第331回「何ということを!」

[2010.12.28 ]

 「何ということを教えてくれたのですか!中毒になってしまったじゃないですか!」

 ある日突然、知らない人から私の元に届いたメール。
 ん?私、何か悪いことをしたっけ?誰かに変なことを教えてしまったのだろうか?
 一瞬、不安になりながら先を読みます。
 「タバコはやめられたのに、これはやめられなくなってしまったじゃないですか。麻薬のような〜」

 え?麻薬のような!?これはただならぬ様子です。
 しかし、その先を読んで思わず吹き出してしまいました。

 「タバコはやめられたのに、これはやめられなくなってしまったじゃないですか。”麻薬のようなコード奏法”」

 あはは、何だぁ、コード奏法の話し!?
 メールは続きます。

 「いや、失礼しました。つい興奮のあまり挨拶が遅れました。
 始めまして。名古屋に住む楽譜が読めない練習嫌いな63歳のジジイです。私はan弾手さまとは異なり、本物のジジイです。
 私の本業は朝と昼ごはんの製造、朝昼晩の食器洗いと部屋および風呂の掃除であります。雇用主であります奥様のショッピングにはお抱え運転手としても同行させていただいております。住み込みで終身雇用(多分)であります。
 返事はいつもハキハキとし、決して逆らわない優秀な従業員だと思います。

 さて私、苦節足掛け三年、少しも弾けるようになりません。「おとうさんのための〜」も集中的に1〜2時間だけ猛練習しては何度も挫折。色々な教本や楽譜を試しましたがだめでしたね。
 「もうだめだな」という気持ちの日々が続いておりましたが、ほんの二ヶ月ほど前、もう一度あの”コード奏法”に戻って”北の旅人”を弾いてみました。すると、弾けちゃうじゃないですか。それからは次から次へと買い集めた楽譜を弾く毎日。1度5度8度のワンパターン。中毒になってしまいました。こんな弾き方、何かズルしているようで逮捕されないのでしょうか。
 まあ”エリーゼのために”も”乙女の祈り”も諦めましょう。

 しかしan弾手さまのおかげでピアノが続けてゆけそうです。感謝です。
 ”ピアノ奮戦記”はan弾手さまのご活躍がありありと目に浮かび楽しみです。また次の出版も大変楽しみにしています」

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 最後は、随分と私an弾手を持ち上げて頂いたみたいで恐縮です(笑)
 メールの主は名古屋のJUNさんとおっしゃる方。初めて頂いたメールで、もちろん面識もありませんが、私の本やこのan弾手のピアノ奮戦記を読んで頂いているようで、そう聞くだけで何となく親近感が湧くのもありがたいことですね。

 それに、JUNさんがおっしゃる
 「あの”コード奏法”に戻って”北の旅人”を弾いてみたら、弾けちゃうじゃないですか。それからは次から次へと買い集めた楽譜を弾く毎日。1度5度8度のワンパターン。中毒になってしまいました」という言葉、これはまさに私がコード奏法を始めてしばらくたった頃に体験した驚きや感動と全く同じだったので、思わず我が事のように嬉しくなってしまいました。

 「こんな弾き方、何かズルしているようで逮捕されないのでしょうか」
 私もまだ逮捕されていないので大丈夫かと思います(…多分)。

 JUNさん、一年の最後に楽しいお便りありがとうございました!
 今年も、全国からたくさんのご質問やご意見、励ましのメッセージを頂きました。また色々な場面で私に演奏の機会を作って下さったり、テレビ番組にも出演させて頂いた関係者の皆様、ありがとうございました。お蔭で鼻歌ピアノを楽しみながら、このコラムを書いたり、次の本の原稿に手を付けたり、夜の街やパーティー会場にたまに(?)出没したり、ピアノライフを楽しむことが出来ています。

 自分のことは自分ではなかなか見えないものです。周りの方が声を掛けて下さったり、お会いしたこともない遠くの方からメールを頂いたりすることで、初めて自分の存在を確認しているようなところがあります。そうやって皆様と一緒に今年もピアノを楽しんでこれたことがとても嬉しいです。本当にありがとうございます。

 どうか新年が皆様にとって素晴らしい年でありますように!
 そしてまた来年も、元気でお会い出来ますように!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 今年もあと3日。サービス業などでは年末年始もお仕事、という方もいらっしゃるでしょうが、職場によっては今日(12月28日)が仕事納め、という方も多いのでは。私の職場も今日が仕事納め。で、今日、明日と、最後の2連チャン忘年会です(笑)。で、明日の忘年会ではピアノの出番もありそうで、人前ピアノ、今年の弾き納めかなぁ。
 新年は4日まで休みますので次のコラムアップは多分5日(水)です。新しい年も、どうぞお付き合い下さいますよう、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました!

