Vol.111 雨のち晴れ時々花火 [2012.8.28]

時(とき)。
家族のことで恐縮ですが、昨年末に大切な家族が交通事故で突然命を奪われるという、あまりの出来事に、家族中が言葉を失い、この『マリコの東京通信』も、しばらくお休みさせていただきました。
 しかし、この夏、熊本済々黌高校が甲子園出場し、そのレギュラーには、一瞬にしてこの世を去ってしまった義弟の息子、すなわち私たちの甥がいました。
義弟は天国で最大級の応援を放ち、自らの初盆を皆がこの夏を一番楽しめるような出来事に変えてくれたような気がします。
チームと息子には、憧れの甲子園へ行けるのみならず、そこでの出来る限り最長の滞在と素晴らしい試合体験を。
家族には、できるだけ無理なく応援に行ける日程を。だって、組み合わせ抽選の日は義弟の誕生日だったんですから!
フィールドとスタンドは、もっとも美しくきらきらとしたもののひとつ『青春』で満たされ輝いており、時間が止まってほしいほどでした。どの人も大人も子供もみんな本当にひとつになっていました。帰熊中の私は、妹と甥と姪と一緒に、しっかり熊本から黄色い応援隊の仲間に入らせてもらい、そんな時間を体験できた事、心からありがとうと、思います。
今年の優勝校、大阪桐蔭との試合直後、甲子園をあとにしようとすると、晴れた空から大きな雷鳴がひとつ轟きました。とても優しかった義弟だけど、大声で合図をくれたのかもしれません。最初から最後まで、そんな風に感じざるを得ない出来事ばかりの、本当に不思議で最高の夏になりました。

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 時はいろんなものをまんべんなく包括し、私たちは時々苦しまされ、その分の喜びも用意され、でも、それも長くは続かないけれど、また落ち込みそうになったころ、夏の夜空の花火のような出来事もどこかに必ず。仮に花火はなくとも、静かに虫の声を聴く素晴らしい夜もあるかもしれない。その時はいつも心の中に大切な人はいてくれる。

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