第581回 「素敵な時間と出会いに感謝」 [2016.2.16]
 「あ、今晩は〜」
 ライブハウスに入ると、その日出演予定のヴォーカリストの人が、まだ開演前でがらんとした奥の席から私を見て手を振ってくれました。
 で、その隣に座って話をしている人は……あれ?よく知っている仕事先の社長の奥さん?
一瞬そう思いましたが、その人は私を見ても何の反応もないので、多分違う人か。

 その日は、いつも私のライブに来てくれるジャズヴォーカリスト・道下歩さんが出演するというので行ってみました。ピアノは熊本のジャズピアノの第一人者、盲目のピアニスト・豊田隆博さん。
 開演前の雑談で道下さんが隣席の(社長夫人に似た?)人を紹介してくれました。道下さんのお母さんがエレクトーンを習っている同じ教室でピアノのレッスンを受けているらしい。
 「小学生の頃まで親にピアノを習わせられていたけど、そのヤラサレ感が嫌で止めてしまいました。でも自分にも子供が出来て、最近また少しやりたくなって」と、その人。
 なるほど、よくあるパターンですかね。私は子供の頃に親から習わされた経験がありませんが、強制されたら嫌になりそうなのは分かるような気もします。
 道下さんが「この前の発表会でピアノ演奏されましたが、とてもお上手でしたよ。ちょっと聴いただけで他の人と違うのがすぐ分かりました」と言ったら、「いえいえ、そんなことはないですよ。まだまだです〜」と謙遜されましたが。

 で、道下さんが私の事を「こちらの方、大人になってからピアノを始められて、今では本まで書かれてるんですよ」と紹介してくれました。
 「え〜っ? そうなんですか? どんな本ですか?」と聞かれたので、「an弾手で検索してみてください」と言うと、さっそくその場でスマホを取り出して検索。このan弾手コラムや、私の本を紹介しているページを見てくださいました。

 その場で前回のコラムを読んで「中島みゆきって、20代で既に人生を語るような詩が書けるってすごいですよね」と感想。私の本の紹介ページでは「わぁ、すごい!」と。
 「実は、いまピアノを習ってますが、本当は楽譜を見て弾くより、自分でアレンジしたりするのに興味があるんですよ」 
 「だったら、コード奏法をやってみませんか? 私がコード奏法をやり始めて感じたことのひとつは、ピアノの楽譜通りに弾くのに比べて、自分で弾いていてピアノの音が全然違う気がするんです。楽譜に弾かされている音と自分の気持ちで弾いている音の違い、みたいな」
 などという話をしながら、ついつい盛り上がってしまいました。

 その日のライブは3set。零時近くまでプロの演奏をたっぷり聴かせていただいて沢山のインスピレーションがありました。同時に、自分だけの日常では絶対に出会うことはなかっただろう人と、こうして親しく言葉を交わしたり、自分のピアノ体験談をチラッとでもお伝えできたり、このコラムや自分の本の紹介(PR?)をしたり(笑)。

 私にとって、本業の仕事の世界とプライベートな自分の世界と、そしてこのようなもう一つの音楽つながりの世界と。それぞれが干渉せず異空間の様に存在しながらも自分の中では違和感なくつながっている。考えてみると不思議な気もしますが、ありがたいことです。
 その夜も、また素敵な時間と出会いに感謝でした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。

 ポカポカ温かくなったかと思えば、また急に冷え込んで雪がチラついたり。このところ冬と春のせめぎ合いを見てるみたいですね。
 最近ではハイテク気象衛星のお蔭でしょうか、天気予報も刻々と変化する雲の動きや天気図を細かく見ることが出来て便利ではありますが、その分、季節の変化を理屈で分かった気になってしまうのも、ちょっと味気ないかなぁという気がしないでもありません。
 以前は、日差しや風の微妙な変化、道端の草の表情など、自然のかすかな気配と会話しながら季節の移り変わりを感じていたような。
 今の時代、そんな皮膚感覚って逆にすごく贅沢な季節の楽しみ方かも知れませんね。

 
−an 弾手−

第582回 「その曲にどんな思いを込めるのか」 [2016.2.23]
 演奏の最後、オーケストラの音が静かに静かに消えてゆき、広いコンサートホールがシンと静まり返った時、指揮台の上の指揮者の顔をテレビカメラがアップで捉えていました。感極まり、顔をゆがめながらこぼれる涙を必死でこらえる指揮者の山田和樹氏。

 そうだったんだ。その日、私はその公演をホールの客席で生で聴いていました。演奏が終わってシンと静まり返る中、指揮者が客席に背中を向けたまま、ジッと立って身動きしません。時が止まった様な静寂の時間が流れていきます。
 ……え?まだ?
 ………
 それは30秒だったか1分だったか。とても長い時間でした。
 ……やっと指揮台の後ろの手摺に左手を回し、ややふら付くように客席の方に体を向けながら指揮台を下ります。次の瞬間、満場の拍手がホールを包みました。