 
−an 弾手−


第332回「1曲しかダメ?」

[2011.1.5 ]

 「後で1曲、弾いてもらえませんか?」
 「1曲しかダメ?」
 「あ、いえいえ、5曲でも10曲でも(笑)」

 暮れも押し詰まった29日。多分これが最後かな、という忘年会の後で、会場となったライブレストランから道を渡ってすぐ斜め前にあるもうひとつの小さなライブハウスを覗いてみました。
 この日は特に予定のイベントも入ってないようで、ひっそりと薄暗い店内のボックス席に2組、カウンターの隅に1人のお客さん。CDらしいBGMが静かに流れています。
 私も1人カウンターに掛けてノンアルコールを注文します。
 「今、すぐそこの店で同窓会の忘年会が終わったところでね」
 カウンターの中の馴染みの女性店長と取り留めのない話をしていると、そのうちに彼女がひと言。
 「後で1曲、弾いてもらえませんか?」
 「あは〜、1曲しかダメ?」
 「あ、いえいえ、5曲でも10曲でも(笑)」

 実はたった今、忘年会でぶっつけ本番に近いバンド演奏をしてきたばっかりだったので、ピアノを弾くテンションとしては結構高まっていたところでした〜(笑)

 ぶっつけ本番に近いバンド演奏って……。
 それは忘年会の3日ほど前のこと。同級生から携帯に電話が。
 「今度の同窓会の会場、ライブレストランだろ?だったら出し物でなんか演奏でもしないと面白くないだろ。で、俺が何とかギターやってみるからピアノ弾いてくれん?曲はみんなで歌えるように、君といつまでも、とか、旅人よ、とか、思い出の渚、とか。まあ、懐メロだけど。今、ドラムとベースとヴォーカルやってくれそうな奴をあたってるから」
 「しかし…。どんな譜面でどんなKeyでやるの?今からじゃ事前に集まっての打ち合わせも無理だよね」
 「とにかく手持ちの譜面をファックスしてみるから。当日ちょっと早めに集まって合わせてみようよ」

 で、あっという間に当日。開宴の1時間ほど前にやっとメンバーが揃います。お互い、年1回のこの同窓会でしか会ってないし。それに、みんな楽器も最近やっと始めたばかりらしいし。
 「ピアノがリードしてくれれば、俺たちは邪魔しないように付いていくから」
 いやいや、私もバンドで合わせるのは何年ぶり?日頃はソロでばっかりしか弾いてないので〜。ヴォーカルも入るし、伴奏用の弾き方って結構難しいんだよね〜。
 みんな自信はないけど、謙譲の精神だけは旺盛です。

 ヨタリながらも何とか2〜3回合わせてみるうちにリハも時間切れ。ま、みんな気心のしれた同窓会だし。出来たしこ(出来ただけ)ってことで開き直っていきましょ。

 私はついでと言っては何ですが。せっかくなので開宴15分くらい前からウェルカムピアノのBGMを弾かせてもらいました。これなら自分のペースで弾けるし、それに何と言ってもその6日前には別の忘年会パーティーで30分のウェルカムピアノを弾いてきたばっかりだったので、そっちの演奏ネタは完璧でしたから。かくして、ソロピアノとバンド演奏の同窓会、わいわいと楽しませてもらいました〜。

 …で、その直後の静かなライブハウス。
 「1曲弾いてもらえませんか?」
 と言われて思わず
 「1曲しかダメ?」
 ってつぶやいてしまった私。

 適当にコード進行の間奏を挟みながら、定番の「ダニー・ボーイ」の後は季節にちなんで「ペチカ」と「白い恋人たち」。
 「お客さまでピアニストさんがいらっしゃいますので」
 という店長のご紹介に
 「いえいえ、ピアニストじゃないですから〜」
 と打ち消しながら、見知らぬ3組のお客さんを前に私の去年の人前ピアノは弾き納めとなったのでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 明けましておめでとうございます。
 2011年、皆さまどんな新年をお迎えでしょうか。今年は大晦日から雪で真っ白な元旦でした。寒かったですけど、こんな新年もまた、すがすがしくていいものですね。
 今年は、私にとって公私共に動きのある年になりそうです。「公」とはもちろん本業、「私」とは家庭生活をベースとしたプライベート、そしてもう1つ、その中間位にan弾手が生息しております。この3つの生息地域が微妙に絡み合いバランスをとりながら動いている訳ですが、今年はそれぞれにまた新しい動きを生み出していけたらいいなあと思っています。
 このコラムの読者の皆さまとは、ピアノを通してもっともっと大きな輪を広げていけたら嬉しいです。
 今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 
−an 弾手−


第333回「エレピもう一台構想?」

[2011.1.11 ]

 先日、家電量販店をブラブラしていたら電子ピアノのコーナーがありました。何気なく見てみると…。おっ、いいのがある!「いい」という意味は、単に安くてそこそこの機能が付いている、ということなのですが。

 実は最近篭ってます。自宅2階の一室。
 これまで、このコラムや本の原稿は別の和室に置いた座卓のパソコンで入力し、ピアノは1階リビングのピアノや電子ピアノ(クラビノーバ)で弾いてみて、また、手書きの楽譜や図などはピアノの近くのダイニングテーブルに移動しながら書いていました。
 ところが最近、いくつか問題が出てきました。まず、長時間座卓に座ってパソコンを打っていると腰が痛くなる。足がしびれる。これはヤバイです。
 もうひとつ、ピアノのあるリビングのエアコンが最近故障して!温風ヒーターだけでは寒いのだ。(すみません、超ローカルな内輪話で…)
 それに、ピアノと机とパソコンがそれぞれ別の場所にあるなんて何て効率が悪い!ということに最近やっと気付いたのです。

