第371回「衝動買いでツン読?」

[2011.10.25]

 このコラムの随分以前の回(第13回)の「自己流練習法10連発」のその1に、独習書を買い漁る、というのを書いています。
 『…でも、結局通して練習した本はいまだに無し。みんな所々のつまみ食いです。そんな独習書がもう何十冊もピアノの横の棚に並んでいます。このコレクションは今後も増えそうな気配です…』と。
 そして、このコレクション、いまだに増え続けております(笑)
 今回は、最近の衝動買いの中からひとつご紹介です〜。

 3ヶ月近く前に講談社から拙著「楽譜が読めなくてもいきなり弾ける!2週間速習ピアノ講座」が発売になりましたので、やはり現場(書店の店頭)が気になってこのところあちこちの楽譜(音楽)書籍売り場につい足を運んでしまいます。お陰さまで私の本、多くの書店で平積みやボリューム陳列、それにPOPを付けて頂いていたりしていて嬉しい限りです。
 …って、今週のコラムはその話がテーマではないんですが。
 そうやって書店に行くと、つい並んでいる本をあれこれ手に取ってみたくなりますよね。ってわけで、自分の本を見に行ったつもりが他の本を立て続けに衝動買いしてしまったのでした〜。

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 「大人のための音感トレーニング本」友寄隆哉・著 リットーミュージック・刊
 《カバー、帯のキャッチコピー》
 音楽理論で「才能」の壁を越える!
 本書のトレーニングにより獲得できる能力!!
 ・ メロディーを聴いてすぐに楽器で再現できる
 ・ 正しいピッチでメロディーやフレーズを歌える
 ・ 耳に入ってきたコード進行をその場で分析できる
 ・ 楽器がなくとも譜面を見ながら正しいメロディーを歌える
 ・ 難しいキーの曲も、すぐに簡単なキーに移調できる
 ・ 思いついたメロディーを楽器なしで譜面に書ける
 ・ 耳コピーの効率が飛躍的に向上
 ・ メロディーを聴きながら即興で伴奏をつけられる
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 こんなことが出来るようになったらどんなに素晴らしいでしょう!夢のような話ですね。そんな思いで、ついつい衝動買いしてしまいました(笑)
 トレーニング本、ということですが、第1章「音程とコードの音楽理論」はまさに理論の章で、ここだけで本書の3分の2ほどのページがあります。絶対音感と相対音感の説明、それに著者独自の命名(?)の絶対音程感という理論を使って解説してあります。まだパラパラ走り読みしただけですが、よくある音楽理論の本とは違うアプローチで、第2章以降の「トレーニング」への導入を意識した内容みたいです。第2章はハーモニー感覚と絶対音程感の開発、第3章は【CD対応】音感の基礎トレーニング99、第4章は一生役立つ音感の応用トレーニング、となっています。
 読もう読もうと思いながら、まだまだツン読になってますが、目に付くところに置いて、時々手にとってみようと思っています。

 さて、他にも最近の衝動買いの本が何冊かありますが、そちらはまた機会を見てご紹介しますね。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 さて、10月も最後のアップとなってしまいました。このコラム、次回はもう11月なんですよね〜。なんて、9月最後のちょっとひと言でも同じようなことを書いてましたっけ。今年もあと3ヶ月って。それを言うなら今年もあと2ヶ月ってことですね。
 次の出版企画の出版社の方に先日「一時中断していた原稿進めますので改めてよろしくお願いします」とメールでご挨拶したら「お待ちしていました(笑)」とお返事いただきました。ありがとうございます。本腰入れて掛からなくっちゃですね。
 と言いながら12月初めの夏目漱石朗読コラボの準備もまだ出来てないけど(汗)

 
−an 弾手−


第372回「テレビやラジオ番組のBGMからフレーズネタを書き写して
         みる」


[2011.11.1]
 12月2日、朗読にピアノでコラボさせていただく予定の《語りライブ》『夢十夜』の一夜。打ち合わせもまだ何もできなくて心配なのですが、今できることはとりあえず時間を見てピアノのネタ仕込みくらい。かなりの部分が本番時の朗読の速さやタイミングに合せてのアドリブ風演奏になりそうなので、コード進行はストーリーの雰囲気に合わせて自分なりに決めておき、細かいフレーズはその時の成り行き?みたいな感じでしょうか。
 という訳で、その場で慌てないようにフレーズのパターンネタを仕込み中なんです。

 例えば、最近はテレビを見ていてもバックのBGMがやたらに気になります。ドラマだけでなく、ニュースやスタジオがらみの番組などでも取材映像の挿入シーンなどでは結構BGMが流れるんですね。普段は映像やナレーションの方に気が行って背景の音楽はあまり意識して聴いていなかったのですが、そちらを気にしだすと頻繁に素敵な音楽が流れているのに気付くようになりました。それもピアノの曲が多いように思うのは私がそっちを気にしているせいでしょうか。

 で、テレビを見ていて、これはって思う音楽が流れ始めたら、番組の本題はさておき意識はメロディーに釘付けです。これって、聞き流して番組がどんどん進んでいくと、後でどんなメロディーが流れたか、具体的には全く思い出せないんですよ。

 で、何をするかというとメロディーの聴き取りと書き写しです。まず、メロディーを聴きながら頭の中で階名に当てはめてみます。このようなBGM的な音楽はどちらかというと短いテーマ的なフレーズが何回も繰り返されることが多く、聴き取りには向いている気がします。とにかく頭の中でドレミ…の階名に置き換えながら聴きます。私は絶対音感はないのでKey(調)が何かは分かりませんが、いわゆる移動ドの要領でドレミ…を当てはめながら、メジャーならC、マイナーならAmのKey(って勝手にそうなりますが)で階名を付けていきます。だいたい付けたらすぐメモです。時間が経って他の曲が耳に入ってきたりすると、それまでの記憶はすぐにどこかに飛んでしまいますから。

