|
Vol.127 |
蝉 |
[2014.9.1] |
目覚めると蝉の声。自転車に乗ると聞こえてくる木立に反響する蝉の声。
その時々に、心の奥深いところの何かと結びついて、一瞬にして懐かしいどこかへ連れて行ってくれる。
つくつくぼうし、みんみんぜみ。
ひぐらしとこおろぎ。
こんなに美しい音はないと私は思っている。
汗が流れていてもいい。やがて汗もひく。
昼過ぎ、つまらないことでちょっとだけ心がざわついて、ふとベランダをみると、雨が降り出していた。
ぼうっと外を眺めていると、植木鉢に蝉がとまっていた。
瞬間、そのことが私に何かを伝えているように感じた。
何時間経っても蝉はそこにいた。果たしてその蝉は生きているのか不思議に思いはじめた。最期を迎えようとしているのでは?
しばらくたって私の頭にふっと『騒がないこと』と言う言葉が頭に浮かんだ。植木鉢を見ると蝉はどこかへ飛んでいた。
『蝉』という字と『禅』という字はとても似ている。
不思議な晩夏のできごと。
|
-END-
|
|
|
|
|