 という訳でこの正月休み。空いていた2階の一室にデスクを持ち込んでみました。するとこれが何とも快適です。そこにパソコンを設置し、誰も使っていなかったサイドテーブルと蛍光灯スタンドを持ってきて置いたら、すっかりオフィスっぽくなりました。あ、それから、これも以前に買って使っていなかったアンプ付きスピーカーがあったのを思い出し、持ってきて携帯用CDデッキをつないでみたらここでCDも聴けるし、パソコンからYou Tubeの音源も聴けるし。

 ただ、もうひとつ問題が。ピアノで音を確かめる時は1階のリビングまで行かないといけない。クラビノーバを2階に移動させてもいいのですが、これが何しろ重いのです。確か取説の仕様で60kg近くあったと思います。それに、これからも1階で電子ピアノ弾くこともありそうだし、その都度移動するのは非現実的です。

 そこで、「エレピもう一台構想」という訳です。必要なのは最低限88鍵フルスケールでピアノの音が出ること。安いキーボードは鍵盤数が足りないし鍵盤のタッチがスカスカのものが多いのですが、先日見たのは88鍵でタッチもさほど違和感が無く、音もグランドピアノのサンプリング音源でまあまあだし、その他エレピとしての最低限の機能が付いて3万円台。それに重さも12kgで簡単に移動できそうなのも大きなメリットです。

 これを2階に置けばかなり機能的になりそう。デスク、パソコン、ピアノ、CD等がコンパクトなスペースに揃うので、いま進めている本の原稿やアレンジ譜書きも快適に出来るかな。MIDI端子も付いているのでその気になれば楽譜作成ソフト等との連携も可能になるかもしれませんしね。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 ゾロ目です。今回のコラムは第333回。そのアップ日が今日2011年1月11日(偶然ですが)。
 第1回のアップが2002年8月27日でしたから8年と4ヶ月半ですね。長い様な気もするし、あっという間の気もするし、まだそんなもの?っていう気もします。いずれにせよ、この間お付き合いいただきました皆さま、本当にありがとうございます。これまでも何回も言ったような気はしますが、皆さまからのご意見、ご質問、励ましのメッセージなどのお声に支えられてこのコラム続けさせていただいています。an弾手のオフィス(?)も若干充実しそうですし(笑)、これからもお付き合いの程、どうかよろしくお願いいたします。

 
−an 弾手−


第334回「人生のピアニスト」

[2011.1.18]

 「演奏がうまくないけど、ミュージシャンになれる?」

 ある本の最後のページに書いてあった見出し。私はプロ・ミュージシャンを目指している訳ではないのですが、興味深く読みました。
 ある本とは、「思いどおりに作曲ができる本」(川村ケン・著、リットーミュージック・刊)。
 少し前に買っていたのですが、ご多聞にもれずツン読になっていたのを、先日、自宅an弾手オフィス?(詳しくは前号・第333回をご覧下さい)の整備に伴い開いてみたのでした。

 その本の著者プロフィールによると
 「〜(前略)〜フリーのキーボーディスト、プロデューサー、コンポーザー、アレンジャーとして、ゆず、安室奈美恵、Kinki Kids、清木場俊介、絢香、宇都宮隆、椎名へきる、高橋克典、ZIGGYほか、多数のアーティストのライブ、レコーディングに参加。〜(後略)〜」とあり、バリバリの現役ミュージシャンのようです。
 本は、見開きのQ&A形式で64項目。音符やコードの話から、鍵盤の押さえ方、スケール、メロディー、転調、アレンジ、弾き語り、ソロ、バンドの音作り等々、多岐に渡っています。ただ、既にバンドで楽器をやっていたり、ピアノやキーボード経験者で、ある程度コードの知識がある人でないと話が少し難しいかとは思いますが、現場に即した役に立つ話が詰まっています。
 それに、全ての話に実例の音源が付属のCD2枚に入っていて、それを聴くだけでも「なるほどー」っていう気になります。

 で、本文最後の
 「演奏がうまくないけど、ミュージシャンになれる?」です。
 著者によるその答えは。

 「なれます。技術は、練習さえすれば、誰でもちゃんと上達できますから安心してください。ミュージシャンには、技術よりも大切なことがあるのです。
 あなたは、そもそも演奏がうまいかへたかだけで、聴く音楽を決めていますか?おそらくそうではないと思います。では、ミュージシャンになるために必要な条件とは何でしょうか。」
 そして、
 「音楽は、好きで続けることが最も大切!」
 と続きます。
 「前略〜楽器も好きで続けていれば、必ず上達します。ある超人的なプレイをするベーシストは“真剣に練習した覚えは全然ない。でも、膝の上にはいつもベースがあった”と言っていました。みなさんも、日々楽器と仲良くしてくださいね。
 ミュージシャンにとって本当に必要なことは、楽器の技術よりも、独創性(演奏や楽曲のオリジナリティ)や協調性(1人きりでは何ごともできません)、それから何よりも音楽に対しての真面目な姿勢なのです。〜後略」