 第100回熊本交響楽団定期演奏会。その日はアマチュアの交響楽団として1965年に結成されてから50周年の節目に、ベルリン在住の世界的な指揮者、山田和樹氏を迎えての定期演奏会でした。熊響の定期演奏会では、これまで4回、タクトを振っているそうです。

 先週、テレビでその演奏会の舞台裏を描いた『世界のヤマカズが愛したオーケストラ』というドキュメンタリー番組があったので観たら。
 そうだったのか!
 テレビの画面には、当日客席から観ていただけでは分からなかったことが次々に映し出されていました。
山田和樹氏の涙をこらえる顔もその一つ。客席から指揮者の背中を見ているだけでは分からなかった溢れる思いが、あの静寂の時間の中にあったのでした。

 って、何だか本コラムの基本テーマ「an弾手ピアノネタ」とはかけ離れた話ですみません(笑)
 実はこの番組で聞いた山田和樹氏の言葉の中に、我々シロウトピアニストでも音楽と付き合っていく時のヒントになりそうなことがたくさんあったので、自分の備忘録としてもぜひここに書いておきたいと思ってですね。

 プロの交響楽団では、2〜3日の集中練習で本番に臨むそうです。しかし、アマチュアでは団員がそれぞれ他に仕事を持ち、時間のやりくりをしながら公演前は半年間の練習が続く。そこではみんなで一つの事を成し遂げようとする団員一人ひとりの熱い思いが集まり、本番に向けて高まっていく。
 「プロは技術を売るが心は売らない。しかしアマチュアはそこに情熱を込める。それが音楽の原点ではないか」
 「アマチュアは平日の夜の練習はなかなか全員が揃わない。だから一人ひとりが情熱を失ったら終り。でも情熱があればテクニックを越える世界に行ける」
 「楽譜や指揮者に従うのではなく、熊響らしい音を出してほしい」
 「アマチュアの交響楽団では、プロの様に全員の音がピッタリ合うのは難しい。でも、人間特有のズレと、それを瞬時にお互いが意識し支え合うところに味が出る。コンピュータの様な全くズレが無い音楽は味が無い」
 ……等々。

 これって、アマチュアピアニストのピアノとの付き合い方にもそのまま当てはまるのでは〜?
 “技術は完璧でなくても、そこに情熱を込める。それが音楽の原点では?”
 “情熱があればテクニックを越えられる?”
 “楽譜に従うのではなく、自分らしい音を出す?”
 “コンピュータの様なピアノ演奏では味が無い?”
 フムフム、そうなんだよね〜。

 その日の演奏はマーラーの交響曲第9番。どちらかというと暗く思いを巡らすような雰囲気が延々90分。山田和樹氏はそのテレビ番組でこう語っていました。
 「100回記念という事で明るく華やかな曲でもよかったが、あえてこの曲を選びました。この曲のテーマである死生観、死は永遠とつながっている、そして魂はまた生まれ変わる。100回公演の節目に熊響をもう一度見直し、未来を予感させるものにしたかった」と。
 そして
 「私は今まで指揮をしながら泣いたことはない。今日、初めてです」

 『楽譜にただ従うのではなく、その曲にどんな思いを込めるのか』
 世界的な指揮者の言葉とシロウトおじさんのピアノとをくっ付けるのは何とも恐れ多い気もしますが。
 自分の思いを涙に込められるようなピアノが弾けたら、と思います。



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ちょっと、ひと言。
 1月は行く、2月は逃げる、と言いますが。今日は2月23日、来週のこのコラム更新日はもう3月ですね。ハヤッ! そして3月は去る、か(笑)
 こちら熊本でも、このところまた寒い日が繰り返したりして、なかなか春の雰囲気にはなりませんが、それも時間の問題でしょうか。
 ちょっとワクワクするような春の気配、そして次のステップが見えてきそうな別れと出会いの季節。そんな気分になれるのを楽しみにしておきましょう。
 
−an 弾手−

第583回 「オハイエくまもととっておきの音楽祭、もうすぐです」 [2016.3.1]
 いよいよ今月になりました。オハイエくまもととっておきの音楽祭。
 「みんな違ってみんないい」を合言葉に、障がいのある人もない人も、音楽の力で心のバリアフリーを目指す「NPO法人オハイエくまもと」が、毎年3月に熊本市街地一帯で開催している音楽祭です。今年は第7回、3月20日(日)に熊本市街地8か所の会場で開催。全国からプロ、アマ含めて98団体、630人以上の出演者で賑わいます。

 私はこれまで、知的障がいのある人たちでつくる「オハイエ音楽隊」の音楽指導者として、年間を通して毎月2回の練習サポートに参加しながら3月の音楽祭では実行委員としてお手伝いしてきました。ただ、昨年度からは、年1回発行しているオハイエくまもとガイドブックの編集責任者を任されるようになってそちらが忙しくなり、日頃のオハイエ音楽隊の練習サポートに行く時間があまり取れなくなってしまいましたが。

