平成27年	8月1日		松の葉のはらりと落つる暑さかな（東千秋）
	8月2日		少年に蝉の森かぎりなくあをし（木下夕爾）
	8月3日		夏の月御油より出て赤坂や（松尾芭蕉）
	8月4日		暑さきはまる土に喰ひいるわが影ぞ（種田山頭火）
	8月5日		乳いまだ太らぬ少女海水着（日野草城）
	8月6日		禊するごと滝飛沫浴びてをり（萱嶋晶子）
	8月7日		草刈つて客待つ水辺ととのひし（鈴木泰子）
	8月8日		夏草と見し間に秋の初風や（松瀬青々）
	8月9日		黎明を思ひ軒端の秋簾見る（高濱虚子）
	8月10日		中年や遠くみのれる夜の桃（西東三鬼）
	8月11日		つくつくぼうし鳴いてつくつくぼうし（種田山頭火）
	8月12日		幣立てて生きる証を韮の花（今村潤子）
	8月13日		今宵あるためにも銀河吹き霽るゝ（井芹眞一郎）
	8月14日		ゼリー明るく羊羹暗く盆の家（正木ゆう子）
	8月15日		線香が折れる音も立てない（尾崎放哉）
	8月16日		ひとの子を濃霧にかへす吾亦紅（橋本多佳子）
	8月17日		蜩が二つ啼きまた一つがこもごもに（北原白秋）
	8月18日		父母もきつと見てゐる遠花火（あまの樹懶）
	8月19日		古畳背をあぶらるる残暑かな（永田満徳）
	8月20日		ひねもすの山垣曇り稲の花（芝不器男）
	8月21日		浜に住んで朝顔小き恨みかな（夏目漱石）
	8月22日		秋風の山をまはるや鐘の声（加賀千代女）
	8月23日		夜見が浜も由比が浜も同じ蜻蛉かな（原石鼎）
	8月24日		秋暑し榎枯れたる一里塚（川端茅舎）
	8月25日		どの道も秋の夜白し草の中（渡辺水巴）
	8月26日		山山を覆ひし葛や星月夜（松本たかし）
	8月27日		星一つ残して落つる花火かな（酒井抱一）
	8月28日		稲妻に人見かけたる野道哉（正岡子規）
	8月29日		川風も秋となりけり釣の糸（永井荷風）
	8月30日		満天の星に旅ゆくマストあり（篠原鳳作）
	8月31日		掘りかけし土に秋雨降りにけり（杉田久女）