Vol.110 日々の中に [2011.10.31]

 腰痛の日々も日々は同じくやってきては過ぎて行く。
長い長い一週間の最後、とても素晴らしい夜があった。
金曜の夜。お疲れさん、私。
いつものように食事をとり、お風呂にも入ったあと、いつのまにか冷たく感じるようになった外気。ほてりをさますため開け放った窓の外の夜の庭からたくさんの秋の虫たちの美しい音が聴こえる。空には月。ちいさくかけたCDの音楽とその虫たちの音が美しくからみあっていた。本当は虫の声だけでいいのかもしれなかった。

朝、小鳥が鳴いている。なんだろう、この美しい声。
東京なのに、まるで避暑地のような音が聞こえてきた。

テレビで『世界で一番暑い場所』を紹介していた。エチオピアとソマリアにまたがる低地で、アファール低地という。50度を超す気温。雨は年に2〜3回しか降らず、地面からは毒の酸が吹き出す場所も広がっている。信じられないような光景。
その中にあって、高貴な心で暮らす神様のような人たち。
塩を掘り、それを仕事にしている。年に2〜3度しか雨が降らないのだから、文字通り『命の水』は叡智と共に大切に蓄え、子供たちや客人からふるまう。遠くに客人を見つけるとおいしそうなエチオピア料理を作って待つ。
人が住むにはあまりに過酷な、何もない荒野にしかみえない場所。でも
「ここは恵みに満ちている」
と言う。実に秩序正しく優しく強い心で暮らすその人たちの心からの言葉に、私の心は芯からじんわりと暖まり、じ〜んとあつくなった。

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塩。なめてみると、腰痛が消えたような気がした。
本当は、何もないところに何でもあるのだろうな…。
それにしても、きっと日本はとてつもなく恵まれすぎている。余計な物を作り過ぎ、余計な心配も、自ら作り出し過ぎてきたのかもしれない。

-END-


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