Vol.31 再び<水>[2007.9.27]
 地球は、水を蓄えたが故に生命の惑星となりました。私たちの身体の大半を占める水。自然の中にあり、私たちの体内に入っては、また自然に戻る水。自然と人間が一体であることを、水ほど感じさせてくれるものはありません。

 さて、一昨年2月のこのコラム(Vol.2)で、私は、大阪の水はまずいと発言しました。が、そんなことはございません。おいしい水に変わっています。水道水の最新事情を知った後、早くお詫びと修正をと思いつつ遅くなってしまいました。みなさん、そして、大阪市水道局さん、本当に申し訳ありませんでした。

 大阪市の水道水が安全で良質な、そのまま飲める水に生まれ変わったのは、2000年(平成12)のこと。従来のろ過方式に加え、オゾンと活性炭による「高度浄水処理」が行われるようになったのです。つまり、家庭用浄水器の大仕掛けな機能が、水道水の大本で完備されたようなもの。東京都はじめ他の大都市でも同様に処理されるなど、おいしい水道水づくりは全国的に進んでいるようです。そして、飲料メーカーに負けじとペットボトルに水道水を詰めて売り出す自治体も増えています。

 ちなみに大阪市自慢のペットボトル水道水は、その名も「ほんまや」(笑わんといて!!)。熊本市のそれは「熊本水物語」。大阪市の水源は琵琶湖に発する淀川水系ですが、熊本市は地下水。熊本は、まさに誇らしき「日本一の地下水都市」のようですね。
▼なにわ育ちのおいしい水「ほんまや」
http://www.city.osaka.jp/suido/honmaya/index.html
▼熊本オフィシャルウォーター「熊本水物語」
http://www.kumamoto-waterlife.jp/one_html/pub/default.asp?c_id=30

 私が大阪の水道水事情を知ったのは昨年春のことでした。漫画家のサイバラこと西原理恵子さんがテレビ番組で大阪の水道水を酷評した折、思い込みで断定されては困ると水道局が立ち上がったのです。後日、市販ミネラルウォーターとの飲み比べも行われ、西原さんは潔く完敗宣言しました。

 大阪市水道110年の歴史や技術が学べ、琵琶湖・淀川水系の魚なども観察できる「水道記念館」も、イベントの際いろいろな水を飲み比べる「利き水大会」を行っていて、水道水はこの数年ずっとトップの栄冠を手にしているそうです。私も最近、試す機会があり、敗北を実感しました。
▼大阪市水道局「水道記念館」
http://www11.ocn.ne.jp/~kinenkan/

 しかし、まだまだPR不足なのか、人々の先入観完全打破には至っていないようです。それにたとえ浄水場を出た時点でおいしくても、集合住宅やビルで使われる貯水槽の汚れでまずくなることもあります(我が家も集合住宅なので、やはり日々の生活では抵抗があって…)。そこで、貯水槽を経ずに直接各戸と結ぶ「直結給水」への取り組みも全国的に進められているようです。

 ところで、「水道記念館」には、昔の長屋の路地を縫って水を売り歩く「水屋」さんの姿を再現した展示もあります。水運は盛んでも飲み水には恵まれなかった大坂(昔の表記)、川上のきれいな水は商売になったのです。ペットボトルの水が市販され出したころ、「お金を出して水を買うなんて」と思ったものですが、少なくともここ大阪では、少し歴史をさかのぼればそれも当たり前であり、水道の発達はやはり大きな恩恵をもたらしたということです。

 大阪市水道局の汚名返上、名誉挽回を込めて、もう一ネタ。先般の猛暑の中での「世界陸上大阪大会」で、水滴を噴霧するミスト散布が行われたのをご存知ですか?ドライ型ミストなので、触れても濡れない。でも、気化する際に周囲の熱を奪うので涼しくなる。かなりの優れものですね。ヒートアイランド対策として大阪市水道局などが研究開発を進めている環境技術で、実用化が期待されているそうです。