度からのヒアリングを行うこともあります。(時には、デザインを頼んでいるだけなのに何でそんなことまで聞くの?と不審がられて仕事を切られたこともありましたが)。
 ただ、そうすることでその会社の課題や隠れた強みなどが見えてきます。そんな会話の中で先方の社長さんが「あ、そうそう、そうだよね!」と自社の強みを再発見し明るい顔になられることもよくあります。「じゃ、そのあたりの強みを今回の企画でも強調してみましょうか」などと、打ち合わせの中でほぼ企画の方向性やデザインのイメージが出来上がっていきます。自社に戻ったらそれを具体的な形にするだけです。
 そうやって生まれるデザインはクライアントにも喜ばれ、デザイナーが自分の感性に沿って表現したものとか、発注者の意向をそのままなぞって表現したものに比べるとずっと深みがあるような気がしますし、やっていて本当に「デザイナー冥利」に尽きるものがあります。

 ●【次に「アマチュア」の3段階について】
 その@ 実は私は大人になってから趣味でピアノを始めました。ピアノの先生に教わるわけでもなく、娘のために買った電子ピアノでひたすら楽譜をなぞるだけ。そんな「恐怖の楽譜丸暗記奏法」に行き詰っていた頃、たまたまラジオでコード奏法という話を聞いて飛びつきました。ラジオに出ていたライブハウスのマスターの店に習いに行くようになり、すっかりハマってしまいました。自分でピアノが弾けるという喜び、楽譜に頼らず自分の気持ちで自分の指先からピアノのメロディーが流れ出すという奇跡に酔っていたような気がします。
 アマチュアピアニストの第1段階だったでしょうか。
 そのA やがてそのライブハウスでの人前演奏デビュー。その後はあちこちのスナック、クラブなど夜の店や、昼間でもお洒落なレストランなど、ピアノを見掛けると図々しくも飛び入り演奏。まあ、結構ハタ迷惑だったかと思いますが。でも、それは1人で自分の中で練習している段階から、周りの人や環境、様々なシチュエーションと係わりながらピアノを楽しむ、というアマチュア第2段階へのステップだったかもしれません。
 そのB そんな自分のピアノ体験談をan弾手というペンネームでブログに連載し始めた14年前。やがてその記事がきっかけで、大人の初心者向けピアノ入門書や私自身のピアノ体験談などの本が、中央の複数の出版社から何冊も商業出版されるという流れに。たちまち日本中(一部海外)の読者の人達からメールやコンタクトを頂くようになり、東京に「弾手の会」というオフ会も誕生して交流が始まりました。
 自分の内側での楽しみだった趣味のピアノが、同じ思いを持つ不特定多数の人達への情報やヒントとして社会的に役立たせて頂くことに繋がっていきました。それをここではアマチュア第3段階と呼ぶことにしましょう。出版の本からはささやかながら印税が入りますし、演奏ではたまには「お礼」「交通費」などの名目でお金を包んで頂くこともありますが、これらもアマチュア活動の延長と考えています。

 さてさて、自分の体験から考えてみた極私的プロとアマの3段階。この先、自分にとって第4、第5の段階があるのか無いのか、興味津々ではあります。
 (総合文化誌KUMAMOTO No.14に掲載の原稿より転載)



(続く→原則毎週火曜日更新)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。

 もう9月も今週で終わり。まだ昼間はそれなりに暑いですが、朝夕はすっかり秋らしくなってきたような気がします。
 おとといの日曜日、家の近くの畑や田んぼの周りを歩いたら、あぜ道に真っ赤な彼岸花が咲いていました。頭を垂れた稲と彼岸花の組み合わせ、いかにも「日本の秋」という光景ですね。
 ふと、秋の抒情歌のピアノの音が聴こえてきそうでした。

 
−an 弾手−

第612回 「夢の中にひまわりが咲いた夜」 [2016.10.4]
 朝、目が覚めたら、頭の中に「ひまわり」のメロディーが流れていました。そう言えばずっと夢の中でも鳴っていたような。

 前の日、あるライブレストランであった熊本復興支援コンサートに行った帰り、車を停めていた駐車場に向かう途中でホテル日航熊本の中のラウンジ前を通り掛かったのですが。
 「あ、土曜の夜はここで知り合いのピアニストの人がラウンジピアノを弾いていたっけ」
 そう思ってピアノの方を覗いてみたら。ピアノの蓋は開いていますがピアニストの姿はなし。
 「ちょうど今、休憩時間かな?」
 そう思った瞬間、ピアノ近くのテーブルにいた別の知ってる人と目が合いました。
 「あ、今日はどうしたんですか?」
 そう聞いたら
 「今日はいつものピアニストの代わりに私が演奏やってるんです」と。
 なんでもいつもの人は別の用事があって、今日は代役を頼まれたらしい。
 「そこの席、いいですか?」
 そう言ってラウンジに入り、ちゃっかり同じテーブルに掛けさせてもらいました。

