第31回「クリスマスパーティーで演奏!」その1 [2003.4.1]
 人前でピアノを弾くようになってからは、色々な機会を捉えては意識的に「今、ピアノ練習しているんですよ」としゃべるようにしました。黙って練習しているより自分の意識づけにもなるし、何かの可能性に出会う機会も増えるような気がしたからです。
 ある行きつけの喫茶店も、そんな「しゃべった」場所のひとつでした。ある年の暮れ、その喫茶店がクリスマスパーティーをすることになりました。クリスマスパーティーといっても、ホテルのホールを借りてのかなり大がかりなもの。そして、そこのママが「ピアノ用意するけど弾きます?」と聞いてきました。こんな機会を逃す手はありません。私の答えは「ぜひ!」。そして、しっかり注文まで付けました。
 出番はなるべくパーティーの前半。(カラオケが始まった後では、広い会場でピアノ1本で聴かせるのはツライ。)ピアノはもちろんグランド。それにピアノマイクを入れること。当日は少し早めに行ってピアノとマイクのセッティングをチェックさせてもらうこと。
 そこまで言ったら、本番でそれなりの演奏をしないわけにはいきません。クリスマスという事も考え、「きよしこの夜」「ホワイトクリスマス」、それに「虹のかなたに」の3曲で、きれいにまとめてみることにしました。
 そして当日。広いホールに円卓が並び、お客さんは7〜80名位。ところがその中に、音楽家の岩代浩一先生が来るというではありませんか!熊本出身の作曲家で、その御子息の岩代太郎さんはNHK大河ドラマはじめ、テレビのテーマ曲などで活躍中の、あの岩代さん!
 でも、何も私がここで力む必要はないですよね。いつも通りに弾けばいいだけです。こんな時、あのライブバーで弾かせてもらっているという経験が、ものすごく自信につながっていることを感じます。あの、プロが弾いている場所で自分も弾いているんだという意識が、実力以上に自分を後押ししてくれているようで。
 私の出番は予定通りに進み、大きなミスもなく弾き終えました。でも、ハプニングが起きたのは、その後でした!(続く)

ちょっと、ひと言。
 知り合いのヴォーカルの女性が、最近、スナックを開きました。そして、中古のクラビノーバを入れたので弾きに来て、という連絡。この前、行ってみましたが、最近のクラビノーバはすごいですね。実戦向きの機能が一杯あって。我が家にも10年以上前に買ったクラビノーバ(当時としてはかなり高級な機種)がありますが、全く別物ですね。我が家のクラビノーバにはストリングスの音源さえないのに、そこのはピアノとストリングスの同時発音をワンタッチでオン、オフできる機能など、とても実戦(ライブ)向きです。
 ただ、ピアノ音源はやっぱり生ピアノにはかないません。グランドピア丿の、あの全身にズーンと響いてくる感覚は格別ですよね。
−an 弾手−


