平成30年	12月1日		遠山に日の当りたる枯野かな（高濱虚子）
	12月2日		夕月に大根洗ふ流かな（正岡子規）
	12月3日		冬構急ぐともなし比叡の晴（日野草城）
	12月4日		原罪を吐くや鳴く鶴一万羽（今村潤子）
	12月5日		冬日見え鴉かたまり首伸ばす（西東三鬼）
	12月6日		顰めつ面しつつ野良猫日向ぼこ（あまの樹懶）
	12月7日		鞠のごと狸おちけり射とめたる（原石鼎）
	12月8日		雪嶺が遠き雪嶺よびつづけ（橋本多佳子）
	12月9日		京箸でするりと分くる煮大根（永田満徳）
	12月10日		枯蘆やうす雪とぢし水の中（富田木歩）
	12月11日		更くる夜や炭もて炭をくだく音（大島蓼太）
	12月12日		いま遠き星の爆発しづり雪（正木ゆう子）
	12月13日		一塵もゆるさず黒の冬帽子（前田普羅）
	12月14日		炉開いてはたと客なき一日かな（尾崎放哉）
	12月15日		預けある鼓打ちたし冬の梅（松本たかし）
	12月16日		年木割かけごゑすればあやまたず（飯田蛇笏）
	12月17日		凭れゐる人も枯木に見えてきし（井芹眞一郎）
	12月18日		さゝなきの眉あらはしゝ夕日かな（原石鼎）
	12月19日		ひつそりとして八ツ手花咲く（種田山頭火）
	12月20日		あら鷹の瞳や雲の行く処（松瀬青々）
	12月21日		静かさは竹折る雪に寝かねたり（夏目漱石）
	12月22日		人の来てまたも頭巾を脱がせけり(良寛)
	12月23日		山茶花の莟こぼるる寒さかな（芥川龍之介）
	12月24日		淡雪のつもるつもりや砂の上（久保田万太郎）
	12月25日		麦の芽のうねうねの縞丘をなし（長谷川素逝）
	12月26日		耳塚の前ひろびろと師走かな（川端茅舎）
	12月27日		鶏の嘴に氷こぼるる菜屑かな（加舎白雄）
	12月28日		銭ほしやとりわけ旅の年の暮（竹久夢二）
	12月29日		鰒すするうしろは伊豆の岬かな（小林一茶）
	12月30日		狼の声そろふなり雪のくれ（内藤丈草）
	12月31日		年くれぬ笠著て草鞋はきながら（松尾芭蕉）