「えっと……。住所ではこの辺りなんだけどなぁ。まわりは住宅ばっかりでライブやるような施設なんて見当たらないんだけど……」
その日、お昼の2時からのライブの案内を頂いて住所を頼りに来てみたのですが。辺りは閑静な住宅地。どこだろう。まわりを見回しながら車をノロノロ走らせていたら……。
ありました! 『Dolce駐車場』って、住宅地の中の小さな空き地に標識が。
あ、今車を停めようとしている男性は夜のライブの店でよく会う人だ。うん、ここで間違いなさそう。
自分もやっと車を停めてドアから出たら、別の車から降りてきた女性二人連れ。「あら、こんにちは!」こちらも顔見知りだった。
「ところで、会場はどこなんですか?」
「ああ、こっちですよ」
って訳で、住宅の角を一つ曲がった所へ案内してくれました。
え〜っ? 何だか超高級マンションの入口って感じ。シックでオシャレな建物にゴージャスな門。中庭風の通路の先から2階へ上がっていきます。廊下の先の入り口に受付の人が立っていました。
入った部屋は数十畳?ありそうな木のフローリング。濃いエンジ色のカーテン。正面にはスポットライトに照らされた大きな静物のレリーフの額が掛かっています。
そしてそこに鎮座しているマホガニーの木目のグランドピアノ。譜面立ての裏には装飾が施され、足は猫脚。
中世ヨーロッパ貴族のパーティー会場?って感じでしょうか。
椅子に掛けてウェルカムドリンクを飲みながら、さっきの知り合いの男性と話をしていたら、もう一人知り合いの男性が入って来て、同じテーブルに3人掛け。
「ここって一体何なんですか?マンションの一室?」って私が聞いたら、
「いえ、マンションじゃなくてこの建物全部がある会社の社長さんの住まいだったらしいですよ」
「ひぇ〜! この建物全部が個人宅!?」と驚いてしまいました。
すみません、今回のコラム、豪華住宅の話がテーマじゃないんですが(笑)。
イベントホールとして貸し出されているらしいこのオシャレな空間、たまにはこんな場所でのライブもいいなぁ。そんなことを思っていたら、隣の男性から
「どうですか?an弾手さんもここでライブとか?」
な〜んて言われてしまった。
その日のライブは、(Gt) (Vo) 島田ッ宏、(Pf) 渡久山ヒロシ、(Vo) 松本けい子による「アフタヌーンボサノバライブ」。
『夏の終わりに涼し気で楽しい音楽の空間をお届けできればと思っていますので、ご都合よろしければ遊びにいらして下さいませ』というご案内を頂いたのでした。
3ヵ月後に自分のライブの予定も控えているので、他の人のライブの中身は気になります。音楽演奏そのものより全体の構成やMCの内容が。今回は主にVoの松本けい子さんが、ボサノバが生まれたブラジルの風土や曲の意味、背景などを語りながらライブは進んでいきます。フムフム……、とても参考になりました。自分のライブのテーマは「秋から冬へ。遠い記憶の旅」。構成、シナリオ、しっかり詰めていかなければ。
それにしても、この王侯貴族風の空間で聴くボサノバのひと時。なんとも贅沢な晩夏のアフタヌーンでした。
(続く→原則毎週火曜日更新)
an弾手(andante)
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