第32回「クリスマスパーティーで演奏!」その2 地獄のトンネル [2003.4.8]
 カラオケでひとしきり盛り上がって、パーティーも終盤。いよいよ音楽家の岩代浩一先生の登場です。先生の作詞作曲になる「火の国旅情」を、先生の伴奏で皆んなで歌おうという趣向です。でも、岩代先生はステージに立つとひとしきりあいさつをした後、突然「今日はピアニストがいるようだから、僕も1曲歌いましょう。伴奏してくれませんか?」と言って私の方に手まねきするではありませんか!
「エッ! 何ですか? 私、そんな話聞いてませんよ!」
 うろたえる私に会場の視線が集まり、パチパチと拍手まで起こる始末。もう、頭の中は真っ白です。
「きよしこの夜を歌いますから」と先生。
 私は少しだけほっとしました。「それだったらさっきも弾いたことだし、ソロと歌伴(歌の伴奏)はちょっと違うけど、まあ、さっき弾いた通りに弾いておけば、一応、格好はつくかなあ」と考えながら席を立ちました。
 でも、それが地獄の始まりでした! ピアノの前に座っておもむろにイントロを弾き始めます。そして歌のところにさしかかりますが、なぜか先生は歌い始めません。おや、と思って先生の方を見るとこっちを見て、待った! をしてます。
「音が高いなあ。キーは何なの?」
「Cです」
「少し下げてくれませんか?」
「エエーッ!」
 突然、キーを変えろと言われても! 頭の中は、またまた真白です。
「私、素人ですから、キーを変えて弾くのは無理ですよ!」と言い訳をしながら、強引にもう一度Cでイントロを弾き始めました。でも、先生も頑固です! 首を横に振って、歌おうとしません。私はもう全身汗びっしょりになりながら、頭は完全にパニックです。そんな私を見かねたのか、先生が助け舟(ヒント)を出してくれました。
「例えばGとか、Fとか・・」
「あ、そうか! GかFだったら何とかなるかな!」
 私はCを下げろと言われて、無意識のうちにBとかB♭をイメージして「とんでもない!」と思っていたようです。
「それじゃFで」と言って、まずFのコードをアルペジオでパラパラパラッと弾きました。そして、「さて、イントロを弾かなくちゃ」と思ったら、先生はもう歌い始めているじゃありませんか!あわてて歌に合わせるように弾き始めました。でも、どういう風に演奏するか全く考える余裕もなく弾き始めたので、とにかくメロディを追いかけるのに必死です。そのうちメロディも分からなくなりコードだけを弾き始めました。「何だ、歌伴なんだから、最初からこうしておけば良かったんだ」と思いながらも、「コード進行はこれで良かったっけ?」と手元を気にしていると先生の歌を聞くほうがお留守になってしまいます。フッと我に返って先生の方を見たら、もう歌は終わろうとしています! ヤバイ! とにかく最後だけは合わせなければ! そうだ! 最後はドミナントモーション(曲が終わった感じがするコード進行)だ! 強引にC7のコードに入り、最後をFのアルペジオで決めて、何とか終わった格好になりました。
 フーッ! 出口の無い、長いトンネルだったような、はたまた一瞬の出来事だったような。席に戻る私は、きっと夢遊病者のような顔をしていたに違いありません。(続く)

ちょっと、ひと言。
 先日、久し振りに会うプロのミュージシャン(ピアノ、ギターの演奏家で、作・編曲もやる!)と飲みながら、スケールについての疑問をたずねたところ、急に即席の「コード奏法講座」になりました。その辺りにあった紙切れにミスティのコード進行を例題としてメモしながら、「1つの曲の中でもキーは目まぐるしく変わっているので、その時のキーを常に意識しながら、使えるスケールでおかずやアドリブフレーズを弾くんだ!」そうな。
 これ、確かに今まで何回も聞いてるんですけど、何回聞いても頭がこんがらがってくるんですよね。それにその時は何となく分かったような気がしても、翌朝酔いが覚めてみると、すっかり忘れていることが多くて・・・。
−an 弾手−


第33回「バンド初練習!」 [2003.4.15]
 ある読者の方から、「ところでバンドの話はどうなったんですか?」と聞かれてしまいました。第27回、29回、30回でバンドに入った事を書いてましたからね。譜面まで載せて。すみません!話があちこち飛んで。今回は、バンドその後です。
 練習は日曜の夜。ある楽器店の練習スタジオで。私、こういう場所に来るの、初めてなんですよね。バンドに合わせてキーボード弾くのも初めてだし。なんか、ドキドキです。練習室は、小部屋にいくつも分かれており、放送局のスタジオのような、大きな取っ手のついた、ぶ厚い防音ドアを開けて中に入ります。ギターのメンバーは自分の楽器を持ち込みですが、ドラムやアンプ、それにキーボードはスタジオ備え付けの物を借りるようです。
メンバーの皆は手練れた様子でアンプを接続したりドラムの高さを調整したりしています。私は、良く分からないままキーボードの女の子がセッティングするのを手伝いました。 
「それじゃ、CALIFORNIA DREAMINからいこうか」
リーダーが言うと、早速練習が始まりました。私はとりあえず、キーボードの女の子にまかせて聞いていました。借りたテープを何回も聞いてきたので大体の雰囲気は分かりますが、自分で弾くには、まだ、全く準備不足です。途中、キーボードのソロが入るところが何ともカッコイイ! キーボードの彼女、なかなかやる〜! これだったら、私、出番ないんじゃないの? リーダーはどんな風に考えているんだろう? そう思っていたら、次の曲で出番が回ってきました。LOVE WILL KEEP US ALIVE。「これ、○○さん、お願いしますよ〜」と彼女。譜面はコードネームだけで、音符が全然書いてありません。オタマジャクシが書いてないと彼女もどうもむずかしいらしい。私は聞いてきたテープのイメージで、とりあえず白玉弾き(全音符でコードを弾く) で挑戦。なにしろ初めてのバンド演奏です。ドラムやギターのリズムに合わせるのってけっこう緊張もの。ちょっとでもモタつくと、大音響でジャンジャカ、ジャンジャカ鳴っているリズムが、どんどん先に行ってしまう!早くこの感覚についていけるようにならなければ!(続く)