 懐かしい。もう10年程も前になるかな。その頃、夜の街に出るとよく足を運んでいたあるクラブで、いつも素敵なピアノ演奏をしていた女性ピアニストさん。私も自分の本が2〜3冊出版された頃で、あちこちで飛び入り演奏に励んでいたなぁ(笑) 当然そのクラブでもその専属ピアニストさんの演奏の合間にちょっと弾かせてもらったり、そのピアニストさんと軽く言葉を交わしたりしていました。もちろんプロの演奏は素晴らしく、いつも聴き惚れていたものです。

 その後、私はどちらかというとライブ系の店に行くことが多くなり、そのクラブにもずっとご無沙汰でした。
 「あそこでは今もピアノ弾いてるんですか」
 「はい、今も弾いてますよ。あ、そう言えばあの店のオーナー代わったの知ってます?」
 「え?そうなんだ。知らなかった。もうずいぶん行ってないし」
 ちょっとした時の流れを感じました。

 そうこうしているうちに、次の演奏タイムになったらしく、彼女はピアノの方へ。
 暖かい照明と高級な雰囲気が漂う広いホテルラウンジ。あちこちのシートで幾組みものお客さんが会話を交わしています。私は久し振りに聴く彼女のピアノに耳を傾けました。このような場にふさわしい、ゆったりと心地よいお洒落な音色。さすがです。

 約30分、演奏タイム終了。彼女がまたテーブルに戻ってきました。と、そこでひと言。
 「どう? ちょっと弾いてみませんか?」
 「え? いきなり私が? 大丈夫かなぁ。ホテルの人に叱られませんかね」
 「大丈夫ですよ」
 という訳で。
 ま、お前もどうせそのつもりだったんだろ? と言われそうですがぁ(笑)。
 このホテルラウンジで弾かせてもらうの、数年振りの2回目かな。
 曲はいつもながら、こんな突発演奏時の切り札(?)ダニー・ボーイ(おいおい、またか)。
 さっきまで彼女の優しいピアノサウンドが流れていたので、その雰囲気やこの場の空気を壊してはいけないと思い、ついゆっくり優しく、を意識し過ぎたようで所々音が飛んじゃったみたいだったけど。
弾き終わって席に戻ったら
 「素敵でしたよ。気持ちが伝わってくるようで癒されました」
 とフォローしてくれました。

 やがて彼女のラスト演奏タイム。
 再び優しいピアノサウンドに浸らせて頂きました。細かい所はそのままマネ出来なくても、この全体的な雰囲気は盗まなくっちゃ、と心に刻むつもりで聴いていました。そしてこれがいよいよラストの曲、というところでサプライズ!?
 「あ、あの曲だ!」
 10年ほど前に行っていたクラブで彼女がいつもラストに弾いていた曲、「ひまわり」。
 実は私もレパートリーにしていて、拙著「コードで弾く憧れの洋楽スタンダード」(ドレミ楽譜出版社)にもラストに入れている曲です。それでも10年振りに聴く彼女の「ひまわり」は、当然私のアレンジとは全く違い、別の曲を聴いているようでした。私も、自分の「ひまわり」の雰囲気をまた少し工夫してみようかという気になりました。

 その日も、たくさんの新しい刺激に感謝です(あ〜、その夜は夢にまで出てきたし)。
 ピアノって、理論や技術だけでなく、こんな『雰囲気を読む。ストーリーを奏でる』というのも大切なんですよね。



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ちょっと、ひと言。

 今週はまた台風18号ですね。昨日から沖縄方面は大変だったようですが、今日、明日と九州や山口方面にも接近するという事で、気が抜けません。今年はシーズンになってもあまり台風が発生してない様でしたが、発生しだしたら次々に日本列島縦断ですね。どうなってるんでしょうか。
 皆さま、どうかお気を付けください。

 
−an 弾手−

第613回 「シガケイコのトキめく映画音楽講座」 [2016.10.11]
 物語と音楽。このところずっと気になっているテーマです。
 このコラムでも、ピアノに絡めてついつい「物語」とか「ストーリー」とかに話をもっていったり、自分のセルフプロデュースライブSweet Piano Night(もう1年ほど間が空いてしまいましたが)でもピアノの演奏に合わせて自分で語りを入れてみたり他の人に朗読をお願いしてみたり。
 もちろんピアノのテクニックや上手に弾くことは大切ですが、音楽から広がるもう一つの世界に、ついつい気持ちが向いてしまいます。

 そんな中、楽しみにしていた講座が先週から始まりました! 
 「シガケイコのトキめく映画音楽講座」。実は2年半ほど前に福岡県筑後市の九州芸文館で開かれた1日講座に参加してとても刺激を受けました。その後そこで連続講座が開かれていましたが、なにしろ平日に熊本から毎週通うことも出来ず、残念に思っていました。それが今回熊本市で開かれると聞いて、すぐに申し込んだのです。