 そのガイドブックの編集もいよいよ大詰め、音楽祭の1週間前の印刷上がりを目指してバタバタです(明日が校了の予定)。また、出演申し込みの人達を集めて行う事前の「出演者説明会」が今週の土、日の2日間に渡って開かれます。

 音楽祭の前日3月19日(土)には、プレ交流会として野外のパーティー&ライブも開催されます。今年も、日頃は中に入れない由緒ある泰勝寺跡・細川家立田別邸(肥後藩主細川家)の庭園をお借りし、熊本の台所・田崎市場の協力による美味しい料理やプロの生演奏を聴きながらの交流会です。細川邸のお座敷ではお茶(肥後古流)のお点前もあり誰でも参加できます。桜の開花にはちょっと早いかもですが、古風な伝統ある日本庭園の中で味わう春の風情、楽しみです。
 ま、私はオハイエくまもとのジャンバーを着て裏方手伝いですが、食べ放題、飲み放題、聴き放題はしっかり楽しませて頂きます(笑)

 熊本市近辺の方、あるいはちょっと熊本まで行ってもいいよ、という方は、ぜひお出かけください。

●オハイエくまもととっておきの音楽祭・チャリティプレ交流会
日時:2016年3月19日(土)15:00〜17:00(雨天決行・雨天時は細川邸座敷にて)
場所:熊本市中央区黒髪町黒髪4-610 泰勝寺跡・細川家立田別邸
参加費:一般3,000円 障がいのある人・大学生以下1,500円

●第7回オハイエくまもととっておきの音楽祭
日時・場所
2016年3月20日(日)
10:15〜10:45 オープニング(花畑広場)
11:00〜15:00 ストリート演奏(8か所:花畑広場・城彩苑・熊本市現代美術館・びぷれす広場・上通りアーケード内2ヵ所・サンロード新市街・辛島公園)
16:00〜17:30 フィナーレ(花畑広場)
※全会場とも観覧無料・出入自由です。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 とうとう3月(になってしまいました)ですね。こちら熊本は今週後半からはそろそろ温かくなりそうな予報ですが、皆さまの所はいかがでしょうか。
 おとといの日曜日、ちょっと阿蘇まで行ってきました。この時期、阿蘇の原野で古くから行われてきた春の風物詩、野焼きを見ようと思って。遠くから煙と炎を見つけてそちらの方へ行ったら、すごく間近で見ることが出来ました。ゴーゴーと音を立てて人の背丈の何倍もの炎が上がり迫力満点。風に乗って黒いススが舞い、茶色に枯れた原野が見る見る真っ黒に。
 そのあとにはやがて緑が芽吹き、可憐なキスミレやハルリンドウの花が顔を出し、青々と連なる大草原に変わっていきます。
 
−an 弾手−

第584回 「シンとした美術館の中に、もう一つのピアノワールドが」 [2016.3.8]
 『海へと続く道、雨の日の天主堂、競馬場の夕日、0番ホーム、住宅街の坂道、阿蘇や江津湖の遠景、そこに写っているのは熊本の風景のはずなのに、彼岸の風景のように見える』
 (2016年3月4日の熊本日日新聞の記事より)

 熊本市現代美術館で開かれている写真家・川内倫子氏の写真展「川が私を受け入れてくれた」の紹介記事です。私はそんな新聞記事に惹かれて、早速その写真展を観に行きました。

 会場に入り、壁の作品を観ていきながら「え?」と思ってしまいました。プロの写真家や写真コンテストに出てくるアマチュアカメラマンの作品のような計算されつくされた構図、インパクトのある写真とは全く違う写真が並んでいました。
 何気ない日常のひとコマひとコマを切り取った写真の数々。色が薄かったり構図がボンヤリしていたり普通のスナップ写真風だったり。1点1点の写真だけ見ていると「何これ?」という気もします。でも、ずっと通して見ていくと、そこに何かしら内面的なストーリーが見えてくるような気がしてきました。
 『自己と他者、夢とうつつ、実在と不在の境界にフォーカスしながら、「人はみな孤独だけど、記憶はつながっていると思う。それが生きる勇気になる」と川内さん。写真に宿る無垢な光は喪失感を呼び覚まし、だからこそ、今この瞬間へのいとおしさを募らせるのだ』
 (同じく熊本日日新聞の記事より)

 ……と、ここで写真展の感想からいきなりピアノの話しに飛ぶのも何ですが。こういう、感性に訴えかけてくるようなものを見ていると、どうしてもピアノネタに頭が行ってしまうan弾手でございます(笑)
 表面に見えている一つ一つのテクニックや華やかさに視線を向けるより、全体の流れの中で作者(奏者)が何を言いたいのか、伝えたいのか、表現したいのか、その人の感情の奥から湧き出してくるような物語が、観る人(聴く人)にいかに伝わってくるのか、というのが大切なんじゃないかと。
 ストーリーを語ることの大切さ、奥深さを、改めて認識したような気がしました。