ちょっと、ひと言。
 仕事の関係である若い女性とお会いして、この「くまもと文化邑」と私(an弾手)のコラムの話をしたら、早速見てくれたようです。4歳の時からピアノを習ってエレクトーンの講師免許も持っているんだとか!先日、またお会いしたら、1冊の楽譜を持ってきてくれました。
「うっとりするようなバラード集ですよ!」という言葉を添えて・・・

しばらくこれで遊べそうです。
−an 弾手−


第34回「誰も教えてくれない?!」 [2003.4.22]
 バンド初練習で、初めてドラム、ギター、ヴォーカルに合わせてキーボードを弾きました。とりあえずコードネーム見ながら白玉弾きですが、まあ、ワタシ的には何とかカッコついてるんじゃないかと・・・。
 総勢メンバーが8名、それに音響機材で足の踏み場も無い位狭い練習スタジオに、ドラムやエレキ、2人の女性ヴォーカル、それに自分が弾いているキーボードの音がアンプを通してガンガン響きます。幾重にも重なったサウンド(音響)の真只中に自分が放り込まれたようで、又、そのサウンドの一部を自分が刻んでいる実感がビンビン伝わってきて、なかなかの迫力です。1人で弾くピアノもいいけど、これはこれで相当インパクトがある!
 ただ、キーボードの弾き方、これでいいのかなぁ?リーダーも特に弾き方について口出ししないし、もう1人のキーボードの女の子は横で見てるだけだし。私はバンドもキーボードも初体験なのに・・・。その時、初めて悟りました。「そうか、誰も教えてくれないんだ!」
 鍵盤やるのは私と女の子と2人だけ。しかも、彼女はどうも私を頼りにしているような・・・。(楽譜見て弾くのは、彼女の方がずっとうまいと思うんですけど)
 かくして、他のメンバーに頼らず、しかも他のメンバーに迷惑かけず、自分で工夫しながら何とか形にしていかなくてはならないという試練の日々が(大ゲサな?)始まったのであります。(続く)

ちょっと、ひと言。
 ニューヨーク在住 の「Todos」さんからメールをいただきました。日本人の方です。私の「・・・奮戦記」をお読みいただいているようで、ご自身でも最近Jazzギターを始められたとか。しかも、ご自分のホームページまで立ち上げられて!早速、見に行きました。まだ、試運転中でしたが、すでに掲示板は、日本はもちろん、アメリカやイランからのお祝いの書き込みであふれるほど盛り上がってました!スゴイ!グランドオープンが楽しみです。
−an 弾手−


第35回「華麗なるアルペジオは魔法の杖」 [2003.4.28]
 第26回で、「ヘタなのにジョウズそうに聴かせるための心得とテクニック」を書きましたが、今回はその「極め付き!」を御紹介します。
 「〜演奏の途中で的確に挿入されるアルペジオは、聞き手に実力以上のものを感じさせ、ハッタリ効果バツグンです。〜」とは、あるピアノ実習書のアルペジオの章に書いてあった言葉ですが、私も全く同感です。アルペジオとは、もちろん分散和音のことですが、ここで話題にしているアルペジオは8分音符程度のものではなく、16分音符か、それ以上の早さでパラパラパラパラッと3〜5オクターブを一気に駆け登る(駆け下りる)アルペジオです。雰囲気的に言えば、カーメンキャバレロやリチャードクレーダーマン、あるいは小原孝さんの「ピアノよ歌え」シリーズあたりによく出てくるような、あれです。正確にあんな風に弾くのはもちろんムズカシイですが、似た雰囲気を出すだけだっだら想像するより、ずっとカンタンです!
 さほどむずかしくないのに、これをちょっと演奏に織り込むだけで、とたんに聴いている人の見る目が変わります。それまで、「あの程度なら、俺でもちょっと練習すれば弾けるよ」と言っていた人が、突然、「小さい頃から、もう何十年もピアノやってるんでしょう?」に変ります。
 まさに、「ハッタリ効果バツグン!」の「魔法の杖」です! なのに、意外とアマチュアでこの魔法の杖を使う人、少ないんですよね。不思議です。
 プロのジャズやポピュラーのピアニストでは、1〜2曲弾けば、まず100%、このアルペジオのテクニックがどこかに入っていると思うんですけど…。
 これはきっと、このテクニックがすごく難しくて、基礎から長年訓練しないと弾けないものだと、誤解されているからじゃないかと想像します。そしてアマチュアの人の多くは最初からこのテクニックを試してみるのをあきらめているんじゃないかと。
 もう一度言います! こんなにお手軽で、しかも「ハッタリ効果バツグン!」のこの魔法の杖を使わない手はないですよ!
 次回に、その弾き方を具体的に紹介します。「何?たったこれだけ?」と言われる位、単純な弾き方です。(続く)

