平成25年 2月1日   九十の端を忘れ春を待つ(阿部みどり女)
  2月2日   一枚の餅の如くに雪残る(川端茅舎)
  2月3日   ひとり身の呟くに似て豆を撒く(鈴木泰子)
  2月4日   梅が香にのつと日の出る山路かな(松尾芭蕉)
  2月5日   暮れそめてにはかに暮れぬ梅林(日野草城)
  2月6日   池田から炭くれし春の寒さかな(与謝蕪村)
  2月7日   捕らはれの身とはこのこと春の風邪(安田花紫香)
  2月8日   春燈の明るくをれば夜雨いたる(長谷川素逝)
  2月9日   初午の祠ともりぬ雨の中(芥川龍之介)
  2月10日   春の炉に足裏あぶるや杣が妻(前田普羅)
  2月11日   垣添や猫の寝る程草青む(小林一茶)
  2月12日   鎌倉を驚かしたる余寒あり(高濱虚子)
  2月13日   受験生どっと吐き出す朝の汽車(井芹眞一郎)
  2月14日   春寒し雨に交じりて何か降(井上井月)
  2月15日   見上げたる武者返しより落椿(萱嶋晶子)
  2月16日   日の影やごもくの上の親すずめ(浜田酒堂)
  2月17日   妖星におびゆる野火の火色かな(日野草城)
  2月18日   炊きあげてうすきみどりや嫁菜飯(杉田久女)
  2月19日   梅の花意志あるごとく暮れ残る(永田満徳)
  2月20日   山国の暗すさまじや猫の恋(原石鼎)
  2月21日   晴天に音を消したる雪崩かな(京極杞陽)
  2月22日   春潮の匂ひの端に泊まりけり(木庭布左江)
  2月23日   口あけぬ蜆死んでゐる(尾崎放哉)
  2月24日   腸に春滴るや粥の味(夏目漱石)
  2月25日   木の芽草の芽あるきつづける(種田山頭火)
  2月26日   蛤を買ひえて空の藍ゆたか(渡辺水巴)
  2月27日   待ちゐたる風をのがさず鼓草(あまの樹懶)
  2月28日   まてぐしに哀れは馬刀のちからかな(加舎白雄)