 この言葉を自分に都合のいいように勝手に解釈してみると、「技術」にはあまり自信のない私としては、独創性や協調性、それに音楽に対しての真面目な姿勢なら何とかなりそうかな、と勇気が湧いてきます。
 私は自分の目指すところとして「プロのピアニスト」ではなく、生活の様々なシーンで自分の気持ちのままに思いを語るようにピアノを奏で、また周りの人とも一緒に楽しむ事ができる「人生のピアニスト」になれたらいいなぁと思っています。このコラムをお読みの方の中にも、同じような気持ちの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 そう思うと、上の著者の言葉は、現場のミュージシャンからのメッセージとして心強い気がしませんか?

 別のページでは
 「音に感情を込めるって、結局どういうこと?」
 というタイトルで
 「歌や楽器のスキルが上達することはもちろん大事です。しかし、最も大切なのは、まず音楽で表現したい“気持ち”を持っていることなのです。〜(中略)〜人生経験が感情に深みを与えます!」
 とあります。

 はい、人生経験ですね!歳だけはとってますが(笑)その重ねた歳が、また音楽の表現にも深みを与えてくれると思えば、それもまたありがたいものですね。

 それに、人生のピアニスト=人生の作曲家、という風に置き換えてみると、「思いどおりに作曲ができる本」という本書のタイトルが、何とも深い人生論にも思えてきたのでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 いやぁ、何とも寒い毎日ですね〜。ま、手足が寒いのはしょうがないとして、気持ちまで寒くならないようにしないと。
 年も明けて早2週間。手帳を開くと、仕事の予定もですが毎週末にはあっちこっちのライブの予定が目白押し(いや、もちろん自分のライブではないですよ)。皆さん頑張ってますね〜!私も寒い寒いとばかり言ってないで、色んな人の熱気を少し分けてもらわねば。

 
−an 弾手−


第335回「ウェルカムピアノのカンニングペーパー?」

[2011.1.25]

 いまさら昨年末の話ですみませんが。
 12月23日、恒例の某喫茶店忘年会が賑やかに行われました。会場はKKRホテル熊本。この喫茶店は画廊喫茶で、馴染みのお客さんには地元画家や文化人の方が多いので、毎年の忘年会はもちろん、関係者の個展開催記念や出版記念、受章記念、周年イベントなどホテルでのパーティーがよく開催されます。私もその都度恒例の様にママから「ピアノ弾く?」と聞かれ、その都度調子に乗って「うん」と言っては弾かせていただいてきたのでした。私にとっては、ライブの店などとはちょっと違った雰囲気での人前ピアノ道場(?)みたいなものですかね。
 そんな訳で、昨年の忘年会も図々しく弾かせていただくことになりました。

 「司会者の人が、事前に曲目を教えてくれって。弾いてる途中に少しMCを入れたいみたいよ」
 いつもは事前の打ち合わせもせず、与えられた時間内で私が勝手に弾いていたので、前回など所要時間終わり頃には司会者の人がチラチラと私の方をうかがいながら
 「そろそろピアノ終わりにしてください」
 なんて時間を気にされ私も焦ったものでした。
 なるほど、事前に曲目と所要時間の打ち合わせまでしておけば、お互いに安心して進行できそうですね。

 という訳で、今回は自分なりに演奏曲の進行表、というかカンニングペーパーを作ってみることにしました。
 これまでも簡単な手書きのメモで似たようなのは作っていたのですが、今回は事前に司会者に渡すということでもう少しちゃんとしたものにしようと。

 その作業手順は。
 まず当然ながら曲目選び。これは12月23日ということから、冬、クリスマス、などにちなんだテーマのもの。それに結構高い年齢層のお客さんが多いので、そんな皆さんに馴染みのありそうなもの、そしてウェルカムピアノという性質上、BGM的で耳ざわりのいいもの。
 そんな条件の中から十数曲候補を選び、一曲ずつ弾いてみながらストップウォッチで時間を計ります。そして総時間数が予定の30分より少し短い位になる曲の組み合わせを作ります。
 これらを並べてみて、曲間の所々にクッションとしてコード進行のアドリブ風フレーズを挟んでピッタリのトータル時間になるように調整します。

 そして、実際の演奏の時は、演奏の経過時間よりも今何時何分か?という方が演奏しながら確認しやすいので、時刻を書いた進行表の形式にしてみました。

 その実物がこれ(→クリックするとPDFで開きます)

 開宴時の司会者の挨拶をどのタイミングで入れるか、で2つの案を作り事前に司会者に送りました。そして、実際に使ったのがこの(B案)です。

 本番ではこの進行表(カンニングペーパー?)と小型のデジタルウォッチをピアノの上に置いて、チラチラ時刻を見ながら弾いていきます。途中での多少の時間のずれはクッション役のコード進行のところで調整です。
 演奏の途中には司会者から軽くan弾手や曲目の紹介MCをはさんでもらいながら、やや早めではありましたがほぼ予定通りのタイムで演奏を終えることができました。