 講師は志娥慶香さん。米国バークリー音楽院ハリウッド式映画音楽作曲科を首席で卒業。熊本在住で作曲・演奏活動や映画・CM等メディア音楽制作をされています。つい先日は音楽を担当された短編映画「冬の蝶」がテヘラン国際短編映画祭にノミネートされて、熊本県庁で記者会見があったみたいです。

 先週は講座の第1回目(全部で10回コース)でした。
 会場の熊本市健軍文化ホール会議室に行ったら、まだ開始まで30分以上あって私が一番乗り。部屋の正面に大きなスクリーン。その両側にはライブハウスにあるような大きなスピーカーセット。その横のテーブルにPAセットとパソコン。そこで機材チェックをしていた講師の志娥慶香さんから
 「あら、随分早いですね。まだ30分以上ありますよ」
 と言われてしまいました。
 『はい、今日はトキめく映画音楽講座にトキめいて、こんな早く着いてしまいました』とは言いませんでしたが(笑)

 やがて受講生が入り始め、いよいよ講座開始。
 その日は初日だったので志娥慶香さんの自己紹介から。普通の大学を出て音楽とは関係のないバイト生活をしていた志娥慶香さんが、なぜ映画音楽に惹かれ、目指すことになったのか。それもアメリカに留学してまで。
 そのきっかけとなったのが映画ETだったそうです。詳しい話は省略しますが、そんなETとの運命の出会いのエピソードを交えながら、映像と音楽が絶妙に絡んでいく映画音楽制作の裏話などを聞かせて頂きました。
 そして映画音楽制作の現場で使われる様々な用語の紹介。
 例えば、メインテーマ、愛のテーマ、フィルムスコア、フィルムスコアリング、アンダースコア、ソングスコア、ソースミュージック、そしてシンクポイントなど。
 また、ある映画の冒頭のシーンをスクリーンに映しながら、音声を消した無音の状態とセリフや音楽が聴こえる普通の状態を比較し、音楽のある無しで同じシーンがどう違って見えるのか、そして、映像の中のひとつの動きとシンクロするように背景の音楽が一瞬転調する場面を例に、見る人の気持ちを次の新しい世界へ運んでいく音楽テクニックなど、映画音楽制作の裏話を聞かせて頂きました。

 これから12月まで週1回の講座は続きます。楽しみです。



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ちょっと、ひと言。

 この3連休、いかがお過ごしでしたか。こちら熊本では前半は不安定で強い雨が降ったりしましたが、後半、特に昨日の10月10日は朝から快晴の秋晴れでした。気温も爽やかで、やっと秋が来た感じがしました。
 午後、ちょっとした時間を見つけて坪井川緑地公園に行ってみたら、駐車場のアプローチからズラッと空車待ちの車の列がつながっていてびっくり。こんなに混んでいるのは初めてでした。10月10日体育の日という事もあって、野球やテニスのイベントがあっていたようです。雲ひとつない青空が広がる公園内は、たくさんの子供連れの家族で賑わっていました。
 この先、多分短い(?)今年の秋をしっかり楽しみたいものです。

 
−an 弾手−

第614回 「音楽でどんな物語を語るのか」 [2016.10.18]
  最近、物語と音楽にこだわってる私ですが。今回もチラッとそれにからめたお話です。
少し前に、私も会員になっている「熊本県文化懇話会・熊本県文化協会」発行の機関誌「熊本文化」から原稿の依頼を頂きました。その機関誌に「遠景・近景」という、会員の現在や未来に向けた雑感を綴るコーナーがあるのですが、そこへの投稿依頼でした。
 何を書こうかと思案しましたが、ここはやはり自分のピアノにまつわる話かな、と思って、表題のような原稿を書いてみました。
 指定の文字数が結構少なかったので、その中で簡潔に書くのに苦労しましたが、今回はその原稿のご紹介です。
 (一部、投稿の原稿に加筆、補筆している部分があります)

 【音楽でどんな物語を語るのか】

 「ジャンルは何ですか?」
 ピアノをやっていると言うと大抵そう聞かれる。口ごもっている私に、次の質問は
 「クラシックですか?ジャズですか?」
 で、私の返事は
 「どっちでもないんですけど……」
 そう言うと大抵けげんな顔をされる。

 私は大人になってから我流でピアノを始めた。その後コード奏法とやらに出会ってハマってしまった。最初の頃は会う人ごとに
 「最近ジャズピアノ始めたんですよ」
 と嬉しそうに話していた。コード奏法=ジャズだと勝手に思っていたから。でもそのうちにそうではないと分かってきた。ジャズにはジャズのルールがある。もちろんクラシックにはクラシックの。そして次第に、そんなルールが段々と分かるようになってきたら、逆に私は音楽をスタイルやジャンルで区分けするのに疑問を持つようになってきた。例えば『ジャズはこうあるべきだ』とか『あんな弾き方はジャズじゃない』とか聞くと、ジャズって本来もっと自由な感性から生まれたんじゃないのかな、どうしてそんなに型にはめようとするんだろう、と思ってしまう。また、テクニックをことさら表に出す演奏にも馴染めない。