 家にいて、すぐに鍵盤で確認できる時はちょっと弾いてみて五線紙にメモります。クルマを運転していてカーラジオから良さげなメロディーが流れた時は、頭の中で階名付けがおおよそできた段階でラジオの音を消して記憶を保っておき、信号停止やとりあえず目的地に着いて車を停めてからメモ用紙に五線を引いて、いま記憶した階名を音符に書きます。(メモ用紙はいつも運転席横のポケットに入れています。さすがに五線紙までは入れてませんが)

 こうして記憶できるのはたかだか4小節程度ですかね。でも4小節で一つのフレーズになっている曲は結構多いし、あとはその繰り返しだったりバリエーションだったりするのでテーマの4小節が分かればその曲のあらかたの雰囲気はつかめます。

 「でも、それだったら色んな曲の楽譜とかアドリブフレーズ集なんかを見た方が早いんじゃない?」という気もしますが、最初から紙に書かれた楽譜を見て弾いてみるのと、こうやって実際に何かのシーンで流れていたフレーズを聴き書きするのとでは結構大きな違いがあるような気がするんです。楽譜を見て弾くと、それはあくまでもピアノの音だけのフレーズ、ですよね。でもテレビやラジオの番組内で流れるBGMは、映像、言葉、声、語り口、ドラマの展開、それら全てと一体となってまるでその場の感情を一杯にはらんだ空気のように流れてきます。耳に入る演奏も、もちろんプロの情感豊かな表現。聴き書きするとそんな空気感も一緒に記憶されるので、後で書いたものを楽譜としてだけみると大したこともないようなフレーズでも、その背景にとても大きな情感を感じるんです。そしてそのフレーズを自分で弾いてみると、その時のシーンやドラマが浮かんできて最初からそれなりに感情を込めて弾けるような気がします。

 もちろん、フレーズには後から自分なりにコード付けをします。コード付けと言ってもそう大げさなことをする訳ではなく、いきなりピアノで弾いてみながら合いそうなコードを耳で確認してメモっていくだけです。この作業、原曲を忠実に記録する採譜とは意味が違うので、多少違っていても自分なりにいいなあと思えるフレーズができればいい訳で、正確に分からないところは分かる範囲で収めたり、あるいはわざと少し変えてみたりと気が楽ですね。

 補足ですが、先に書きましたように、こうして聴き書きした楽譜はとりあえず全てKeyがCまたはAmになっています。実際に弾いてみて音域が高すぎる、あるいは低すぎると感じる時は、違うKeyに移調して書き直せばそれでOKです。これは音符の単なる平行移動なので機械的な単純作業です。
 これらの聴き書き楽譜、4小節とか8小節が多いですが、少しずつ整理して自分なりのフレーズネタ集にしていけたらいいかなぁ。またこの作業、当然聴き取りの練習にもなりそうだし、そのための時間も特別に作らなくていいので日常生活の中で楽しみながら続けていけたらいいなあと思っています。

※ 《語りライブ》『夢十夜』の一夜。の案内はこちら↓
http://www.kumamoto-bunkanokaze.com/andante/andante37.html#370



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ちょっと、ひと言。

 昨日はくまもと大学連携インキュベータという起業家支援施設で開かれたセミナーに参加してきました。「IT経営で売上倍増〜クラウドコンピューティングはじめIT事情を使いこなせ!」というタイトル。最近よく耳にするようになった「クラウドコンピューティング」の基礎知識と利用のメリット、デメリット、そして経営にうまく活かしている実例の紹介などがありました。単なる技術の話だけではなくて、先端のデジタル技術がアナログ的な人と人とのつながりを広げることにもつながっているという例や、講師の先生が今描いている妄想(夢)の話まで、興味深い2時間。
 最後に紹介されたスティーブ・ジョブズの言葉、”Stay Hungry, Stay Foolish.”を、自分で勝手に「貪欲に妄想を持ち続けろ」と解釈してみたりして(妄想ならまかせてください・笑)、本題とはあまり関係ない(?)ところでも元気をもらったセミナーでした。

 
−an 弾手−


第373回「ジャンルは何?クラシック?ジャズ?」

[2011.11.8]
 人に「ピアノやってます!」と言った時に必ず返ってくる質問がこれ。
 「ジャンルは何?クラシック?ジャズ?」

 「あの〜、私クラシックの楽譜見て弾くのダメなんですよ」
 「それじゃジャズですか?」
 あのですね、コード奏法を始めた当初は『ピアノやってるんですよ。ジャズピアノを』なんて無邪気に言ってましたね、確かに。二段の楽譜を見てその通りに弾くのがクラシックで、コードで自分なりにアドリブ入れたりしながら弾くのがジャズ、みたいに単純に2つの世界しか頭になかったので。でもだんだんやってみたら、自分がやっているのも目指しているのも『ジャズ』じゃないなぁ、というのが分かってきたので、今では『ジャズピアノやってます』とはとても言えません。
 「えっと、何て言ったらいいか…」みたいに口ごもっていると、だいたいけげんそうな顔をされるのがオチです。「コード奏法なんですけど」って言っても、普通は意味が通じませんし。

 何とかうまく自分流のピアノを説明できる『ジャンル名?』はないのかなぁ、と思っていたところ、先日、プロの作曲家・ピアニストの方から、全く同じような言葉を聞いてびっくりしました。