 これまではざっとした手書きのメモしか作ってなかったので、今回せっかくワープロ入力したこのシート、演奏の記録と記念にとっておくことにしましょう。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 久しぶりに仕事で清和高原まで行ってきました。今週末の撮影の下打ち合わせ。向かう前に先方のご担当者に「今日は道の状態はどうですか?」と聞いたところ、「雪になるかもしれないので、タイヤチェーンを用意してきてください」だって!あれーっ、チェーンなんて持ってないよ〜と、そのまま出発。標高が上がるにつれ、あたりの田畑や山肌は雪景色。霧雨も舞い始め心配しましたがなんとか到着してホッとしました。
 今週末はまた冷え込むという予報だし、さて、撮影本番の日は大丈夫かなぁ。

 
−an 弾手−


第336回「やぁ、また会ったね!」

[2011.2.1]

 賑やかなアーケード街から一本入った裏通り。最近、何度かそこを通りかかりながら気になっていた小さなバーの看板がありました。何の変哲もないビルの入り口に、細い縦長の電飾看板。音楽用語の店名なのできっと生演奏でもやってるのかな、とは思いながらも店は2階らしく殺風景なビルの入り口から店内の様子をうかがい知ることも出来ません。

 先日、思い切ってそのビルに足を踏み入れ、2階まで上がってみました。
 ドアを開けると…。こじんまりとシンプルで上品な店内にバーカウンター。そして、その奥にドーンとグランドピアノ!

 「やぁ、また会ったね!」

 いえ、お客さんは誰もいなくて、初めてお会いするマスターと女性のバーテンダーさんの二人がいただけなんですが。初めて行った所にピアノがあると何だか嬉しくて
 「何だ、ここにもいたのか!」
 と言いたくなってしまうのです。
 あの独特のスタイルと存在感。黙っていてもどこからかお洒落な音色が聴こえてきそうなあのたたずまい。無機質な「物」とはとても思えない人間味が漂ってきます。だから心の中で思わず
 「やぁ、また会ったね!」
 って呟いてしまうのですよ。

 最近は色んな所でピアノに出会います。街なかのバーやライブの店は勿論ですが、ホテルのラウンジ、パーティー会場、国道沿いや郊外の、例えば海の見えるレストラン、この前も仕事で行ったある山里の観光施設、それに自宅に帰ると1階リビングにグランドピアノとクラビノーバ、つい先日からは2階のan弾手オフィス(?)にも安い電子ピアノが!
 それぞれ別のピアノなのに、会うとみんな同じ「ピアノ」に見えて
 「やぁ、また会ったね!」って。

 何なんでしょうね、この感覚。親しい友人や仲間?家族?恋人?
 鍵盤に触れると、ポロポロポロッって自分の気持ちに音で応えてくれるのが、何ともいとおしいじゃないですか!?(って、何か変?)
 誰か他の人が弾いているのを聴いても、演奏者の音というより、ピアノが自分で歌っているように聴こえてしまいます。

 ところで、そのビルの2階の小さなピアノバー。その後2回も足を運んだのにまだピアノと触れ合ってないんですよ。いきなり出て行って鍵盤を叩いてみるのもいいけど、ちょっと遠目からチラチラと視線を送りながら声を掛ける機会をうかがってる時間も、何だかトキメイたりすると思いませんか?

 いつか、そのうち。
 「この前から見掛けて気にはなってたんだけど、声を掛けるきっかけがなくてね。今日はよろしく!」
 な〜んて言葉を交わしながら音で気持ちを通わせる、そんな夜が来るのを楽しみにしてるからね!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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 今日から2月。まだ全国各地には大雪で大変な所があるようで心からお見舞い申し上げます。それでも天気予報によると今週から少しは気温も上がってきそうです。明後日3日は節分、そして4日はもう立春なんですね。やがて春の話題もあれこれ聞こえて来るんでしょうか。
 私も春に向けて、ここまで遅れ気味のたくさんの宿題、1つずつでも片付けていかなきゃ、ですね。

 
−an 弾手−


第337回「やぁ、また会ったね!」(その2)

[2011.2.8]

 「じゃ、次はan弾手さんのソロ・ピアノです」
 「えっ!? 何も聞いてないよ〜」

 同窓会の2次会が終って帰宅前にちょっともう一軒、と1人でブラッと立寄った馴染みのライブの店。店に入ると思いの外たくさんのお客さんだ。
 あれっ、珍しい人の顔が。1年前に役所を定年退職されて以来ずっとお会いしていなかった方。仕事で20年以上もお世話になった方です。今日は何と若い女性と優雅にシャンパンをボトルで。
 「あっ、お久しぶりです!こんなところでお会いするとは!えっと、このテーブル、ご一緒によろしいですか?」
 この方とライブの店のイメージは全く接点がなかったので意外でした。