 ジャンルやテクニックは音楽という世界を紡ぐための手段ではないのか。本来の目的は、ジャンルを超えて音楽でどんな物語や思いを語るのか、じゃないのか。
 そんなことを強く思ったりするこの頃である。

 えっと、少ない文字数でしたので飛ばして書いている部分もあり、色々語弊もあるかも知れませんが。もちろん、様々なルールやテクニックなどの基本がなってないと「物語を語る」なんて言う以前の問題かもしれませんが。それでも基本を覚えるのと同時に、最初のうちから、音楽が人の心にもたらしてくれる本来の力や存在意義を意識しておくのも必要かなぁ、と思ったりもするのです。



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ちょっと、ひと言。

 昨日はまたまたちょっと暑い熊本で、夏が逆戻りした感じでした。
そんなこと言ってるうちに、もう10月も後半、今年もあと2ヵ月ちょっとなんですね。びっくりです。
 仕事では、来年のカレンダーの制作が幾つか動き出して、何となく師走の気分になってきました。夏と秋と師走と、色んな季節感が同居している今日この頃です。

 
−an 弾手−

第615回 「譜面を見る意味、暗譜する理由」 [2016.10.25]
 プロのピアニストの演奏でも、譜面立ての譜面を見ながら、めくりながら、演奏しているのを見ることがあります。時には譜めくりの人が横について。かと思うと長時間の演奏でも全て暗譜で弾き通しているピアニストもいます。
ジャズやセッションの場合は、譜面は置いていてもシンプルなリードシートによるアレンジ演奏なので、7〜8分の曲でも譜面をめくる事もなく弾いている場合が多いようです。

 今回は、ネット上で見掛けた「譜面を見る意味、暗譜する理由」というテーマの、あるブログ記事に共感しましたので、そのご紹介です。ホルン奏者の竹内慶貴さんが書かれている「演奏を楽しむためのアイデアノート」というブログです。

 譜面を見る、暗譜する、この2つの行動には大事な2つの意味がある、と竹内さんは書かれています。譜面を見るのは音を間違えないためのガイド? 合奏なら全員の演奏を揃えるための指標? これらは大切な要素ですが、実はもっと大事な理由がある。「それは譜面は作曲者、編曲者からの手紙」だと。
 譜面は作曲者、編曲者からの手紙だと僕は思います。譜面には何を表した曲として書かれているか。どんな意図が音楽に含まれているか、どんなメッセージを託しているか、という意味があると思います。
 作曲者の故郷の風景や、作曲者の心に生まれた思いをこういう風に表現してほしい!とお願いされているお手紙、それが譜面です。演奏者や指揮者は譜面をもとに演奏します。

 そしてその時、譜面から読み取ったものが今の時代ならどう伝えるかこの国だったらどう伝えるかと国や時代によって表現を変えたりより聴衆に伝わりやすく工夫したりしているんですね。なので、譜面を見る=作曲者、編曲者のメッセージを受け取る。というふうに考えることもできると思います。
 こう考えると、譜面の音を当てた、外した以上により「譜面を表現する事」についてのアイデアが浮かんでくるのではないでしょうか?
 確かにそうですね。譜面は単に音の高さや長さ、リズム、強弱といった技術的な情報だけではなくて、そこに作曲者、編曲者の「思い」が詰まっているんですね。それをいかに読み取って表現するか、なのでしょう。
 そう言えば私も自著の中で、似たような事を書いていました。
 『正確に弾くだけだったら今はDTMという技術があります。コンピュータに音符などの情報を機械的に入力すれば、どんな名ピアニストも絶対にまねのできない、正確無比な演奏をやってくれます。しかし、それだけなら誰もそんな演奏を聴きたいとは思わないですよね。DTMでつくった音楽にしても、そこにアーティストの音楽に対する思いとイメージが付加され味付けされて初めて音楽と呼べるものになるはずです』(「大人のピアノ入門」講談社+α文庫より)。

 そして、続いて「暗譜する理由」とは?
 …っと、これについては長くなりそうなので、次回(来週)に続きのご紹介と併せて私の考えも書いてみようかと思います。

 ※竹内慶貴さんのブログはこちら
http://joyfreemusic.com/humentoannpu



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ちょっと、ひと言。

 昨日はいいお天気でした。ここ熊本は朝から雲ひとつない青空が広がり、風も爽やかで秋らしい天気でした。
 午前中、事務所の中でいつものように上着を脱いで仕事していたら、なんだか肌寒くなってきて上着を着直し。つい数日前までは「暑い、暑い」と言っていたのに、と思わず笑ってしまいました。
 このコラム更新も今回で10月分は終わり。次回はもう11月です。早っ!

