平成27年	10月1日		萩の縁しずかに障子しまりけり（高橋淡路女）
	10月2日		けふの日をつぶさに語る秋刀魚かな（永田満徳）
	10月3日		門田なる蝗の日和こゝ暫し（松本たかし）
	10月4日		駒とめて何事問ふぞ毛見の人（正岡子規）
	10月5日		冬瓜やたがひにかはる顔の形（松尾芭蕉）
	10月6日		身を委ね風と語らふ秋桜（今村潤子）
	10月7日		葡萄一粒一粒の弾力と雲（富沢赤黄男）
	10月8日		葛飾の月の田圃を終列車（川端茅舎）
	10月9日		洞窟に堪え忘却の水澄めり（西東三鬼）
	10月10日		翅青き虫きてまとふ夜学かな（木下夕爾）
	10月11日		葦火してしばし孤独を忘れをる（竹下しづの女）
	10月12日		極楽の乗物はこれ桐一葉（永井荷風）
	10月13日		雲低き夕べ夕べや柳ちる（小林一茶）
	10月14日		下り簗逃れし水に勢ひあり（井芹眞一郎）
	10月15日		をとどしのけふの事なり秋出水（高濱虚子）
	10月16日		秋茄子の紫おもし親遠し（石橋秀野）
	10月17日		星月夜わが身も消ぬと思ふまで（正木ゆう子）
	10月18日		穴惑水のほとりに居りにけり（日野草城）
	10月19日		忍者町ぬつくと影曳く笑ひ茸（今村潤子）
	10月20日		夜寒さやひきしぼりぬく絹糸の音（杉田久女）
	10月21日		木犀の香に士族住み今も住み（京極杞陽）
	10月22日		落鮎の泳ぐ姿に焼き上がる（萱嶋晶子）
	10月23日		父が酔家の新酒の嬉しさに（黒柳召波）
	10月24日		やゝ寒く人を伺ふ鼠かな（川井乙州）
	10月25日		遠ざかりゆく下駄の音十三夜（久保田万太郎）
	10月26日		日は西に成りぬ柚味噌の釜の影（大須賀乙字）
	10月27日		かくれんぼするによき藁塚ありにけり（あまの樹懶）
	10月28日		雲二つ割れて又寄るそゞろ寒（原石鼎）
	10月29日		紅葉してそれも散行く桜かな（与謝蕪村）
	10月30日		露霜や死ぬまで黒髪大切に（橋本多佳子）
	10月31日		法衣こんなにやぶれて草の実（種田山頭火）