第71回 「夜のピアノバーでリハーサル?」 [2004.1.6]
 会社の女子社員に、結婚式での歌のピアノ伴奏を頼まれ、引き受けてしまった私。早速、ライブバーのマスターに歌伴用のピアノを弾いてもらってMDに録音してきました。これを聴きながら自宅で特訓です。でも、伴奏ですから、当然メロディーは入っていません。伴奏だけ弾いても何の曲かよく分からないし、ソロピアノと、どうも勝手が違います。(自分で大声張り上げて弾き語りするのも近所迷惑だし・・・)
 そこで一計、クラビノーバの録音機能で、まずメロディーだけ弾いて記録させます。これを再生しながら、伴奏を弾いていくことにしました。これなら夜でもヘッドホンで大丈夫だ。
 こうしてピアノ伴奏は何とか模範演奏の雰囲気がマネできるようになったんですが、やっぱり本人の歌と合わせてみないことには始まりません。さて、どこで合わせようか?
 マスターのライブバーが営業の都合で練習には使えず、別のピアノバーに行くことにしました。

 夜9時に店で待ち合わせ。彼女はフィアンセを連れて来ると言います。店に着くと、二人は先に来ていました。なかなかの好青年です。まずは3人で軽く乾杯してから、さっそく練習開始。彼女は歌のセンス抜群で、2〜3回合わせたらバッチリ、・・・と私は思ったんですが、ここで難問発生!
「少しKeyを下げてもらえませんか?」と彼女が言い出したじゃありませんか! 素人ピアニスト泣かせの、恐怖の移調!いつかの、あのクリスマスパーティーでの悪夢が頭をよぎります。ここまで、ずっとGで練習してきた俺の努力をどうしてくれるんだ! でも歌手のKeyにスッと合わせるのがピアニストの役目、とばかりにカッコイイところを見せたい私は、ここで取り乱す訳にはいきません。
「ちょっと待ってね」
と言いながらピアノの譜面立ての上でリードシートのコード進行を、必死で(表面はさりげなく)1音ずつ下げたコードに書き直し始めました。
 GをFにしようという魂胆です。コードネームだけでも書き直してしまえば何とかなるだろう!
「じゃ、1音下げて弾くからもう一度合わせてみようか。」
そう言って弾き始めましたが、ここまでずっと練習してきたGのようにはいきません。何せFのKeyでは初見ですから、伴奏するのに一生懸命で歌を盛り上げる余裕がありません。それに、一音下げただけなのに何となく曲の華やかさが消えて少し沈んだ感じがします。(多分に私の弾き方のせいもあるとは思うんですが)
 その時、店の人が、
「この曲、やっぱりさっきのKeyのほうがいいと思うよ。」と言ってくれました。
 これに勢いを得た私は
「ちょっときついかも知れないけど、頑張ってGでやったほうがいいと思うよ。」
と、彼女を無理矢理言いくるめてしまいました!
「それじゃ、伴奏だけテープに録ってもらうから、それに合わせて歌の練習しといてね。」
と店の人に私のピアノ伴奏を録ってもらい、彼女に渡しました。

 気が付くと、いつの間にか11時を回っています。
「もう遅いから今日はこれで。」
 お礼を言いながら、そっと寄り添うように夜の街に消えて行く二人をにこやかに見送ります。
 若いっていいよなぁ・・・。
(コラ! バーのカウンターでおじさんが1人、感慨にふけっててどうする!)
 さて、あとはいよいよ本番だ。
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 明けましておめでとうございます。
 皆様、どんな新年をお迎えだったでしょうか?
 私は、おだやかながら、慌ただしく過ぎた3が日でした。県外の親戚の家に1泊したり、今後のコラムの展開に備えて例題曲の全体を譜面に起こすのに挑戦してみたり(何とか形になりました!)、世間の話題に遅れないようにと、正月映画(ラストサムライ)を見に行ったり・・・。
 こちらコラムの方は元旦早々、若い読者の方から掲示板に初メッセージをいただいて、幸先のいいスタートでした。今年は読者の方同士の情報交換や応援メッセージなど、掲示板を通してピアノの話題で盛り上がったら楽しいなあ、と思っています。
 では、皆様、本年もよろしくお願いいたします。
 平成16年1月6日
−an 弾手−


第72回 「いよいよ披露宴本番! 華麗に、そして、さりげなく」
[2004.1.13]
 花嫁に歌のピアノ伴奏を頼まれた結婚披露宴。いよいよ本番当日となりました。会場に入ると正面に新郎新婦がすわる金屏風のヒナ壇。そして部屋の反対側にステージが設けられ、脇にグランドピアノが大屋根を広げて鎮座しています。
「ははあ、あれで弾くのか」
 そう思いながら自分の席に着きます。今日、花嫁が唄うことも、私がピアノ伴奏をすることも、一部の関係者以外は知らないはずです。
 お決まりの流れに添って新郎新婦入場のあと、仲人のあいさつが始まりました。
「〜新婦は大変歌がお上手とお聞きしております。ぜひ一度、その歌声をお聞きしたいものです〜」
 ふむ、ふむ。あとで花嫁が自ら唄うための、これは伏線か・・・。
 シンと静まり返った中でセレモニーは粛々と進んでいきます。
 あ、そうだ、忘れてました! 実はこの日、私にはもう一つの大きな役目があったんだ! 新婦側の主賓としてあいさつを頼まれてたんだっけ! 勿論、あいさつの事をその日忘れてたわけじゃないですよ! 今、この原稿を書いている時点で、その事、どっかに飛んじゃってました。どんなあいさつをしたかも忘れちゃったなあ(花嫁さん、ゴメンナサイ)。だって、ピアノ伴奏の方が自分的にインパクト大き過ぎて!
 