 
−an 弾手−

第616回 「譜面を見る意味、暗譜する理由」そのA [2016.11.1]
 前回(第615回)からの続きです。
 前回は竹内慶貴さんのブログ「演奏を楽しむためのアイデアノート」の中から、譜面を見る意味として「譜面は音を正確に間違いなく弾くためのガイドである以上に、作曲者、編曲者が曲に込めた思いを伝える手紙であり、そこに込められたメッセージをしっかり受け取ることが大切」という趣旨のことをご紹介しました。
 では、暗譜するのはどんな理由があるでしょうか。
 竹内慶貴さんは次のように書いています。

 暗譜する理由、それはずばり、会場や聞いてくれる方々、共演者を認識して、その空間でどの人たちと誰に向けて音楽を演奏するか意識を向けるため。これが理由になります。

 音楽では、聞いてくれる人、共に演奏してくれる人、演奏出来る場所があってこそ共感という感動が生まれます。
 これは1人では出来ない事です。自分以外の誰かがいて初めて、同じ感動を味わうという共感が生まれるんです。
 そして、それをもっと良くするには、
  ・自分から相手を意識する
  ・会場を認識する
  ・誰かの音楽と一緒に演奏する
 といった、自分の意識の方向を向きを変える事が必要になります。
 相手の事は相手しかできません。そして自分の事も、自分のみが出来ます。
 なので自分から、音楽で相手に何かを伝えよう、感動してもらいたい、と望むのであれば、自分から他の人や場所をより感じるために動く必要があるわけですね。
 そのために暗譜するというのが有効なんです。
 その時、その場所で、そこにいる人たちを意識して演奏するためのやり方、それが暗譜というわけなのです。

  これについて、私も自著「大人のピアノ入門」(講談社+α文庫)の中で、人前演奏の際に「ヘタでもうまく聴こえるポイント」のひとつとして、微妙に観点は違いますが似たようなことを書いていました。

 『誤解を恐れず言うならば、人前では「一生懸命弾いてはいけない」ということです。弾き手が一生懸命になっている時、弾き手の意識は曲とピアノに向いています。自分の世界にこもってしまって、お客さんのことを忘れています。お客さんは全然聞いていないようでいて、こういうことはすぐ見抜きます。どんなにすばらしいテクニックで弾き通しても、気持ちがお客さんのほうに向いていないと、伝わってくるものがありません。
 一生懸命は練習の時だけにして、こういう場では曲の情感をピアノを通してお客さんに届けようと意識することです。何だか抽象的ですが、その差は大きいと思っています』と。

 そのためのひとつのやり方が「暗譜」という訳なんですね。
 暗譜することによって「楽譜をちゃんと間違いなく鍵盤上で再現しなくちゃ」という(作業)意識から解放されるとともに、その曲をいったん自分の中でそしゃくし直し、作曲者の思いと自分の気持ちを重ね合わせ、その気持ちを演奏を通してそこにいる人たちに語り掛けようという意識が芽生えてくるのではないでしょうか。

 譜面を見る、暗譜する、それぞれに深い意味があるんですね。

 ※竹内慶貴さんのブログはこちら
http://joyfreemusic.com/humentoannpu



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 あ〜っ、今日は11月1日! つい先日まで真夏日で暑い暑いと言っていたのに、いつの間にか11月。気温もすっかり下がってきて、事務所で机に掛けていると足元が寒く、昨日から温風ヒーターを使ってます。笑っちゃいますが。こうして季節は(時は)過ぎていくんですね。
 特に今年は「さあ今から」と思っていた矢先、4月に熊本地震があって、あたふたしているうちにあっという間に時が過ぎて行ったような。実は3月頃から次のan弾手ピアノライブの構想も考え始めていたのに、すっかりどこかへ飛んじゃいました。
 また気持ちを切り替えて行かなくっちゃですね。

 
−an 弾手−

第617回 「新しい出会いと別れと…」 [2016.11.8]
 『…しばらくは新しい相方との出会いを求めて、さすらいの旅(?)が続きそうです』
もう2ヵ月近く前のこのコラム第609回の最後に、私はそう書いていました。はい、我が家の電子ピアノ買い替えの話しです。

 私が20年以上前にピアノ(鍵盤)に触り始めて以来、現在までずっと付き合ってくれた電子ピアノ(ヤマハ Clavinova CVP-8)。とうとう電源が入らなくなり(スピーカーから微かに雑音は聞こえるけどランプは点かないし鍵盤も反応無し)、楽器店からは修理も難しそうと言われて買い替える羽目に。
 で、第609回にも書いていますが、私が電子ピアノの機種選びで一番のポイントにしたいのはヘッドホンを付けて弾いた時の聴こえ方。自宅で音を出せる時はグランドピアノを弾くので、私にとって自宅での電子ピアノはヘッドホンでの使用がほぼ100%なんです。そして、これまで使っていたClavinova CVP-8は、ヘッドホン使用時の音がとても気に入っていました。耳への負担が全くなく、クリアで伸びのいい高音、自然で耳にこもらない重低音、それに音程感が抜群でコードを弾いた時の響きがピッタリ合っていて、これを長時間弾いた後でグランドピアノを弾くと、微妙な音程のズレが気になってくる始末。グランドピアノの調律の時に調律師の人に言ったら、「耳がいいですね〜」と(半分冗談で)言われてしまいましたが。

