県劇人
Vol.9

 スポットライトを浴びる主役の影で、舞台を支えるスタッフや名脇役、そして仕掛け人。
 楽屋や舞台袖を縦横無尽に走り回るこれらの人々にスポットを当て、舞台づくりの魅力や苦心談などを連載します。

前田 和興
2月3日、清和文楽人形芝居保存会が5年ぶりの新作「阿蘇の鼎灯(ていとう)」を県立劇場で上演します。この作品は、山都町が阿蘇家入領800年記念事業として制作するものです。脚本を書いた前田和興さんにお話を伺いました。

今回の記念事業に関わることになったきっかけは?
 2004年、合併前の矢部町が、通潤橋架橋150周年記念事業として、郷土劇「南手新井手記録」を制作しました。その時に、作・脚本を担当したことを町の記念事業担当者が覚えていて、私に脚本の依頼がありました。

人形浄瑠璃の脚本を書くという作業はいかがでしたか?
 国立文楽劇場に通ったり、近松門左衛門をはじめいくつかの作品や三宅周太郎氏の「文楽の研究」を読んだりしました。しかし、義太夫節や浄瑠璃、人形の勉強をこれから始めて、伝統的な様式や約束事を覚えたり、その技術を駆使するのは不可能だと思いましたので、文楽の様式を一部借りた人形劇として観ていただけるものを書くことにしました。

物語の内容はどういったものですか?
 戦国時代、矢部「濱の館」に本拠を持ち、権勢を誇った阿蘇家が武士集団としての終焉を迎え、本来の民衆の守り神阿蘇神社として再生の道を開いていく物語です。山都町は、旧矢部、清和、蘇陽の3町村が合併して生まれた新しい郷里ですが、それまでの地域への愛着を葬って、新しい希望に向かって歩き始める再生の姿と、この物語を重ね合わせることができたらと思っています。

熊本県立劇場広報誌「ほわいえ」Vol.81より

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