平成19年	3月1日		抜くは長井兵助の太刀春の風（夏目漱石）
	3月2日		児等と行く足もと浪がころがれり（尾崎放哉）
	3月3日		雛の日や千住大橋薄霞（小沢碧童）
	3月4日		春泥に子等のちんぽこならびけり（川端茅舎）
	3月5日		菫摘めばちひさな春のこころかな（加藤暁台）
	3月6日		蛇穴を出れば飛行機日和也（幸田露伴）
	3月7日		芽柳や風の見せたるうすみどり（鈴木泰子）
	3月8日		頬白やそら解けしたる桑の枝（村上鬼城）
	3月9日		星食ひに揚るきほひや夕雲雀（尾崎紅葉）
	3月10日		草麦や雲雀があがるあれ下がる （上島鬼貫）
	3月11日		野遊びの心大事に持帰る（木庭布左江）
	3月12日		春雪や学期も末の苜蓿（芝不器男）
	3月13日		沈丁の香を吐きつくし在りしかな（松本たかし）
	3月14日		長閑さや鼠のなめる角田川（小林一茶）
	3月15日		幾尾根も焼いて来し火を足もとに（井芹眞一郎）
	3月16日		庭前に白く咲いたる椿かな（上島鬼貫）
	3月17日		歌書よりも軍書にかなし吉野山（各務支考）
	3月18日		暖かしおやすいごようと返されて（あまの樹懶）
	3月19日		大江戸がこゝから見える日本橋（竹久夢二）
	3月20日		かすんでかさなって山がふるさと（種田山頭火）
	3月21日		国二つ呼びかひ落す雪崩かな（前田普羅）
	3月22日		旅人の鼻まだ寒し初ざくら（与謝蕪村）
	3月23日		海棠や紅粉少しある指のはら（炭太祗）
	3月24日		咲き初むる花に華やぎ城下町（萱嶋晶子）
	3月25日		船を繋ぐ妓楼の裏や芦の角（寺田寅彦）
	3月26日		若草に背中をこする野馬かな（小林一茶）
	3月27日		つばめ来と村の鍛冶屋が鎌を打つ（長谷川素逝）
	3月28日		亀の甲烹らるゝ時は鳴きもせず（川井乙州）
	3月29日		さまざまのこと思ひ出す櫻哉（松尾芭蕉）
	3月30日		囀の渦大仏の掌（今村潤子）
	3月31日		東山鐘霞む寺を竝べ置く（青木月斗）