 そんな訳で、今回買い替えの電子ピアノも、もっぱらヘッドホン使用時の音を中心に探しました。ただ、試弾したくても一つの楽器店の店頭に並んでいる機種、メーカーは限られていて、カタログ掲載の機種を一度に全て試弾することもかなわず、こちらの楽器店、あちらの楽器店、さらに電子楽器が置いてある電器店を訪ね歩いてそこに展示してある機種を(店のヘッドホンを借りて)弾かせてもらう「さすらいの旅」(笑)

 そんな中、電子ピアノだったらヤマハやカワイより電子機器専門のローランドやカシオがいい、という情報も耳に入ってきてますます混迷する始末。
 そして、これまで慣れ親しんできたClavinova CVP-8のヘッドホン使用時の音に匹敵する機種にめぐり逢えないまま時間だけが過ぎていき、それまではほぼ毎日、短時間でも夜にはヘッドホンで弾いていたのに、鍵盤から遠ざかってしまう状態が続きました。

 こんな中途半端な状態はいい加減にしようと、思い切って(半ば見切り発車で)決めた機種がヤマハCLP-545(正確には島村楽器仕様でSCLP-5450)です。ヘッドホンの音にはイマイチ納得出来ないところもありますが、まあ、良しとしましょう。しばらく使っていれば慣れるでしょう。

 先日、我が家に搬入してもらいました。リビングに置いているグランドピアノが木目マホガニーで、その横に同じく木目調(カタログではダークアルダー調?)の電子ピアノが並んで、雰囲気的にはシックリしそうです。
 使い勝手はまだこれから。音色や音質調整機能などが色々あるみたいなので、取説を見ながら試してみましょう。少なくとも、毎晩鍵盤に触れるようになったことは嬉しいです。

 ところで搬入の際、これまで使っていた電子ピアノを引き取ってもらいました。部屋から運び出され運送のトラックに積み込まれる時、何とも言えない寂しい気持ちになりました。娘がまだ小学生だった時、初めて我が家にやって来たピアノ。嬉しそうに練習していた娘の様子、そして私が自分でも触り始めて次第にピアノにはまっていったその頃。やがてコード奏法に出会い、夜の街徘徊ピアノ修行(?)に励むようになり、何とピアノの本まで書くようになったあの頃。いつもその電子ピアノが傍らにありました。様々な思いが、走馬灯のようによぎっていきます。
 
 新しい出会いの隣りには寂しい別れが…。時の流れとともに、またひとつページがめくられていくのでしょうか。



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 昨日(11月7日)は立冬だったんですね。秋の気配を味わう間もなく、あっという間に寒くなってきました。忘年会の予定もすでに動き出したし、年賀状の案内をあちこちで見掛けるし、喪中欠礼のハガキも届き始めたし。
 こうして、時の流れとともに、またひとつページがめくられていくのでしょうか…あ、いえいえ(笑)
ちょっと気持ちを切り替えて、前向きに次のページへ向かっていきたいと思います。

 
−an 弾手−

第618回 「意地悪な人!って言われてしまった(笑)」 [2016.11.15]
 an弾手コラム第615回616回「譜面を見る意味、暗譜する理由」を読まれた読者の方数名からメールを頂きました。「同感です!」と。
 皆さん、やっぱり暗譜することでその曲に感情を込めることが出来るし、聴いている人にその曲の想いを伝えることが出来ると感じていらっしゃるようですね。

 そのコラムは竹内慶貴さんのブログ「演奏を楽しむためのアイデアノート」からの一部引用ご紹介でしたが、加えて私は自著「大人のピアノ入門」(講談社+α文庫)からも次の部分を引用して紹介していました。

 『誤解を恐れず言うならば、人前では「一生懸命弾いてはいけない」ということです。弾き手が一生懸命になっている時、弾き手の意識は曲とピアノに向いています。自分の世界にこもってしまって、お客さんのことを忘れています。お客さんは全然聞いていないようでいて、こういうことはすぐ見抜きます。どんなにすばらしいテクニックで弾き通しても、気持ちがお客さんのほうに向いていないと、伝わってくるものがありません。
 一生懸命は練習の時だけにして、こういう場では曲の情感をピアノを通してお客さんに届けようと意識することです。何だか抽象的ですが、その差は大きいと思っています』
 そのためのひとつのやり方が「暗譜」という訳なんですね。と。