 それにしても今日は懐かしい人とたくさん会う日だ。さっきまでの同窓会は中学の時のもの。年に一回この時期にあっているのですが、今年もまた初参加の人が何人かいてウン十年昔にタイムスリップしてしまいました。
 そして今この店。今日はなぜか思いの外お客さんが多い。ここでよく見かける常連さんがほとんどなのですが、それでも数ヶ月振りに会う人もいて何だかほっと懐かしい気分になります。

 その日の演奏は?この店のオーナーでもあるプロのジャズピアニストの演奏日でした。
 2ステージ目の演奏が終ってしばらく間があり、やがてまたピアニストがピアノの所へ。なるほど〜。馴染みのお客さんが多いわけが分かったぞ。今日はピアニストの演奏の後はセッションタイムでお客さんが飛び入りで参加できるんですね。店に来ているお馴染みさん、そう言えばほとんどがジャズヴォーカルを勉強しているレッスン生だった。
 まず1人目の人が呼ばれてピアノの前へ。えっと、曲名は忘れましたがジャズのスタンダードナンバーを1曲。

 そしてその後…
 ピアニストが立ち上がりながらいきなり告げました。
 「じゃ、次はan弾手さんのソロ・ピアノです」

 えっ!? そんなの聞いてないよ〜!

  「あははは」
 ピアニストさん、笑いながら客席に下りてピアノが空いてます。
 覚悟(?)を決めてピアノの前に座ります。
 目の前にズラッと並んだ鍵盤。

 「やぁ、また会ったね!」

 夜の店でピアノの前に座るのは久し振り?前回のコラムの、まだ触れたことのないピアノとは違うのですが、このピアノもこうして久し振りに前に座ると、懐かしい人に会ったような気がするんですよ。

 何人も懐かしい人と言葉を交わした夜。そしてその最後はこのピアノと。不思議に緊張することもなく、気持ちよく弾くことができました。

 しっかし。
 もう立春も過ぎたことだし。この冬何度も弾いた『白い恋人たち』もいいけど、そろそろ早春の曲も仕込んでおかないとですね〜。



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 今朝、出勤時に家を出たら隣の畑にはまだうっすらと霜が。それでも2月に入ってからは日に日に温かくなってきた気がします。2月ももう1週間経ったんですね。2月は逃げる、と言いますし。3月は去る、だったかな(笑)。
 さてさて、気持ちも身体も季節のスピードに置いて行かれないようにしなくっちゃ。

 
−an 弾手−


第338回「あはっ、まずは自分で買ってみなきゃ!」

[2011.2.15]

 先日、会社の私宛の郵便物の中に講談社からの封筒が。an弾手の活動は会社の仕事とは全く別なのですが、連絡先は会社の住所にしているので。

 一瞬「えっ、また増刷の連絡?」とも思ったけど、その場合はまず電話かメールで連絡があるはずなのでそれは多分違う。時期的に印税の源泉徴収票? あ、それはちょっと前に来てた。それにこれは封筒が大きなA4サイズだし。

 いずれにしても、講談社から郵便物が来るとちょっとワクワクしてしまうのです。仮に単なる手続き上の書類としても、多分、前向きの話しのはずだし。正直なところ、いまだ著者(?)としても初心者の私は、まだまだ出版社からのメールや郵便物にはトキメイてしまいます。約7年前、初めて出版社に企画書を送った時のトキメキは今も健在なり(笑)。

 ちょっとだけ特別な気分を感じながら封を切ります。
 すると、中から出てきたのは…。

 はぁ〜なるほど〜。時代の流れですね〜。
 デジタル的利用許諾契約書。
 拙著「40歳からのピアノ入門」(講談社+α新書)を今後デジタル化して出版、販売することにたいする許諾を求める契約書でした。紙の本から電子書籍へと出版の仕組みが大きく変わっていく、という話はすでにあちこちで聞いていますし、知人のiPadなどで電子書籍のスタイルを見たこともありますが、それが現実のビジネス(契約書)としてリアルに自分の身にも起こった瞬間でした。

 そう言えば、私はまだ自分で電子書籍端末を持ってないなあ。その方面の知識もほとんどないし。Kindle?Sony Reader?GALAPAGOS?はぁ…。
 これから勉強しながら時代に遅れないようにしないと。

 楽譜も、そのうち電子書籍化していくのでしょうか。少し前、ある知り合いのアマチュアミュージシャンに見せてもらったのはデジタル化した楽譜。もちろん楽譜はずっと前からFinaleなどの楽譜作成ソフトを使ってパソコンで書き起こすのが普通になっていましたが、そんな楽譜を電子端末に入れて持ち歩いていました。その人はバンドで演奏したりしているのですが、これまでの紙の楽譜の代わりにその端末を前に置いておけば、楽譜めくりも画面をスッと指で撫でるだけでできるので便利だ、と言っていました。なるほど〜。