ちょっと、ひと言。
 事情があって1ヶ月半ほど私のメールアドレスを休止していましたが、そろそろ復活したいと思います。但し、以前のアドレスは使えません。新しいアドレスを下に書いていますので、ご意見、ご感想、ご質問などありましたら、どしどしお寄せ下さい。もちろん、掲示板の方も、引き続きよろしくお願いしますね! ─ an 弾手(andante)─
piano-roman@kumamoto-bukanokaze.com
掲示板
−an 弾手−


第36回「華麗なるアルペジオ・1週間マスター法」 [2003.5.6]
 さて、前回、これを弾くだけで「デキル!」と思われて(誤解されて?)しまう魔法のようなテクニック「アルペジオ」の話をしましたが、今回はその具体的な弾き方を紹介します。と言っても、単に私がやっている方法というだけですから、これが本当のやり方かどうかの保証はありません。試してみられた結果について、責任は取れませんので何卒ご了承ください。
 では、早速、実技に入ります。第14回「コード奏法(その2)実践編」を覚えておられるでしょうか?その左手編で「親指と小指をオクターブに開いて、コードのベース音(正確に言うとルート)の位置に置きます(Cのコードならドの位置)。すると、人差し指が自然とソの位置に来ているはずです。」と書きました。左手はこの通りでOkです。この時、右手は親指をミ、人差し指をソ、小指をドの位置に置きます。これも、各指が自然にそれぞれの鍵盤の位置に乗ると思います。
 さて、この状態で左手の小指から順に人差し指、親指、右手の親指、人差し指、小指と少しずつタイミングをずらしながらパラパラパラッと弾いてみてください。どうです?これで、2オクターブのアルペジオの出来上がりです。カンタンでしょう!
 この感じをつかんだら、次は3オクターブ、4オクターブと広げていきます。これには、左手を右手の右に持ってきて、更に右手をその右に運んで・・・という方法もあるようですが、私は2オクターブ目から先は全部右手一本でやってます。その方が手の動きがシンプルで、曲想に合わせてバリエーションを加えていく自由度がありそうな気がします。方法は単に右手を1オクターブずつ右に移動して、最初と同じくミ・ソ・ドを弾くだけです。つまり、右手でミ・ソ・ド→ミ・ソ・ド→ミ・ソ・ド→ミ・ソ・ドと1オクターブずつ連続的に上っていく訳です。
 最初は、→の部分の手の移動がスムーズにいかず音が3つずつでブツブツ切れますが、根気よく繰り返して練習していると、だんだんスムーズにつながるようになってきますから心配はいりません。毎日15〜30分も練習すれば、1〜2週間位で何となく格好が付いてくると思います。
 次回は、このアルペジオ練習のポイントをまとめてみます。(続く)    an 弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 皆様、ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか? 今年は何だか、あっという間に終わってしまったような・・・。それでも、私は家族と、ある温泉地のペンションに行ってきました。そこでの夕食時、レストランに行ったらグランドピアノが置いてあるではありませんか! 私は気になって仕方がありません。そんな私の様子を察して、妻と娘は「弾いたら」と言ったのですが、息子に「恥ずかしいからやめて!」と反対されて・・・。とうとう弾かずじまいで、ちょっと心残りだったかなぁ。
−an 弾手−


