Vol.95 青と緑と太陽 [2010.7.28]

 今、吹く風は完璧な南風。
朝、カーテンを開けると青と緑があった。そこに夏が来ていた。
四角い窓の外にキラキラとまぶしい柿の木の緑と広がる空の青。
向こうにある白い建物の壁がいつもより強く輝いている。いつのまにか、その手前に黒いカラスが一羽、まるでゴーギャンの絵の中の鳥のように、この夏の風景にミステリアスな雰囲気を加えている。

 昨日私は、九州の宮崎出身という大萩康司という若いクラシックギタリストの「フェリシタシオン」というアルバムを買い求めた。彼には、ラテンアメリカの音がとても似合う。フランスとキューバで腕を磨いた彼のギターの音色とこの夏の訪れが私を元気にしてくれる。
 ラテンの音楽は夏を盛り上げてくれる。でも、それは、ただ底抜けに明るいだけでなく、憂いをも含む陰影がある。やっぱりそれが、太陽の本当の力だ。

 九州のすざましい梅雨と夏の暑さの中で育ってきた私には、東京の梅雨はいたって穏やかで、暑さはいくら皆が暑い暑いといっても、なんだが違うと思う。それほど、やはり南九州の気候は情熱的だ。九州は今、いろいろと大変な時期だが、きっといろんな力を持つ太陽が味方してくれるはず。祈っている。

 ワールドサッカーも熱く終わった。ジャパンブルーの素晴らしい輝きは、みんなに感動をくれたはずだ。サムライブルー。日本人のかっこよさが特別に見えた。なんだか凛としていて、やっぱり侍だ。
選手たちがしっかりとうたってくれた、君が代の独特の音の個性、そして日の丸のなんと素敵だったことか。あのデザインは誰が考えたんだろう。
太陽。そしてシンプルの極み。それはまさに、禅か。

 あっという間に8月。刻々と彩を変える、風景の音、風の色、太陽のにおいを感じながら、どんな気持ちになろうと、季節を楽しもうと思う。

 一枚のCDが終わり、クーラーを止めて窓を開けると、蝉が一匹、鳴きはじめた。

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