令和3年	8月1日		炎昼を戻りて熱きシャワー浴ぶ（東千秋）
	8月2日		二階より塀の上行く日傘見る（高濱虚子）
	8月3日		遠雷やはづしてひかる耳かざり（木下夕爾）
	8月4日		耳たてゝ蝙蝠たちぬ草井より（原石鼎）
	8月5日		雨のあくる日の柔らかな草をひいて居る（尾崎放哉）
	8月6日		ふるさとにわが空蝉は突伏して（正木ゆう子）
	8月7日		親よりも白き羊や今朝の秋（村上鬼城）
	8月8日		初秋や海も青田の一みどり（松尾芭蕉）
	8月9日		朝顔すたれし入谷にすまひ越し方（小沢碧童）
	8月10日		白芙蓉昔ながらの武家屋敷（成定ちえ）
	8月11日		石塊ののりし鳥居や法師蝉（芝不器男）
	8月12日		秋来ぬとサファイア色の小鯵買ふ（杉田久女）
	8月13日		病む日又簾の隙より秋の蝶（夏目漱石）
	8月14日		秋風やうつろをいへば国と我（松根東洋城）
	8月15日		流燈や一つにはかにさかのぼる（飯田蛇笏）
	8月16日		送り火やいつかは死んで後絶えん（村上鬼城）
	8月17日		わがままきままな旅の雨にはぬれてゆく（種田山頭火）
	8月18日		石切りのたつきに老いて蜩や（小沢碧童）
	8月19日		葛の谷行けばだんだん家貧し（松本たかし）
	8月20日		仰のけに落て鳴けり秋のせみ（小林一茶）
	8月21日		アカペラの舟歌秋の潮の帯（今村潤子）
	8月22日		けふはおわかれ糸瓜がぶらり（種田山頭火）
	8月23日		蜻蛉や村なつかしき壁の色（与謝蕪村）
	8月24日		色のなき風に筋ある峠越え（永田満徳）
	8月25日		虫なくや心きえゆく壁の中（竹久夢二）
	8月26日		門前に舟繋ぎけり蓼の花（正岡子規）
	8月27日		名はしらず草毎に花あはれなり（杉山杉風）
	8月28日		灯の届かぬ庫裏やきりぎりす（炭太祗）
	8月29日		芭蕉にも思はせぶりの鬱金哉（上島鬼貫）
	8月30日		草よりも草の色してばつたかな（あまの樹懶）
	8月31日		二百十日こと無く過ぎし野草園（鈴木泰子）