「あ、こんばんは」
駐車場で車を降りたら、いきなり声を掛けられました。見るといつも仕事でお世話になっている熊本市駐車場公社の担当者の方。
「今日はありがとうございます!」
その日は、熊本市駐車場公社が主催する第1回熊本アートフェスティヴォ!受賞者ガラコンサートを観に来たのでした。
「え?駐車場公社がコンサート?」と思われそうですが。
熊本市駐車場公社では駐車場の管理以外に、文化ホールの管理運営や様々なイベント、文化活動の主催、支援などにも取り組まれています。
その日はアーティスト発掘事業の一環として実施された第1回アートフェスティヴォの受賞者によるコンサートが開かれたのでした。
テーマは「愛」。愛をテーマに、音楽を通して伝えたいメッセージをいかに表現するか、というのが審査基準の一つだったようです。
私は出演者や受賞者のことは何も知らずにそのコンサートに行ったのですが、ステージが始まったらあっという間に引き込まれてしまいました。想像を超えた演奏レベルの高さもありましたが、いわゆる「上手な演奏」のコンサートとはまた違った「何か」を感じたような気がしたのです。
「何か」って……?
受賞者最初のステージは「聴衆賞」のORANGE。若いバイオリンの男性とピアノの女性のDUO。活動7年目でお互いに楽器講師をしながらラジオ、テレビ出演、学校、施設、各種イベント、ライブハウスでの定例ライブなどをこなしているらしい。この日のステージでは特別にパーカッションを加えて3人での演奏でした。
オリジナル曲の「ORANGE」、「幻想」の他、荒井由実の「やさしさに包まれたなら」、葉加瀬太郎の「情熱大陸」など、テンポと迫力にあふれた演奏はもちろんですが、曲の合間にバイオリンの男性が語るフレンドリーなMCにも引き込まれました。審査公演の時、聴衆の投票で1位に選ばれたという「聴衆賞」というのが納得できるような、ステージの息遣いが伝わってくる空気感。ことさら『愛』を具体的に出さなくても、しっかりと温かいものを感じました。
受賞者ステージ2番目は「審査員特別賞」の、こちらもバイオリンとピアノのDUO。但し、まだ中学生の女子二人。華やかなドレス姿で登場した二人は身長も高くてとても中学生には見えませんでした。演奏も中学生離れ!
しっかりしたMCと「アメージング・グレイス」「Let it go」「万讃歌」「七つの子」、東日本復興支援ソングの「花は咲く」等の演奏。
「これからも音楽の道を目指したい」と語る二人の可能性に『愛』いっぱいの声援を送りたくなるようなステージでした。
そして受賞者ステージ3番目は「大賞」受賞のフルートアンサンブル’90。ピッコロ、フルート、アルトフルート、バスフルート、コントラバスフルートなど、数種類のフルートで構成された10人程の女性だけのアンサンブルです。結成から25年、九州、関西、四国などで多彩な演奏活動を続け、今年は浜松で開かれる日本フルートコンヴェンションにも出場するらしい。
「私たちは、『愛』というテーマを『郷土愛』と捉え、ふるさと熊本を愛する曲を選びました」とのMC入りで、演奏されたのは「くまモン体操」「熊本郷歌」そして「火の国旅情」。「火の国旅情」は手元のプログラムに挟んであった歌詞カードを見ながら、フルートの演奏をバックに会場のみんなで一緒に歌うという演出。ステージと客席が『郷土愛』をテーマにひとつになったような瞬間でした。
さて、コンサートが始まってすぐから感じていた「何か」……。それをan弾手流に(我田引水的に?)分析してみると。
このところずっと自分なりのひとつのスタイルに出来たら、と思っている「ストーリーを語る」ということ。私はまだまだ試行錯誤の段階ですが、今回『愛』というテーマでそれぞれの出演者がそれぞれのパフォーマンスを通して「語って」くれた「ストーリー」。「なるほど、こういう語り方もあるんだ!」と気付かされたことがたくさんありました。
それは小さな気付きの“ひとしずく”だったかも知れませんが。
少しでも自分の意識の奥に沁み込んでいってくれればと思います。
※なお、資料で確認しましたらORANGEは今週末開催のオハイエくまもと第6回とっておきの音楽祭の下通りアーケードZARA前会場や前日の細川邸庭園・前夜祭にも出演されるようです(とっておきの音楽祭については
バックナンバー第536回参照)。
(続く→原則毎週火曜日更新)
an弾手(andante)
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