11月、勤労感謝の朝。少し遅く起きた私はくだものを山盛りにしていただいた。
洋梨・キウイ・グレープフルーツ。
その大きなお皿を食べながらふと『はじめて食べた日』を思い出した。
小学校の先生がした『洋梨』の話。
「それがおいしいのよ。実はちょっとぶよぶよするくらいやわらかいんだけどね」
梨は堅いと思っていたから、やわらかい梨というものの想像がつかなかった。
家に帰って母に聞くと「おいしいよー。色もきれいでね。でもちょっと高い」そう
言いながらも、そのうち買って来てくれた。
ひょうたんみたいな不思議な形。緑色に茶色のそばかすみたいな見かけはなんだか魅
力的。ひとくち食べたらその味は深かった。
ある日母と開けた、いただきものの箱。すると不思議な銀色の食器。
「なんだろう、これ?」
「グレープフルーツ用だって!」
短い足のついた銀色の丸いお椀と、先がぎざぎざのスプーン、そして先が少し細い、
くちばしみたいな曲線の不思議なナイフ。
「へエエ〜」と言いながらも、それを使う機会はなかなかやって来なかった。当時グ
レープフルーツは、一個何百円もして、母はその食器におやつを盛ってくれたりして
いた。
でも、その日もついにやってきた。
大好きな祖父がやって来た。おみやげの袋を抱えて。そしてそれは...グレープフルー
ツ!
早速、銀の食器が登場。
「お砂糖をふりかけていただくそうよ」
半分にして丸い銀のお椀に入れ、あの不思議なナイフで外皮と実を切り離す。スプー
ンですくうと水分がとても多くて、瞬く間にできあがったのは、幸せなジュース。
友だちが話題にしていた。
「キウイ、食べたことある?」
『ある』と答えた友だちはこう言った。
「外側と中身が全然違っててね...バナナみたいな梨みたいな...なんとも言えない味」
想像で頭が一杯になった。
そしてまた、私にもその日がやってきた。
毛の生えた不思議でユーモラスな形。
切ると...ハッ。
緑に並ぶ黒い種。丸くきれいに。
いつものカフェで、厨房からひそかに小さなお皿が渡された。
「処女作!」
鴨と牡蠣の薫製にオリーブオイル。
「これにはシロでしょ!」
そう言いながら本当は12月からというシャンパンも開けてくれて。
「はい」
イチジクが2切れ、きれいに盛られた皿も又、渡された。
お肉とフルーツなんて取り合わせをはじめて体験したのは、出張で行ったスイス。
『鴨のオレンジ煮』
「もうすぐクリスマスだね、マリコさん」
『食べ物』に心と意味をこめたおせち料理のお正月も間近。2007年がやってくる。
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