 話を戻しましょう。主賓あいさつもなんとか無事に終わり、乾杯のあとは、ワイワイと賑やかに披露宴は進んでいきます。ステージでは新郎新婦の友人がカラオケで唄ったり、ギターの弾き語りがあったり、宴もたけなわ、といったところです。さて、プログラムも終盤に入り、いよいよ花嫁の(という事は、私の)出番が近づいてきてきました。司会者が会場の皆に自分の席に着くよううながします。
「では、ここで新郎新婦からそれぞれのご両親へ感謝のメッセージがございますが、それに先立ち、花嫁が今の気持ちを歌に込めて贈ります。皆様、ステージにご注目ください!」
見ると、花嫁がもうステージの上にスポットライトを浴びて立っているではありませんか!
「ピアノ伴奏は○○様にお願いしてございます!」
 おっと! 私のことだよね。なんか、出て行くタイミングはずしちゃったなあ。私がすっかりホロ酔い気分のまま自分の席でまごまごしていると、会場係のボーイさんがあわてて私のところまで駆けて来ました。
「はい、はい。分かってますって。今、行きますよ。」
やっと立ち上がった私は、ふと思い付いて、テーブルの上にあった飲みかけのワイングラスを手に取りました。
「手ぶらであそこまで歩いていくのも、なんか間が持たないでしょ」

 その間にも司会者が伴奏者(つまり私のこと)の紹介をしています。
「この日に備えて、一生懸命練習を重ねてこられました!」
 おいおい! ちょっと待ってくれ! そんな紹介の仕方、ないだろ! それって俺の演奏美学に反するんだよね(デカく出たなあ)。こんな席ではお客さんを楽しませるために、その場の空気を演出するために演奏するんでしょ。誰も演奏者の「一生懸命練習してきました!」っていう根性物語を聞きたいんじゃないよね。もっと心地良く酔ってもらうために、もっと自然にさりげなくピアノが流れ始め、それに乗って花嫁の歌声が皆さんの心にジーンと届いてくれれば。たとえ必死に練習してきたとしても、そんなそぶりは露ほども感じさせないような、さりげなくオシャレな演奏にあこがれている私です。(なーんて、ね)

 やっとピアノまでたどり着いた私は手に持ったワイングラスをステージの花嫁の方へ軽く揚げてから、ピアノの上に置きます。次に、立てた状態になっているピアノの譜面立てをスッとたたんでイスに座ります。ちょっとキザですが、これもさりげなく演奏を楽しむ雰囲気をつくるための演出です。(譜面立てが立ったままだと、何だかピアノの発表会みたいでしょ)
 さてさて、花嫁さん、すっかり待たせちゃってゴメンナサイ。軽く目くばせして「じゃ、始めるよ」と合図を送り、いよいよ「愛の讃歌」の始まりです。
 イントロは右手のオクターブ奏法でちょっとハデ目に、華やかに始まります。
 ヴォーカルが入ってきました。まずは8ビートで淡々と刻んでいきます。そしてサビ。ここはシャンソン独特の「語り」の部分。リズム感を消して歌手に自由に語らせるところです。コードの変わり目でバッキング風にただジャーン、ジャーンと鳴らしていきます。
 さて、再びテーマのメロディー。ここからは雰囲気を一転、3連符でリズミカルに刻み始めます。そして3連の鼓動が次第に高まっていっていよいよ爆発! というところでグワーンとgliss(鍵盤を爪の甲で一気に掻き上げる奏法)を一発! 思い切り盛り上がったまま、Codaに入ります。
 最後はヴォーカルがGで終わった後、ピアノのエンディングがEb→Fと進み、Gの華麗なるアルペジオで一番右上まで駆け登り、更にダメ押し、左手の低いGをガーン! と鳴らして終わり! 
 ワーッと拍手が来るのと同時に私も立ち上がり、ステージの花嫁に向かって拍手を送ります。彼女、私の伴奏テープでよく練習してきてくれたみたいで、時々目線を交わしながら、ピッタリ呼吸を合わせて唄ってくれました。Keyが高いのもガマンして唄ってくれました。ありがとう! お陰で披露宴のハイライトを何とかブチ壊さずに済みました。私とっても思い出に残る演奏の一つになりました。
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 きのうは成人の日でしたね。以前は1月15日でしたが、いつからか日曜とくっついて連休になったんですよね。何だか、いいいのか、悪いのか・・・。
 私なんかはるか昔のことでよく覚えてませんが、確か詰襟の学生服で成人式に行ったような気がします。当時は大学生は学生服が多かったですよ。女性も振り袖姿なんか、それほど見なかったんじゃないかなあ。
今は随分華やかで、日本も豊かになったもんです。な〜んて思ってたら、きのうの新聞に「五カ国の青年に映る日本」というアンケート調査の結果が出ていて、かつての「経済的に豊か」で「勤勉」という日本のイメージは大きくダウンしているようで。まあ、今の日本を見ていると確かにそうですよね。かつてのモーレツと高度成長に戻れとは言いませんが、まるで「勤勉は悪」と言わんばかりに国を挙げて「もっと休め!」「働くな!」と号令をかけられているようで、「ナンカ違うなあ・・・」と思うのは、あの高度成長期に青春時代を駆け抜けてきたおじさんのひがみでしょうか?
 おっと、新年早々、変な話題になっちゃった!
 今年も、楽しいピアノの話で盛り上がるんでしたよね!
−an 弾手−


第73回 「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)
ためのコード奏法超入門講座」
(その17)私がやって効果のあった練習法
[2004.1.20]
 さてさて、年末年始、3回に渡って「超入門講座」お休みしましたので、結局4週間、間があいたことになりますね。リードシート(メロディーとコードネームだけの楽譜)を見ながら両手で弾いていくコード奏法のひとつの方法をひと通り説明しましたので、出来ればここまでのところを実際にピアノで何回も弾いて試して、慣れていただきたいという思いもあって、少し間をあけてみました。
 ただ、何回も弾いてって言っても、今のところ譜例は私の作った8小節しかないですよね。これじゃすぐ飽きるし、あんまり練習にならないかも。ぜひ、ほかの色々な曲の楽譜も使って練習して下さいね。
 以下、私がやってみて効果のあった方法をご紹介します。

1、知っている曲を、とにかく沢山弾いてみる。

 リードシートが沢山載っている曲集を準備します。その中で自分の知っている曲を、とにかくはじから弾いていきます。弾き方は第67回、68回の譜例(1)から(6)までのステップを、それぞれの曲にあてはめて試してみて下さい。中には、この方法ではどうしても弾きにくい曲もあるかも知れませんが、とりあえずそんな曲は飛ばして、弾きやすい曲をどんどん弾いて下さい。これを繰り返すうちに、だんだんこの奏法に慣れてきて、そのうち、左手は無意識に動くようになってきますから。どうぞお楽しみに!

