令和4年	3月1日			鏡より物のあふるる春の雷（永田満徳）
	3月2日			薄氷の草を離るゝ汀かな（高濱虚子）
	3月3日			黒髪に戻る染め髪ひな祭（西東三鬼）
	3月4日			金鳳花子らの遊びは野にはずむ（橋本多佳子）
	3月5日			はだれ雪鹿のかたちに鹿の骨（正木ゆう子）
	3月6日			春鹿の眉ある如く人を見し（原石鼎）
	3月7日			ひらひらと蝶々黄なり水の上（正岡子規）
	3月8日			船板に東風の旗かげ飛びにけり（杉田久女）
	3月9日			かなしき事のつづくに草が萌えそめし（種田山頭火）
	3月10日			白梅のいざなふところ文学部（鈴木泰子）
	3月11日			独活の花揺れても離れし人追はず（今村潤子）
	3月12日			黒鳥につづく白鳥春の風（東千秋）
	3月13日			山をなす用愉しゝも母の春（竹下しづの女）
	3月14日			おぼろ夜をさざめく奈良の仏たち（吉川英治）
	3月15日			春暁の背骨かばへるうつゝかな（石橋秀野）
	3月16日			濃かに弥生の雲の流れけり（夏目漱石）
	3月17日			山虻や人待ちてとび待ちてとび（小林一茶）
	3月18日			ふらこゝや少し汗出る恋衣（松瀬青々）
	3月19日			春の虹船は弧をもてならびたる（木下夕爾）
	3月20日			手のひらに大蛤を見せにけり（村上鬼城）
	3月21日			一里はみな花守の子孫かや（松尾芭蕉）
	3月22日			倒れたるままの墓石や冴返る（あまの樹懶）
	3月23日			菜の花の径を行くや旅者（井上井月）
	3月24日			花白き春やむかしの夢さむし（尾崎放哉）
	3月25日			たんと食うてよき子孕みね桜餅（村上鬼城）
	3月26日			ほそみとはかるみとは蝶生れけり（久保田万太郎）
	3月27日			崖土ほろほろ菫ぬいてる（北原白秋）
	3月28日			研ぎあげし鎌の匂や花曇（日野草城）
	3月29日			春眠や枕ほとりの落し櫛（高橋淡路女）
	3月30日			物ありて韮にかくるる島孤つ（与謝蕪村）
	3月31日	3月31日		鶯や朝光貌に来て覚むる（長谷川かな女）