 以下、プロの言葉(ネット上の)です。
 『〜(前略)〜私のジャンルはなんだろう???といつもの疑問が。「現代音楽」でないのは確かなんですが(?)ニューエイジ?ポップス?イージーリスニング??だれかジャンルを考えてくれませんかね、笑!』
『〜(前略)〜「わたしはピアニストです」といえば「クラシックですか?ジャズですか?」とたずねられ「わたしは作曲家です」といえば「どんな曲なんですか?」とたずねられ。ひとことであらわすのって難しいので「ぜひぜひライブに来てください♪」って言うようにしています』(志娥慶香さんのfacebookより)

 あのー、誤解のないように言っておきますが、私がプロの作曲家・ピアニストと同じような次元で悩んでいます、って言いたいんじゃないですよ!当たり前ですが。最近ずっと自分の頭の中にあった素朴な疑問形と全く同じような言葉をプロの口から聞いたのでびっくりしてしまったのでした。

 ここから先は、私自身の『ジャンル』についての戯言です。そもそも、クラシック、ジャズ、ポップス、とかいった『ジャンル』って何を基準に分類しているのかなぁ。専門的なことはよく分かりませんが、クラシックって多分その分野で確立された音楽理論に基づいて作曲され楽譜に書かれ、ピアニストは自分なりの解釈や表現を工夫しながらもその楽譜から決して外れないように演奏していく?ジャズはジャズの音楽理論によって、リズム(スウィング?)、メロディー(スケール?)、ハーモニー(コード?)のどれにもジャズの流儀があるものの、演奏すべき全ての音を書き記した楽譜は存在せず、多くの部分がその都度の演奏者にまかされている?そうそう、他にも「ヨナ抜き」音階って言われる民謡や演歌、それに世界の様々な民族音楽なども上記のメロディー(スケール)の違いが特徴ある雰囲気を作っていたりしますよね。
 それじゃ、さて、自分のピアノは?上のどちらにも当てはまらないんですけど(笑)
 まあ、私の場合は単にこれらの理論的なルールやテクニックがマスターできていないから当てはまらないだけ、とも言えるのかも知れませんが、だったら現在自分なりに弾いているピアノって、一体何?

 テクニックや音楽理論、音階など、どちらかと言うと音楽の構造(ハード)を基準にした『ジャンル』分けがあるとしたら、他にも、音楽の目的、ニーズ、雰囲気、作風、演奏マインド、みたいな(ソフト)を基準にした『ジャンル』があってもいいのかなぁ。

 私の場合はどんな曲を弾いても何となく(癒し系)みたいになってしまうし、それが自分にとってはすごく生理的にシックリくるので、そっちの方向で自分なりの『ジャンル名』を考えられればとは思うのですが。

 「あなたのジャンルは何?」
今度誰かにそう聞かれた時、さて何て答えたらいいのだろう…。

※ 《語りライブ》『夢十夜』の一夜。の案内はこちら↓
http://www.kumamoto-bunkanokaze.com/andante/andante37.html#370



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ちょっと、ひと言。

 先週の11月3日(文化の日)、思い立って近郊までドライブに出掛けました。カーナビを頼りに、初めて行く「竜門ダム」へ。ダム建設云々とかいう議論はこの際置いておいて、曲がりくねった山道の向こうに見えてきたダム湖は、目の覚めるような秋空を映して美しい湖面を広げていました。ようやく色づき始めた広葉樹の葉、爽やかな風、遠く湖面から吹き上げる白い噴水、湖畔の物産館の庭にのどかに繋がれていた大型犬ほどのイノシシ。
 自然と巨大な人工物との不思議なコラボ空間?日常から離れてしばし別世界にさまよった秋の一日でした。

 
−an 弾手−


第374回「通せんぼで午前さま」

[2011.11.15]
 久し振りに行ったライブハウス。二人の女性ヴォーカリストが出演するその日のライブが終わって時計を見ると23時30分過ぎ。前の日も別の所で午前さまだったし、今日はそろそろ帰るとするか、と席を立ち、近くのテーブルの人たちに
 「じゃ、先に失礼します〜」
と声を掛けて出口に向かいました。

 ところが…。
 出口まで行くと、さっき出演したヴォーカリストさんの一人が通せんぼしてるじゃありませんか!
 「もう帰るんですか!?何か弾いてくれないと帰しませんよ!」
 「えーっ、でも、もうそろそろカボチャの馬車が迎えに来る時間だし…」
 「ダメ〜〜」
 ってことで。また店の奥に逆戻りです。さっき帰る挨拶をした人たちからは
 「あれ、また戻ってきたの?」
 と言われてしまいました。

 見ると、ピアノにスポットが当たって誰かがそこに座るのを待っています。
 えっと、何を弾こうかなぁ。そうそう、ここ最近は12月2日の『語りライブ・夢十夜の一夜』のピアノソロ部分に一部使うつもりで古い抒情歌を少し仕込んでたんでしたっけ。ジャズの店ではちょっと雰囲気違うけど、ま、いいか。
 「じゃ、ちょっと童謡でも弾かせてもらいます」
 と言いながらピアノの前に座ります。

 弾いた曲は『赤とんぼ』。
 拙著「お父さんのためのピアノ曲集〜懐かしい日本の抒情歌」にもアレンジ譜を載せていますが、自分で弾く時はそれをもう少し膨らませたバージョンです。
 もう何回も弾いているはずなのに、所々音を外したり「華麗なるアルペジオ?」が華麗に決まらなかったり、内心冷や汗で弾き終わります。
 立ち上がって礼をすると、客席からワーッと温かい拍手をいただきました。ありがとうございます。じゃ、と近くの椅子に置いた上着を取って帰ろうとしたら…。
 えっ、何?この拍手。シャン!シャン!シャン!って。これってもしかしてアンコール?これじゃ帰れないじゃないですかぁ!