第37回「華麗なるアルペジオ・まとめ編」 [2003.5.13]
 さて、ここまで2週に渡って華麗なアルペジオの練習法を書いてきました。ここでは、その練習のポイントをまとめてみます。
 なお、前回、前々回の記事をお読みでない方は、そちらから先に読まれると分かりやすいですよ。

1、くり返し連続して練習すると、すぐに腕の筋肉がだるくなってくるので、無理せず、小刻みに休憩を入れる。(無理すると指を痛めます!これ、私の経験)

2、右手の移動は「指くぐり」の感じではなく、小指を弾き終わった瞬間に手の形はそのままで腕を素早く1オクターブ右に移動して親指をミの位置(コードCの場合)に当てる。

3、目視で確認する鍵盤は、右手の親指が当たる鍵盤だけ。人差し指と小指の位置は手の形で覚えておく。

4、つまり、コードCの場合は、オクターブ毎のミだけ確認して親指を当てていく。くり返し練習していると、横目でチラッと右の方の鍵盤の並びを見ただけでオクターブ毎の「ミ」の鍵盤が少し光って見えるようになります! そこを目がけて親指を当てていく。(最終的な目標は親指も見ないで弾くことですが)

5、ゆっくり正確に弾いていく練習と、多少間違ってもミスタッチしてもいいから超スピードで駆け登る練習を混ぜながらやってみる。

6、多少間違って隣の鍵盤を弾いても、勝手にテンションが入ってむしろオシャレなサウンドになるので気にしない。但し、最後の小指(ルートの音)だけは間違えないように。

7、コードはCだけでなく、白鍵だけで構成されるコードは全て同じ方法(指の形) で弾くことができる。つまり、1つパターンを覚えれば一気にC、Dm、Em、F、G、Am、Bm-5の7つのコードでこの華麗なアルペジオが出来るようになる。(黒鍵が入るコードの場合は、指の形を変えて練習する必要があります)

8、少し弾けるようになったら、実際の曲の中にどんどん応用してみる。
 
 文章で書くと面倒そうですが、実際やってみると、意外と簡単です。初心者の私でも、1ヵ月もしたら、人から「ホゥ!」と言われる位にはなりました。試してみる価値は大アリです!
 さて、次回は、実際の曲の演奏の中で、このアルペジオをどんなタイミングでどう使っていくかについて書いてみましょう。(続く)    an 弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 このところあまりピアノを弾く時間がとれずご無沙汰です。休日の昼間に時間がないとグランドピアノのふたも何週間も開ける機会がなくて・・・。深夜にちょっと鍵盤の感触を確かめたりしていますが、もっぱらクラビノーバのヘッドホンです。またそろそろ生ピアノを思い切り鳴らしてみたいなぁ。ご近所の皆様、また迷惑かけますねー。
−an 弾手−


第38回「華麗なるアルペジオ・応用編」 [2003.5.20]
 さて、ここ数回、アルペジオの話が続いて、ピアノを弾かない人とピアノがすでにバリバリの人には面白くなかったんじゃないかと心配しています。それに、何となく講釈っぽい話になってしまってスミマセン。でも、自分の演奏を少しカッコ良く味付したいと思っている初心者の人にはとても重宝してもらえるテクニックだと思うので、あえて書いてみました。
 今回はその「応用編」です。前回までの話を、実際にピアノで試してみられた方は、既に、この華麗なるアルペジオ(魔法の杖)を手にされたことと思います。おめでとうございます!あとは、その使い方です。この魔法の杖は、やたらに振り回しすぎると下品になりがちです。でも、ここぞ!という時にサッとひと振りすると聴いている人に素晴らしい魔法をかけることができます。
 ここぞ!というのはどんな時か?代表的な場面としては、
(1)ヒマな時
(2)グッと盛り上げたい時
(3)静かに余韻を残したい時
などでしょうか。

(1)ヒマな時
 メロディが動いていない時、つまり楽譜で言えば、2分音符や全音譜で、音が伸びている時や休符で休んでいる時。手がヒマでしょう?こんな時にはフィルイン(おかず)と言って適当なフレーズを入れたりしますが、ここはアルペジオが使える代表的な場所でもありますね。

