Vol.52 始まり(Let’s get started) [2007.1.23]

 新しい年がはじまった。今年は妹家族にくっついて、初詣の帰りに福
岡の柳川市までのドライブに便乗した。運河のある街。オノ・ヨーコゆ
かりの街。柳川美人…。なるほど風情がある。道中、東京の知り合いか
らメールが入った。
「この凛としたお正月の空気って、いいものですね」
今、ここで受け取る文章として最高だった。そして、日本中どこでもこ
の雰囲気が漂っているのだと思った。

 お正月には母の誕生日もある。毎年、その日をゆっくり過ごせないま
ま、また東京に戻ってしまうのだが、今年はゆっくりと過ごすことがで
きた。
 いつも母に贈る花束。父に「内緒!」とめくばせして、いつもその朝
に花を買いに行く。今年はいつもより少し早く起きて花屋に向かった
が、どうやら早く来すぎたらしい。花屋はまだ開店前だった。しかたな
く、あたりをぐるりと自転車で回ってみると、小学校の頃、友達と遊ん
だ場所に。様子はすっかり変わっている。--案外遠くまで歩いて
遊びに行ったものだな、などと思い出しながら行く。しかし、花屋がな
い。ちょっとそこまでと、軽装で来てしまってそろそろ鼻の頭から冷え
て来た。
 前に雑誌で、チェコのキオスクにあたる駅の売店では花を必ず売ってい
て、青年が気軽に花を一輪買い求める姿がある、という話を思い出した
りしながら、少し寂しくなってきた。しかたない。戻るか。ふと、いつ
もの花屋も、もう開いているのでは…と思い浮かんで自転車をとばす。
と、開いていた!お客さんが一人先にいて、立ち話をして帰っていった。
「すみませんね。さっきのお客さんが10時くらいっていうもので、つ
い遅くあけちゃって」
店のおばさんの手の中で、やわらかなピンクのやさしい花束ができあ
がった。

 東京へ戻る日、今年はめずらしく暖かなお正月だったが、その日は急
に寒くなった。
 寒風の飛行場。デッキで大きく手を振ってくれている私の家族が見える。
 また一年がはじまる。

-END-
 バックナンバーはこちら