 手にした上着をもう一度近くの椅子の上に戻します。
 「ありがとうございます。それでは…。えっと、今の曲が秋でしたから、次は冬の曲を弾きますね〜」
 弾いた曲は『冬の星座』。
 弾き始めたら、客席の誰かがピアノに合わせて口ずさんでくれているのが聴こえてきて嬉しくなりました。これも途中ちょこちょこミスりながらも、何とか最後まで。で、何か足りないなぁと思いながらも終わってしまって、後で考えたらいつも入れるエンディングのフレーズをすっかり抜かしてました。何回やっても人前ではやっぱり平常心をなくしてしまうんですよね〜。困ったもんです。

 という訳で、その後もまだまだ盛り上がりそうな店を後にする頃は、またまた午前さまになっていたのでした〜。



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 先日第3刷の連絡があった、拙著「楽譜が読めなくてもいきなり弾ける!2週間速習ピアノ講座」(講談社)ですが、昨日街に出たついでにある楽器店の音楽書コーナーを覗いてみました。あれ、置いてない…。この前まで何冊か束で置いてあったのに。そう思いながらブラーッと売場を歩いていたら。1人の店員さんが私の顔を見て「2週間速習〜でしょ。あれ好評で在庫切れで今増刷中らしいです。入荷したらまたすぐ置いておきますから」と声を掛けてくれました。私、余程物欲しげに歩いていたのかなぁ(汗)見覚えのない店員さんだったのですが、向こうからは顔を覚えられていたみたいで。でも、ちょっとうれしい販売現場最前線視察(笑)になりました。

 
−an 弾手−


第375回「やっと夢十夜の打ち合わせ」

[2011.11.22]
 楽器店のレッスン室。その日は2人の人と待ち合わせです。
 寿咲亜似さん(語り座主宰)と松崎ひろゆきさん(FMKラジオパーソナリティー)。12月2日の語りライブ『夢十夜の一夜』の3人での打合せがやっと実現したのでした。

 本番までもう3週間を切ったというのに、具体的にどの話を誰が読んで、どこでどんな風に私がピアノを入れていくのか決まっていなくて、やっと打合せできることになりました。何しろ寿咲さんはその日のすぐ前までいくつも舞台公演が重なっていたらしく、松崎さんもレギュラーの番組や収録などでなかなか時間が合わなかったようなのです。
 お2人とも語りはプロだし、少し確認が出来ればそれで全然余裕なのかも知れませんが、私はですね〜焦りますよ。

 これまで、短い詩の朗読のバックでBGMピアノを弾く、みたいな遊びはやらせていただいたことがあるのですが、場面の動きやセリフ入りのストーリーにあわせてピアノを弾くなんて初めての経験ですし。寿咲さんからは「既存の曲を弾くんじゃなくて話に合わせたイメージのピアノを」って注文いただいてるし。
 とにかく一度、実際の原稿の朗読に合わせて弾いてみて、どんなテンポでどんなタイミングでどんな感じになるのか、試しをやらせてください!ってお願いしていて、やっと実現したのでした。
 
 夢十夜、というのはお読みになった方もいらっしゃると思いますが、夏目漱石の作品で『こんな夢を見た』という言葉で始まる短い話が十話あります。少しあらすじを書いてみますと…

 例えば、
 仰向けに横たわった長い黒髪の女が「もう死にます」「死んだら庭に埋めてください」「そこで百年待っていてください。私はまた逢いに来ますから」と主人公と言葉を交わし、やがて死んだ女を月の光の射す庭に真珠貝で穴を掘って埋めた主人公は、女との約束通りにその傍らに座ってじっと百年待ち続ける。すると…
 
 例えば、
 六つになる自分の子どもを背負った主人公が真っ暗な青田の道を歩いている。子どもはいつの間にか目が潰れている。声は子どもだが言葉つきはまるで大人で、対等にしゃべりかける。目が見えないはずなのに、どこを歩いているのか主人公が何を考えているのかみんな分かっている。だんだん怖くなり、はやくこの子を捨ててしまおうと田の中から森を目指して急いで歩いていく。すると…

 例えば、
 主人公は大きな船に乗っている。船は絶え間なく黒い煙を吐きすさまじい音をたてて浪を切って進んでいく。けれど船がどこへ行くのか誰も知らない。自分も乗客も船員も。ただ毎日、船はひたすら進んでいく。様々な乗客と会ったり言葉を交わしたりするが心は通わない。つまらなくなった主人公はある晩、死ぬ決心をして甲板から海へ飛び込んだ。ところが…

 みたいな摩訶不思議な話が一人称で展開していき、途中、他の登場人物のセリフも入ったりします。

 結局、いくつかの話をピアノと合わせてみて、ピアノありとピアノなしの話を組み合わせることに。そして話と話の間で数回、ピアノソロの時間をつくることに。その日の打合せはそこまで。後は本番前日、一度通して合わせてみましょう、ということになりました。

 さてさてどうなりますか。プロ2人の語りに合わせるって責任重大ですが。
 せっかくお声を掛けていただいたし、これも貴重なご縁と感謝して頑張らねば〜

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【語りライブ】
 『夢十夜』の一夜。
 語りとピアノで綴る夏目漱石・不思議な夢幻の世界。

 漱石の無意識に秘められた願望や不安、恐怖などが、ある時は幻想的にある時は滑稽に流れ出す。寿咲亜似と松崎ひろゆきの語り、an弾手のピアノで繰り広げる摩訶不思議の夜。

 ●原作:夏目漱石「夢十夜」
 ●語り:寿咲亜似(すさきあい:語り座主宰)http://www10.plala.or.jp/susakiai/
      松崎ひろゆき(FMKパーソナリティー)
 ●音楽:ピアノ=an弾手(鮎川久雄)

 日時:2011年12月2日(金)
   18:00開場、18:30開演
 場所:ぺいあのPLUS
   熊本市新市街1-3 ホクショウビル4F
   TEL 096-322-6813
 入場料:1,500円【要予約】
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ちょっと、ひと言。