 写真のパネルが並んでいる壁面に、こんな言葉が書いてありました。

 どこか知らないところに行けそうでいつもそう思ってて 
 見えないその先に何かとても良いものがあるような気がしていた 
 細道を奥へずっと歩いて行った

 そんな言葉のバックに流れてくるピアノはどんな音色だろう。どんなフレーズだろう。ふと、そんなことをイメージしながら壁の写真を観ていったら、シンとした美術館の中に、もう一つのピアノワールドが広がっていくような気がしてきました。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 一気に春がやってきたような陽気です。
 会社の近くの広〜い葦の湿原はまだ茶色一色ですが、土手のあちこちには黄色い菜の花が咲き、名も知らない(私が知らないだけ?)紫や青の小さな花の群れが、足元に紙吹雪をまいたように広がっています。沼の水から頭を出した岩の上には、何匹ものカメが甲羅干し。
 そんなのどかな風景を眺めながら、昼休みにここを歩くのが楽しみです。
 
−an 弾手−

第585回 「人は1人では生きられない」 [2016.3.15]
 人は1人では生きられない……。
 何を今さら当たり前のことを、と思われるでしょうが。

 先週後半は3日間の4連続ライブでちょっと頭が混乱しています(笑)。4つとも違うタイプ。と言っても、もちろん自分のライブではなく聴きに行っただけですが。
 1つは演劇、もう1つは講演会、もう1つは朗読ライブ、あと1つはジャズヴォーカルライブ。
 それぞれに心に響いたものや印象に残った所、思わぬ人との出会いなど色々な要素がありましたが、ふと、全てに共通しているテーマがあったような気がしてきました。
 それは「人は1人では生きられない」ということ。単に現実的な金銭や物理的な生活上の話しではなく心の問題。「人と繋がっている、人から認められている、人から必要とされている、という認識があって初めて人は生きる希望が持てる」のではないか、ということ。

 まず、演劇は熊本の劇団ゼロソーの15周年記念公演「竜宮都市ゴーヘイ」。小さな会場で舞台を取り囲むような客席。一般的によくある、舞台上で俳優が演じ客席から観客が観る、というスタイルではなく、観客参加型のゲームの様な進行。出ている役者さんも自分の役割が直前の舞台裏のクジで決まり、お互い誰がどの役割か知らないまま舞台上のやり取りが進行し、観客はそれを観ながら誰が何の役割なのかをゲームのように推理するというもの。私はこんなの初めてで、頭が混乱したまま時間が過ぎていきましたが(笑)

 講演会は、今年1月から新たに熊本県立劇場館長に就任した姜尚中氏の講演、及び熊本市現代美術館館長・桜井武氏、映画監督の行定勲氏を加えた3氏による座談会。1,000席超のホールをびっしり埋めた観客を前にして、姜尚中館長は「今こうして、ホールをびっしり埋めた皆さんの視線を感じて、緊張感とともにやりがいや充実感を味わっています。劇場が提供する芸術というのは一方通行ではなくこの様な見る人と創る人の相乗効果が大切なのではないか」というような事を言われました(細かい言い回しには私の記憶違いがあるかもですが)。
 また、続く座談会では桜井現代美術館館長や行定監督が「絵画や写真、映画も見る人が参加できる要素、つまり説明しないところ(行間)を想像させることが必要ではないか。観客と創る人の相乗効果が大切」というような話がありました。

 朗読ライブは「流れ行く先に〜3.11」と題し、5年前の東日本大震災をテーマにした詩の朗読と、1年前に東京から熊本に移住してきたというフラメンコギターとヴォーカルの夫婦による震災を思うオリジナル曲にピアノ、ベース、パーカッションを加えた演奏。フラメンコの激しいリズムと被災者を思う歌詞、被災した80代の女性が書いたという詩の言葉が相まって、改めて被災地の現状と人の絆の大切さを思い起こさせてくれました。

 そしてジャズヴォーカルライブ。こちらはバックのピアノトリオはプロ、メインの女性ヴォーカリストはアマチュアでしたが、堂々としたMCとパフォーマンス、歌で、満員のライブハウス内が一体となった様な盛り上がりでした。
 彼女が曲の合間で満面の笑顔で繰返し繰返し言っていたこと。それは「今日は皆さま、お忙しいご予定をやり繰りしてこんなに来て頂いて本当にありがとうございました! 一生懸命歌います!」ということ。そんな彼女の思いが伝わって来て、プロの上手な歌を感心しながら聴くのとはまた一味違った味わいがありました。
 彼女はきっと、先に書いた姜尚中館長の「皆さんの視線を感じて、緊張感とともにやりがいや充実感を味わっています」という言葉と同じ気持ちだったのではないか。

 これら怒涛の4連続ライブを体験して私の中に見えてきたもの、それは「人と繋がっている、人から認められている、人から必要とされている、という認識があって初めて人は生きる希望が持てる」ということ、そして「観る人と創る人の相乗効果が大切」というテーマだったような気がします。もちろんそんなこと、理屈としてはとっくに聞いたこともあるし分かっていたつもりでしたが、あらためて実感しました。