2、リードシート曲集のご紹介

 私が持っている曲集のいくつかをご紹介しましょう。

(1)心のうた・日本抒情歌(野ばら社)
 日本のなつかしい唱歌、童謡、抒情歌、学生歌、フォークソングなどを収録。楽譜は極めてシンプルでコードも単純なので、コード奏法入門にはうってつけです。しかも、おじさん、おばさんには、結構なつかしい歌も載ってる(?)

(2)永遠のポップス1(全音楽譜出版社)
(3)永遠のポップス2(全音楽譜出版社)
 この2冊はジャズやポピュラーをやる人だったら誰でも知っている定番みたいな本かな。古今のポップスの名曲が2冊合わせて800曲位、載っています。コードの付け方も全体的にオーソドックスで、とっつきやすい感じです。

(4)BGMのすべて(全音楽譜出版社)
 ラウンジなどで流れているようなBGM演奏者のための曲集。スタンダードジャズ、ポピュラー、ニューミュージック、クラシック、和風現代音楽、アニメソングなど、320曲を収録。クラシックもリードシートになっています。アドリブの演奏例なども入っていますが、やや上級者向きかも。

(5)歌伴のすべて(全音楽譜出版社)
 歌謡曲からニューミュージック、ポピュラー、童謡、校歌、民謡など幅広い曲目が載っています。別に歌の伴奏でなくても、ピアノソロで弾いても楽しめます。

 最新のヒット曲の楽譜なら、次の2つがおすすめです。

(6)歌BON(主婦と生活社)
(7)月刊歌謡曲(ブティック社)
 とにかく、今、日本で流行っている曲なら何でも載っている楽譜満載の雑誌。但し、文字も楽譜もかなり小さいので、おじさんには、ちょっと見るのが大変!私は必要なところだけ拡大コピーするか、五線紙に大きく転記して使っています。

ほかにも色々ありますが、楽器店や本屋で現物を見て下さいね。

3、むずかしいコードはどうする?


 リードシートを見てると、ここまでの私のコラムでは出てこなかったコードネームが沢山出てきますよね。コードの体系的な話は、専門の入門書が色々ありますから、ぜひそちらで勉強して下さい。ただ、コード奏法の練習初期では、次の様な便法もあり、かな。
 よく分からないコードが出てきたら、とりあえずコードネームの大文字アルファベットと、メジャーかマイナーか(小文字のmが付いているか、いないか)だけ見て、その他の記号は無視しても、何とか曲にはなります。
 例えば、
Cdim、Caug、Csus4、C7-9、CMaj7、なんかは全〜んぶCと考えて弾いちゃう!随分メチャクチャな話でしかられそうですが、あくまでも奏法の練習と割り切って。勿論、これらのコードの意味はしっかり本で調べて、少しずつ本当の音を弾くようには頑張って下さいね!
 
 以上、だいたいこのあたりが、「ある朝目覚めると、自分の指が勝手にピアノを弾けるようになっていた!」という感動の体験に出会える時期です。
 どうか、素敵な出会いを!!
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 ついにやってしまいました! 風邪でダウンです。先週(連休明け)位から少しのどが痛かったのが急にひどくなって、鼻水は出るは、頭痛はするは、久し振りに病院に行くはめに。日曜(18日)はひたすら寝てたのに、週が明けてもまだ引きずってます。1年半の毎週更新記録が途切れるか? と一時は弱気になりましたが、何とか原稿書いてセーフでした。何ともうっとおしい話でスミマセン。また暖まって寝ます。来週は明るいネタで行きたいなあ。
−an 弾手−


第74回 「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)
ためのコード奏法超入門講座」
(その18)本邦初公開! オリジナル譜一挙掲載 !!
[2004.1.27]
 ジャジャーン! という訳で、第67回、68回に出てきた8小節の譜例に前後をくっつけて1つの曲にしたものを、今回ご披露しま〜す。
 正直言って恥ずかしいです。音楽的なレベルがバレバレになってしまうのは仕方ないとして、それよりも自分のオリジナルを他人に見られると言うのは、何というか内面をさらすと言うか裸の自分を見られると言うか、そんな抵抗感があるものですね。これは人前でピアノを弾くのともちょっと似た感覚です。特に、途中でアドリブまがいを入れて弾いたりする時は手の内をすっかりのぞかれているような気がして「コッパズカシイ」ものです。でも、そこでいかにも恥ずかしそうに弾くと本当に「恥ずかしく」聴こえてしまうんですよね。ここは思い切って「エイッ!」とばかりにやっちゃったほうが勝ちだぞーッ、と、これまで散々に人前で恥かきピアノを弾いてきた勢いでオリジナル曲の初公開と相なりました。不細工の程、お許しください。
(イントロだけは二段譜で書きましたが、他はリードシートになっています。どうか皆様、ご自由に料理してみてください。)