 この前の週末は思い立って阿蘇へ一泊の小旅行。途中、阿蘇ミルク牧場でのんびりして夜は垂玉(たるたま)温泉へ。明治時代「五足の靴」の北原白秋らが訪れたという由緒ある山口旅館に初めて泊まりました。今年は紅葉が遅いとはいえ、露天風呂のある滝のあたりはきれいに色づいていました。翌日、南外輪山の地蔵峠の方へ登る途中、小さな脇道に入ったら木立の中に点々とお洒落な建物が。木工や絵画のギャラリー、カフェ、レストラン。10年近く前にここへ移り住んだというオーナーと言葉を交わしたり、妖精の小径、と書かれた落ち葉の路を歩いたり、思わぬ出会いと癒しのひと時を味わった晩秋の南阿蘇でした。

 
−an 弾手−


第376回「衝動買いでツン読?その2」

[2011.11.29]
 少し前の第371回「衝動買いでツン読?」で、最近のピアノ関連本の衝動買いのご紹介をしましたが、今回はその続きです。
 やっぱり自分の本の店頭での様子が気になって、このところいつもより頻繁に書店に足を向ける機会が増えてますが、行けば行ったで、並んでいるたくさんの他の本も気になって、つい衝動買いをする機会も増えるものです。
 で、今回もその中から一冊ご紹介。

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 「すぐ歌えるコード進行ネタ帳」石沢功治・著 リットーミュージック・刊
 《キャッチコピー》
 鍵盤でつくれる5万曲!

 《目次》
 1. Aメロの進行(40パターン)
 2. Bメロの進行(30パターン)
 3. サビのコード進行(40パターン)
 4. 転調のコード進行(15パターン)
 5. エンディングのコード進行(10パターン)
 6. こんなに使える!本書の実例集
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 この本は、ある程度コードの理屈やコード進行が分かっていて、コードを使ったアレンジや演奏が多少は出来る、という人向きかな。それを前提にして、ちょっと曲を作ったりアドリブフレーズを考えたりする時に、参考になるコード進行のネタはないかなぁ、という場合に便利かもしれません。コード進行を音楽理論的に(?)分類してパターンを紹介したような本は色々ありそうですが、本書はコード理論上の分類ではなく、Aメロ、Bメロ、サビ、エンディング、等と実際の曲を作る現場発想で分類してあるところが新しい切り口ですね。理論の話は全く出てきません。これらAメロ、Bメロ、サビのパターン数を単純に掛け合わせると
 40×30×40=48,000、それに転調やエンディングのパターンも加えれば…ということで《鍵盤でつくれる5万曲!》というキャッチコピーになってるんでしょうかね。

 各パターンは全て8小節の進行例になっています。私もそれぞれのコード進行パターンを一通り弾いてみました。一通り弾くだけだったら5万通りも弾かなくて、40+30+40+15+10=135パターンで本書の例を全部弾けますから。
 各進行パターンに、それぞれ「明るいコード進行」とか「期待感を持たせるコード進行」とか「明け方のようなコード進行」とか「憂いを含んだコード進行」とか、イメージのタイトルが付いているのもなかなか面白いです。
 ただ、弾いてみて「ん?どこが?」と思うイメージのも結構あるし、進行のイメージはほとんど同じで1〜2小節だけコードが違っているだけ、みたいなよく似たパターンも結構混じっていたりしますけど。
 それでも単純にいくつかのコードの組み合わせを変えるだけでもこれだけたくさんのパターンが作れる、というネタとしては便利に使えそうです。

 私も、演奏する曲の合間などでよくコード進行のパラパラアドリブ風フレーズを流したりするのですが、ついついコード進行がいつも同じようなパターンになりがちなんですよね。この本を参考に、いざという時に使えるコード進行の持ちネタを少し増やしてみたいと思ったところでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 熊本県の営業部長が全国No.1に! 
全国のゆるキャラ人気度を競う「ゆるキャラグランプリ2011」で、熊本県のPRキャラクターで営業部長の「くまモン」がグランプリに選ばれました。全国から349体がエントリー、9月15日から11月26日までネットで人気投票を受け付け、投票総数330万のうち「くまモン」が約28万7千票を獲得してトップになったそうです。
 「くまモン」はご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、真っ黒い体にホッペが赤いくまさん。よくあるゆるキャラと違って一見あまりかわいらしい顔はしていませんが、何度も見ているうちに段々味が出てくるみたいですね。今や県内ではキャラクターグッズはじめ様々な商品になったり、各地のイベントにも登場して爆発的な人気です。県外でも関西方面へはよく出張営業に出掛けてるみたいだし。
そうそう、熊本市内には「くまBAR」という店名の、くまモンが常駐(?)しているBARもありますよ。(但し、くまモン本人は未成年らしく、アルコールを飲ませちゃいけないみたいなんですけどね)

 
−an 弾手−


第377回「語りライブ。夢十夜の一夜、出演顛末記」その@
        本番前日の緊急事態


[2011.12.6]
 わーっ、どうしよ〜!
本番を翌日に控えたその夜。もう、22時を回っています。『夢十夜の一夜』でプロの語り手お二人とピアノでコラボさせていただくライブのリハーサルを終えて帰宅中の車の中。「リハーサルを終えて」、と言っても、全体を通しての合わせは本番前日のその夜になってやっと実現したのでした。それに、1週間前に急遽参加が決まったという新琴の藤川いずみさん(こちらもプロ!)も含めて出演者4人の顔合わせもその夜が初めて。一つひとつの朗読の時間測定や、朗読と藤川さんの琴のテスト(藤川さんもその日初めての合わせ)もあり、私は2週間程前に一度簡単に打ち合わせをさせていただいた寿咲亜似さんの朗読に合わせてピアノを弾いてみたのですが…。

