Vol.105 五月晴れと夏の気配 [2011.5.20]

 今年はいったいどのくらい『暑い夏』になるのか?
ひさしぶりに日本橋の三越に行った。
普段よりあきらかに設定温度を高くした店内に夏物が並んでいる。
涼しげなものに、ことのほか引き寄せられる。
しかし、夏に涼しそうなものを選びたくなるというのは、今年でなくとも実は、大切なこと。
 『季節感』という感覚。思えば昔より、確実に鈍感になりつつあったかもしれない。野菜は年中、スーパーの店先に同じようにならんでいて、夏野菜が何であるかとか、そんなことにどんどん疎くなってしまっていたり。

 今年は皆が、これからくる季節に体をならしておこうという気持ちが強いはず。覚悟をしていれば、日本の夏は乗り越えられないような暑さではないはずだ。便利主義や、機械を使った快適さはこの際置いておいて、季節を体で楽しむような、そんな心のゆとりがほしい。
過密な都会には密室も多く、隙風というものがない。でも、そんなことが悪循環とならないように、昔ながらの知恵や人間らしいゆとりが、今こそ私たちにはだいじかも、しれない。

 これからくる梅雨。あさがお、かたつむり、玄関先で雨のしずくをぬぐう。梅雨が終わると、風鈴、蚊取り線香の香、ゆかたにうちわ、線香花火、打ち水、早朝の朝顔、縁側と水瓜の種、蝉のなき声、ビールに枝豆、かき氷を食べて冷える指先。夕立、雷、そしてひぐらし。季節はうつりゆく。

 三越の屋上にはためく日の丸があった。
5月の青い空に映えるニッポン。
いろんなことをだいじにしようと思った。

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