 一応、曲のタイトルは「そよ風の微笑(ほほえみ)」と付けてみました。
 こんなイメージです。

 ・・・うっすらと霧に包まれた草原が広がっています。
生い茂る野草の間に、かれんな草花が点々と花を開いています。
時折、風がサワサワと草花を揺らして過ぎて行きます。
と、霧の切れ間から一瞬、一筋の光が差し込むのと同時に一陣の風が吹き渡り、草花をいたずらっぽく揺らし始めます。それまで静かだった草原に、しばし華やかなさざめきの輪が広がっていきます。
 ・・・やがて風はおさまり、草原は再び何事もなかったかのように、静かな世界にもどります・・・。
 次回から、このリードシートを材料にして、他の曲を弾く時にも応用できそうな、ちょっとしたヒントのいくつかを話してみようかと思っています。
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 今年に入って夜の街に出たのはまだ1回。新年早々の風邪をこじらせ、おとなしくしてました。その1回は、ある女性と食事の後、とあるジャズバーに行きました。実はその時初めて知ったのですが、その女性、大変なジャズファンとのこと。
 生演奏を聴きながらひとしきりジャズの話で盛り上がりましたが、私はもっぱら聞き役。知識が乏しくてウンチクが語れないんですよ。弾く練習もだけど、もっと聴いたり、聞いたり、読んだりしなくっちゃ、と反省することしきり。それに彼女にはお酒の飲み方まで、ちょこっと教えてもらったりして。
 勉強になった夜でした。
−an 弾手−


第75回 「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)
ためのコード奏法超入門講座」
(その19)色んな曲に応用できる便利なヒント(1)
[2004.2.3]
 前回はオリジナル譜、思い切って公開しちゃいました。譜面だけチラッと見ると、何だかもっともらしく見えますね。でもこれは多分に楽譜作成ソフトのおかげです。一応、まともな譜面の形に清書してくれますから。(ルールに反した譜面を書こうとすると拒否されますし・・・)
 それじゃ中身の曲の方は? と言うと、これがほとんどコードとそのバリエーションで出来てます。そもそもこの曲の作り方が、まずコード進行を適当に弾いてみながらだんだんメロディー風にしていった、というものですから。コード進行も、あまり理屈で考えてから弾いたんじゃなくて、とにかく色々弾いてみてから何となく良さそうなものを忘れないうちに五線紙にメモしていった、という流れです。そして、それを更に楽譜作成ソフトで清書した訳です。清書してみて初めて、自分でも「へぇ〜。こんな風になっていたのか」と不思議な気持ちで眺めています。
 という訳で、この曲、自分で弾いてみてもかなり単純だなあ、と思います。これをきちっとしたテンポで音符通りに正確に弾いたらあんまり面白くないかもですね。夜の店なんかで弾くとしたらかなりくずして、オシャレっぽく聴かせる工夫が必要でしょうね。
 また、コード奏法初心者の方がいらっしゃったら、ぜひ第67回、68回に書いた方法を当てはめて弾いてみて下さい。そこではこの曲のテーマとなっている8小節のメロディーを例にして弾き方の説明をしていますので、それをそのままやれば、この曲のかなりの部分は弾けるはずです。
 
 さて、せっかくオリジナル譜のご披露をしましたので、今週から数回に渡ってこの譜面を材料にしながら、別の曲を弾く時にも応用できそうなちょっとしたヒントのあれこれをお話してみようと思います。

今回はまずイントロです。
はい、これですね。

ここは、霧のかかった草原の、幻想的なイメージを表現したいところです。また、イントロの役割りとして、本題のテーマのメロディーに効果的にバトンタッチしていく機能も当然必要ですね。

1、純粋に機能的な話からすると、この曲の KeyはGで、テーマの始まりのコードもGですから、イントロの最後をGのドミナントセブンスであるD7にすればうまくいきそうですよね。(ドミナントの話は第64回に、ドミナントセブンスの話は第65回に書いています。)

2、イントロの最初の3小節にコードネームを付けていないのは、ここは静かな草原のイメージを出すために右手だけのシンプルな音を使いたかったからです。でも、このシンプルな音にも、当然コードの要素が含まれています。あえてコード進行を書けば

となるでしょうか。

コードの流れとしては
(トニック)→(ドミナント)→(トニック)→(ドミナント)
という単純な進行ですが、これに6度の音を入れるだけで何となくフワッとした幻想的な雰囲気が出せた(かな?)。6度を普通のコードトーンである5度に変えた場合と弾き比べてみて下さい。


3、4小節後半からのアルペジオは、骨格はDのコードです。ここでは、Dに7(セブンス)と9(ナインス)をプラスしています。この2つの音を加えることによる雰囲気の違いは、実際に弾き比べてみると一目瞭然です。7(セブンス)とか9(ナインス)とか言うと、むずかしそうですが、鍵盤の上で見てみると、至って簡単です。要するに、ルートの音の上と下に1つずつ音をくっつければOKです。
譜面と鍵盤図を書いてみますね。

 ルートの前後にこの2つの音を付けて弾くだけで、ガラッと雰囲気が変わります(いわゆるオシャレになります)。もちろん、D以外のコードでも理屈は一緒です。色んな曲に応用してみて下さい。この例のようなアルペジオにすれば、すぐに簡単なイントロやエンディングに使えます。
 その他の利用法として、さりげなくピアノの前に坐ってポロポロッとこんなアルペジオを弾いてみせて、周りの人を「おっ!! 弾けるの?」とビックリさせるのにも使えます。でも、その時は、とりあえずそこまででやめときましょうね(笑)
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 いい天気です。車窓の街並みは光に溢れ、車の中はエアコンを切ってもポカポカです。今日(2月3日)は節分。いよいよ明日は立春ですね。この前お正月だったのに、少し前まで寒波で震えていたのに、季節は確実に春に向かってるんですね。
 県庁の駐車場に車を停めてイチョウ並木のプロムナードを歩きました。葉のない枝々も、こんな明るい日差しの下では何となく活き活きとして見えるから不思議です。でも、風はちょっと冷たいなあ。冬もまだ忘れてもらっちゃ困るぞ、と言いたげです。
 さてさて、ここらで気分一新。今夜は久し振りに琥珀色の液体で鬼払い、といきますか。
−an 弾手−


第76回 「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)
ためのコード奏法超入門講座」
(その20)色んな曲に応用できる便利なヒント(2)
[2004.2.10]
 今回は、私の曲を材料にして考える「色んな曲に応用できる便利なヒント」の2回目です。初めて(又は久しぶりに)このコラムを見られる方は第74回の譜面と第75回の前回を先に見ていただくと話の流れが分かりやすいと思います。
 前回、イントロの話をしましたが、今回はいよいよテーマに入ります。第67回、68回に譜例として使った8小節のメロディーが何回も繰り返し出てきます。
出だしの16小節を見てみましょう。


