平成19年 5月1日乳をやる胸うつくしき五月かな(萱嶋晶子)
 5月2日 蛙の目越えて漣又さざなみ(川端茅舎)
 5月3日 からし菜が濃緑に夜や明けぬらし(前田普羅)
 5月4日 串竹にきしりてもげし目刺かな(芝不器男)
 5月5日 つみ草や背に負ふ子も手まさぐり(炭太祗)
 5月6日 夏に入る川がもつとも輝きて(井芹眞一郎)
 5月7日 けし畑や散しづまりて仏在世(川井乙州)
 5月8日 新緑やたましひぬれて魚あさる(渡辺水巴)
 5月9日 たまさかは夜の街見たし夏はじめ(富田木歩)
 5月10日 杜若われに発句の思ひあり(松尾芭蕉)
 5月11日 人を見て山雀鳴くや籠の中(松根東洋城)
 5月12日 実梅もぐ最も高き枝にのり(杉田久女)
 5月13日手の皺が歩み悪いか初蛍(小林一茶)
 5月14日こころすなほに御飯がふいた(種田山頭火)
 5月15日画架提げてこころ若やぐ街薄暑(鈴木泰子)
 5月16日 宇治に似て山なつかしき新茶かな(各務支考)
 5月17日 花うばらふたたび堰にめぐり合ふ(芝不器男)
 5月18日 滝の上に出て滝見えず青嵐(松本たかし)
 5月19日 江戸っ子の中の神田や初松魚(島田五空)
 5月20日 月の暈牡丹くづるゝ夜なりけり(石井露月)
 5月21日 古池や花萍の昼淋し(内藤鳴雪)
 5月22日 さしかくる日傘くるりと立話(今村潤子)
 5月23日 宿々は皆新茶なり麦の秋(森川許六)
 5月24日 をろがめる人に神杉落ちやまず(竹下しづの女)
 5月25日 斗酒ありや日暮れて胡瓜刻む音(尾崎紅葉)
 5月26日 杏あまさうな人はねむさうな(室生犀星)
 5月27日 天に海に烏賊船の火ともりそむ(原石鼎)
 5月28日若竹や夕日の嵯峨となりにけり(与謝蕪村)
 5月29日万緑を支えんとして岬あり(木庭布左江)
 5月30日 水音は水に戻りて水鶏かな(加賀千代女)
 5月31日 左から撮つてほしいの百合の花(あまの樹懶)