 「うーん、なんか違う…。朗読の流れとピアノの感じがしっくりこないですね」
 と、ダメ出しをくらってしまいました!
 「ここは朗読にピアノを被せないで。この所はピアノは無しにしませんか?ここは途中でピアノをフェードアウト出来ませんか?」と寿咲さん。
 「えっと、この部分のピアノは強くリズミカルに弾いている所なので、生でフェードアウトは無理です〜!」と焦る私。
 「じゃ、そこの最初のフレーズを少し繰り返して、原稿のこの所でピアノを止めてくださいませんか」
 「はい、分かりました」

 そこまでで、その日借りていた練習室の終了時間(22時)が来てリハ終了。
 「では、明日は会場に4時半入りということで!」
 と解散です。

 帰宅する車の中。「わー、どうしよう。今の内容、もう一度整理して練習してみないと。でもっ、もう時間がない!明日も仕事だし、今の内容に合わせてピアノの構想作り変えたり試したりする時間が全然ないっ!」

 23時前に帰宅。心配でヘッドホン被って少しやってみましたが、うまくまとまらないまま頭は痛くなるし指はダルくなるしなんか体もきつくなるし。これは今夜無理して明日の本番に体調崩して行ったら最悪だ!もうさっさと寝て明日また考えよう、と自分に言い聞かせベッドへ。しかし、横になっても頭の中は不安で一杯です。何しろ、この期に及んで自分がどう弾くかが決まっていないんですから。これが自分ひとりのソロ演奏なら、いざとなったら自分がやり易いように勝手に変えて弾けば済むことですが、なにしろ主役は朗読、ピアノはサポート。朗読にいかに合わせ引き立てるかが求められている訳ですから、ピアノの都合で勝手に変えるわけにはいきません。
 演奏のはっきりした構想もまとまらないまま本番の朝を迎える、という最悪の事態。寝ていても頭の中には不安が渦巻いて、暗いうちに目が覚めて時計を見たら4時。もうちょっと眠らなきゃ、と思って目をつぶっても眠れず、そのまま朝になってしまいました。

 もう、仕方ありません。急遽、会社は昼までで早退することにし、午後は自宅に戻って会場へ向かうまでの約3時間に全てを賭けることにしたのですが…。



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ちょっと、ひと言。

 ついに12月になってしまいました。何だか今年は秋のイメージがあまり無くて、もう師走、と言われても実感がないんですけど。
 北日本からは雪のニュースが伝わってきますが、ここ熊本は今日もあまり寒くなく良い天気です。週末からは本格的な寒さになるらしいですけどね。
 手帳を見ると、すでに夜の予定もけっこう一杯。さてさて、体調に注意しながら、今年最後のひと月を過ごしていかなくっちゃ、ですね!

 
−an 弾手−


第378回「語りライブ。夢十夜の一夜、出演顛末記」そのA
         本番当日の綱渡り


[2011.12.13]
 (前回より続く)
 眠れぬ夜が明け、ついに本番当日。会社をお昼で早退し、帰宅途中にファミレスで昼食をとって家に着いたのが午後1時過ぎ。早速エレピのヘッドホンを被ります。今から本番会場に向けて家を出るまでの約2時間半で、昨夜のリハーサルで出てきた問題点を解決しなくてはいけません。朗読とピアノのタイミングを調整するだけの所はそう苦労なく出来そうなのですが、一番の課題は、夢の中で捕虜になった男が、処刑される前に自分の女に一目会いたいと敵の大将に願い出て、その女が闇の中を馬で疾走してくるシーン。馬が駆けてくる様子をピアノで表現しなければいけません。そして、続いて鶏が鳴くシーンにうまくつなげる必要がある。昨夜のリハーサルでは、このつながりもまずい、と指摘されたのでした。それまで使おうとしていたフレーズを色々いじってみたもののどうしてもうまくいかず、時間だけは過ぎて気持ちが焦ります。
 「おいおい、このまま本番じゃ洒落にならないぞー!」

 思い切ってそれまでと発想を変え、循環のコード進行を3連のリズムで4拍ずつ刻んでこれを1循環毎にオクターブ移動しながら繰り返す、という弾き方をやってみました。すると…。

 おっ、いい感じ?何とかカッコつきそうだ!これなら単純に循環コードの繰り返しなので朗読のスピードやシーンの場面転換のタイミングに合わせて、弾きながらでもかなり自由に長さを調整することも出来そうです。もうタイムリミット!これで行くしかないっ!!とりあえず台本の文字原稿の横にこのコード進行を書き込み、これを見ながら練習です。繰り返し弾いてみて指に覚えこませます。

 ふぅ、最大の難問が何とか解決しそう。後は、本番のプログラムでピアノソロで弾く4曲と、朗読と合わせる二話、全体を通してもう一度最後の試し弾きを。
 おっと、そろそろ3時だ。4時前には家を出ないといけないので、とりあえず身支度をしてから時間までもう少し弾き込んでおこう。

 約束の4時半、会場到着。すでに寿咲さんが来ていて、店のマスターとステージのセッティング中でした。
 「よろしくお願いします〜」
 と挨拶して、早速、さっき出来たばかりのピアノと朗読の合わせをしてもらいます。
照明や朗読のマイク、ピアノマイク等をなるべく本番と同じにしてもらって一通り合わせてみます。朗読とピアノのタイミング、それに出来たてホヤホヤのピアノのフレーズは何とかいけそう?(って、今更どうしようもないんですがぁ)。
 と、そこで寿咲さん、
 「ピアノの音、大き過ぎませんか?」
 「そうですね、ここはピアノマイクは無しで、ピアノの蓋も閉めた位でいいかもですね」
とマスター。
 一杯上げていたグランドピアノの蓋を半分下ろし、ピアノマイクも切ってもらって再度朗読との音のバランス確認。弾いている自分は客席にどんな風に聴こえているのか分からないので、マスターに聴いてもらいます。
 「これでOKでしょ」
 ということで、決定。