 ここでお話しようと思うことが2つあります。

(その1)短い曲を繰り返して弾く時の超簡単な変化の付け方。
 
 譜例のテーマは8小節で一応完結しています。世の中の実際の曲でも、この位の短い曲は一杯ありますよね。例えば、「赤とんぼ」(8小節)、「荒城の月」(16小節)、「雪の降る町を」(17小節)、「ひとり寝の子守唄」(8小節)、「この広い野原いっぱい」(14小節)・・・ちょっと例が古いですかね(笑)。
 こんな短い曲でも、ピアノソロ用にアレンジしてある二段譜ではアレンジャーがちゃんと変化を付けながらある程度の長さになるように工夫していますから、そのまま弾けば(ちゃんと弾ければ)それなりに格好が付くでしょう。でも問題はシンプルなリードシートで弾く時です。8小節や16小節はあっという間に終わりますから、単に2番、3番という具合に同じメロディーを繰り返して弾いてもサマにならないし、聴いているほうも飽きてしまいます。
 そんな時の超簡単な変化の付け方は、「オクターブ変えて弾く」という方法です。
 例えば3回繰り返して弾く時は、2回目を1オクターブ上げて弾くとか、です。オーケストラやバンドの演奏で同じメロディーが繰り返し出てくるところでメロディー担当の楽器を変えて音の変化を付けたりしていますが、ピアノでも1オクターブ変えることで、ちょうどあれと似たような効果が出せます。
 譜例では、最初の8小節をいきなり1オクターブ高い位置で始めてみました。これは、幻想的なイメージで始まったイントロを受けて、まだここでも霧にかすんだ草原のかなたから静かに曲が流れてくる感じで入りたかったからです。9小節目からテーマの2回目が始まりますので、ここから1オクターブ下げて、普通の音域になります。映像的なイメージで言うと、カメラがグーッと寄っていってリアルな野草の表情をとらえ始めるという感じでしょうか。ただ、12小節目のB7のところで再び1オクターブ上へあがっていきます。カメラの前に再び霧が流れてきて乳白色の世界に変わっていく感じです。アレンジ的にも単に8小節ずつオクターブ変えて弾くより変化を付けたかったのと、その後の曲の展開にスムーズにつないで行く意図もあります。
 アレンジテクニック的には実に単純にオクターブ上げる(下げる)というだけですが、これが結構、色んな曲を弾く時に使えますから、ぜひ試してみて下さい。オクターブ変わった瞬間の、フッと場面転換する感じが、何とも言えずゾクッとします。

 えっと、もう1つお話したかったのはこの部分のコード進行のことですが、長くなりますので、次回に回しましょう。
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 明日、2月11日は何の日でしょう。そうですね、「建国記念の日」ですね。でも、もう1つあります。はい、吉野家で牛丼が食べられる最後の日だそうです。という訳で、実は今日の昼、吉野家に牛丼を食べに行ってきました。ビックリしました! 駐車場に入りきれない車がズラッと行列で順番待ちしているではありませんか! 私もしっかり並んでこの国民的イベント(?)に参加してしまいました。(ちなみに、食べたメニューは大盛と半熟玉子とけんちん汁。)
 吉野家と言えば、一時瀕死の状態になりながら見事に復活させた現社長の手腕は話題になりましたが、今回の事態もどう乗り切っていくのか、にわか牛丼ファンとしては興味のあるところです。・・・ところで、アメリカ国内では牛肉はどうなってるのかなあ。
−an 弾手−


第77回 「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)
ためのコード奏法超入門講座」
(その21)色んな曲に応用できる便利なヒント(3)
[2004.2.17]
 先週は単に1オクターブ上げ下げするだけの話でした。何だ、それだけの事か?と思った方も多かったんでは。ええ、確かにそれだけの事なんですが、たかがオクターブ、されどオクターブ、なんですよね。機械的にオクターブ上げ下げするんじゃなくて、「フッと場面転換する感じ」を強くイメージしながら弾くと、これがなかなかのクセ物ですから、ぜひ色んな曲でお試し下さい。で、今回は、先週飛ばしてしまったコード進行の話です。

(その2)ちょっぴりアレンジャーになった気分になれるドミナントモーションの応用

 今回の話は、まだコードに馴染みの薄い人には難しく感じるかもしれません。でも、難しく感じても、悲観することは全然ないですよ。そのうち分かってきたら、「何だ、大した事言ってないな」と思いますから。かく言う私も、まだこうやって書きながら何とか知識を整理してみているような状況です。思い切り背伸びしてみたり、思い切り簡単なことやってみたり、その繰り返しのうちにいつの間にかちょっとずつ進歩している自分を発見してうれしくなれるんですよね。
 では、例となる「そよ風の微笑」の出だしの16小節を見てみましょう。(初めて、又は久し振りにこのコラムを読まれる方はバックナンバー第74回も見て下さい)


 コード進行を見てみましょう。

G→Am→D7→B7→Em→Am→D7→G

これを8小節ずつ2回繰り返しています。コード進行の最も基本であるドミナントモーション(この曲はKey=GだからD7→G)が最後に出て来てるのはすぐ分かりますよね。ドミナントモーションについては第64回に少し書きましたが、そのKeyのドミナントセブンスコード(V7)からトニックコード(I)に進んで曲が終わった!という感じを出す超基本的なコード進行で、どんな曲でも(余程ヘソ曲がりな曲でない限り)曲の最後には必ず出てくるコード進行です。曲の途中にも、フレーズの切れ目切れ目に、たびたび登場します。この譜例ではKey=Gなので、ドミナントモーションはD7→Gですが、他のKeyでは次の様になりますよね。


これについては第65回にもスケールとコードの図がありますので、復習の意味で見ておいて下さい。

 さて、譜例のコード進行の最後のD7→Gはとりあえず意味が分かったとして、その前の

G→Am→D7→B7→Em→Am

は一体どういう組み立てになっているんだ? という事ですが、これをていねいに理論立てて説明しようとすると、このコラムの1回分ではとても重すぎます。そこで、ここでは、アンチョコ的に、すぐ他の曲でも応用できそうな便利な考え方をご紹介することにします。
 先に書いたドミナントモーションの考え方はV7→I、つまり、そのそのKeyの5度から1度に進むという事ですよね。この進行がすごく安定した曲の流れつくるってことですよね。だったら、この進行の考えを次々に連続的につないでいったらどうなるか、という実験です。
 再度、譜例のコード進行を見てみましょう。

G→Am→D7→B7→Em→Am→D7→G

これを後から逆にさかのぼって見ていくと、どうなってますか?

