Vol.84 [2009.9.28]

 まさに「あっという間」。
この間今年がはじまったかのようだ。そして夏が過ぎ秋になった。今年は5月のゴールデンウィーク、9月に通称シルバーウイークの大型連休がある。

 今年、私はその期間に東京芸大で工芸実習のオープンクラスを受けることにした。
大学の講座と言えば、以前の会社で上智大学の「社会人講座」で、受けたいものがあれば3ヶ月間取らせてくれ、それで知った。今回に関しては会社は無関係で、私自身決めた。
 受験で2度トライし、残念ながら最後まで登り切れなかった芸大だが、こんな講座があるなんて最高。今年まで全然知らなかった。しかも、行きたかったこの講座だけ、休日を利用した6日間。ヤッホ〜!そして今、私はその真っ最中。
しかし、教授や講師の方々の、まさに『ゴッドハンド』。教えてもらうだけで確実に何かが身体の中に染み渡る感じ。そう、パソコンじゃなくて、こうやってコツコツと何かを触りながら探して行くって本当に素晴らしい。

******* 

 7月頃から私には多くミラクルなことが起こっている。ミラクルだなんて、たいそうな言い草だが、でも、こういうのを「ミラクル」というんじゃないだろうか。
 ある日、ふいに昔の同僚を思い出した。彼は私より後輩だったが、二人とも会社を辞めても、必ず1年に一度ぐらいひょんなところで鉢合わせをしていた。渋谷で下北沢で青山で…。まさに角をまがるとお互いそこに居るという具合に。
「なんか縁が切れそうになったら会っちゃうよね〜」なんて、二人で悪態にも似た仲良しならではの会話をし、会った後はたまにメールもしていた。だが、それから会わないまま過ぎ、2〜3年たったある日ふと思い浮かべた。前にパソコンが壊れてからアドレスもわからなくなってしまっていた。デジタルの悲しさ。思い浮かべるしかできなくなっていた。
だが、何とその次の朝。「生きてる?」という題名のメールが。
何と!まさにその同僚からだった!おもわずみぶるいするようなタイミング!
煥発入れずに返信すると「呼ばれてるのがわかっちゃったんだな」などとまたふざけていたが、実際本当に二人ともびっくりしていた。

  その後、ある土曜。友達とひさしぶりに逗子に行った。ここは海辺に小さな岬があってそこには芝生が植えられている。夏でなくとも海辺のランチはしごく楽しく、海辺を去って夕食で立ち寄った和食屋さんでは地元の方と仲良しになりつい話しこみ、東京に戻ったのは終電近くとなった。
いつもながらにギュウギュウ詰めの新宿からのJR中央線。ポジションを変えるのも苦しい。さっきまでの逗子はどこへ行ってしまったのだろう…。そうしてやっと降りる駅の手前で、隣の人を見る隙ができた。あ!さっきまでお互いに直角のポジションで私の隣でつり革につかまって船をこいでいたのは!
何と私の友達!しかも「どうしているかな」と思ったのがその前日のことだった。さすがに驚いて、寝ている友達を起こしてしまった。「○○ちゃん!」
起きがけで赤い彼女の目も、次の瞬間すっかり丸くなっていた。

  そしてある夕方。ちょっと残業になり、やれやれといつもの階段を降りた。すると!
「あ、この顔!」私は瞬間、彼女に駆け寄った。
「覚えてる?!」「..あ〜!!まりこちゃん!」
まさにお互い驚き顔。彼女は私の名前を覚えていてくれた!何と10年ぶりの再会だった。その前夜ふと「彼女はバレエが得意だったな、最初に腕のラインのことを教えてくれたのは彼女だったなあ。どうして会わなくなったかな。覚えてないのはなぜ」と、たるみはじめた二の腕に渇を入れようと、ひさびさにポーズをとってみたりしていたのだった。

  そして9月。これはもっと直接的な出来事だが。
また急に思い出したともだちがいた。彼は、国際結婚をして海外に行ったところまでで音信不通になった。カメラの仕事をしていたので、なんとなく名前をグーグルで検索してみた。日本語ではなく、ローマ字記載で出てきたアーティストファイルの中の人。作品の様子が似ている。でも、その人は違う外国にいた。でも思い切って連絡先にこう締めくくった。「もし私の知っている○○さんでなければ、この連絡、誠に恐れ入ります」次の日。
「まりこーーー!!元気!?10年ぶりだね!」
ああ、そんなに時間が経っていたんだ。

しかしやっぱり、いづれにせよ、『思い』は通じるのだな。そんな今日この頃。
あの素晴らしいサムライイチローでさえ、仲間といい関係ができてもっとうまくいく。
何ごとも、手を拱いて見ているのではなく、自分の心を感じたら、自分で求めていくべきなのかも。

 

 

-END-

 バックナンバーはこちら