 そして、自分の楽しみであるピアノはどうなんだろう。次のan弾手ライブを構想する時の大きなヒントにもなりそうな気がします。と言うか、このan弾手コラム自体、読んで頂いている皆さまのお陰でこうして続けられているんですよね。あらためて感謝です。



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ちょっと、ひと言。
 早くも3月も半ばになってしまいました。今週末はいよいよオハイエくまもととっておきの音楽祭で、それが過ぎたらすぐに4月がやって来るんでしょうね。
 実は時々会う人から「次のライブはいつですか?」と聞かれたりして、「まだこれから考えます〜」などと返事しているのですが、確かに、早く決めないとあっという間に春が過ぎ、夏が来て、となりそうですね。う〜む、次の構想(ストーリー)がなかなかまとまらなくて曲も決めようがない状態で〜。
 って、言い訳? さっさと日にちだけでも先に決めてしまうという手もあるか。いやいや、それもちょっと〜。優柔不断だなぁ(笑)
 
−an 弾手−

第586回 「音楽の力」 [2016.3.22]
 熊本の街に音楽が溢れました。
 3月20日、中心市街地8か所で同時開催された「第7回オハイエくまもととっておきの音楽祭」。熊本市現代美術館会場だけは屋内でしたが、あとは全て屋外の公園やアーケード商店街のストリート。10:15の開会から18:00のフィナーレ終了まで、全国から集まった出演者約700人、会場運営のボランティアスタッフを入れると約1,000人が係わったイベントでした。

 私は上通り(かみとおり)というアーケード商店街会場の会場担当ボランティアで参加しました。朝8:00から会場設営をして、9:00集合の高校生ボランティアや出演時間にあわせて会場にやって来る出演者の受付、演奏の進行、道を行く通りがかりの人へのプログラム配布など…。と言っても、私の他3人の手慣れたスタッフの人にほとんどお任せで私はウロウロしていただけでしたが(笑)
 それでも朝からほとんど立ちっぱなしで腰も膝も痛くなるし、夕方フィナーレ会場の花畑広場に集まった後はさすがに客席の端っこで椅子に掛けておりました〜。

 で、何が言いたいのかというと。
 音楽の力ってやっぱりスゴイ!

 そもそもこの音楽祭自体、「音楽の力で心のバリアフリーを目指す」というのが大きなテーマのひとつ。知的障がいをもつ人たちでつくるオハイエ音楽隊の年間を通した活動を中心としながら、年1回のこの音楽祭では障がいのある人もない人も、プロもアマも、街なかの通りすがりの人達も一緒になって音楽を楽しむイベントなのです。

 今年もたくさんの人達が全国から集まってくれました。
 大阪から来て頂いたギター弾き語りのシンガーソングライターさんもその一人。前回の音楽祭の時も来られて演奏されたのを聴いたのが初めてでしたが、今年も出演されると聞き、その人が出演予定の下通り会場に自分の担当場所を無理やり変更してもらったのでした。お蔭で本番の演奏を聴けたのはもちろん、色々とお話も出来てすっかり親しくなってしまいました。

 他にも、県外からわざわざこの音楽祭を聴くためにやって来た人、名前だけは知っていたけど話をしたことはなかったプロのジャズシンガー、障がいを持ちながらも「天使の歌声」と言われる澄んだ声でピアノの弾き語りライブを続けている女子大生、等々、色んな人とこのイベントを通して親しくお話し出来てお友達(?)にもなることが出来ました。
 って、それは私の個人的な話に過ぎませんが。

 約1,000人の関係者や、それ以上の観客や街の人達の間で、この音楽祭を通してたくさんの笑顔や出会いや交流や気付きや思いが生まれたに違いありません。その中心にあったのが音楽でした。

 今回、私は自分が演奏したわけではありませんが、そんな「音楽の力」を実感として感じることが出来ました。
 これから自分がピアノと付き合っていく時も、そんな「音楽の力」が発想の原点になりそうな気がします。



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ちょっと、ひと言。
 全国で桜の開花宣言が相次いでいますね。ここ熊本も、今日(3月22日午前)開花宣言が出たみたいです。いよいよ春本番ですね。
 そんな中、昨日もポカポカのいいお天気に誘われて、自宅から車で約15分(それから歩いて20分)程の沖野遊水地という所に行ってみました。すると土手の上はすっかり「菜の花ロード」に。黄色い菜の花の縁取りが小道の両側に延々と続いていました。
 見上げると雲一つない青空。ついつい、いつもより遠くまで歩いてしまいました。
 
−an 弾手−

第587回 「an弾手ピアノルームが誕生?」 [2016.3.29]
 今回のタイトル、何か思わせ振りではありますが。
 と言うか、実際はここに書く程の事でもないんですが。ま、備忘録程度の意味で書かせて頂く事、お許しくださいませ。