 こうして演奏者の想いが聴き手に伝わり、聴き手の気持ちが演奏者にフィードバックされて一体感が生まれるのでしょう。
 メール頂いた一人の方は、次の様にも書かれていました。
 私は楽譜は大好きな曲は暗譜するようにしています。暗譜したほうが、感情込めて弾けるんです。
 だから、目が見えない方たちの演奏は心に響くんですね。
  (そして続けて)
  話は変わりますが。私はいつからか音楽を聴いて涙することが多くなりました。an弾手さんが去年演奏された、ある曲もですょ。
  (an弾手注:この方は去年のan弾手ライブに県外から来て下さった方。当日私の演奏を動画で撮られていたみたいで、その後ホテルに帰ってから聴き直していたら涙が出てきました、とメール頂きました)
 そして、私は、そうやって泣かせる人を最近、意地悪な人!と思っています。音楽で泣かせるなんて。いい意味でですけどね(*^^*)
 私も意地悪な人になりたいです(笑)

 ご自身も楽器を演奏される方です。生で聴いたことはありませんがYou Tubeにたくさんアップされていて、思わず聴き惚れるようなとても素敵な演奏です。ただ、私はまだその方の演奏を聴きながら涙した経験がないのです。受け手(私)の感性の問題かも。
 そのうちに、聴きながら「あ、意地悪な人だ!」と思う瞬間が訪れるかもしれません。楽しみです(笑)



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 昨日11月14日はスーパームーン「大きな満月」だったそうですね。特に昨日は68年ぶりの特大の満月( ウルトラスーパームーン)だったようですが、残念ながら天気が悪くてお月様は顔を出してくれませんでした。皆さんの所はどうでしたか?
 さて、いよいよ11月も後半、そう思うと何だかせわしい気分にもなってきますが、秋空を見上げながらこれからの晩秋の気配を思い切り楽しんでみたいと思います。

 
−an 弾手−

第619回 「雪月花。福嶋由記さんのコンサートで新たな刺激を」 [2016.11.22]
 教会の礼拝堂の中に、澄み切ったソプラノの歌声が流れていきました。

 その日は、日本福音ルーテル健軍教会で開かれた、ソプラノ歌手・福嶋由記さんのコンサートでした。広い礼拝堂は、後の方まで補助イスが並べられてお客さんで一杯。前方のステージでは藤本史子さんのピアノの横に凛としたドレス姿の福嶋由記さん。高〜い礼拝堂の天井いっぱいに、マイク無しで由記さんの歌声が響き渡ります。

 コンサートのタイトルは「日本の歌コンサート 雪月花」。
 雪月花とは、雪と月と花。四季の自然美の代表的なものとしての冬の雪、秋の月、春の花。四季おりおりの風雅な眺め(デジタル大辞典より)。
 由記さんは、プロのソプラノ歌手として様々なオペラの舞台などに出演されていますが、その他に中学校の生徒さんに音楽やコーラスの指導もされているとか。そこでは、よく日本の抒情歌をとりあげ、単に音楽的に上手に歌うだけではなく、その歌の背景、情景、自然や人々の暮らしなどをしっかり理解し、そのドラマを歌えるように指導されているそうです。

 そんな話を聞いて、私もとても共感しました。プロの歌手とan弾手を同次元で語るなんて恐れ多いことですが、まさに私が最近思っている自分のピアノと重なる所があったので。

 演奏曲目は、第1部が「さくら」「冬の夜」「おぼろ月夜」「ペチカ」「みかんの花咲く丘」「たんぽぽ」「夏の思い出」。第2部は熊本市立日吉中学校音楽部の合唱2曲を挟んで、「花」「秋の月」「宵待草」「からたちの花」「おやすみ」「雪の降る街を」「さくら横ちょう」。
 これって、2〜3曲を除いてほとんどが、これまでan弾手Live「Sweet Piano Night」で演奏した曲だ! an弾手Liveの場合は基本ピアノソロなので歌詞はありません。ただ、その分、曲の合間にナレーションで曲の背景や歌詞の一部、曲にまつわる自分自身の幼い頃の思い出を語ったり、別のナレーターの人に頼んでピアノの演奏に合わせて歌詞の朗読をしてもらったりしました。
 いずれにしても、曲(音楽)だけじゃなくて、そこにこめられた作詞家、作曲家の想いや、私自身のそれぞれの曲にまつわる遠い昔のリアルな思い出などを語りながら、聴く人にその曲から広がる世界に旅してもらえたら、というのがコンセプトでした。

 そんなan弾手Live「Sweet Piano Night」、今年の初めには次の企画も考え始めていたのですが、4月の熊本地震で全部飛んでしまって、気持ち的にもはっきりしないまま、あっと言う間に今年も残り少なくなってしまいました。
 でも、今回の福嶋由記さんのコンサートを聴いて、またちょっとそんな気分になってきました。前回の去年11月のライブでは「秋から冬へ。遠い記憶の旅」と題して、第1部が秋・冬の日本の抒情歌、第2部が洋楽スタンダードを中心に構成してみましたが、次にやるとしたら今度は春、夏、秋、冬、四季を通した構成にしてもいいかなぁ、などと、福嶋由記さんのコンサートを聴きながら思いました。

