…さて、いよいよ1曲目。そよ風の微笑。
「最初に私のオリジナルを弾きますから。」
と彼女に声をかけます。この曲、こういうところで弾くには少し単純すぎて物足りないけど、まあ、いいか。
…何とか、最後まで弾き終えます。
あれ、拍手が無い? まあ、こういうBGMっぽい演奏では、普通、1曲ごとに拍手なんかしないからなあ。
2曲目、ひき潮。
うーん、全然反応無いなあ。次の曲にいく前に少し、循環コードで遊んでみるか。さて、次はThe End of The World。そしてその次、小さな日記。これ、意外と知らない人、多い。昭和40年代のフォークソングなんだけど、私が自己流でカクテルピアノ風にアレンジしたやつ。実はこれ、ここのママがお気に入りで、私が来ると必ずリクエストしてくれる曲なのです。
またまたお昼を食べに行ったら、ママが「ホラ、この前の話なんだけど、Kさん(そのおじさんのこと)がね、ぜひお願いします、って。それで、KさんはLet
it beやりたいそうだから、私はThe End of The Worldね。」
「えっ…、私は、って?」
「Kさんね、1人じゃ心細いから私にも付き合えって言うのよ。だから、私はThe End of The Worldね。」
おいおい、2人いっぺんに、なんて話し、聞いてないぞ〜。
「だから、Kさんが1時間やって、その後私が1時間やればいいでしょ。」
え〜っ、いきなり生徒が2人?
「an弾手さん、引っ張りだこですな。仕事の話がそれくらい来ればいいのにねぇ。」
と、横でこの店のマスター(ママのご主人)が笑ってます。
「ところで、ママ。ピアノ触ったことあります?」
「ぜ〜ん、ぜん。あ、Kさんは家に小さなキーボードはあるって言ってましたよ。でも、自分では弾いたことはないって。」
う〜む。ぜ〜ん、ぜん、か…。
と言いながら私にも多少の勝算はありました。あの、アナ鼻ピアノの要領でいけば全くの初心者でも何とかなるハズ、という自分の体験から来る思い。
ただ、私自身はコード奏法を始める前に、我流とはいえ二段譜の丸暗記奏法に悪戦苦闘した前歴があったことはあったなあ。
目の前のママはと言うと
「ピアノって右手と左手と違うことするんでしょ。たいへんよね〜。それに楽譜なんてチンプンカンプンだし。でも歌ならまかせて頂戴。ちゃんと英語の歌詞覚えとくから。」
どうも弾き語りをしたいらしい。
「そうだ、ママ。恒例のクリスマスパーティーで弾き語りデビューってのはどう?」
「きゃ〜っ、間に合うかしら?月に1回のレッスンじゃ、もう何回も出来ないけど。」
う〜む。確かに。しかし、目標があったほうが励みになるし。よーし、3ヶ月でママをピアノの弾き語りでデビューさせるプロジェクトのスタートだっ!