インタビュー
 
 
写真(川本雄三) 熊本の舞台芸術を育てる劇場に
熊本県立劇場館長 川本雄三
 
 今年3月「日本劇作家大会2005熊本大会」を終え、熊本の演劇界にとっても新たなステップを踏み出した、という手応えを感じています。
 今回の特徴は、自治体が主催団体に加わることなく、初めて公立文化施設が単独で日本劇作家協会(永井愛会長)と手を組んで行った、ということです。地元の演劇人や大学の演劇部、会員制鑑賞団体など、多くの方々に実行委員に加わっていただき、予期した以上の運営ができました。
 一般参加の皆さんにとっても、多様な現代演劇との出合いと発見があったのではないか、と自負しています。
 さらに準備段階から、中央と地方という垣根を越えた演劇人同士の交流が生まれ、地元劇団の横のつながりができたことも意義深かったと思います。
これを機に、県内にどんな劇団があるのかを把握することを手始めに、地域の劇団間の連携を活発にしていくことも、県立劇場の務めではないかと思っています。
 今年度も、さまざまな自主文化事業を予定していますが、劇作家大会ほどの規模でなくても、中央や他地域との交流を進めていきたいですね。来年1月27日から17日間開催する「熊本リージョナル・シアター」もそのひとつです。小劇場形式で地域劇団の連続上演を行う企画で、今年度は一般公募で選ばれた地元劇団の公演と、北九州市の劇団「飛ぶ劇場」によるゲスト公演を予定しています。
 また、熊本の皆さんにできるだけ質の高い舞台芸術に触れていただこうと、レニングラード国立バレエの「白鳥の湖」、「人形浄瑠璃文楽」、「穐吉敏子スーパーカルテット」などを招きます。ほかにも、子どものうちから芸術への感動を味わってもらおうと「アウトリーチ事業」を昨年度からスタートさせました。地域の学校に演奏家を派遣して、音楽室や教室で間近にクラシック音楽を体験してもらうという企画で好評をいただいています。
 このような事業が実って、文化性の一層高い熊本県になっていけばうれしいですね。

プロフィール(川本雄三)
昭和6年、熊本県宇土郡不知火町(現宇城市)生まれ。旧制熊本中学、旧制五高を経て、東大仏文科卒業。昭和28年、日本経済新聞社に入社し、文化部記者として劇評を書き、数多くの演劇人や文化人と親交を結ぶ。退職後は演劇評論家として活躍。
 
熊本県立劇場広報誌「ほわいえ」Vol.49より

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