 我が家には鍵盤楽器が4台あります。1階リビングにグランドピアノとヤマハの電子ピアノ(クラビノーバ)、2階の自分の部屋にコルグの電子ピアノ、あと物置(書庫室)にカシオのキーボード。それぞれに買った理由があります。
 まず最初に買ったのはクラビノーバ。娘が小学校高学年になってピアノ教室に通い始めた時、その練習用に。もう20年数年も前になるでしょうか。実は私が我流でピアノに触り始めたきっかけもそのクラビノーバでした。色々な思い出が詰まった品です。その後、コード奏法に出会ってライブハウスのマスターに習いに行くようになり、やがて自宅のクラビノーバのタッチが物足りなくなってそのマスターからお下がりの古いグランドピアノを購入。クラビノーバの横に並べて、休日の昼間はグランドピアノ、平日の夜はクラビノーバのヘッドホンで弾くようにしました。もっとも、数年後にその古いグランドピアノも音が気に入らなくなって楽器店で新しいのに買い替えましたが。
 コルグの電子ピアノは、自分でピアノの本を書くようになり2階の自分の部屋のパソコンで原稿を書いたり校正のチェックをするようになってから。曲のコードや音符を確認したい時、いちいち1階リビングのピアノまで行って確認するのがわずらわしくて、2階のデスクの横に置くために買ったのでした。
 もうひとつのカシオのキーボードは61鍵のオモチャのようなものですが、たまたま楽器店で見掛けて意外と安かったので(数千円位だったかな?)つい衝動買いしてしまった物。でも、これはその後、母が老人ホームに入所してから数年間、毎週その部屋に通って母が好きだった童謡や昔の歌謡曲などを弾いて聴かせるのに役立ちました。ストリングスのサウンドが童謡や歌謡曲にピッタリでした。

 で、前置きが長くなってしまいましたが(笑) an弾手ピアノルームって?
 実は、自宅2階のコルグの電子ピアノを会社に持っていくことにしたのです。何故か? これまで本の原稿書きや自分のピアノ練習などは全て自宅でやっていましたが、そうすると平日は帰宅して食事して結構夜遅くなってしまうし、ある程度時間が取れるのはほとんど休日。ただ休日も誰かのライブに行ったり、あるいはオハイエのボランティア等に出掛けたりしているとなかなか時間が取れなくてですね。そこで会社でも仕事の合間を見つけて何とかピアノに触る時間が出来ればと思って。
 幸いなことに、会社は一応自分で経営していることもあり、その辺はある程度融通が利くのがありがたいところです。
 で、会社のどこに置くか迷いましたが、結局応接室に置くことにしました。執務室や会議室、社長室等の本業の仕事の空間とは切り離し、来客がない時間帯を利用して応接室を「an弾手ピアノルーム」に(笑)
 置いてみたら、応接室のインテリアとしても何となくサマになってる、かな?
 ま、しばらくこれでいってみましょう。



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ちょっと、ひと言。
 やっと桜も本格的になってきました。今週末あたりが見頃でしょうか。
 植樹された桜並木も綺麗ですが、山の林の中にポツンと立って満開の花を付けている桜も愛おしいですね。
 「花の命は短くて……」という言葉もありますが、短い命を健気に生き、やがて散っていく花を見ていると、自分も今生かされている命を懸命に輝かせて生きていかなくっちゃ、な〜んて、チラッと思ったりして。
 それはともかく、お花見でも行きますか!
 
−an 弾手−

第588回 「an弾手ライブSweet Piano Night、第4回に向けて始動?」 [2016.4.5]
 「次のライブはいつですか?」
 夜の街で知り合いの人に会うとよく聞かれます。いつも私のライブに来てくださる方。ありがたいことです。
 an弾手のセルフプロデュースライブを始めたのは割と最近で、最初が2014年3月、2回目が同じ年の7月。そしてその秋には(会場も押さえて)3回目を予定していたのですが、予定の直前に母が他界してライブどころではなくなり中止。翌2015年は3月に異業種交流会のライブ例会なんぞやっているうちに日にちが過ぎ、11月末にやっと第3回目のan弾手ライブ「Sweet Piano Night 〜秋から冬へ。遠い記憶の旅」を開くことが出来ました。

 で、今年。
 年が明けて。そろそろ企画しなくっちゃ、と思っているうちにあっという間に4月、桜の季節も過ぎようとしています。ヤバッ(笑)

 という訳で。少しずつですが始動することにしました。
 まずはライブの構成を考えるところから始めます。an弾手のソロピアノが主体であることは変わりませんが、肝心の演奏曲目の構成と、同時にライブ全体を通してどのようなストーリーを組み立てるか、という柱の部分です。
 私の場合は純粋に演奏の技術や高度さを披露するのではなく(ま、それは当然無理なので〜)、1〜2時間のライブを通して観客の皆さんと一緒に非日常の世界に旅立ち、イメージの中の物語を共有出来れば、と思っています。