 ただ、電子書籍が普及しても紙の本は残るような気がします。確かにディスプレイで便利に情報は読めると思うのですが、電源を切ればモノとしてはそこに何もない。それってどこか寂しくない?って思う私は古い人間でしょうか。やはり気に入った本、思い出の本は、モノとしてそこに存在していてほしいなあ。本は情報を得る、知識を学ぶ、という機能の他に、装丁の雰囲気や厚みや手触りや重さやページの折り目や、それに、うっすらと付いた手垢でさえも、自分にとってはかけがえのない思いのこもった存在になりうると思うのです。

 そんなことを思いながらも、デジタル的利用許諾契約書、しっかり押印して返送しました。販売方法や印税の清算方法など契約書の中身については分からないこともいっぱいあったけど、メールで質問したら丁寧なお返事をいただきました。

 いずれ実際に私の本が電子書籍として発売されましたら、その購入方法などの情報を改めてお知らせしますので皆様どうか試しに買ってみてくださいませ。って言うか、どんなものかまずは自分自身で買ってみなきゃ、ですね(笑)



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 今日、熊本は朝からとてもいい天気です。でも先週末は雪、そして昨日は雨。少しは暖かくなっているのかな、とも思いますが、それでもこの寒さは何だろう。2月頭からは少し寒さが和らいでいたので、ことさら寒く感じるのかもですね。
 昨日はそんな寒いバレンタインでした(笑)。皆さまはいかがでしたか? まあ、私はこの歳になってバレンタインもないでしょうが、それでも世間が騒いでいるとちょっと気にはなるものですね。もらえる数もめっきり減ってしまった昨今ですが、さて、今年の結果は?
 いやいや、それは言わぬが花、ということにしておきましょ〜。

 
−an 弾手−


第339回「読者からのお便りご紹介。自己流トロイメライに挑戦!」

[2011.2.22]

 これまでも何度かご紹介していますが、今回また大阪の中川貴様から最近頂いたお便りをご紹介いたします。
 中川様は、今年多分84歳?(違っていたらすみません)。70代からピアノ教室に通い始めてクラシックピアノのレッスンをされる傍ら、私の本やコラムでコード奏法に取り組まれ、ご自身でアレンジも楽しまれているという方です。
 定期的にレッスンレポートをメールしていただくメル友で(笑)、私もメール交換を楽しみにさせていただいています。

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an弾手さま
 そのうちに、そのうちに、と思いながら、とうとう2月になってしまいました。今年は、新年のご挨拶を省略させて頂いていますので、文字通り永らくのご無沙汰でした。
 何時もながら多彩なご活躍、ほとほと感じ入っています。 
 例年によると、年が明けてからは風邪はひかない筈なんですが、今年は少しやられました。でも、何とかボツボツやっています。
 トロイメライの進行状況ですが、年内に大体のところコード付けを終わらせました(?)ので、新年はそれにそって練習をしています。自分で付けたコードなのに、判らなくなったり間違ったりで、右往左往しています。
 ところで、最近或る発見をしました。トロイメライコード練習に少し慣れてきた或る日、疲れて何となく譜面を見ていたのですが、コードを分散させたら原曲とどの位違うのだろうか、ということに興味を持ちました。各小節毎に当ってみたのですが、すると、意外にも(?)よく似ている部分がかなりあることがわかりました。面白くなって転回形にしたり、部分的に抜いたり、加えたり、飛ばしたり、又、コードには無いけれどもトロイメライを特徴付けていると思われる音を加えたり、難しいところの誤魔化し方を考えたりしたところ、何とトロイメライ風に近づいてきたではありませんか。
 と、一人で悦にいっても、傍から見たら馬鹿みたいでしょうが。とりあえずは自己満足、今はこの譜面で練習して2月のレッスン日に臨みます。
 で、何が発見かといいますと、初めて見たときには拒絶反応を起こした譜面でしたが、それに近い譜面(?)を面白がって作っている自分を発見したことです。
 でも、何日か経ってトロイメライの原譜を置いてピアノに向かってみましたら、やはり拒絶反応を起こしました。
 今、曲の私なりの構想を考えています。次回にはお話できると思います。

中川 貴
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 このトロイメライのコード付けのお話、実は昨年12月に「自己流トロイメライに挑戦中!」というメールをいただいていました。今回はその後の経過報告、ということですね。
 中川様がお若い頃に耳にされ、以来ずっと心に染み込んでいらしたというこのクラシックの名曲を、今、70年経ってご自分なりのコード奏法で演奏しようと思い立たれたこと、そしてその過程で、自己流コードアレンジで工夫してみた譜面が、原曲の譜面に近いことに改めて気付かれた感動が伝わってきます。
 クラシックの譜面も、和声的にはコードと原理的にほぼ変わらないはずですから、その両者が似てくるのは当然と言えば当然なのでしょうが、それを理屈ではなく、体験の中から発見されたところが、とても素晴らしいですね。
 譜面の音符をそのまま鍵盤に移して弾くのとは違うコード奏法の魅力が、そこにあるような気がします。

 >今、曲の私なりの構想を考えています。次回にはお話できると思います。

 中川様流トロイメライの構想、お聞き出来るのを楽しみにしています!

