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Vol.5 <桜>そして<造幣局>(2)[2005.4.25]
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気がつけば葉桜。お花見シーズンも終わってしまいました。ヨーロッパにも桜はあるものの緯度が高いため開花期間が比較的長く、見ごろが短い日本のように大騒ぎする気にもならないという話を聞いたことがあります。日本人の花見心は、儚さゆえに沸くというのもあるのでしょう。あっという間に咲いては燦然と輝き、あっという間に散ってしまう。これほど生命の重さと軽さを感じさせてくれる花もないですね。
さて、私が「造幣局の通り抜け(今年は4月13日〜19日)」を歩いたのは、始まってすぐ。とりどりに八重の桜が咲き誇る木々の間に、蕾の木も見える14日のことでした。久しぶりの通り抜け体験。花もさることながら、大変な人出に改めてびっくりしてしたのは言うまでもありません。造幣局のホームページによると、期間中100万人を上回る1,147,000人が足を運び、過去最高の観桜者数を数えたようです。http://www.mint.go.jp/index.html
造幣局は八重桜を中心に多種多様の桜が連なる並木ですから、一重の群桜とは違った趣があります。八重ならではの華やかさ、艶やかさ。色、形など多種ゆえのバラエティ感。それに、枝が弓なりに大胆な曲(きょく)を描いて上に伸びていく種類のものが目立ち、とても印象的でした。葉に先立って花だけ咲き、清く澄んだ美しさを広げる一重の桜。葉が先なので緑も添え、妖艶で重量感のある美しさにしなう八重の桜。それぞれに人は魅せられます。
一重の群桜は、1本1本の自己主張もさることながら全体としてのより美しい広がりが胸を打ちますが、造幣局の八重桜はそれぞれの木が強烈に個性を主張しながら、全体としても美しいハーモニーを奏でているようで、晴れやかな気分にしてくれます。そしてまた、一重の群桜は花だけ一斉に咲き揃う美しさが得体の知れない狂気や悲愴を感じさせ、八重の桜は嫣然たる豊穣の美が乱気の異世界を感じさせる。一重であれ八重であれ桜という花は、そんな狂おしさや怖しさを孕んでいるように思えてきます。
八重の桜は派手すぎて嫌いだという人もいます。そういえば、シンプルで清々しい一重の桜に比べると、グラマラスでゴージャスな八重の桜は、豊臣秀吉が大阪城内につくったという、わび・さびの世界から程遠い「黄金の茶室」に似たものがなきにしもあらず。しかし、勅使河原宏監督の映画『利休』(1989年公開。利休=三國連太郎、秀吉=山崎努)で、侘び茶の完成者・千利休は、秀吉自慢の悪趣味な茶室をけなす弟子に向かって諭します。「金にとらわれる己の心こそ貧しい。無心にあの中に座れば、自ずとふくよかな気持ちになれるぞ」と。
ということで、桜に限らず、無心に愛でたい花がいっぱいの春もそろそろ行こうとしています。造幣局にふさわしく金の話もからませ、めでたし、めでたし(一人拍手!!)と4月のコラムも2回目アップ完了。さて、緑したたる初夏の5月は、何処へ…。 |
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写真左は人、人、人の「造幣局の通り抜け」。桜の向こうに見えるのは、前回紹介した「造幣博物館」です。桜並木道に面しており、文明開化を象徴するレトロな外観が桜に映えています。通り抜け期間中は休館ですが、終了翌日から開館します。
写真右は造幣局方面を大川(旧淀川)の対岸から撮影。咲き誇る桜は造幣局の桜並木ではなく、それと並行する遊歩道のもの。こちらの岸にも同様の遊歩道・公園があり、この川は約4.2kmにわたり桜、桜、桜。川には水上バスも走っています。 |
●「桜の会・平成の通り抜け」事業も進行中
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大阪では、平成16年から21年にかけて、造幣局やこの大川沿いの桜名所をさらに広げる「桜の会・平成の通り抜け」事業が進められています(約7Kmに拡張とか)。2月のこのコラム(テーマ:水)でもご紹介したように、『官』ではなく『民』の力でつくられた大阪の街らしく、市民の募金で植樹し、それぞれに寄付した人の名前プレートを取り付けていきます。建築家・安藤忠雄さんの呼びかけで発足したもので、「街を自分の庭の延長にする」「子どもと高齢者が一緒に楽しむ生活文化の場をつくる」ことで、21世紀の美しく住みよい街、心のネットワークを持ったコミュニティをつくろうというわけです。 |
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