平成16年8月1日言い難きことをずばりとサングラス(あまの樹懶)
 8月2日 昼寝の足のうらが見えてゐる訪ふ(尾崎放哉)
 8月3日 顔につく飯粒蝿にあたへけり(服部嵐雪)
 8月4日 扇風機やる気なさそでありさうで(あまの樹懶)
 8月5日 向日葵の蕋を見るとき海消えし(芝不器男)
 8月6日 腔のおとカオと仆れしラガー起つ(内田慕情)
 8月7日 立秋の紺落ち付くや伊予絣(夏目漱石)
 8月8日 打ちあけしあとの淋しさ水馬(阿部みどり女)
 8月9日 朝顔の上から取るや金山寺(小林一茶)
 8月10日 一塊の光線となりて働けり(篠原鳳作)
 8月11日 音のする方を探して遠花火(あまの樹懶)
 8月12日 夜は秋やひやりとふれし椅子の肱(臼田亞浪) 肱:ひじ
 8月13日 雲の峰幾つ崩れて月の山(松尾芭蕉)
 8月14日 四条五条南無阿弥陀仏蝉時雨(あまの樹懶)
 8月15日 穴ぐらの驢馬と女に日ぽつん(片山桃史)
 8月16日我を怒らしめこの月をまろからしめ(竹下しづの女)
 8月17日 しまひ花火窓流行歌ぶちまけて(石橋秀野)
 8月18日 天の川地上光るものに我もかな(渡辺水巴)
 8月19日 かなかなの暮れゆく処けふの宿(あまの樹懶)
 8月20日 茄子もぐや日を照りかへす櫛のみね(杉田久女)
 8月21日 恋は得ぬされどすべてを失ひぬ(竹久夢二)
 8月22日 一日を脱力すれば夜涼かな(あまの樹懶)
 8月23日 はだかで話がはづみます(種田山頭火)
 8月24日 古井戸や蚊に飛ぶ魚の音闇し(与謝蕪村)
 8月25日 終止符を打たんとすればつくつくし(あまの樹懶)
 8月26日 初秋の蝗つかめば柔かき(芥川龍之介) 蝗:いなご
 8月27日 風生れて秋七草となりにけり(あまの樹懶)
 8月28日 虫ききに銀座を歩む月夜哉(永井荷風) 哉:かな
 8月29日 小刀や鉛筆を削り梨を剥く(正岡子規)
 8月30日 大空へこころ放てば鰯雲(あまの樹懶)
 8月31日 風少し鳴らして二百十日かな(尾崎紅葉)