 後はステージを藤川いずみさんの琴と朗読のリハに譲り、もう開演までピアノに触ることは出来ません。
 やがてポツポツとお客さんが入りだした店内で、じっと開演時間が来るのを待ったのでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 今年は来年の手帳を買うのが遅くなって、つい先日やっと購入しました。ただ、ここ数年愛用している手帳は翌年の3月までページがあるので、1月、2月の予定が入ってもメモるのに不自由はしませんが。
さてさて、今年いっぱい書きなぐった手帳から来年の真新しい手帳へ。白いページをこれからどんな予定で埋めていくことになるのか、ちょっと楽しみではあります。

 
−an 弾手−


第379回「語りライブ。夢十夜の一夜、出演顛末記」そのB
         ついに開演


[2011.12.20]
 (前回より続く)
 予定の時間が近づく頃には80人以上入る店内がほぼ満席。いよいよ開演です。私は最初の「第一夜」から出番でピアノに付きます。「第一夜」はメインの朗読が松崎よしひろさん、陰から女性のセリフを入れるのが寿咲亜似さん。
 
 仰向けに寝た長い黒髪の女と主人公の会話。「もう死にます」と言う女の透き通るような黒い瞳を覗き込みながら「死ぬんじゃなかろうね」と言う主人公。「でも、死ぬんですもの、仕方がないわ」と言う女。
私は、Am、Dm、E7sus4、E7のコード進行で、静かに幻想的なイメージのフレーズを繰り返していきます。

 『…そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗き込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開けた。大きな潤いのある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮やかに浮かんでいる…』
 この辺りでコード進行をAm、G、F、C、G、にしてちょっと雰囲気を変え、その後またAmにして幻想的なイメージに戻してみます。

 『死んだら、埋めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片を墓標に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また逢いに来ますから…』と言う女。いつ逢いに来るのかね、と聞く主人公に
 『日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。−赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、−あなた、待っていられますか…』
 ここでピアノは、いわゆるホールトーンスケールを使ってみました。簡単ですが、日が昇って、また沈んでいく様子が幻想的に表現出来そうだったので。

 そして、『百年、私の墓の傍に座って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから』と女が調子を一段張り上げて言う場面でCdim。女の黒い眸のなかに静かな水が動いて写るように流れ出し、眼がぱちりと閉じて長い睫の間から涙が頬へ垂れるシーンでG9、Em、Am、D7、G9…等など。

 そして終盤、主人公は女の墓の傍に座り、赤い日が何度も何度も勘定しつくせないほど頭の上を通り越していくのを見ながら待ち続け…。やがて約束通り女が逢いに来るシーン。石の下から青い茎が伸びて来て、主人公の胸のあたりで一輪の蕾がふっくらとはなびらを開き、鼻の先で骨に徹えるほど匂う。主人公は白い花弁に接吻する。その時、遠い空に暁の星が一つ瞬いて…。
 このシーンはペンタトニックスケールを使って、幻想的にはなびらが開き、最後に星が瞬くイメージを工夫してみました。黒鍵だけを適当に弾いていればいいので弾くのは割りと簡単ですが、それなりの雰囲気が出せそうで。

 最後に『百年はもう来ていたんだな』と主人公が気付くセリフの後、F、G♯、C、で物語のエンディング感を出してみました。

 と、こんな風に書くといかにも私が余裕で弾いていたみたいに聞こえそうですが。実は朗読の声を聴きながらピアノの前に立てた台本の文字を追いながらその横に書き込んだコード進行やフレーズのメモを見ながら、必死で弾いていたのでしたぁ。

さて、この後、公演の後半ではいよいよ数時間前に作ったばかりのピアノ構想の本番が。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 昨日はびっくりするニュースが飛び込んできましたね。北朝鮮の金正日総書記の死去。昨日の夕刊はもちろん、今日の朝刊もそのニュースでいっぱいです。って、このコラムは時事ネタを書くのが趣旨ではないんですが。昨日の今日なのでつい書いてしまいました。
 さて、12月ももう20日。この後は怒涛の10日間になりそうです。今日から4日連続の飲み会(1つは仕事先をご接待)やら来週にかけて都合2回のパーティーでピアノ演奏(ソロで30分、バンドで数曲?)の予定やら。もう練習する時間もほとんどないし〜。でもまあ年に1回しかない年末(?)ですから、重く考えずに楽しみながらいきましょう!

 
−an 弾手−


第380回「語りライブ。夢十夜の一夜、出演顛末記」そのC
         完結編


[2011.12.27]
 (前回より続く:これまでの話はバックナンバーをご覧下さい)
 何とか第一話の出番終了。その後私はステージ下に引っ込み、第1部の最後にまたステージに出てピアノソロを2曲。続くドリンクタイム(休憩)の後、第2部の最初がいよいよ問題の第五夜。寿咲さんの朗読に私のピアノ、つい数時間前に作ったばかりのピアノ構想の本番です!

