Vol.56 5月 [2007.5.21]
 5月には私の誕生日がある。
実はいつものことなのだが、なぜか2ヵ月ほど前からいつも調子が悪くなる。
世間では五月病というのがあるが、それも手伝っているのだろうか。
なんだか勝手が違う。
 だからゴールデンウィークも熊本に帰り、父、甥、姪、妹、私の自転車5連隊で
動物園で観覧車に乗ったり、植物園でくつろいで、江図湖周辺の素晴らしい原っぱに
行って楽しんだ後、仕事がごまんと待ち構えている東京に戻ったりしてしまうと、
今年それはもっと悪化した。

 仕事はきつくてもちゃんとはかどっているのに、わけのわからない不安も正比例で
募り、いてもたってもいられないほど疲れてしまった。
そんなある日、会社近くで自宅近くのいつものカフェ仲間の男の子にばったり出会った。
元気なフリもできなくて、弱音をはいた。
 その週末、気持を整頓しようといつもより念入りに掃除をし、鉢をベランダに出して
水を遣り終わった瞬間、ドアベルが鳴った。
「郵便局です〜。お花〜」
何と、花が贈られて来た!差出人は、その彼。
『小ッ恥ずかしいっスよ。けど、元気だしてください』
そのあと、妹と母からも小包が届き、贈り物だらけの土曜日になった。

 たまにはこんなのもいいよ、と妹が贈ってくれたアジアのシャツを着て、
高円寺駅まで自転車で月曜の日帰り大阪出張の切符を買いに行った。
その帰りに東高円寺まで自転車を漕いで、ひさびさにアジアご飯を食べに行った。
食べ終わるころ、ふと「やってみようかな...」...。
『今日のあなたの運勢は?サイコロの目が3つそろうと何とお食事代がただ!』
3つのさいころを同時にふって、その数が自分が告げた数になるとただになるこのお店。
「2、3、5」
そう言ってサイコロをふる...。
サイコロは...2、3、5!!!
「すごい!!ラッキーですね!」
実は私は過去2回、失恋の後と転職の時にやってみたら当てた。

 花のお水は朝晩2度替え、ついでに氷も1個づつ入れている。
母が贈ってくれた果物、その中のオレンジの皮でマーマレードをこしらえた。
妹の包みに同封の、小学生になったばかりの甥の絵付きの手紙は原点で私を励ます。

 5月には母の日もある。今回も、母にはうんと励まされたが、お母さんというものは
本当に家族の前で元気を出して生きている。
この間もいつもの八百屋さんで、オバチャンが言っていた。
「どんなことがあってもごはんを作る。それが母親ってもんよ」

 月曜の大阪出張の新幹線車内、私は通路側だったが、あとから来た2人の
ビジネスマンはきれいにおじぎをして奥へ。
窓側の人は名古屋で降りる時、まん中で寝ている人に当たらないように、
身体をいろんな方向によじりながら背広を身に着けていた。

『大人ってこういうことが大事なんだなー』
私の頭が無意識に反応していた。

******* 

 今、空で盛んに雷が鳴っている。5月は密かにエネルギーも満ちる。
だから苦しくも、なるのかも。でも、起きた時は快晴だったのに...。 

 私は出張のあと、自分をうんと甘やかして休みをとった。
そして、今、さっきの雷雨の後に再び、まぶしいくらいの快晴の空がある。
と、ヘリコプターが一機、その空に飛んできた。
夏が近付くと感じるコレ。空に反響するエンジンの爆音にエネルギーを感じる。
 快晴の空と窓辺に揺れる木々の葉に誘われ、ひさしぶりに取り出して聴いた
ジャヴァンの一曲を聴きながら、自分が大好きなことをやっと思い出した。

-END-
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