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Vol.33 島<その1>[2007.11.27] |
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9月の新聞ですが、「穂先で誘う干潟の美味」という見出しで、維和島(いわじま)のシャク釣りが紹介されていました。宇土半島の先、天草諸島に属する島だそうで、シャクとはシャコに似た生き物とか。干潟の穴に、エノコログサ(別名ネコジャラシともいう草で、細い茎の先端にふさふさの穂をつける)の穂先を下にして刺し、草がピクピクと浮き上がってきたら引き上げる。すると穂先にシャクがしがみついているという、なんとものどかな遊びのような漁です。
インターネットで調べてみると、玉名市岱明町の松原海岸ではエノコログサに代わって筆を刺す伝統漁法「筆釣り」がちょっとした観光資源にもなっているようですね。いずれにせよ、穂先で誘うのは、外敵の侵入に敏感に反応するシャクの習性を利用した漁法だとのこと。海の生命を育む干潟の恵み、そして、人間が生き物の習性を利用して捕獲し、その生命をいただいてきた源流を感じさせます。
干潟は、そこに棲む底生生物(水域に生息する生物の中でも水域の底である、底質に生息する生物の総称)の働きによって水質の浄化機能が高く、水産生物の稚魚の生育場にもなる砂泥質の地帯。高度成長時代、ただの“泥の海”扱いされ、あちこちでせっせと埋め立てが行われました(最近ではその再生にも力が入れられています)。大阪は一番埋め立てが進んだ地で、大阪湾岸はほとんど人工の護岸になっています。
その大阪湾岸に、いくつかの人工島が浮かんでいます。大阪市内の咲洲(さきしま)、舞洲(まいしま)、夢洲(ゆめしま)、そして大阪府南部に位置する関西国際空港です。咲洲など3島には“バブルの象徴”“負の遺産”ともされる超高層ビルや、実現しなかった大阪オリンピック招致のために整備されたものなど、多彩な施設が建築されています(夢洲については、埋め立てたままで放置状態)。交通アクセスがあまりよくないことなどもあり、非難の対象になりがちな人工島ではありますが、個々の施設を見ると、それはそれで面白いものがたくさんあります。
▼「大阪ベイエリア」のホームページ(咲洲・舞洲・夢洲のほか「USJユニーバーサル・スタジオ・ジャパン」などの位置関係がわかるマップもダウンロードできます。)
http://www.osakabayarea.com/
私が仕事で取材した施設に限っていうと、例えば、「舞洲陶芸館」では大阪湾の海底粘土を利用した「難波津焼(なにわづやき)」が体験できます。古代の大阪の港(難波津)は、大陸文化が入ってくる玄関口でした。作陶の技術も朝鮮半島からここへもたらされ、ロクロを使って高温で焼くという本格的な焼き物、須恵器(すえき)が発祥したとされています。「陶芸の火よ、再び」との願いを込め、市民に体験の場を提供している施設ですが、海底粘土は湾岸工事で発生したもので、廃棄処分に困って陶土への再利用を研究開発、また、多彩に用意された釉薬の中には淀川の沈殿土を活用したものもあるなど、何かとリサイクルへの苦慮、努力がしのばれます。
舞洲で、ひときわ異彩を放つのが大阪市環境局の「舞洲工場」です。とてもカラフルで、なにやらおとぎの国のお城のような建物ですが、ごみ焼却工場です。「自然界には直線や同一物は存在しない」「どんな建築物でも建築すること自体が自然破壊につながる」と主張するオーストリアの芸術家、フンデルトヴァッサーさん(故人)がデザインしたもの。だから、建物の構造は丸みを帯びたものや、シャープさとは無縁の手書きのような線で構成され、500個以上ある窓(飾り窓も含む)も同じ形状のものはありません。そして、植樹やビオトープなど、自然破壊を補うものがいっぱいです。こんな楽しい建物を巡りながら、ごみが処理される様子が見学できます。
つまり、この舞洲工場、メルヘンチックな建物の中で、近代文明の病巣ともいえるごみが処理されているわけでして、なにやら童話の裏に潜む人間の罪悪を垣間見るような不思議な感覚が湧いてきます。しかし、とにもかくにも24時間休みなく稼動し、私たちの吐き出したごみを処理してくれているわけでして(市内にはそのほか9つの焼却工場がある)、生活に不可欠であるとともに、ごみ問題という現実について考える場としても有意義な施設なのです。
そして、そこで駆使されている高度な先進技術は、目を見張るばかり。文明を拓くことで自然を破壊し、それを補うためにまた英知を結集して技術を開発し、歴史を紡いでいく。そうして歩くしかないのが人間なのだと思わされます。
▼「舞洲陶芸館」のホームページ
http://www.maishimatogeikan.jp/
▼「舞洲工場」は、ここから詳細情報を入手できます。
http://www.city.osaka.jp/kankyojigyo/sec04/kengaku.html
来月は、大阪湾のもう一方の人工島、関西国際空港についてご紹介します。この8月に第2滑走路がオープンし、完全24時間空港へと新しいページを開いた関西国際空港。私はそのオープン数週間前に取材するチャンスに恵まれました。 |
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