 な〜んて、ちょっとカッコ付けちゃってますが。
 自分なりにこれまで試行してきたのは、an弾手はピアノを弾くだけじゃなくて最初から語りを入れていく事。それも単に曲目の説明だけではなく、全体を通してひとつのストーリーになっていること。途中、朗読の人にも手伝ってもらって曲と曲のつながりが情景となって目の前に広がっていくようにすること。理想はスクリーンの無い映画を観ているような気持ちになれることです。
 去年11月の第3回では、新たに夏目漱石の夢十夜の朗読を入れてみたり、ピアノにオカリナも加えて音の幅を出してみました。

 そんなこんなで、ライブの準備をするには演奏曲目を決めるのはもちろんですが、その前提となるテーマとストーリーを決めないと話が始まらないんです。これまでの3回は春、夏、秋冬、と季節が分かれていたので選曲やストーリの組み立てもそれなりにやりやすかったのですが、次はどうしても季節はこれまでのどれかとダブるし、どんな物語にするのか、脚本づくりがちょっと難しいなぁという気がしています。曲目もこれまでとあまり被るのもどうかと思うし。

 とりあえず、これまでの3回のライブで演奏した曲をリストアップしてみました。すると、洋楽系が24曲、唱歌系が23曲、J-POP系が9曲でした。
 今、改めて手元の曲集ネタ本「永遠のポップス(1)ベスト458」や「永遠のポップス(2)ベスト358」などをパラパラめくりながら、使えそうな曲を探しています。題名だけ見ても知らなさそうな曲も、ちょっと弾いてみると「あ、これ聴いたことある」「これカッコイイかな」と思えるのが結構あります。候補曲がある程度リストアップ出来たら、それらを眺めてストーリーを組み立てないといけません。ピアノの演奏そのものの練習はその後です。
 まだまだ先は長そうです。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。
 桜前線は日本列島をほぼ半分北上して、東北、北海道でもこれからいよいよの様ですね。こちら熊本は先週の土曜日がお天気にも恵まれ、絶好の見頃でした。
 私は熊本市内から車で約1時間、玉名市の蛇が谷公園、という所に行ってきました。公園、といっても狭いエリアではなく、ちょっとした山麓をまるまるカバーするくらいの広さで、4700本の桜があるそうです。その日はほぼ満開の見頃で、園内の散策路から山道を登り展望所まで行くと、遠く春霞の有明海の向こうに雲仙普賢岳がシルエットのように浮かんでいました。
 
−an 弾手−

第589回 「山深い森の奥で。ピアノとの不思議な出会い」その@ [2016.4.12]
 山深い森の奥。狭い道を不安になりながら進んでいった先でやっとたどり着いた小さな一軒のカフェ。そこで初めて出会った女性の最初の言葉が……。
 「もしかして、アンダンテさんですか?」

 その日は九州山地の山懐にある山都町の清和文楽館で開かれた「清和文楽淡路人形座研修成果報告会」に出席した帰り、国道の脇道に『青葉の瀬 3,3Km』という標識があるのが目に入り「おっ、新緑が綺麗な渓谷なのかな? 3,3Kmだったら車ですぐだし、ちょっと寄り道してみるか」と思って、木立の中の道へとハンドルを切ったのでした。
 少し行くと、また分かれ道に『緑仙峡 青葉の瀬』という二つの標識。よく見るとその標識の脇に、見落としそうな小さなマークが。コーヒーカップのシルエットに『みずたまカフェ』の文字。
 「あ、こんな所にあったんだ、みずたまカフェ」
 このカフェの名前は少し前から風の噂に聞いていました。山の中のとても素敵なカフェらしく、いつか機会があったら行ってみたいと思っていたのです。
 「名前からして、青葉の瀬の近くにありそう?」と、そちらへ進んでみました。やがて青葉の瀬に着いたのですが、それらしいカフェは見当たりません。
 美しい水に木々の陰が揺れる峡谷。ここはここで素敵な場所だったんですが、すでに私の中では『みずたまカフェ』への興味が一杯です。辺りには人影もなく誰に確かめようもないので、仕方なくさっきの分かれ道まで戻って今度は緑仙峡と書いてある方の道へ行ってみます。少し進むとまた分かれ道にあの小さなカップのマークがありました。あ、こっちだ、と、そちらへ進んで行くと……。

 進むほどに道は狭くなり、ガードレールも無い道路の脇は切り立った深い谷。対向車が来たら絶対にすれ違い出来そうもない細い道に不安になりながらも、ひと気のない林の中を進んで行ったら、やっとたどり着きました。
 道から少し高台の林の中へ続く狭いアプローチを上った所に、ほぼ全面ガラス張りの四角な建物。前のテラス席には数人のお客さんの姿が。
 「えっ、ここまで道の途中で誰にも会わなかったこんな山の中に、お客さん来てるの?」と思いましたが、後で聞いたら何と台湾から取材に来たブロガーの人らしく、テラスに置いたコーヒーカップと背景に広がる高原の景色(遠くには阿蘇・根子岳のシルエット!)を本格的な1眼レフカメラで撮影していました。そうなんだ、こうして情報が世界に発信されていくんですね。

