平成27年	7月1日		初蝉に聞き入つてゐる松の幹（井芹眞一郎）
	7月2日		すずしさや袖にさし入る海の月（三浦樗良）
	7月3日		明けいそぐ夜のうつくしや竹の月（高井几董）
	7月4日		桑の実を口のうつろに落す音（高濱虚子）
	7月5日		冷房の時計時計の時おなじ（西東三鬼）
	7月6日		何でやはひとりわらひは涼しいか（広瀬惟然）
	7月7日		七夕や髪濡れしまま人に逢ふ（橋本多佳子）
	7月8日		村の子の草くぐりゆく清水かな（石井露月）
	7月9日		はだかではだかの子にたたたかれてゐる（種田山頭火）
	7月10日		水ふんで草で足ふく夏野かな（小西来山）
	7月11日		草を引く地軸と語り合ふやうに（正木ゆう子）
	7月12日		生きのびてまた夏草の目にしみる（徳田秋声）
	7月13日		虹生るるところのたりと夫婦牛（今村潤子）
	7月14日		友の夏帽が新しい海に行かうか（尾崎放哉）
	7月15日		産声は正しく男の児雲の峰（東千秋）
	7月16日		暑き夜の荷と荷の間に寝たりけり（井上井月）
	7月17日		蚊の声にらんぷの暗き宿屋かな（正岡子規）
	7月18日		やがて死ぬけしきは見えずせみの声（松尾芭蕉）
	7月19日		涼しさや帯も単衣も貰ひもの（竹下しづの女）
	7月20日		沖へ泳ぐふたりのみなり恋あかす（高篤三）
	7月21日		料亭の女将は美人夏座敷（あまの樹懶）
	7月22日		夕立や草葉をつかむ村雀（与謝蕪村）
	7月23日		谷は夕焼子は湯あがりの髪ぬれて（長谷川素逝）
	7月24日		蝉時雨浴びゐて耳の無きごとし（萱嶋晶子）
	7月25日		土用鍋気を抜く仕事なかりけり（永田満徳）
	7月26日		青芒日照雨鎬をけづり来る（川端茅舎）
	7月27日		炎帝につかへてメロン作りかな（篠原鳳作）
	7月28日		昼貌に仏の御眼のとろけさよ（北原白秋）
	7月29日		日ざかりひそかにも物を盗まれし（種田山頭火）
	7月30日		髪洗うて温泉にもうたるゝいとま乞ひ（石橋秀野）
	7月31日		風鈴や庭のあかりは隣から（永井荷風）