Vol.100 偶然の連鎖 [2010.12.9]

 おもわず験(げん)を担ぎたくなることもある。
そんなある日、美容院で。
「この占いすごく当たるそうだから…」
ん?どれどれ…
『…これまでと違った明るい共感と、これから協力して行けそうだという希望などが、静かに満ちていることでしょう』
雑誌の占いなんて、だいぶ見ていなかったけど、この言葉はなんだかいいぞ!
美容院にはネイル用のラインストーンも置いていて、色によっておまじないがあるとか。
ピンクは恋愛、黄色は金運、ターコイズは未来への希望、パープルは自分を見つめる…。
その中で直感的に惹かれた2粒を私は買う事にした。
「こんな小さいのをどうするんですか?あ、財布の中っていいかも」
ニヤニヤと照れながら私は財布に入れた。
そして、後日臨んだ大切なコト。それがうれしい方向に動いてくれた!
通された応接室、ふと見ると、書がかかっていた。それをぼんやり眺めていてハッとした。
祖父が昔、好んで書いていた李白の詩の一節。まるで祖父が見守ってくれているかのようだった。

******* 

 以前勤めた会社で、同じ部署に女性は、私を含み3人だった。そして、なんと私たち3人は誕生日が同じだった。この縁が強すぎて、これだけでその会社との縁は使い果たしてしまったのかもしれない。いやはや忙しい会社だった。
 昔、おそらく最初で最後の個展をしたがその時、私の作品を買ってくださった方がいた。そして、そこにも不思議な偶然の連鎖があった。
当時私には淡い想い(片思い)を抱いていた男の子がいた。彼も物を創る人だった。
その方は、その彼のオブジェを別のどこかで見たという。そしてなぜだか私のを思い出し、そして私のを買うことにしてくれたそうな。
この話をその方から聞いた個展会場のオーナーは、当時の私の淡い想いを知っていた。いたずらっぽく私に言った。
「ね、すごいでしょう?」
その後、お話するとその方は、そのころ私が習い始めたばかりのダンスの先生とも何年か前ニューヨークで偶然出会っていた。これから日本に来ますと言ってその時くれた、という先生の名刺を見せてくれた。
…ともかくも、それまで全然知らない人たちが、何か点のように『そこ』でつながっていた。

 そして、最近の事。
雑炊などの食事も出してくれるので、お昼によく行く和菓子屋のおばさんが、手作りの小さな木目込み人形、来年の干支のうさぎ、ペアのうさぎをくれた。仕事でがっくり落ち込んでいたある夜、偶然おばさんと道端で会って以来、私のことを知ってくれていた。お人形は、ちょっとした私の成功を祝ってくださったもの。ホロリくる。
友達が言った。
「うさぎがペアっていうのが、またいいじゃない?」

 一見、何もかも、ばらばらに点在しているような偶然。
そして私はその偶然に身を任せている気配が強い。作戦を立てても思い通りには行かないから。すべて、物事は思い通りなんて動いてはくれない。
でも。きっと偶然はちっともめちゃくちゃに動いているわけじゃない。
これからそれがどんな風に、そして自分がそれをどんな風にそれをつむいで行けるだろうか。

 

-END-

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