平成23年	6月1日			松風をうつつに聞くよ夏帽子（芥川龍之）
	6月2日			緑陰は抱かれて眠る稚児のもの（萱嶋晶子）
	6月3日			羅をゆるやかに着て崩れざる（松本たかし）
	6月4日			吹き習ふ麦笛の音はおもしろや（杉田久女）
	6月5日			四阿に日の影動く若楓（正岡子規）
	6月6日			麦車馬におくれて動き出づ（芝不器男）
	6月7日			ふる里の花のジャスミン育てをり（鈴木泰子）
	6月8日			貧乏な青物店や夏大根（河東碧梧桐）
	6月9日			夏掛や転寝の孫のころがれる（瀧井孝作）
	6月10日			悲憤あり吐きし西瓜の種子黒く（竹下しづの女）
	6月11日			さみだれのさ ゞ なみ明り松の花（渡辺水巴）
	6月12日			夕日まだ残る水より畦を塗る（井芹眞一郎）
	6月13日			金粉をこぼして火蛾やすさまじき（松本たかし）
	6月14日			脱力は得意なりけり心太(あまの樹懶)
	6月15日			五月闇より石神井の流れかな（川端茅舎）
	6月16日			さみだれや仏の花を捨てに出る（与謝蕪村）
	6月17日			朝々かぼちゃの花咲くを妻の生甲斐か（栗林一石路）
	6月18日			五月雨や鶏の影ある土間の隅（富田木歩）
	6月19日			横ざまに海月流るゝ潮かな（高濱虚子）
	6月20日			五月雨や起上りたる根無草（村上鬼城）
	6月21日			梅雨晴間指一本で弾くピアノ（今村潤子）
	6月22日			古郷やよるも障も茨の花（小林一茶）
	6月23日			闇涼し草の根を行く水の音（石井露月）
	6月24日			茗荷汁ほろりと苦し風の暮（日野草城）
	6月25日			草笛や泳ぎ子野路をなだれゆく（富田木歩）
	6月26日			灯を消せば涼しき星や窓に入る（夏目漱石）
	6月27日			短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎（竹下しづの女）
	6月28日			杣が頬に触るゝ真葛や雲の峰（原石鼎）
	6月29日			水鶏なく宿に眠れる蕩児かな（前田普羅）
	6月30日		6月30日	うつろなる蝦蟇の視線の残りけり（木庭布左江）