朝、いつものように降りた。地下鉄千代田線:明治神宮前、ビル風の吹く表参道口。
いつものように数歩歩いて明治通りに入ると、その日私の目に映ったのは空。
同時に目の中に飛び込んで来た不思議なもの。
快晴の空に白い和紙がうっすらとはりついたような、見慣れないかたち。
渋谷方向へ伸びる明治通り。
そこにもビルの喧噪を忘れた上空があるということに、その日気づいた。
視線の先は、ちょうど飛行機が飛ぶあたりだ。
朝のぼんやりした頭のせいかしら、最近少し目が悪くなったのかも?と、
思いきやそれは。
『朝の月』
左上を弧にした三日月。
上空の真ん中に『それ』は居た。
いつもの目線にもどると、道行く人どなたもこの月を見ている様子はない。
幾人もの人が通勤を急いでいる現実。その皆の上の青空に、
ぽっかりと白い月が浮かんでいた。
空以外の何もないところに浮んだ『月』
それが、最近出来た奇妙とも思える折れ曲がって光るガラスの高層ビルと一対をなして、都会。
そしてまた、とても神秘的。
白くけむった朝の三日月。
地球の影が月の全体を隠して私達の眼に映っている。なにくわぬような顔をして
そこにある白い朝の月。
その下にビルがたち並び、人間や車がいそいそと動いている。
ふと「宇宙だ...」なんて。
赤坂見附、弁慶橋のたもとから見える月がある。もうじき桜の季節。
さぞや黄金色に光り輝くことだろう。
夜、仰ぎ見るこれは、私の中の絶景だ。 |