G →D7 

これはドミナントモーションの逆ですから「1度→5度」になってますよね。

では次、
D7→Am 
この時、D(D7のルート)を1度と考えると、A(Amのルート)は? そう5度ですよね。

では次、
Am →Em 
A(Amのルート)を1度と考えると、E(Emのルート)は5度ですよね!

では次、
Em →B7 
E(Emのルート)を1度と考えると、B(B7のルート)はホラ、やっぱり5度ですよね!

B7 →D7
あれ?ここはちょっと違うなぁ。

D7→Am
これはさっき出てきた!(1→5になっていますよね)

Am →G
おっと、これも違うか。

 でも、かなりの部分で、「1度→5度」になっているでしょ。つまり、この進行を普通に前から見ていくと「5度→1度」(ドミナントモーション的進行!)の連続になっていることが分かると思います。鍵盤図で見てみると、もっと良く分かります。


 では、これが、他の曲に、どう応用できるのか?
 例えば、何かの曲の途中にD7→Gというコード進行が出てきたとします。そしたら、このDをI(1度)と考えてみて、その前にV(5度)のコード(AとかAmとか)が入らないかな?と考えるんです。入れてみると結構、イイ感じ!になったりします。それがうまくいったら、またAをI(1度)と考えて、V(5度)のコード、つまりEやEmが入らないかな?とやってみます。すると、これもうまくいく事があるんです。(うまくいく、とは、理屈じゃなくて実際に弾いてみてカッコ良く聴こえる!という意味です。)
 この時の曲のKeyは何でも構いません。
 
ここで、ちょっと練習問題!

CをI(1度)と考えたらV(5度)は?
FをI(1度)と考えたらV(5度)は?
BをI(1度)と考えたらV(5度)は?

 答えは・・・、今週のコラムの前半に書いたドミナントモーションの表に全部出てます!
 このように、コード進行を考える時、「このコードの次は何を持ってくるか?」と考えるんじゃなくて、「このコードに行くためには、その前に何を置いておけばいいか?」と考えると分かりやすいことが多いみたいです。「でも、自分はアレンジや作曲なんて関係ないよ。まだリードシート見てその通り弾くのが精一杯だから・・・」と思う人もいるでしょうが、こんなコード進行の仕組みをおぼろげでも考えながら弾いていると自分でも思いがけない発見をしたりすることがあります。だからコード奏法は面白い!

 では最後に付け足し。
このG→Am→D7→B7→Em→Am→D7→G
 のコード進行ですが、今回、この原稿を書くためにいろいろ分析してみたら、結局、
 G→D7→G→D7→G
という、(トニック)→(ドミナント)→(トニック)の繰り返しと同じ構造になっていることに気が付きました! もし、興味がある方は考えてみて下さい。(気が付きましたって自分で言うのも変なんですが、曲を作る時は実はそこまで深く考えていた訳じゃないんで)
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)
ちょっと、ひと言。
 ついに吹きましたネー。「春一番」。先週の土曜日(2月14日)、ここ熊本でも強風が吹き荒れました。最大瞬間風速20.3メートルだったそうです。街のラーメン屋ののぼり旗が飛びそうで店員さんがあわててたたんでいるのを目撃しました。気温も上がって熊本の最高気温は18.1度でした。やっと、と言うか、ついに、と言うか、これで春が来そうです。どこに? そうですね、春一番吹かせたいところが、色々ありすぎてですね〜。さあ、頑張らなくっちゃ。
−an 弾手−


第78回 「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)
ためのコード奏法超入門講座」
(その22)色んな曲に応用できる便利なヒント(4)
[2004.2.24]
 先週はテーマを2回繰り返すところまで話が進みました。今回はそのテーマを変化させながら、いよいよサビに突入していきます。(このコラムは続きモノです。初めて、又は久し振りにこのコラムをご覧の方は少なくともバックナンバーの第74回から順に読んでいただくと分かりやすいです。)
 では、もう一度譜面を出してみます。


 出だしは、先週出てきたテーマの部分です。5段目の最後のところからテーマのバリエーションに入っていきます。曲想としてはここから
「霧の切れ間から一瞬、一筋の光が差し込むのと同時に一陣の風が吹き渡り、草花をいたずらっぽく揺らし始めます。それまで静かだった草原に、しばし華やかなさざめきの輪が広がっていきます・・・」
 という展開になるところです。この雰囲気を出している音楽上の要素を譜面の中から見つけてみました。

1、7段目の2小節目から始まるアルペジオ
 
 これはバックナンバー第35回〜40回に書いている華麗なるアルペジオの応用です。EmのアルペジオとAmのアルペジオが続きますが、音域的にもこのAmのアルペジオ位の位置になると、ピアノの音特有のキラキラ感が出て、「一筋の光が差し込んできた」という感じがよく出せます。このアルペジオの指使いと弾き方についてはぜひバックナンバーを参照してみてください。実に単純ながら、応用力抜群の奏法ですから。

2、8段目の2小節目から始まる3連音符

 それまでの、のんびりしたリズムから躍動感のある3連符に変わって、「華やかなさざめきの輪が広がっていく」感じを出しています。ここの弾き方では、1拍目が4分音符ですが、この1拍目から左手で3連の音を弾いていくと2拍目からの右手の3連と合わせて、更に躍動感が強調されるような気がします。