 他にも音楽とストーリーと言えば、その代表的なものが映画音楽ですね。現在受講進行中の「シガケイコのトキめく映画音楽講座」も自分のピアノ物語構想にはとても刺激的です。
 次のan弾手ライブ、まだいつ出来るか具体的にははっきりしませんが、こうして色々な人から刺激を頂いて自分の気持ちが前向きになっていくのはありがたいことですね。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 今日11月22日は二十四節気の一つ、小雪(しょうせつ)。北国から雪の便りが届く頃。まだ本格的な冬ではありませんが、紅葉が散り始め、イチョウや柑橘類が黄色く色づく季節ですね。
 先日、仕事で熊本県庁に行きました。ここの正門プロムナードには広いイチョウ並木があり、夕陽に照らされた黄色い絨毯が美しく輝いていました。先週土曜日の夜はライトアップされたこのイチョウ並木で「落葉の物語」という野外コンサートがあったそうです。行けなくて残念でしたが。
 深まりゆく秋の風情を、もう少し楽しんでみようと思います。

 
−an 弾手−

第620回 「絵画の世界も音楽の世界も同じ?」 [2016.11.29]
 もう3年以上前になりますが。
 お菓子の香梅・帯山店のドゥ・アート・スペースで開催された田中章さんのチェーンソーアート展に行った時、そこでBGMピアノを弾いていた山口りえこさんから声を掛けられて、突然の飛び入り演奏を7曲も弾かせてもらったこと、このコラムバックナンバー第456回に書いていました。
 その時会場に来られていた何人かの方を山口さんから紹介して頂いたのですが、その中の一人に絵画教室の先生がいらっしゃいました。草野聡子さん。その後、その方から絵画展のご案内を頂いて、何度かこのドゥ・アート・スペースに足を運んだものです。
 先日も、個展「イメージの世界と小作品展」をこの会場で開かれていると聞き、行ってきました。

 香梅さんのお洒落なお菓子売り場から階段を数段下りたホールに、たくさんの絵画が展示してありました。「あら、こんにちは!」と草野さんが笑顔で迎えてくれます。
 花や果物などの水彩画や鉛筆画、またパステルなどで描いたイメージ画など、優しいタッチ感にあふれた絵画が温かく空間を包んでいました。

 その中で、特に私の心に止まった作品がありました。ひとつは「熊本電鉄停車場にて」、もうひとつが「三角西港」。どちらも素朴な感じの水彩画です。
 「熊本電鉄停車場にて」は、古い木造の駅舎の向こうにレトロな雰囲気の電車が停まっている風景。永い時の流れや、これまでたくさんの人々が行き交い、様々なドラマが繰り広げられたであろう駅舎の空気感が漂っていました。
 「三角西港」は、天草を目の前に臨む熊本県宇土半島の先端に明治20年に造られた港で、昨年、世界文化遺産に登録された所です。石積みの埠頭や水路、西洋建築物などが往時の面影を残しています。
 ここの洋館を改修したレストランで、以前ピアノを弾かせてもらった話、このan弾手コラムにも書いてましたっけ。
 そんな三角西港の風景画、こちらも洋館が佇む静かな情景の向こうに、永い時の流れやたくさんのドラマが感じられて見入ってしまいました。

 もちろん、他にも美しい色彩の花や果物、空想の天馬など素敵な作品がたくさん並んでいる中で、どうして上の二つの作品に特に惹かれたのかなぁと考えてしまいましたが。どうも、最近の私自身のピアノへの想いとも関連あるのかな。
 見た目の美しさよりその奥の味わい? テクニックよりストーリー?
 味わいやストーリーを描き出すには、もちろんそれなりの技術が必要なのは当然ですが、受け手としてどこに着目するのか。
 技術の高度さに感心するのか、その技術の先に描き出される物語の世界に旅するのか。
 絵画の世界も音楽の世界も同じなのかなぁ、と思いました。

 ところでその日も、この会場には以前弾かせてもらったグランドピアノが鎮座していました。ただ、演奏の予定がない時はカバーが掛かっていて、さわれないようになっています。
 ということで、今回は私のピアノ演奏は当然ありませんでした(笑)



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 毎週火曜日更新のこのコラム、今回で11月分も終わりですね。あさってからは12月だなんて、実感がありません。そういえばまだ先だと思っていた年賀状もそろそろ準備しなきゃ。ちょっと焦ってきました。
 毎年3月に開催の「オハイエくまもと・とっておきの音楽祭」も、来年に向けて準備が進んでいます。私はまた去年に続いてガイドブックの編集委員を仰せつかってページ割や原稿依頼を始めたところ。他に高校同窓会の記念誌とか美術展の話も動いているし。もちろんみんなボランティア。本業とは別に来年まで気を遣う日々が続きそうです。

 
−an 弾手−
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