 と、前振りが長くなってしまいましたが、今回書きたかったのは実はこれからです!
 このカフェ、若いご夫婦で経営されているらしく、ママ(奥さん)はデザイナーでもあると(風の噂で)聞いていました。私も本業はデザイン関係なのでやっぱりちょっと気になります。
 そこで出てこられたママさんに
 「もしかしてデザインの仕事もされているんですか?」と声を掛けてみたんです。
 そうしたら、何と、いきなり思いもしない言葉が返ってきました!!
 「あ、もしかしてアンダンテさんですか?」
 え〜っ! どうして知ってるの? たまたま山道で通りすがりに目に入った「青葉の瀬」という標識に惹かれ、その道の先でたまたま見つけたコーヒーカップのマークに誘われて迷い込んだこの山深い森の中で、初めてお会いするママさんの最初の言葉が
 「アンダンテさんですか?」って?

 おっと、長くなりそうなので、この後の展開は、また次回に。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。
 ここ数日いいお天気が続いています。熊本では桜もすっかり散ってしまいましたが、自宅隣の麦畑には、青々とした麦の穂が元気よく空に向かって伸びています。この麦畑もこれからあっという間に茶色に変わり、麦秋の風景が広がっていくんでしょうね。
 そう言えばつい先日まで綺麗な花を咲かせていた庭のチューリップも花びらが散り始めました。それに代わるように牡丹の大きな蕾が膨らみかけています。
 次々に変化していく季節の移ろい。楽しみです。
 
−an 弾手−

第590回 「地震のご報告」 [2016.4.19]
 前回のコラム第589回「山深い森の奥で。ピアノとの不思議な出会い」(4月12日アップ)の最後に「おっと、長くなりそうなので、この後の展開は、また次回に」と書いていたのですが。
 先週末からの熊本地震の影響で沢山の方が被災しておられますし、私や私の家族には大きな被害はないものの、自宅内や会社事務所内が惨憺たる状況で、繰り返す余震の中その片付けに追われているところです。
そういうことで、今回は通常のコラムではなく、ちょっとだけ身辺報告とさせて頂くことをお許しください。

 先週4月14日(木)の夜9時26分頃、熊本の自宅でパソコンに向かっていた時です。突然ズシ〜ン!グラグラグラッと部屋が揺れ出し、本棚の本がドド〜ッと床に落ちたかと思ったらパソコンのディスプレイがバタッと倒れました。地震でした。椅子から立ち上がろうにも揺れが大きくて立てず、背をかがめ机を押さえてジッとしているのがやっとでした。
 何分経ったでしょうか。ようやく揺れが少し小さくなったので、まだフラフラする足元を気にしながら家人がいるはずの和室に行きましたが、姿が見えません。「あれ、どこ?」と不安になりながら室内を見回したら、部屋の押し入れの中に身をかがめていました。無事でひと安心。
 その瞬間、またグラグラッと揺れ出し、慌てて私も押し入れの中に。壁掛けの時計や和室の低い台に載せていた置物類も一気に畳の上に散乱しています。
 その後も、何度も大きな揺れが来るので身をかがめて夜を明かしました。

 翌15日(金)。会社も気になって時折余震で揺れる中、出勤。事務所はキャビネットが倒れ書類が散乱し、ひどい状況でしたがパソコン類は正常に動きネットも繋がってひと安心。会社スタッフも無事で出社しましたので、少し室内の整理もしてこれで段々収まるかと思ったのですが。

 金曜日の夜も更けて日付が変わった16日(土)の深夜1:25頃。家で寝ていたら再びズシ〜ン、グラグラッと来ました! この時は揺れが前回より更に大きく、部屋がガタガタギシギシときしんで並行四辺形に見え、マジでつぶれるかと思いました。後で聞いたらマグニチュード7.3だったらしいです。
その後、多少揺れが収まった時に急いで屋外の車に避難。近所の人も次々に車でどこかに移動しているのが見えました。
 その日、次の日、また昨夜も余震が続く中で近所の避難所となっている中学校の校庭で車中泊となりましたが、家族共々ケガもなく自宅の損壊もなく、飲食物も何とか調達できております。

 この間、被災地に向けては全国から色々な形でのご支援を頂き、またan弾手の読者の方からも私宛に安否確認やお見舞いのメールをたくさん頂いて本当にありがとうございます。すぐにお返事できない場合もあるかも知れませんが、お陰さまでan弾手も家族も元気でおりますので、取り急ぎこの場を借りてお礼とご報告をさせて頂きます。

 熊本でこんな地震が起こるとは思いもしませんでしたが、天災はいつどこでも起き得るものだと痛感しています。全国の皆さまも何卒お気を付け下さい。

 今回は、こんなピアノと関係ない話で失礼しました。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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