3、8段目3小節目のコードE7による高揚感

 3連符の連続による躍動感に、更に高揚感と色彩感を加えているのが、8段目3小節目と10段目1小節目のE7というコードです。ここまでB7→Em→Amというコード進行はたびたび出てきましたが、ここで突然B7→E7→Amとメジャーコードに変わることで、パッと視界が開けたような意外性と、華やかな高揚感を演出しています。この辺のところは、難しい理屈は別にしても実際に弾いてみるとその効果は一目瞭然ですから、何回も弾いてその雰囲気を覚えておくと、他の曲でも似たようなコード進行のところで「このマイナーコードをメジャーコードに変えてみると面白そうだぞ」と感じるようになります。また、実際にそんなコード進行になっている曲では、「ああ、これは例のコード進行になっているな!」と気付くようになります。ちゃんとした理屈については、コード理論書を読んで勉強してみて下さいね。

4、11段目1小節目のコードFによる場面転換

 さっきのEもそうですが、このFも、この曲のKeyであるGのスケール上に出来るコード(ダイアトニックコード)には無いコードです。特にFは、そのルートそのものがGのスケール上には無い音なので、突然コードFが出てくると一瞬転調した感じでそれまでのストーリーがガラッと場面転換する雰囲気になります。ここでは、賑やかになった草原から、再び、静かな世界にもどっていく場面転換のきっかけづくりの働きをしています。

 ついでに、ここのF→F♯→B7という進行を見てみると、メロディーラインが半音ずつ不安な感じで上りながらB7という、何度も出て来て安心できるコードに行き着いていくのと、F♯→B7がBのドミナントモーションの進行にもなっている(先週のV7→Iの表にも出ています)のでほっと落ち着いて次の静かな場面に入っていけるような感じがします。

以上、今回はサビの部分で音楽上、特徴的な働きをしている要素を4つほど見てみました。

 こうして文章で書くと理屈っぽくて何だか難しそうに感じるかもしれません。また、私が相当理論立てて考えながらこの曲を作っているように思われるかも知れませんが、それは全く違います。作曲家の先生はどうやっているのか知りませんが、私がこの曲を作った時は、理屈は考えず、ただコードのフォームだけを頼りにしてピアノで色々イタズラ弾きをしながら何となく曲の形にしていっただけです。ここに書いてあることはこの原稿を書く必要上改めて譜面を見直しながら後からくっつけた理論ですから。皆さんもまずピアノで音を出しながら沢山遊んでみられることをおすすめします。最初は変な音を出すのが恐くてなかなか指が動かないものですが思いきって色んな鍵盤を押えてみましょう!「鍵盤で沢山遊ぶ」、これが、ピアノで鼻歌を歌えるようになる(!)ための近道だと思っています。
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 先日、このコラムの読者の方からメールで面白いCDを教えていただきました。「虹の彼方に 100%」というCDです。1枚まるごと、あのOver The Rainbowだけが入っています。12曲(12演奏?)です。全部違うアーティストがそれぞれの楽器、アレンジで演奏しています。ピアノあり、サックスあり、ヴォーカルあり・・・。楽器や演奏者が変わると、こんなに変わるもかと思うくらい、それぞれ違う曲になっていて楽しめます。
 この「虹の彼方に」は一応私もレパートリーにしているのでとても参考になりました。(と言っても、なかなか真似するのはムズカシイですが・・・)
 ちなみに、私のお気に入りは1曲目、ケニー・ドリューのピアノです。うっとりするくらい美しいピアノの音色と、いかにもオシャレ系のジャジーなフレーズがゾクッとします。
−an 弾手−


第79回 「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)
ためのコード奏法超入門講座」
(その23)色んな曲に応用できる便利なヒント(5)
[2004.3.2]
 さて、「そよ風の微笑」の楽譜を使った話も今回で5回目、曲もいよいよ大詰めです。
 風がおさまって再び静かな草原にもどるところで例のテーマを2回繰り返します。2回目は1オクターブ高い位置で弾いて、曲の冒頭の幻想的な世界にだんだん戻っていく感じを出しています。そして、エンディングで締めくくりとなります。


 今回は、このエンディングの部分を中心に、2つの便利なヒントのお話をしようと思います。その前に、このエンディングの部分は普通のリードシートと、ちょっと違うところがありますね。そうです、弾いてほしい音の音符をあえて書いているところが3カ所あります。普通、リードシートではこんな書き方はしませんが、ここではぜひこんな弾き方をしてほしい一例として音符を書いてみました。それから、最後の2小節も実際は演奏者にまかせるような部分ですが、あえて私が弾いている雰囲気の例として、蛇足ながら書いてみました。
 もっと言えば、EmとAmのアルペジオのところも普通はリードシートにはあまり書いてないですよね。これらを外して、エンディングの部分だけシンプルなリードシートにしてしまうと、次の様になりますかね。
 
 逆に言えば、この譜例2のようなリードシートを見て、さあ、どんな風に弾きましょうか、という事です。譜例1はその一例だと思って下さい。

 話を戻しましょう。ここでお話するヒントは2つです。

1、華麗なるアルペジオの応用
 
 Em→Amとアルペジオが続いていますが、特にAmのところは右手で3オクターブ上って2オクターブ下っています。実際弾く時には、これに左手も1オクターブ加えますから、4オクターブ駆け登ることになります。このくらい走ると、結構ハデな「華麗なるアルペジオ」になります。詳しくはバックナンバー第35回〜40回に書いていますが、ここでもう一度鍵盤図を見ておさらいしてみましょう。左手まで含めて書いた鍵盤図です。


 右手の指の形(開く形)をこの通りに覚えてしまえば、他のコードでも親指の位置をズラすだけで同じように弾けますから超便利です。(親指をそのコードの3度の鍵盤に当てます)

2、テンションを入れたコードの簡単な弾き方
 
 このコラムでテンションという言葉が初めて出てきました。この説明を始めると話が難しそうになってしまうので今まで控えていました。要するにコードを構成する基本的な音(ルート、3度、5度)と7(セブンス)以外の特別な音を加えて、ジャズっぽい、オシャレな響きにしたコードをテンションコードと言います。第75回に出てきた9(ナインス)などもテンションです。ここでは理屈は横に置いておいて、とりあえずこうするとカッコ良くなるよ!という話をします。