 (昨年5月、連載300回感謝特別号の時に頂いた中川様のメッセージはこちら↓)
 http://www.kumamoto-bunkanokaze.com/andante/an30_syoukai.html#27



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 あれっ、なんか暖かいなぁ、と思った昨日の昼間。今朝も真っ青な空で陽射しが明るくて、温かくなりそうです。
 来週はもう3月ですね。この冬、我が家に急遽しつらえたコタツはもうしばらく出番が続きそうですが、そろそろ春の話題で盛り上がりたい気分です。と、書きながら、今、机の下の足元がスースーと寒いのを感じてますが(笑)。
 季節の変わり目、体調には気をつけましょう!

 
−an 弾手−


第340回「迷ったらやってみる」

[2011.3.1]

 いくつもある自分の座右の銘(?)のひとつに、「迷ったらやってみる」というのがあります。
 どうせダメかも知れなくても、やらずに後悔するよりやってみて討ち死にした方が本望かなぁ、みたいな意味ですが。まあ、ほとんどの場合はそんな深刻な話じゃなくて、日常のささいなことで自分を励ます時にちょっと思い浮かべるくらいなんですが。

 思い返せば、私がコード奏法に出会ったのも、人前ピアノを始めたのも、このコラム連載を始めたのも、本の出版のきっかけが出来たのも、みんなちょっとした「迷ったらやってみる」のお陰だったんですよね。その時はほんのささいな判断の差が、後で考えるととんでもない違いになっているのをイヤというくらい経験してきました。
 もちろん、あえなく撃沈も一杯ありましたが、それでも本当に命まで落としたわけじゃないので笑い話で済んでますし。

 実は先日も、迷ったのでやってみたら。すごくハッピーなことがあったのでした。って、こんな大げさな前振りする程の話じゃ全然ないんですけど。

 最近、必要があって度々訪れている、ある大きな病院。そこの新館1階は地域交流館と名づけられ、レストランやホール、健康生活相談コーナー、それに健康生活図書館という図書コーナーがあります。そこの書棚には色んなジャンルの本が並んでいて、備え付けのテーブルで読むことも出来るし、入院患者の家族には貸し出しもされているようです。そこで何気なく書棚を見ていたら、講談社の+α新書シリーズの本が何冊かあるではありませんか。で、このシリーズの装丁を見たら条件反射的に探すのが、自分の本(笑)。でも「40歳からのピアノ入門」は残念ながらありませんでしたぁ。
 ふと壁を見ると、そこに張り紙。
 「この図書館の本はたくさんの方の善意の寄贈によって貸し出しが可能となっています」
 …もう、お分かりですね。そう、ここの蔵書が善意の寄贈で成り立っているのなら、自分の本も寄贈すればここの書棚に並べて頂けるのでしょうか?

 そう勝手に妄想するのは簡単ですが。たったそれだけの事でもいざ実行に移すとなると、小心者の私としては、結構ハードルが高いのです。
 『自著を置いてくれ、と言うのも何だか押し付けがましくないだろうか?』『善意の寄贈と言っても今も募集中とは書いてないし、いつも受け付けているのだろうか?』『いきなり持って行っても逆に迷惑がられないだろうか?』
 散々迷ったあげく、最後は座右の銘「迷ったらやってみる」の教えに従いましょう!

 バッグに「40歳からのピアノ入門」を忍ばせ、受付カウンターの女性に近づきます。
 「あの、こちらでは本の寄贈とか受け付けておられますか?」
 「はぁ…。どんな本でしょうか?大きな辞書などはご遠慮いただいているのですが。何冊位でしょうか?」
 「あ、小さな新書判です。1冊です〜。実は自分が書いた本なのですが、いいですか?」
 「分かりました。ではこちらの書類にご記入いただけますか」
 1枚の紙とボールペンを渡されます。

 …えっと、まずこの欄に自分の(寄贈者の)名前を書くんですね。
 私が自分の名前を書いているのを見たその女性、そっと声を掛けてきました。
 「あの…、もしかして。○○○○さんのお父さんですか?」
 「えっ、そうですけど!娘のことご存知なんですか!?」
 「はい、高校時代の同級生です!私、○○と言います」
 と、首から提げたネームプレートを改めて見せてくれました。
 「それに、私、あの大きな楽譜の本、持ってますよ!」

 え〜〜〜っ!an弾手の読者さんなんだ〜っ!

 仕事の研修で遠い県外にいる娘にいきさつをメールしたら
 「○○さん、ずっと仲良かった人だよ。すごい偶然だね!連絡ありがとう」
って返信が。

 すみません、たったそれだけの話なんですが。でも、「迷ったのでやってみた」ら思わぬ出会いがありました。本も気持ち良く受け付けてくれたし、これからまたこの図書館でも本を通して思わぬ出会いが広がっていったらうれしいですね!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。

 ジャ〜ン!3月1日です〜!
 だからどう、って訳ではないんですが。ほんと、あっという間に3月になってしまいましたね。
 3月は別れと…、じゃなかった、旅立ちと出会いの季節。私の身の周りにもたくさんの旅立ち、出会いがありそうです。そう、自分自身にも。
 ワクワクしながら、新しい季節を迎えたいと思います。

 
−an 弾手−

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