(2)グッと盛り上げたい時
 だんだん盛り上げていってドーンとサビに突入する所などでうまく使うと効果的です。サビの直前に全音符で引っ張るような部分があれば、ここにアルペジオを使うとドンピシャリはまります。例えば「ある愛の詩」なんかこの典型です。余談ですが、アルペジオで盛り上げた後のメロディラインはオクターブ奏法でハデに響かせるといかにもポピュラーピアノらしい華やかな雰囲気が出せます。

(3)静かに余韻を残したい時
 曲の流れが一段落して一息つきたい時や、静かに消えていくようなエンディングの部分。(2)の盛り上げるアルペジオと違って、静かに、やさしく、細やかな感情を込めて語りかけることが出来れば最高です! 思わずタメ息が聞こえてきそうですね。

 アルペジオのスピードや音の強さも、使う場面によって色々工夫してみましょう。ゆっくりスタートしてパラパラッと速くなる。その逆にだんだん遅くなっていって、ポロンと終わる。
 当然音の強さもグッと盛り上げていったり、静かに消え入るようにささやいたり。思う存分、自分が想い描くドラマを演じ切ってみましょう。「魔法の杖」を自在に操る魔法使いになったつもりで・・・。(続く)   an 弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 先週、出張で大阪に行きました。その時、立ち寄ったホテルのロビーでちょっと古めかしいアップライトピアノを見つけました。掲示してあった説明パネルによるとアメリカミルトン社1920年製の自動演奏ピアノ(せん孔ロール紙方式)で、我国で現存するものはほとんどない貴重なものだとか。1910〜20年頃、アメリカを中心に普及し、その後蓄音器やラジオの出現で衰退したものの、最近、又、アメリカで復活しはじめているそうです。何となくのどかでノスタルジックなところが現代人の気持ちをそそるのでしょうか。そのピアノは部品不足で実際の演奏はできないとのことでしたが、試しにフタを開けてちょっと鍵盤を押してみたら、ボロロ〜ンと今にも歌い出しそうな、いい音がしました。
−an 弾手−


第39回「華麗なるアルペジオ・発展編」 [2003.5.27]
 前回は、「華麗なるアルペジオ・応用編」として実際の曲の中で、どんな部分にどんなタイミングでこのアルペジオを入れていったらいいかを書いてみました。最初のうちはこのタイミングがむずかしく、どうしても取って付けたようになりがちです。でも、とにかく慣れるしかありませんから、私も色々な曲で色々な部分に片っ端から試してみました。家族からは、「変だ」「おかしい」「取って付けたようだ」とさんざん笑われました。でも、そんな事でくじけていてはおじさんピアニストの道は遠い! この際、家族とご近所の失笑と迷惑には目をつぶって頑張ることにしましょう。
 色々試していると、そのうちにだんだんタイミングが合ってくるようになります。また、この手のアルペジオが入っている演奏のCDを聴くのも大変勉強になります。前にも書きましたが、小原孝さんの「ピアノよ歌え」シリーズなど、その典型です。だんだん慣れてくると、曲のそれらしい所では特に考えなくても手が勝手に動いてアルペジオを弾いてしまうようになってきます。そうなったら、今度は頭で考えながら、手の暴走を押さえる位でちょうど良くなります。魔法の杖は、あんまり安売りせず、少しもったいぶって使いましょう。(これ、自分自身に言っているんです!)
 さて、基本パターンに一通り慣れてきたら、これにちょっとバリエーションを加えるだけで色々なパターンに変化させていくことができます。右手の指の間隔をちょっと広げるだけで、シックス・ナインスという、いかにもジャズっぽいサウンドに変化しますし、親指をミではなく、ドの位置に持ってくるだけでも勝手にテンションの入ったアルペジオになります。また、左手と右手で別のコードにしてみると、結果的に左手のルートに対して結構複雑なテンションの入ったコードを弾いていることになり、面白いサウンドになります。右手の薬指も使ってみると、セブンスやメジャーセブンスが入って、密度の高いアルペジオになります。
 さらに、単純に一直線に駆け登るだけでなく、途中で同じオクターブをくり返しながらグルグル渦を巻くような感じで上っていったり、一番上で水がはね返るように1オクターブもどったり、と色々なバリエーションを工夫してみると面白いです。自分が知っているルールを意図的にはずして弾いてみるのはたとえ練習でも勇気がいります(特に左手と右手で違うコードを弾く時!)が、鍵盤の上で冒険しながら色々遊んでみると、思いがけない発見があったりします。ぜひ、第2、第3の自分だけの「魔法の杖」を見つけて下さい!(続く)
an 弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 この前の日曜日は、久し振りに家で草取りをしました。しばらく放っておいた我が家の庭(狭いながらも、一応庭がある!)に雑草が茂って、梅雨前には何とかしなくちゃ、という感じで・・・。
 這いつくばって草と格闘していると、目の前に毛虫が1ぴき。ギョッとしたものの、改めてまじまじと見てみると何か憎めないような顔をしてて。しばし昔の昆虫少年に返って彼(彼女?)の行動を観察してしまいました。
 雲の間から時折差し込む陽射しと、吹き抜ける風と、草の匂いと。久し振りに時間を忘れたひとときでした。
−an 弾手−


