平成17年	12月1日		山畑や青みのこして冬構へ（向井去来）
	12月2日		しわぶけば四方より幹のかこみ立つ（長谷川素逝）
	12月3日		人入みに白き月見し十二月（臼田亞浪）
	12月4日		来るとしの身もたのもしや枇杷のはな（上島鬼貫）
	12月5日		うしろより初雪降れり夜の町（前田普羅）
	12月6日		打ちつゞく寒き好き日や暦売（松根東洋城）
	12月7日		糊米や水すみかねて初氷（森川許六）
	12月8日		風呂吹にとろりと味噌の流れけり（松瀬青々）
	12月9日		父の座のおのづと決まる冬座敷（安田かしこ）
	12月10日		うとうとと生死の外や日向ぼこ（村上鬼城）
	12月11日		引張りてふとんぞ寒き笑ひ声（広瀬惟然）
	12月12日		水洟や仏具をみがくたなごころ（室生犀星）
	12月13日		凩や日も照り雪も吹き散らし（三浦樗良）
	12月14日		寸分の隙間うかがふ隙間風（杉田久女）
	12月15日		ペチカ鉛色のけさまだ焚かず（河東碧梧桐）
	12月16日		桶踏んで冬菜を洗ふ女かな（正岡子規）
	12月17日		しばらくは日課のやうに来る笹子（萱嶋晶子）
	12月18日		冬山やどこまで登る郵便夫（渡辺水巴）
	12月19日		咳込めば我火の玉のごとくなり（川端茅舎）
	12月20日		鍋焼の火をとろくして語るかな（尾崎紅葉）
	12月21日		板壁や親の世からの古暦（小林一茶）
	12月22日		月あらむ櫺子明りを柚子風呂に（臼田亞浪）
	12月23日		わかき人に交じりてうれし年忘れ（高井几董）
	12月24日		寒鯛の煮凍り箸に挟みけり（原石鼎）
	12月25日		数へ日の一日をホ句に遊びけり（あまの樹懶）
	12月26日		銭ほしや他国にゐても年の暮(竹久夢二）
	12月27日		鍋敷に山家集あり冬籠り（与謝蕪村）
	12月28日		煤をはく音せまり来ぬ市の中（炭太祗）
	12月29日		目ざむるや湯婆わずかに暖き（正岡子規）
	12月30日		里々に米つく音の師走かな（森川許六）
	12月31日		年こしや余り惜しさに出てありく（立花北枝）