 Dm、Gm、A7の短いイントロ風フレーズに続いて寿咲さんのセリフ、
 『第五夜、こんな夢を見た。』
 これを受けて、ピアノは荒城の月の冒頭4小節だけを弾いて止まります。その後はしばらくピアノ無しで朗読が続きます。

 『何でもよほど古い事で、神代に近い昔と思われるが、自分が軍(いくさ)をして運悪く敗北(まけ)たために、生捕(いけどり)になって、敵の大将の前に引き据えられた…』

 深夜の戦場で生捕になり敵の大将の前に引き据えられた主人公。篝火(かがりび)に照らされる中、剣に手を掛け主人公を斬ろうとする大将。それを押し留めて、死ぬ前に一目思う女に逢いたいと頼む主人公。

 『大将は夜が開けて鶏が鳴くまでなら待つと云った。鶏が鳴くまでに女をここへ呼ばなければならない。鶏が鳴いても女が来なければ、自分は逢わずに殺されてしまう。』

 途中、ピアノはEm、Am、Em、B7、Emというコード進行の8小節のフレーズで夜の闇と篝火の情景を表現してみたり、A/E、Am/F、Am/F♯、Am/F、Am9と、ベース音を半音ずつ上下して緊迫感を出したりしてみます。
 また、Am、Dm、E7sus4、E7という同じコード進行でも、主人公が女を思うロマンティックな場面や、別のシーンでだんだん夜が更けていく様子など、いくつか違うフレーズも工夫してみます。

 そしていよいよ、前日のリハで寿咲さんから特にダメ出しをくらった、女が馬に乗って闇の中を疾走してくるシーン!
 馬の蹄の音をイメージして3連音符の4拍のリズムでまずF♯、G、G♯、A7のイントロ、続いてDm、Gm、A7、Dmを一巡したら右手のコードを1オクターブ上げて繰り返し、というパターン。朗読の進行を聞きながら、打ち合わせで決められた場面まで来たらピアノストップ!
 真闇(まっくら)な道の傍で、こけこっこうという鶏の声!女が思わず身をそらして手綱を引くと馬は蹄を岩に刻み込む。もう一度鶏が鳴くと…。馬は前にのめり女と共に岩の下へ。そこは深い淵であった…。
 このシーンはグヮーンと思い切り両手で不協和音を鳴らし、そのままガン、ガン、ガ〜ンと鍵盤の左端まで重低音を鳴らしていきます。

 『…蹄の跡はいまだに岩の上に残っている。鶏の鳴く真似をしたものは天探女(あまのじゃく)である。この蹄の痕の岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵(かたき)である。』
 朗読の最後の言葉が終わると、ピアノがエンディングを弾いて《完》となります。

 あー、終わったぁー!出来はどうだったんだろう?自分では何とも分かりませんが。もちろんピアノのタイミングがずれたり、ちょいと指がもつれたり、と色々問題はありましたが、昨夜のリハからわずか数時間前にドロ縄で作ったということで何とかご容赦を〜。
 この後はプログラムの最後にもう一度ピアノソロを2曲弾いて、全て終わりとなりました。

 今回のライブ、たくさんの貴重な経験をさせて頂きました。朗読のバックで単に何かの曲を弾く、というのではなく、映画やテレビドラマの音楽のように物語の場面展開に細かくシンクロさせながらその情景をピアノで表現していく、という初めての体験でした。これをきっかけに、テレビを見ていても背景の音楽が特に気になるようになり、フレーズの聴き取りの習慣が付きました。
 それに、寿咲亜似さん、松崎ひろゆきさん、藤川いずみさん、というプロの方々と同じステージに立たせて頂いたというのも貴重な経験でした。感謝です。
 ライブを聴いた人の感想では、「物語とピアノがすごく合っていてよかった」「あれってコード奏法なんですか?コードであんな風に弾けるなんてすごい」というお褒めの他にも「ピアノの音が大きすぎて朗読が聞きにくいところがあった」「最後の挨拶で笑顔がないのはダメ」などと親身の辛口アドバイスも頂きました。ありがとうございます。

 また、今回は思わぬ出会いの不思議さ、ご縁のありがたさも感じました。そもそも最初に寿咲さんと言葉を交わすきっかけになったのは、ほんの数ヶ月前800人以上の参加者があったあるパーティーでたまたま隣の席になったという偶然。初対面なのにお話をするうちに「今度の朗読公演にピアノで参加しませんか?」とお誘いを頂いたのがきっかけになったのでした。
 更にもう一つ偶然のオマケも。この公演の翌々日、全く別のある所でたまたま隣の席になった方から「一昨日の朗読ライブでピアノを弾いていた人でしょ?」と話し掛けられてびっくり!ライブに来られていた方だったのでした。話が盛り上がり、ちゃっかり自分の本の宣伝までしてしまいました(笑)。
 当日のお客様は寿咲さんの関係の方が多かったのですが、an弾手つながりの方もそれぞれに平日のお忙しい時間をやり繰りして来て頂きました(中には当日重なっていた別の忘年会をキャンセルして来た人や、開演時間に間に合わせるためにその日仕事の休暇をとったという人も!)。
 皆さまのお陰で貴重な体験といい思い出ができました。本当にありがとうございました!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 とうとう今年最後のコラムになりました。今年も一年間お付き合い頂きありがとうございました。日頃お会い出来ない方も、たまにお会いしたりメールを頂いた時に「毎週愛読してますよ」とか「コラムにいつも癒されてます」という様なお声を掛けて頂くことがあって、とても励みになります。そんな皆様のお声こそが何とか毎週続けらるモチベーションの元になっています。本当にありがとうございます。
 お蔭さまで今年も講談社から新刊が発売になりましたし、今回のコラム本文にも書いていますように新しいライブ体験もさせて頂きました。また、ご縁あってある女子中学生のピアノレッスン(来春卒業までの短期ですが)をさせて頂いたりもしています。
 皆さま、来年はどんな年になりそうですか?実はan弾手はまた新しいことを始めてみようかと密かに妄想していることもあります。
 新年が皆様にとって素晴らしい年になりますように。そして素敵なピアノの輪がたくさん広がっていきますようにお祈りして、今年最後のご挨拶に代えさせて頂きます。本当にありがとうございました!
 (なお、新年のコラムは1月10日からスタートの予定です)

 
−an 弾手−
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