Vol.36 高円寺阿波踊り [2005.9.22]
 約10年以上住んでいた東京は杉並の西荻窪。夏も終わりに近づいた会社帰り。地下鉄からJR中央線に乗り換えた中野駅の隣、JR中央線『高円寺』駅。高架線路にのっかった帰りの電車から見下ろすと、そこに毎年、人のあふれるお祭りが見える時期があった。ほんの1分あるかないかの停車時間にも心が踊るような日本の夏、祭りの風景だった。

 『高円寺阿波踊り』
 阿波踊りの本場は四国徳島だが、ここ東京杉並の高円寺の阿波踊りも約50年間続いていて、本場の徳島からも応援もやってくる本格的なもの。あんなににぎわう祭りも日決めの祭りなのか、今年はめずらしい土日の開催。私は8月27日土曜、それをはじめてライブで体験してたった今、帰ってきた。
 いつもぶらっと行くカフェに、土曜だからとただ出かけた。行き道「ああ、そうだった、今日は阿波踊りだ!」と気がついた。金曜に買い物に行ったとき、「ひとごみに会わなかった?今日は前夜祭だから」と言っていた八百屋のおばさん。そのいつもの八百屋さんの前を通ると、今度はおじさんが「混むよ〜」と私に声をかけた。「ちょっと行ってみる!」

 JR高円寺駅から青梅街道に向かうまっすぐな道。その青梅街道と交差するところまでが阿波踊りの会場。私が到着するともう、そこはいつもとまるで違う様相。人の熱気にあふれた祭りの場になっていた。通りに入れないほどの人、人、人。
「こっからは自転車は入れないわよ」と注意されて、「そうか」と、私はそこからたった50mほどのカフェにどうにかたどりついた。しかし、知らなかった!ここは祭りの特等席だった。南円舞場の目の前。いつものカフェの男の子も今日は、店の前に出した屋台で楽しそうに焼き鳥を焼いている。「やあ、マリコさん!」

 一体何連あるのだろうか。次々と踊り手達が登場。そして耳に聞こえてくる果てしない太鼓と笛と鐘の音。大太鼓が腹の底から脳みそまで響きわたる。笛と鐘の華やかなアクセント。すごい。これはもう、まるでトランス状態。
 踊り手たちは蝶のようにうちわを舞い踊らせながら、はたまたほたるの舞うようなちょうちんの乱舞を見せる。足もとはヒンズースクワットならぬ、常に中腰。なのに、皆、実に生き生きと白い『足袋』を踊らせている。そして、うっとりするような女踊りの連が続く。まるで博多人形が踊っているかのような美しい連がいた。連にはほんの2才くらいから10才くらいの子供達も多くまじって、見よう見まねで覚えたのだろうが、本当にうまい小さな踊り手もいる。横に大人がついて踊り、それをじっと見ながら全く同じように動く小さな踊り手も。大人も子供もこの日のために皆、練習を重ねたり、衣装にワクワクしたりしたのではないだろうか。

 5月頃だったろうか。夜、自転車に乗って阿佐ヶ谷まで行ったある日、途中の公園で二十歳くらいの若い男女が7、8人、この阿波踊りの練習をしていた。ヒップホップを踊る若者達は、今ではどこにでも見かけるようになったが、私は一瞬の通りすがりに見た、この阿波踊り練習中の彼等に何とも心をうばわれた。
音なしでも蝶のようにうちわを踊らせる少女。ちょうちんを自在にあやつる若者。とってもカッコ良かった。この練習が、あのうちわとちょうちんの素晴らしい乱舞、そして何とも魅力的な踊る姿を生み出すのだろう。

 踊り舞台は2キロにも及ぶのに、前夜祭を入れて3日間、そのうち2日間は夜6時から10時まで、日本の祭り装束に身を飾った大勢の踊り手達が、ほとんどひっきりなしに踊りつめる。踊る人も見る人も大人も子供も、今宵ばかりは文字どおり祭りに酔いしれている。

 高架線から見ていた祭りをライブではじめて体験すると、「人がたくさんいて大変だ」なんて思っていた自分がなさけなくなった。やっぱり見物でさえも実際に足を運んで体感するのは素晴らしい。日本人の底力すら感じた。私は何と次の日も、今度は友だちを誘ってその場所にいた。2005年、夏の楽しい締めくくり。

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☆音のあるライブには到底及びませんが、以下、参考サイト見つけましたので添付します☆
◆以下サイトの『リンク』から『参加連』をクリックすると、いろんな連の特徴が見れそう。
http://www.koenji-awaodori.com/
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