平成24年	12月1日		障子あけて置く海も暮れきる（尾崎放哉）
	12月2日		遠山に日の当りたる枯野かな（高濱虚子）
	12月3日		夢に舞ふ能美しや冬籠（松本たかし）
	12月4日		一せいに光り出したる枯尾花（鈴木泰子）
	12月5日		あきらかに人の聲する枯木かな（日野草城）
	12月6日		赤き火事哄笑せしが今日は黒し（西東三鬼）
	12月7日		引き潮に乗りて浮く鴨泳ぐ鴨（萱嶋晶子）
	12月8日		谿の夜の底冷えに住む灯の窓なり（長谷川素逝）
	12月9日		三尺の山も嵐の木の葉かな（松尾芭蕉）
	12月10日		山里のすぐ影まとふお茶の花（東千秋）
	12月11日		我が寝たを首あげて見る寒さかな（小西来山）
	12月12日		漉く紙のまだ紙でなく水でなく（正木ゆう子）
	12月13日		タクシーに放り込んだる霜夜の身（永田満徳）
	12月14日		霜除や月より冴ゆるオリオン座（渡辺水巴）
	12月15日		紛るべき物音絶えて鉢叩（三浦樗良）
	12月16日		北の窓塞ぎぬ獣通ふらし（石井露月）
	12月17日		倒木の上に倒木冬ざるる（あまの樹懶）
	12月18日		桐の実の鳴りいでにけり冬構（芝不器男）
	12月19日		生きんとて殺さばいかに薬喰ひ（各務支考）
	12月20日		職業の分からぬ家や枇杷の花（正岡子規）
	12月21日		中年の今や短き日を重ね（日野草城）
	12月22日		昇降機師走の昂ぶり足裏に（今村潤子）
	12月23日		象の鼻にも遊びゐる冬日かな（木庭布左江）
	12月24日		とつぷりと後暮れゐし焚火かな（松本たかし）
	12月25日		赤き色花舗よりあふれクリスマス（萱嶋晶子）
	12月26日		大根引大根で道を教へけり（小林一茶）
	12月27日		蘆枯れて水のとどまるところなし（井芹眞一郎）
	12月28日		遠くの餅つく音で起こされて居る（尾崎放哉）
	12月29日		鉄橋に水ゆたかなる冬日和（飯田蛇笏）
	12月30日		襟巻に首引入て冬の月（杉山杉風）
	12月31日		年の夜や吉野見て来た檜笠（坪井杜国）