第40回「華麗なるアルペジオ・白状編」 [2003.6.3]
 しつこい!まだ華麗なるアルペジオが続くのか!という声が聞こえてきそうです。先週でこの話題は一旦終わりにする構想だったんですが、アップした原稿を見ていたら、もう1週書きたいことが浮かんできてしまって・・・。スミマセンね〜。今週まで付き合ってください。
 と言うのも、この華麗なるアルペジオには駆け登るのと駆け下りるのがある、と第35回で書いておきながら、駆け下りる話が全然出てこなかったなあ、と気付いたもので。
 
 この駆け下りる方は、駆け登るのとはまたひと味違った、ゾクッとするような味があります。でも、実はここで本当のこと、白状しちゃいます。実は私、この駆け下りるのがまだ出来ないんでスーッ!(やっと歩いて下りる位かなぁ・・・) 駆け登るのに比べると何倍もムズカシイです!
 一度プロのピアニストに聞いてみたことがあります。
「駆け下りるアルペジオは、どんな風に弾いてるんですか?」
「・・・登るのを、単に逆にやっているだけだよ」
「じゃあ、ドソミ→ドソミでいいんですね?」
「そう」
「でも下る方はどうもうまくいかないんですけど・・・」
「あなた、登る方も、最初はうまく弾けなかったでしょ?でもやっているうちに弾けるようになったでしょ?一緒ですよ。1日中、こればっかりやってたらすぐ弾けるようになるよ。」
「・・・。そうか。1日30分練習するとして、これを1日24時間にならすと、48日間になる訳か!まあ、それだけ続けたらちょっとは格好がつくかもなぁ・・・」
と、妙に納得してしまいました。

 でも、実は下りるのがムズカシイ理由は自分なりには分かってるんです。登る時は親指の鍵盤だけ見ていけばいいんですが、下る時は小指の鍵盤を確認する必要があります。小指の鍵盤は弾く瞬間は自分の手の陰になって見えないんだなぁこれが!だから勘で弾くしかありません。これが恐くて、どうしても恐る恐るになってしまう。思い切って走ってみても、違う所に当たってしまう。というわけです。
 そこで、まあ、あきらめて、まずは4〜5オクターブも走らず、とりあえず2オクターブあたりから、曲の中に取り入れてみるようにしています。あまりしゃくし定規に考えず、自分の出来るテクニックを最大限に活かして、いかにカッコ良く聴かせるか、を工夫してみるのもコード奏法の楽しみのひとつですからね!やっているうちに、だんだん走れる距離も伸びてくるでしょう!

 ・・・と、白状記事になってしまったところで、華麗なるアルペジオの話題は一旦締めることにしましょう。次週からは、又、気分を変えて! (続く)    an 弾手(andante)

ちょっと、ひと言。
 検索サイトで遊んでいたら、「月のピアノ」というサイトを見つけました。何だかきれいでしょう?それに「ピアノ独学記」という説明もあったので早速行ってみたらがっかり。ピアノのコーナーはやめたんだとか。これじゃタイトルに偽りあり!と思ったんですが、掲示板に書き込んでおいたらレスでバックナンバーのURLを教えていただいて。ピアノ初心者の「かいる」さんが好きな曲をどんどんマスターしていく様子が優しく書いてあってうれしくなりました。本体の「月のピアノ」の方は、メルヘンチックなイラストや写真が一杯で癒されますよ。
−an 弾手−
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