今回は、読者の方からのご質問メールのご紹介です。
全くの初心者でピアノのグループレッスンを受け始めてから3年経ったという、神奈川県在住の70才の男性の方からです。ネットでたまたま私のこのコラムを目にされ、
第52回の「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)ためのコード奏法超入門講座」略して「アナ鼻ピアノ」(その1)から
第350回の「アナ鼻ピアノ」(その40)までをプリントアウトして練習され、さらに2〜3週間前には楽器店で拙著「お父さんのためのピアノ教室・体験的コード奏法超入門」と「目からウロコのピアノ曲集」(an弾手注:3冊ある曲集のどれかは不明ですが)を購入して練習されているそうです。
ただ、私の本は一般のピアノ教則本と違って指番号が書いてないなど、戸惑うことも多いそうです。それでも、私an弾手が書いている方針を信じて練習を続けてみたいとのことでした(ありがとうございます!)。
という訳で、いくつか下記の様なご質問を頂きました。
1.「体験的コード奏法超入門」の37Pにある富士山の楽譜で、4小節目右手の「BD、付点2分音符」と左手3拍目の「B、4分音符」が重なっています。
重なっているのには何か特別な意味があるのかもしれませんが、推奨する両手の指使いの方法をお教えいただけるでしょうか。
2. 指使いについてですが、貴殿の教則本には、コードを手の形で掴む事を目的とするためだと思いますが、指番号が一切振ってありません。
その為に右手のメロディー部分で、時々わからなくなってしまうことがあります。メロディー部分には指番号を追記して練習してもよいのでしょうか。それとも指使いが確定してしまうまで繰り返し練習しなければならないのでしょうか。まずは貴殿の考えていられる方針に従いたいと思っています。
3. もう一つ、一般的なことについてお教え願います。
質問1と同じ4小節目ですが、コードがG7となっています。左手パートに「8分音符のF」が入っているからだろうと思いますが、8分音符以下の短いトーンであれば、コードトーン以外でも経過音として入れても構わないという説明を読んだことがあります。リードシートにはG7となっているのでそれに合わせるためなのでしょうか。
実際、このセブンスコードについてはよく悩みます。ほかの楽曲集でセブンスコードのトーンが入ってない小節にコード名をわざわざセブンスコードと表記しているのがあります。編曲者がセブンストーンをはずしてしまい、コード表記だけが残ったのかなと理解していますが、他に理由が考えられるのでしょうか。
以下、an弾手が返信させて頂いた内容を要約してここに書いてみます。
1. 37Pの富士山の楽譜の4小節目ですね。
(私の本をお持ちでないコラム読者の方のために、ここではその部分の楽譜を以下に載せてみます)
おっしゃる通り、3拍目の右手と左手の音が重なっています。
この楽譜でのアレンジの考え方は、左手は各コードの音をアルペジオで弾き、右手はメロディーの下に所々でコードの構成音を加える、という流れになっています。
右手のメロディーの音はレ(D)ですので、その下にコード構成音のシ(B)を入れています。
左手はコードG7の構成音をアルペジオにして入れています。
その際に、シ(B)の音がダブりますが、左手アルペジオの流れとしてはシ(B)、及びレ(D)を入れた方が自然です。
弾き方(指使い)としては多少変則になりますが、小節の頭でメロディーのレと、それに合わせるコード構成音・シの付点2分音符を右手で押さえ、左手のアルペジオがソ、レ、ファ、ソと上がって来てシ、レになる時、右手でシ、レを弾き直す形が自然かと思います。
その際、ダンパーペダルを踏んだままにしてメロディーの音が切れないようにします。
この弾き方は、ポピュラーの曲などで右手のメロディーの音が伸びている時、そこに例えば高い音程で装飾的な飾りのフレーズ(フィルイン)を右手で重ねて入れるなどのアレンジはよくあり、そんな場合もダンパーペダルで音を繋ぐ、ということはあります。
2.指使いですが、本書では特に指番号を指定していません。クラシックのレッスンでは、最初から指番号、指使いを厳しく指導されると思いますが、コード奏法では「楽譜の音符を指に移して弾く」のではなく、それぞれの演奏者がコードとその前後の音の流れから「自分で次に弾く音を考えて弾いていく」という発想ですので、最初から指使いを指定することはありません。
37P の楽譜は、あくまでも一つの演奏例として音符が書いてあるのであって、常にこの通りに弾きなさいという趣旨ではありません。ご自分でコードを頼りにアレンジを変えることも自由ですし、その中で弾きやすい指使いを工夫されることをお勧めします。
3. セブンスコードについて
質問者がおっしゃる様に「短いトーンであればコードトーン以外でも経過音として入れても構わない」というのはその通りですが、この楽譜の例では「経過音」ではなく、重要なコード構成音の一つとしてファ(F)の音を入れています。
本書28Pのダイアトニックコードの説明にV(5度=ドミナント)のコードは短7度を加えてV7(ドミナント・セブンス)にする、という様なことを書いていますが、37Pに出てくるG7がまさにKey=CにおけるV7です。
Key=Cのコード進行ではGはG7として扱います。Key=Cでは、仮に楽譜のコード表記がGとなっていても演奏者はG7と認識してファ(F)の音(響き)をどこかに入れて演奏します。また逆にG7の所でも前後の流れやメロディー音との関係で無理に7の音を入れるとどうしても違和感がありそう(自分の感覚にそぐわない?)時は、7=ファ(F)の音を使わずに演奏することもあります。
臨機応変です。
言葉で書くと、長々となって分かりにくいかもですが。
また何か疑問の点などありましたら、何度でもお尋ねください。
ご質問頂いてありがとうございました!
(続く→原則毎週火曜日更新)
an弾手(andante)
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随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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