Vol.118 小田原 [2013.5.7]

 ゴールデンウィークに熊本へ帰りたかったのだが、3・3・4の暦通りで帰りにくく、おとなしくこちらでのんびりすることにした。

 去年、友だちが年末に家族で忘年会をするという小田原の小粋な鮨屋に連れて行ってくれ、とても楽しかったので今年もその友だちと計画した。
 去年は桜が散りかけた頃だったが、あいにくの雨。それでも小田原城とその周辺をぶらりとして鮨をいただき、十分楽しかった。城下町だから、3ヶ月だけ滞在した山形の米沢市や故郷の熊本も感じる。そして、小田原には海がある。
 今年は、周辺の工芸店か、海にも行ってみようかとざっくりした計画をたて、去年と同様新宿からロマンスカーで出発した。5月5日は朝から晴天で、小田原につくと思いがけなく通りには神輿。朗々と響く唄声。ちょうど北条五代祭りをやっていて、今年は歩く先々で、神輿に遭遇した。
どこにあっても祭りの法被、手甲脚絆は粋なもの。藍色に龍の刺繍が施された手甲をつけている神輿隊が素敵で、あとで鮨屋さんに聞くと、その手甲はとても人気だそうだ。裏手の小さいがこざっぱりした天満宮にお参りをして鮨屋さんに入った。
 鮨をにぎりながら、神輿を担ぐ時の唄は『木遣り(きやり)』ということ、町内ごとに神輿があること、あの神輿とこの神輿は氏子が違うとか、漁師さんの神輿は浴衣が正装だということ(その裾を粋にまくっている)、本神輿の神官さんはいつもコンバーチブルのワーゲンに乗って登場することなど教えてくれた。神官さんの登場場面も目撃した。曲線の丸い素敵なクラシックカーで『もう30年くらい多分、この祭りだけで使っているかも』というお茶目な話だった。車好きなのね。
 海は歩いてすぐだった。
海に至るまで紙垂(しで:しめ縄についている白い紙のひらひらしたもの)が続く。そこにも神輿がやってきて、木遣りを唄う。
 波で丸くなった石の浜だが、ここに来て、浜辺が砂浜である必要はないと私は思った。その上を歩いたせいか、夜になっても足がポカポカしていた。

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