 譜例1の6段目と7段目に3カ所、弾く音を指定している所がありましたね。

 1つ目はD7でこれはテンションではありません。ルートと7(セブンス)の音が隣同士で鳴っているので少しグシャッとした響きがしますが、ここまでの音が全部きれい過ぎるので、最後にチョッピリひっかかりを出したい気分でこうしました。

 2つ目はDのルートから数えて7(セブンス)+3度+13(サーティス)の組み合わせです。この13(サーティス)がいわゆるテンションと呼ばれる音です。但し、ここでは、この13がちょうどメロディーの音になっています。

 3つ目はGのルートから数えて9(ナインス)+5度+ルートになっています。この9(ナインス)もテンションです。
 
 そしてもうひとつ、7段目1小節の4拍目から2小節目に行く、最後のところです。ここはアルペジオになっていますが、音の組み合わせとしてはGの3度+6度+9度になっています。いわゆるシックスナインスというテンションコードで、とてもオシャレな響きがします。ここのシックスナインスを鍵盤図で書いてみます。


 見てみると、3つの音の間がそれぞれ白鍵2つ、2音半空いていますよね。この形がミソです! この指の形のまま、あるコードの3度の鍵盤に親指を乗せれば、自動的にそのコードのシックスナインスのコードになります。(もちろん、そう、そううまくいかないコードもありますが、それは又、別に覚えればいいことです)

 ではここで、さっきのG9(7段目の最初の音)を押えた時の指の形をもう一度見てみましょう。


 アラ不思議!上の鍵盤図2と位置がひとつずれているだけで、パターンは一緒ですね。これには何か面白い秘密がありそうじゃないですか。このパターンを鍵盤上でひとつづつ横へスライドさせながら色々なコードの場合にどんなテンションが入ってどんな響きになるか試してみると、面白い発見が一杯ありますよ!
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 明日は3月3日のひなまつり。私が仕事で係わっている居酒屋さんで、今、ひなまつりフェアをやっています。フェアと言っても、女性のお客さんにはケーキプレゼント、男性も含めたお客様全員には小振りのちらし寿司をサービスでお付けしようというもの。私もきのうのお昼にランチを食べに行ったんですが、かわいい器に盛ったちらし寿司がカラフルで華やかでいかにも春らしい感じでした。もう1ヵ月後は花見ですね。本格的な春の訪れとともに、街にも活気が戻ってくるといいんですけどね。
−an 弾手−


第80回 「弾くんだったら、ギャラもらっておいで!」 [2004.3.9]
 さてさて、私のオリジナル曲「そよ風の微笑」を使った解説も先週まで5回も続いて、ちょっと疲れちゃったですね。読者の方も疲れたんじゃないですか?というのも、いつもよく頂いていた読者の皆さんからのメールが、ここ数回パッタリ少なくなってしまって!心配しています。初心者の方や自分でピアノを弾かない方には面白くなかったですね。逆にコードが分かっている方には「分かり切ったことをクドクド書いてるなあ」と思われたかも知れません。反省です。
だからって訳じゃないですが今回は軽いネタでお茶を濁しま〜す。

 夜の街はクラブのお話。クラブと言っても、ダンス系のクラブじゃないです。きれいなお姉さんがゾロっといて、ちょっと豪華そうなソファーなんかがあったりして、坐ると客の人数分だけのお姉さんがサッと現れて隣に着いてくれて、キビキビしたボーイさんがスッとひざまずきながらボトルと氷を持ってくる、あの系のクラブです。
こういう店では、ピアノの生演奏をやっているところも多いですよね。ってことはan弾手の練習場になる所も・・・多いってこと、かな。熊本市内の「S」も、そんな店のひとつです。ここは専属のピアニストが1時間おきに4ステージ弾いています。BGMとしてのピアノなので、曲は耳ざわりの良いオシャレ系。各ステージの間に30分の休憩タイムがあります。弾かせてもらうとしたらこの時間です。私が最初にこの店で「ピアノを弾きたい」って言った時は店の女の子が心配しました。
「ママはお客さんが弾くのをイヤがるのよ」
まあ、そうでしょうね。高級な雰囲気を演出している店のBGMですからね。酔っぱらいに変な音を出されたら迷惑でしょう。でも、一度弾いて、何とかママの耳検問に合格したのか、次からはニコニコしながら「どうぞ」と言ってもらえるようになりました。
最近ではたまに顔を出すと、
「あーら、今日は○○さんのピアノが聴けるかしら!?」
とか
「今、ピアノ空いていますよ。ホラ、例のあれ、弾いて下さいよ!」
なんてリクエストされるようになってしまいました。
(これじゃカラオケスナックで歌の本を無理矢理渡されるのと一緒だあ〜)
まあ、この客は勝手にピアノ弾かせとけばいいから楽だわ、なんて思われてるのかなあ。
それも良しとしよう。お陰でステージ度胸だけはだいぶ付いたみたいだ。

 しかしながら、です。
「何、お金まで払って弾いてくるの! 弾くんだったら、ちゃんとギャラもらって来たら?」
という誰かさんのリクエストにお応えできる可能性は、まだ当分ないようで…。
(続く→毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 うちの会社の事務所は寒いです。天井埋め込みのエアコンなので、頭はカッカしてるのに、足元はスースー。
 どうも暖かい空気が、事務所(2F)から3Fへつながる階段を通って上に逃げているようです。(階段の上り口にドアが無い!)
 一人の社員がGood Ideaを出しました。この上り口に透明フィルムをのれんの様に足元まで下げたんです。効果テキメン!暖房が、足元までガゼン効くようになりました。
 そして先日、暖かい日が続いて、この「のれん」も撤去されてしまいましたが、昨日からまたまた冷え込んで「のれん」の再登場と相成りました。本格的に「のれん」が御用済みになるまで、あと何日ぐらいかかるんだろう。
−an 弾手−
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